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企業見学会:株式会社stu 竹内宏彰VP of Production Divisionほか

見学先企業:株式会社stu
住所:渋谷区千駄ヶ谷4-20−1 Verdex神宮北参道
対応:竹内宏彰 VP of Production Division、早坂篤(Corporate Planning)、金子鉄平(Post Production Producer)

最新の映像スタジオ(https://www.dots-and-line-studio.com)見学の後、主に以下について話を伺い意見交換した。

  • リアルな前景とバーチャルな後景を合成した映像などが自由に作れるようになった。紅白歌合戦などでも利用され、映像の新時代が始まっている。
  • ライブコンサートの準備段階でもデジタルは活用されている。ホールと舞台、演者をデジタル映像として重ねてシミュレーションすることも可能になっている。
  • これらデジタル映像技術を利用してコンテンツをクリエイトしていくクリエイターに、最新の機器を揃え居心地のよいスタジオを提供している。多様なジャンルのクリエイターが集い共同して新しい映像を生み出している。
  • 日本のコンテンツ産業最大の問題は、国内市場に閉じてビジネスをしている点である。クリエイトした映像を海外にどのようにマーケティングしていくかという点に弱みがある。同社は海外マーケティング人材も積極的に雇用し、ここに力を入れている。
  • 中長期的には映像界における大谷翔平的なグローバル・プレイヤーを育てていく必要がある。可能性の高い国内外の若者を国内外のエキスパートが教育するクリエイター育成システム構築の過程である。その中から突出する日本人のスター・クリエイター「大谷翔平」が生まれていくと期待している。
  • 可能性の高い若者には大胆に投資していく必要がある。日本のコンテンツ産業は大御所への投資に偏りすぎており、この点も是正する必要がある。

オンラインセミナー「デジタルでアップデート:大規模言語モデルでスキルを拡張しよう」 荒川大輝 NTTコミュニケーションズ・ジェネレーティブAIタスクフォース長

開催日時:2024年10月28日月曜日 午後7時から1時間程度
開催方法:ZOOMセミナー
講演者:荒川大輝 NTTコミュニケーションズ・ジェネレーティブAIタスクフォース長
司会:山田 肇・ICPF理事長

荒川氏の講演資料はこちらにあります
荒川氏の講演ビデオ(一部)はこちらにあります

冒頭、荒川氏は次のように講演した。

  • われわれを取り巻く経済社会では、顧客ニーズの多様化・複雑化する中でデジタル化が一層加速している。そんな環境下でAIと人間が共存する未来が展望されている。
  • 情報通信白書によれば、企業の70%で生成AIをすでに活用している。1/3の導入企業では社内の生産性向上を実感しているが、自社サービスに導入したことが付加価値・売上向上に結びついたという企業は限られている。
  • 一方で、NTTコミュニケーション調べでは、多くの企業がセキュリティ、生成AIの回答品質・精度、生成AIの使いやすさ(非エンジニアでも使いやすい等)を懸念事項として指摘している。懸念を解決して、一層の活用が進むように支援していきたい。
  • 大規模言語モデルLLMは、大量の例文から次の単語を予測する学習(自己教師あり学習)を繰り返す。それにより、単語や句の意味の理解、文法、一般知識などの言語能力を獲得している。このLLMをさらに大規模化しようという動きがある一方で、企業が社内に置いて活用しようという小規模なSLMへの動きもある。NTTグループのtsuzumiがSLMである。SLMであれば、その企業向けの学習を重ねられる。
  • 外部データから情報を検索してAIの回答を補完するRAG(Retrieval Augmented Generation)などの関連技術も発展している。
  • 新たな対話インタフェースとしてDigital Humanも提供できるようになってきた。出張処理の場合、過去の情報から出張の特性を把握し、出張計画を立て、航空券などを手配し、また出張書類を作成するといったことをAIエージェントがこなしてくれる。
  • AIを活用すれば、コンタクトセンター、店舗や受付、ECサイト、Webでのお客さまお問合せ対応、サポート等、あらゆる顧客接点でのCX(顧客満足度)向上がサポートできる。リアルタイム検索・自動要約・情報抽出により、お客さまの通話待ち時間の削減や応対品質の向上を実現する。
  • 「業務プロセスに適したプロンプト」と「社内ドキュメント活用」によって、企業の生産性を向上し、EX(従業員満足度)向上を支援できる。行政職員は市民に対するだけでなく、議員にも、また同僚の職員にも対応する必要がある。これらがAIによって合理化できる。
  • リモートワーク環境等様々な働き方をセキュアに実現するために、IT運用や社内ヘルプデスクの効率化、高度化をサポートすることもAIの仕事である。専門AIと協働することで、セキュリティ運用の効果が高まり、効率化する。
  • AIが得意な領域と人間が得意な領域がある。⼈とAIがパートナーとして共存し協力することで、、時間とスキルが拡張されていく。人間の同僚のようにAIと協働する未来が展望できる。

