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協賛シンポジウム「IoT ・AI時代の健康寿命延伸」

主催:株式会社国際社会経済研究所・アクセシビリティ研究会
後援:オランダ王国大使館
協賛:特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム
開催日時:2017年3月21日(火) 14:00-17:00(13:30開場)
開催場所:日経カンファレンス&セミナールーム 大手町セミナールーム2
プログラムの概要
基調講演 吉田宏平総務省室長、橋本敬史厚生労働省政策企画官
特別講演 平尾勇松本市商工観光部部長
海外事例報告 遊間和子国際社会経済研究所主幹研究員
パネルディスカッション
山田肇 東洋大学 経済学部教授/アクセシビリティ研究会主査
川添高志  ケアプロ株式会社代表取締役社長
坂下哲也  一般財団法人日本情報経済社会推進協会常務理事
西田佳史  産業技術総合研究所人工知能研究センター首席研究員
平尾勇  松本市商工観光部部長(健康産業担当)
矢冨直美  東京大学高齢社会総合研究機構協力研究員/一般社団法人セカンドライフファクトリー代表理事

イベントの詳細記録は、講演資料なども含めて、国際社会経済研究所より公表されましたのでご覧ください。以下は簡単な記録で、文章の責任は山田肇にあります。

吉田氏:医療介護健康分野のICT化の意義は、ネットワーク化による関係者間の情報共有とデータの利活用の二点にある。しかし、地域医療圏でのEHRが全国総計で患者110万人しか収容していないなど、ICT化は進んでいない。今後、政府全体で取組を強化していく。
橋本氏:「データをつくる、つなげる、ひらく」との方針を掲げて、厚生労働省はICTを活用した次世代型保健医療システムの構築に動き出した。2020年を中間目標とする工程表を作成し作業を進めている。その中で医療等IDも実現していく方針である。
平尾氏:健康首都宣言をきっかけとしてオプトインで松本ヘルスラボという事業を始めた。これを全市に展開し、全市民を収容するオプトアウトの松本版PHRを構想している。包括ケアとの連携が最も重要である。個人情報の保護は必要だが、個人情報を利用することで高齢者の生活が支えられるという点にも理解を醸成しなければならない。
遊間氏:オランダでは民間の力を利用する形で、全国でのPHR構築に取り組んでいる。自身の医療記録にオンラインアクセスでき、血圧などを自己測定して医療サービス提供者と共有し、24時間医療サービス提供者と連絡できるなどを目標に、法を整備し、試験プロジェクトを実施している。
坂下氏:個々人が健康意識を高め行動変容を起こす、そのためにIoTを活用するようにヘルスケアIoTコンソーシアムを組織した。IoTデータの信頼度を高める、データの所有権について整理するなどの課題を解決してIoTを利用すれば、医療費の削減にも貢献する。IoTが取得した個人に紐づけされたデータの保護と活用のバランスが重要である。
西田氏:子供の発達の分散は小さいが、高齢者の老化は人さまざまである。これが対策をむずかしくしている。生活機能軸上で高齢者に関係する製品事故を整理して行動ライブラリを作成するといった研究を進めている。IoTやAIには高い可能性がある。
川添氏:訪問看護などアナログのサービスにICTを取り込むことには大きな可能性がある。ICT見守りなどが試みられてきたが、高齢者に接する「人と人の関係」についても相性をデータ解析して活用するといった利用方法が考えられる。
矢冨氏:高齢者の就労は健康維持に役立て、そのためにICTは利用されるが、どのような仕事が向いているかをAIが診断するというような側面でもICTの利用可能性は高い。
山田氏:IoTやAIには大きな可能性があり、それらを利用する過程で取得した個人情報は保護するだけでなく、活用するように仕組みを作っていくべきだ。今までは利用に躊躇してきたが、関係する政策を推進し、ビジネスを展開すべき転機に差し掛かっている。
クリストッフェルス氏(オランダ大使館):オランダも日本もIoTやAIを活用した製品やサービスを開発しており、医療分野での協力関係を深めていきたい。

シンポジウム 熊本地震に学ぶ情報通信技術の活用

月日:227日(月曜日)
時刻:1330分から1600
会場:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
102-0073 東京都千代田区九段北4-2−25

