IISEシンポジウム「ウェルビーイングへとつながるまちづくりDX」

主催:株式会社国際社会経済研究所(IISE)・アクセシビリティ研究会
協賛:特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム
開催日時:2022年3月22日(火)14:30-17:30
開催方法:Zoomウェビナーにて配信

以下の文責は山田肇にある。

およそ100名が参加したシンポジウムでは5件の講演が行われた。

基調講演「国土交通省におけるスマートシティへの取り組み」
坂本いづる氏(国土交通省都市局都市計画課都市計画調査室都市交通係長)は、社会課題の解決にデジタル・DXで取り組み市民のウェルビーイングを向上させるのが、スマートシティであると説明した。「市民中心主義」で、技術ドリブンではなく、課題の解決を重視する必要がある。内閣府を中心に政府一体で取り組んでいるが、産官学の連携が重要である。スマートシティの初動段階では推進の機運を関係者に醸成し、関係者が協力して計画を具体化していく。その先の実行過程での評価まで含めて、スマートシティガイドブックを2021年に公開した。今後、内容を強化していく予定である。

特別講演「鎌倉市スマートシティ構想-世界一Well-Beingの高いまちKamakuraの実現」
講師の天城秀文鎌倉市役所共生共創部政策創造課課長は、鎌倉市は高い市民力が特徴であり、市民とともに汗をかく市役所として共生社会を実現していきたいと語った。その上で、2022年3月に策定したスマートシティ構想の要点を説明した。ポイントは「だれもが生涯にわたって、自分らしく安心して暮らすことのできる共生社会の実現」であり、そのために市民起点、共生の精神、鎌倉らしさの継承を基本理念として掲げている。構想具体化の過程では市民対話を重ね、アンケート調査も実施した。今後はオンライン合意形成プラットフォームも導入していきたい。住民との対話の結果も受けて、リーディングプロジェクトとして、防災・減災を起点とした複数分野の連携を掲げることにした。最終的には「住みやすさと幸福度の数値化・指標化」を進めていきたい。

講演①「品質マネジメントから見る『ウェルビーイング』」
下野僚子東京大学総長室総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座特任講師は次のように講演した。日々の事業や業務はウェルビーイングにどう結びついていくのだろうか。事業や業務を品質マネジメントすることによって、ウェルビーイングが向上する可能性がある。ある県の健康づくり啓発事業(健康フェスタ)に品質マネジメントの観点を導入した具体例を説明した。その結果、フェスタ来場者の生活改善意欲を特定健診受診者と比較するなどができるようになるなど、行政推進のための新しい指標を開発することができた。

講演②「孤立・孤独への対応とデジタル活用」
遊間和子氏(株式会社国際社会経済研究所調査研究部主幹研究員)は、新型コロナの蔓延と共に「孤立・孤独」が大きな問題になったとしたうえで、主に英国での政策について説明した。英国では孤独は公衆衛生上の最大の課題の一つであると認識し、孤独戦略を立案し、担当大臣を任命している。孤独戦略の下で実施されている、リタイヤメント住宅での社交クラブ情報を提供するウェブプラットフォームの提供、幼児と高齢者がネットを介して友達となる仕組み、料理を作るのが好きな人といつも料理ができるわけではない隣人を結びつけるネットワークなど、多くの実践例が紹介された。

講演③「ウェルビーイングへとつながるまちづくりDX」-アクセシビリティ研究会調査研究報告書よりー
山田 肇氏(東洋大学名誉教授/アクセシビリティ研究会主査)は調査研究報告書の概要を説明した。報告書のまとめとして、次の四点を提示した。第一は、ヒトの気配のない都市ではなく、人々が「幸福」や「幸せな気分」を感じられるスマートシティを目指して「まちづくり」を進めるのがよい。第二は、国家として必ず実施する基本政策の上で、共生、子育て・教育、健康・福祉、産業・労働、文化・スポーツ、都市基盤形成、環境、防災の8分野政策を、調和を取り、連携して推進することで、住民一人ひとりの主観的なウェルビーイングは向上する。第三は、行政に蓄積された各種のデータ等を利用し、地域産業連関分析、費用対効果分析などを実施して、政策を評価する必要がある。第四は、エイジテック、移動支援アプリ、ACPなど、デジタルによって「まちづくり」は変革するである。調査研究報告書は4月に国際社会経済研究所より公表される。