講演後、次のような質疑があった。

AIの応用分野について:
質問(Q):電子カルテへの入力を支援するなど医療の業務の効率化を図ることに、AIは利用できるだろうか。
回答(A):診療時に電子カルテの作成を支援する技術などは開発が進んでいる。それに加えて、インフォームドコンセントを支援するという活用にも取り組んでいる。AIがあらかじめ説明のために必要な情報を収集し準備すれば、患者に合わせて説明ができるようになる。また、患者が来院した際の一次対応(診療前の対応)も将来的には可能になる。
Q:一次問診(ヒアリング)の結果を電子カルテに結びつけるアプリはすでに存在する。なぜ広がっていかないのだろうか。
A:私見ではあるが次のように見ている。問診のフローのなかでは、患者とのコミュニケーションが最も大切と思う。アプリには患者ごとに対応を変えるような柔軟性が、まだ備わっていないのではないか。
C(コメント):臨床推論にたけたAIの開発に期待する。
Q:教育でのAIの活用可能性について教えて欲しい。
A:パーソナライズされ、個々人に合わせた教育ができるようになるが、一方で、個々の生徒の機微な情報(成績など)がどこまで活用できるかが課題である。
Q:一人ひとりの子どもに合わせて教育するということであれば、一人ひとりの障害者に合わせて、障害者の不得手なところを生成AIが補完しながら、協働して就労することもできるのではないか。
A:技術的にはあり得る。個人に関する情報を学習して成長していくAIは、まだ発展途上であって。今時点ではできない。
Q:最近の人はマニュアルを読まない。その人に合わせて、その人の疑問に答えるといった、紙のマニュアルではできない取り扱い説明もできるのではないか。
A:マニュアルには間違ったことは書けないので、相手に合わせるといってもむずかしい。一方で、顧客からの質問は積み重なっていくので、それを上手に説明に利用するといったことなら可能である。
C:顧客からの質問に基づいて、マニュアルの改版周期を短くして、顧客に応えるといったことは展望できるだろう。

AIと協働する未来について:
Q:今の学生は、市中にあるいろいろなAIを使いこなしている。企業に特化したSLMは将来まで必要なのか。
A:汎用AIを使いこなしている人がいるのは承知している。しかし、企業内の知識を組み合わせて、使いこなして生産性を向上させるといった企業内での利用には大きな可能性がある。
Q:AIと人間が協働して仕事をするようになると転職はむずかしくなるのか。
A:今は、いろいろなレベル・経験を持つ社員が職場にいて、それらの人間が協力して業務を進めている。そのような環境の中にAIが組み込まれて、AIも一緒に仕事をするようになるということだから、転職には影響しないのではないか。

オンラインセミナー「デジタルでアップデート:センサとAIで健康管理」 伊東大輔 株式会社アドダイス代表取締役CEO

開催日時:2024年9月30日月曜日 午後7時から1時間程度
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:伊東大輔 株式会社アドダイス代表取締役CEO
司会:山田 肇・ICPF理事長