登壇者と話題:
龍治玲奈(日本マイクロソフト株式会社政策渉外法務本部渉外社会貢献課長)
「避難所間情報連携システムの構築と支援」
高橋征二(熊本市総務局行政管理部情報政策課技術参事)
「被災地の地方公共団体の立場から」
鹿野順一(特定非営利活動法人いわて連携復興センター代表理事)
「東北からのノウハウ移転と民間の動き」
古橋大地(特定非営利活動法人クライシスマッパーズ・ジャパン理事長)
「熊本地震におけるドローンの活用と課題」
石谷寧希(総務省情報流通行政局地域通信振興課課長補佐)
「熊本地震における政府の情報通信分野の対応」
司会:山田 肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長) 

龍治・高橋・鹿野三氏の資料はこちら古橋氏の資料はこちら石谷氏の資料はこちらにあります。 

登壇者各氏は概略次のように講演した。

龍治氏:

  • マイクロソフトの災害対応は、施設(例:データセンター)をもつ「自社の責任」・「お客様への責任」・そして広く「人道支援」と多く3つのストリームに分かれて多くの部門が連携する。
  • 全社対応から現地法人対応までのレスポンスレベルを決め、グローバルで連携して災害に対応している。
  • 2016年熊本地震の際には、Skype無償化や社員募金などとともに、今日話題にする避難所連携のためのオフィス365のライセンス無償化を実施し、行政・NPO・大学との連携を通じて支援を展開した。
  • 市長の決断があり、クラウドによって短時間でソリューションを提供できたが、それはデータを第三者に提供しないというマイクロソフトのクラウドに対する信頼をいただけたとともに、平常時からのつながり・人と人との間の信頼関係があったためである。

高橋氏:

  • 熊本市の情報システムは基幹系と情報系に分かれている。発災後、罹災証明書の発行が最優先事項の一つとなり、パソコン・ネットワーク・電源等の環境がない状態にもかかわらず、先に発行日・発行場所が決まった。報道や国からの情報もあり早急に開始した経緯があり、これらの対応に非常に苦慮したが、予備や支援された機器、物資の少ない中での方々からの材料購入、設計・設定・工事・設置の人材等が何とかそろって対応できた。
  • 避難所運営支援ネットワーク(Rネット)については、マイクロソフト他支援いただいた皆様との連携を通じて立ち上げることができた。一部クラウドになれていない職員からは不安の声もあがったが、本庁と避難所、避難所間の情報共有が促進され、職員にとって大きな安心感となった。
  • 業務継続計画は作ってあった。しかし、実際には平時には想定していなかった業務が大量に次々と発生し、多種多様の対応が求められた。
  • 今後を考えると、既存の行政情報のネットワークに加え、行政組織内ネットワークと公開ネットワークサービスの間をつなぐ地域内共有ネットワークを整備しておく必要がある。

鹿野氏:

  • 震災前から地域活性化を目指して釜石市でNPO活動をしてきた。東日本大震災が発生し、津波で電柱が根こそぎもっていかれ、電気が通じない、夜間に活動できないという状況になった。
  • 最初の課題は緊急物資搬送で、地元だから行き来ができる場所への輸送をNPO側で担当した。
  • その後、緊急雇用創出事業として釜石仮設住宅支援連絡員事業などを受託することになり、NPOの人員が急激に増加し、ある意味で総合商社と化した。組織運営、プロジェクト管理は一人では無理になり、一方で、利用していた各種WEBサービスはスタッフが個人のアカウントを使っていたためセキュリティを含めた各種のデータの管理が困難になるなどの問題が発生した。クラウド(Office 365)の導入は、時間的なロスや意思決定の滞り、そしてセキュリティ管理やコンプライアンスの遵守等に対応する、課題解決のための対応策であった。
  • 今は、東日本大震災の経験を熊本で役立ててもらおうと支援に取り組んでいる。

古橋氏:

  • 本業は「地図屋」である。オープンストリートマップという制限なく利用できる地図の作成に世界中の仲間と協力して取り組んでいる。Facebookもオープンストリートマップを導入した。
  • 災害時には、災害前と被災後の状況が一望するために地図情報が活用される。オープンストリートマップのグループはハイチ地震などの際に、現地に出向かずに世界中が協力して、地図情報を急ぎ作成し提供してきた。この経験が熊本でも生かされた。
  • ドローンは被災後の状況を把握するのに有益であり、地図作成に利用できる。災害時にドローンを使って緊急対応するチームなので、人形劇のサンダーバードにちなんで「DRONE BIRD」と称している。
  • 熊本地震の際、国土地理院はドローンで当日に撮影し、報道機関による空撮もあった。不明者の捜索にも活用された。しかし、これらのデータは公開されたのか?適切な位置情報がメタデータとして共有されているか?これらの情報が公開されなければ地図屋は活動できない。「DRONE BIRD」は出動できない。
  • ドローンを活用するためには事前に自治体と防災協定を結び、訓練などにも参加しておく必要がある。大和市や横瀬町とはすでに協定を結んでいる。

石谷氏:

  • 東日本大震災の教訓の一つが特性に応じた多様なメディアの活用であった。Lアラートは自治体からの情報を多様なメディアを通じて一斉に人々に伝えるシステムとして整備されている。熊本地震でも活用された。
  • G空間防災システムも推進している。古橋氏の講演で指摘されたように地図情報は重要で、地域情報ポータルサイトを通じて熊本地域の住民への情報提供が実施された。
  • 平時から災害対策用移動通信機器や移動電源車を準備し、緊急時に自治体に貸し出す。避難所などに無線LANを準備しておくなどの事業にも取り組んでいる。
  • 災害対応のためには、平時からの備え、平時から災害時からの連続的な利用、災害時に対応した制度体系、官民の更なる連携の四点が重要である。

各氏の講演の後、東日本大震災・熊本地震から何を教訓とするか、未来に向けてどのような施策が必要かの二つのテーマで議論が行われた。

東日本大震災・熊本地震の教訓:
質問(Q):熊本でドローンが上手に使えなかったことについて、自治体としてどういう課題があるか?
回答、高橋(AT):行政として実施を決めるにも、すべての法律に詳しいわけではない。何が法的に課題かわからないので、それらの情報と共に提案していただけると助かる。
回答、古橋(AF)航空法の規制があり許可を得る必要がある。高橋氏が指摘した課題を解決するためにも事前に防災協定を結ぶ必要がある。防災協定があればDRONE BIRDは自治体の業務を代行する委託事業者として位置付けられる。防災協定には、発災後に行政サイドからの依頼で動き出すというスタイルと、民間が自発的に動くスタイルがあるが、後者のほうがよい。
Q:現場の状況を把握するというが、どういう状況を知りたかったのか?
AT:自治体職員の安否、住民の安否が最優先で必要だった。現場は混乱し、バラバラに動くこともあり、正確な情報の把握に苦労した。状況は刻々と、また多様に変わるものであり、データをリアルタイムに近い状態で共有できる仕組みが必要であった。
回答、鹿野(AK):被災地の行政職員の所在確認する仕組みが必要である。一方、住民についてはどの避難所にいるかは自主申告が前提で、登録しないと行方不明者扱いになる。今、釜石市ではドローンを飛ばし始めている。湾口部における津波の状況把握や発災直後の交通が遮断された状況下での被災状況確認などに、ドローンは有効と考えられる。
Q:熊本市災害本部では自前でLANを設定したというが、何人で、どれぐらいの規模の設定をしたのか?
AT:条件によってばらばらであるが、指揮室を例にすると4-5名で対応して、20台程度を1時間程度でセットアップできた。材料の条件、事前設定等考えると本当にばらばらであり、一箇所で半日程度かかるものもあった。
Q:何故(他社のシステムでなく)マイクロソフトを使ったのか?
AT:オンプレで既にシェアポイントを使っている。マイクロソフトとは、平常時からの会話がありある程度の情報共有はできている最速で導入できる、また、セキュリティに対しての信頼もあった。しかし、最も大きな要因は、タブレット・クラウド・通信に加え、「人」「ノウハウ」までもパッケージとされた支援が届いた事だった。
Q:ボランディアの管理にもRネットを使ったのか?
AT:ボランティア(外部との共有)には、Rネットは使っていない。
AK:情報を行政が一箇所にまとめてしまうと、かえって使いづらくなる場合がある。情報はパラレルに管理する必要もある。 