伊東氏の講演資料(抜粋)はこちらにあります
伊東氏の講演ビデオ(一部)はこちらにあります

冒頭、伊東氏は次のように講演した。

  • インターネットとAIの可能性に感動と衝撃を受け、アドダイスを起業した。アドはAdventure(冒険)で、Diceはカエサルの「賽(Dice)は投げられた」から取った。
  • アドダイスは、いちいち命令しなくても自ら再学習していく自律型AIをSaaSとして提供する会社である。SoLoMon Technology(ソロモン・テクノロジー)として特許も取得している。
  • 深刻な病気ほど早期発見に越したことはない。手遅れになる前にAIで発見する「予兆」を捉えるシステムを開発してきた。もちろん健康管理に利用できるが、同じ発想は設備管理にも適用できる。
  • コロナ禍において、心拍数や血中酸素濃度等をスマートウォッチで測定し、そこから重症度をスコア化し、重症度スコアに基づいて医師の判断を助けるAIソリューションを東京大学、広島大学等と一緒に構築した。それを発展させ、「こころ」と「身体」の健康を見守るヘルスケアAI(ResQ AI)を展開している。
  • AIでドライバーの眠気を予測する眠気スコアの実証実験を、観光バス大手のヤサカ観光バスなどと実施した。
  • 高齢者のフレイル対策、メンタルヘルス対策として、バイタルデータやAIスコアをを家族・かかりつけ医・地域の支援者につなげてサポート取り組みを行った。
  • ボリビア人口が都市に集中し、残りの人々は数百キロ間も離れた町村に点在しており、これら過疎地域の人々が適切な医療を受けられないことが大きな課題となっている。。妊婦の状態をスマートウォッチで測定することで、妊婦の死亡率を低減するプロジェクトも進められている。
  • 名古屋市において、こころに障害のある人たちのよりよい就労をサポートする取り組みも実施している
  • 観光庁採択事業である「医療的知見を活かしたアドベンチャーツーリズムの推進」にも参加した。「こころを可視化するAI」により、ツアー参加者のストレスが軽減したことを、医学的見地から実証できた。
  • 精神疾患を理由とする休職・退職は増え続けている。身体だけでなく心の健康もケアしてこそ、「健康経営」と言える。この分野でヘルスケアAI(ResQ AI)を展開していきたい。
  • 種々のIoTセンサの情報を収集集約するためのデータフォーマットとしてIEC 63430が国際標準化された。これを活用すれば多様な情報を効率よくヘルスケアAI(ResQ AI)に提供できるので、IEC 63430の普及にも同志と共に努めている。

講演後、以下の質疑があった。

質問(Q):大手観光バス会社に雇用されているドライバーであれば、実証実験への参加は拒めないだろう。それでは、測定された個々のドライバーのデータも含めて実証実験の知見が他の事業者でも利用されていくということについて、ドライバーにきちんと説明しているか。
回答(A):きちんと事前説明し、同意を得て、実証実験に参加してもらっている。
Q:運行記録を組み合わせれば、どこを走行中に眠気が増すかであるとか、車線変更や車間距離がおかしくなるとかもわかるはずだ。運行記録との連結も行っているのか。
A:将来構想として、運行記録との連結も想定している。
Q:日常的に眠気を催すことが多いドライバーは解雇するといった利用方法は倫理的ではないと思うが、どのように考えるか。
A:アドダイスが開発中の眠気スコアは、ドライバーの安全を守る上でとても役立つツールだと考える。しかし、その本来の役割は「事故や危険を未然に防ぐためのサポート」として活用されるべき。スコア(AIの解析結果に基づいて)ドライバーを解雇するのではなく、まずは眠気をうまく管理できるようなサポートを提供し、健康的な働き方や十分な休息を取れるようにすることが大切と考える。
A:一方で、高齢ドライバーが増えている背景には深刻な人材不足の問題がある。そのような意味でも、解雇と結び付けるのではなく改善のチャンスを提供することが、企業にとっても良いバランスの取れたアプローチだと考える。
Q:実際に眠気を催していることと、眠気スコアが高くなることには、きちんと相関があるのか。
A:眠気スコアと実際の眠気には相関があるが、その強さには個人差があることは避けられない。そこで、より個々の状況に適した判断を行うために、個別の調整や複数の指標を組み合わせることで、信頼性をさらに高めていきたい。

Q:アドベンチャーツーリズムでツアー参加者のストレスが軽減するという話は興味深い。しかし、ツアーに参加するというのがむずかしい人もいる。日常生活の中で、職場でも学校でも、ストレスを軽減するための行動を促すためにヘルスケアAI(ResQ AI)は利用できるのではないか。

A:その通り。緑の多い道を散歩すればストレスが低減する、きれいな花を数秒見ればストレスが低減する、軽い運動やヨガも効果があるといった、多くのエビデンスが存在する。日常的に心のストレスがわかれば、それをもとにストレスを軽減するための行動を促すことができる。

オンラインセミナー「デジタルでアップデート:町会ツールで圧倒的な情報伝達力を実現しよう」 薮野 繁 株式会社シーピーユー執行役員

開催日時:2024年7月23日火曜日 午後7時から1時間程度
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:薮野 繁 株式会社シーピーユー執行役員
司会:山田 肇・ICPF理事長

薮野氏の講演資料はこちらにあります
能登半島地震時の町会ツールの利用状況資料はこちらにあります
講演ビデオ(一部)はこちらにあります

冒頭、薮野氏は概略次のように講演した。

  • 株式会社シーピーユーは1982年創業で、パソコン用建築CADソフトを始めとする、ソフトウェアパッケージの制作・販売が主な事業である。
  • 新規事業開拓の過程で取り組んだのが「結ネット」である。町内会加入率は低下傾向にあり、役員のなり手は不足している。共働きをしている若年層世帯は町内会の伝統的な運営に大きなギャップを感じており、このままでは加入率はますます低下する。
  • 自然災害は増加し、線状降水帯などが多発している。それに関わる情報はネットにあふれているが、本当に必要な「近くの情報」を探すのはむずかしい。
  • 今こそデジタルを活用して「時代に合った」地域組織運営に変革する時である。そのために、「結ネット」を開発した。
  • 最初は石川県野々市市のある町内会に導入された。町内会の意見で「結ネット」を改善していった。その結果、口コミで隣の町内会でも利用されるようになるというように、ボトムアップで普及していった。今では28都道府県の945の団体で、10万人以上に利用されている。
  • 「結ネット」は自治会等地域組織の運営支援を目的に開発したクラウドサービスである。平時には、回覧板に変わる情報伝達手段として町内会の運営に利用される。災害時には安否確認に利用できる。「日常あっての非常」をコンセプトに、日常は自治会活動に、いざ非常時には安否確認に使うことで地域内共助を支援するサービスで、特に町内会役員の負担軽減を主目的に開発された。
  • 徹底的に地域組織に特化し、それぞれの地域組織が自らの運営に合わせるカスタマイズができる。しかし、基盤は全国共通で全国で利用できるシステムとして開発された。地域組織には、町内会、地区連合、市役所等があるが、それぞれが、それぞれの「結ネット」の管理責任を担うボトムアップ型分散システムである。利用者からのフィードバックで継続的に改良していることで、全団体で利用可能な状況を作り出している。
  • 「結ネット」は「個人」ではなく「組織」を基点とすることで。責任ある情報発信と共有を実現している。「個人」を基点とするLINEとは大きく違う。主要四機能は、連絡網機能、グループウェア機能、一斉配信機能、災害時機能である。これら機能を横断的に搭載するからこそ、地域におけるワンストップアプリを実現できる。
  • 日常は町内会から行事案内を送り、住民が参加登録するといった使われ方をする。災害時には住民の安否情報が一元的に集約される。責任者の「非常事態宣言」で、利用者の画面が安否確認画面に自動に切り替わる。平時には世帯単位で利用するが、災害時には利用者個々が本人の安否を発信し、「安否状況確認」画面で利用者相互の状況をリアルタイムで確認できるようになっている。高齢者や子供は家族や支援員、見かけた方が代理で発信する。発信場所は地図で確認できる。
  • いざというときに困らないように、災害訓練を想定し、個人情報の表示を調整できる「訓練モード」を搭載している。災害訓練の状況はNHKのニュース「クローズアップ富山」でも紹介された。
  • 能登半島地震の際には「結ネット」安否確認モードが石川県、富山県で利用された。「元日ということもあり、災害対策本部を設置できない状況であったが、結ネットを活用し校下住民の安否確認はスピード感をもって行えた。その後に未読・未回答者だけを抽出することで、その方たちへの個別対応もスムーズに行えた。」といった感想も得られている。
  • 発災後は、地震に伴う被害状況の把握や、危険な箇所の写真/地図を周知し二次被害を未然に防止するといった活動に「結ネット」が利用されている。また、相互に町内会と住民が情報を共有することで、迅速かつ確実に被災者がサポートできるようになった。地震に伴う避難所の開設・変更・閉鎖の案内も簡単にできた。
  • 以上説明したように、「結ネット」はデジタルの力で町内会活動をアップデートし、若い世帯の加入にも役立っている。そして、能登半島地震の際には発災時から発災後まで多様に活用された。