未来に向けて:
Q:静岡県内では静岡警察から連絡がくる。Lアラートの予行演習と思われるが、他県もこのような利用をしているのか?
回答、石谷(AI):自治体がお知らせを平時に流しているケースはある。
AK:スマートフォンの普及率が上がり、Yahoo防災などを使って緊急災害情報が流れるようになった。
Q:ドローンの活用について防災協定を事前に結ぼうという動きは広がっているのか?
AF:ドローンを使いたいという自治体は増えている。課題はドローンを扱える人が少ないこと。それをDRONE BIRDが支援するために防災協定が大きな効果をもたらす。
コメント:業界の中での連携も必要ではないか。過去の経験から業界内でどのように対応するか事前に決めておくのがよい。NECは熊本地震の際にパソコンを支給したそうだが、これも事前に決めていることで、全国どこでも対応できる仕組みができている。
Q:熊本地震の際に医師と連絡が付かなかったので救急隊が独自判断で輸液をしたという記事が出た。これについて、どう考えるか?
AT:救急隊の行動を批判するのではなく、本当に必要であれば、人命救助に役立ったと応援するのがよい。そのような風潮が社会に広がることで、緊急時の対応が変わっていくだろう。
AK:マスメディアだけでは被災地の意見や実情は伝わらない。地域が独自でメディアを持つことが重要である。
AF:地図屋として貢献したいと思っても、東日本大震災当時は測量法によって国土地理院の地図をトレースするのは違法だった。結局、測量行為ではなく絵地図としてトレースするならよいと国土地理院が判断したが、現場判断が重要なケースがあるだろう。
AI:政府・自治体職員は法律に基づいて仕事をする必要がある。法律違反はできない。記事では、「厚生労働省は医師の指示がなくても違法性は阻却され得る」との通知を出している。緊急時の課題については、正面から法律を改正するという方法もあるが、このように行政が通知など解釈で対応するといった方法も取り得ると考えられる。

行政 医療分野のICT化

日時:1月17日(火曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館2階 5202教室
東京都文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:森田博通(厚生労働省医政局研究開発振興課医療情報企画調整官)