講演後、次のような質疑があった。

質問(Q):「結ネット」では個人情報はどのように管理しているのか。
回答(A):その質問は、「結ネット」を説明する際に必ず受ける。先ほど説明したように「結ネット」は町内会が自らの運営方針に沿って利用するものである。したがって、個人情報管理方針は導入する町内会が決めるものである。
Q:今日の講演で印象深かったのは、町内会だけでなく、地区連合、市役所、あるいは社会福祉協議会というように階層を超えて情報が共有できる点である。しかし、市役所や社協の職員はITリテラシーが低い。ITが使えない人にどう対応するのか。
A:全く使えない方は「要支援者」として扱う。スマホは持っているが、ログインやパスワードが理解できない人にはそれらの情報をQRコード化して紙で渡し、QRコードでログインできるようにした。社協の職員の場合には、多くは日常にLINEを使っているので、抵抗感なく利用できている。
Q:見守り等にも利用する場合、個人名はどのように扱っているのか。
A:「結ネット」管理者はだれがアクセスしたかわかる。高齢者に興味深い情報を送れば、それを閲覧した高齢者がわかり、見守りにつながる。通常「結ネット」では世帯主が家族を登録するが、民生委員は担当している住民を家族として登録するといった使い方もできる。そうすれば災害時には家族として安否確認できる。さらに、イベントへの参加登録などでは誰が申し込んだか管理者はわかるが、住民相互には申込者の一覧は見えないような設定もできるようになっている。
Q:「結ネット」はいろいろなことができるが、そのために導入を検討する人々が途方にくれるのではないか。
A:「結ネット」で重要視しているのは管理者である。「町会長が管理者というのはやめてほしい」と伝えている。デジタルにくわしい人、少なくとも嫌いではない人を管理者にしてもらう。導入時には必要最低限の機能にしておく。使うにつれて、たとえば「子供会活動も加えたい」というような要望がでてくる。そのような要望に沿って機能を追加していく。管理者の意思で機能を追加していくと、管理者は「自分のもの」として「結ネット」を扱うようになっていく。
Q:高齢者が「結ネット」で集会を知り、家から出るようになったというような話はあるか。
A:細部までの把握はしていないが、回覧板よりも発信数が増えていく傾向がある。発信数が増えていくということは、「結ネット」の価値が町内会で認められたということだから、イベントへの参加も増えていると想定できる。
Q:安否確認の盲点は不在の人。離れた場所で働いている、家族で外出したといった人たちは、自宅に訪問しても安否はわからない。「結ネット」には遠隔でも安否がわかるという価値があるのではないか。
A:その通りである。それに加えて、能登半島地震の際には帰省した家族にも役立った。出勤をせざるを得ない市役所職員の家族の見守りにも使われた。「結ネット」は多様な利用方法が可能である。
Q:「結ネット」はどのようにして普及していっているのか。導入をどのように支援しているのか。
A:コロナ後は市町村からの相談が増えたが、コロナ前から町内会からの相談が続いている。「結ネット」の広報宣伝はしていない。1日に2件ほどの相談が来る。相談に応えていくうちに実験しよう、利用しようということになって導入に進んでいく。