森田氏の講演資料はこちらにあります 

森田氏は冒頭、講演資料に基づき次のように講演した。

  •   本年112日に、厚生労働省内に大臣を本部長とするデータヘルス改革推進本部が設置された。医療分野のICT化の対象は多岐に渡るが、患者・国民を中心に考え、2020年度に医療介護ICT本格稼働を目指すもの。2020年度を見据えて実装を進めていくよう省を上げて検討を進めていく。
  • 医療ICT化については、既に外部有識者会議の提言が出ている。日本再興戦略の中でも医療のICT化は大きな柱のひとつ。①データ活用の前提として医療現場のデジタル化・標準化、②ネットワーク化、③ビッグデータの活用が課題となっている。
  • 電子カルテの普及状況については、400床以上の病院では約8割。一方、診療所ベースでは3割程度。診療所は毎年廃止・新設が多く、新設のうち5~6割は電子カルテを導入しているため、診療所でも着実に導入が進んでいる。
  • 病院と診療所などをつなげる地域医療情報連携ネットワークが構築されており、最近特に増えている。しかし、これらが全国統一のインフラといえるかというとそうとは言い難い。全国規模への普及が課題となっている。
  • NDPDPC等、分析に利用可能なデータの収集は始まっている。データは民間活用も視野に入れており、民間への公表も始まっている。今後は、医療と介護のデータを繋げたり、データの民間活用を拡大したりするための検討も進めている。
  • 地域医療情報連携では、病院から診療所方向へのカルテ参照を可能とするシステム環境は広がりつつあるが、逆方向はまだ限られた地域での取組。双方向にするためには診療所もデジタル化を進める必要がある。
  • レセプトの電子化については、現在は7割強がオンライン請求となっており、電子媒体も含めればほとんどが対応済みと言える。オンライン資格確認も検討を進めており、そのためには全ての病院や診療所がネットワークにつながる必要がある。
  • 「医療介護関係者間の連携(ネットワーク)強化」「地域包括ケアシステムの整備」というのが医療介護提供体制構築の方向性となっている。地域包括ケアは、元々は介護分野から始まったが、今は医療も含めて、基本的な考え方となっている。
  • 平成29年度には医療計画の改定があり、介護保険の計画改定時期とも重なる。医療と介護の計画が同時に改定され、また、報酬も平成30年度は医療と介護の同時改定。医療介護の提供体制を改めて見直す重要な時期であり、このタイミングでネットワークの普及も進めたいと考えている。
  • 地域医療情報連携ネットワークの効果としては、診療情報が関係者間で共有されることにより、多くの情報を活用して適切な医療が実施できるようになる、地域の医療介護の人的ネットワークが広がる、検査・投薬の重複を減らすといった効果がある。ネットワークでの情報連携には患者の同意が前提。
  • ネットワークを継続的に運用していくには、初期投資だけでなく、更新費用、維持費用が問題。国や自治体も初期費用や運営面での支援を行っている。紹介状を電子的に情報提供する場合には、検査結果や画像情報などの情報連携について、診療報酬でも点数を加算するといった評価が今年度改定で導入された。
  • 医療に関するデータはそれぞれの医療機関が分散管理している。これを確実かつ効率的に繋ぐことが、患者に対する診療でも、ビッグデータの視点でも重要。そのために検討しているのが、医療等ID。過去の議論の経緯を踏まえ、マイナンバーとは別の医療に特化したIDを導入することとしている。医療等IDについては、2018年度から段階的運用、2020年からの本格運用を目指し、検討を進めている。
  • マイナンバーカードを使ったオンライン資格確認ではマイナンバーは使わない。マイナンバーカードのICチップの電子証明書の活用を検討している。しかし、マイナンバーが記載されたマイナンバーカードを医療機関に見せることに抵抗感があるのではという指摘がある。医療機関で使用するのはあくまでカードのICチップだけで、マイナンバーそのものは使わないということを理解してもらうことが重要になる。そのほか、AIの医療分野での活用についても検討を始めている。

講演の後、以下のような質疑があった。

電子カルテについて
質問(Q):未知の感染症が発生したときに診療所まで電子カルテが入っていると、保健所が自動的に感知して警告を出すといったことが可能になる。アメリカでは診療所の電子カルテを保健所に繋ぐと費用が補助される。日本でも補助を検討しないのか?
回答(A):電子カルテの運用が始まった頃に補助していた時期もあったが、現在、厚労省として補助はしていない。ただし、情報連携ネットワーク初期費用については財政支援を行っている地方自治体はある。
Q:医療情報カルテの本人開示の予定はないのか?
A:患者自身もカルテそのものを見せられても、その中で何を見たら良いのか分からないと思う。むしろ、必要な情報を整理して希望する患者・国民が確認できるような仕組みを有識者会議の提言も踏まえ検討することが必要と考えている。
Q:データの置場所としてクラウドの議論はあるか? 繋ぐのは簡単だが、セキュリティの問題もある。将来的な連携も考慮して、中核拠点をクラウドにするように政策誘導する予定はあるか?
A:既存の電子カルテや情報連携システムでクラウド型のものもある。セキュリティの確保を前提に、コストを下げられるのであれば選択肢になると思うが、導入に関しては、各病院の判断になる。有識者会議のプラットフォームの議論などはこれからの検討課題。
Q:診療所が10万あり、これからは、地域医療も診療所がメインになると思うが、電子カルテの普及率を上げていくためにどのようなことを検討しているのか。
A:この資料は平成26年度時点での意向なので、次回の29年度の調査では上振れしていると予想される。特に診療所は電子カルテの普及率はまだまだだが、新設の診療所の導入率は高い。なお、情報連携に関しては、レセコンを活用する方法もある。必ずしも電子カルテがマストではない。 

地域医療情報連携について
Q:トップダウンで進めるのか、ボトムアップで進めるのか?ボトムアップの場合、地域空白がたくさんできると思う。厚労省が義務化させるのか?その辺りの関係性について教えて欲しい。
A:ネットワーク構築については、地域レベルのネットワークの普及拡大と、全国規模のネットワーク構築の検討の両面があると考える。オンライン資格確認の本格実施を実現するためには少なくとも審査支払機関との間では全医療機関のネットワーク化が必要。どのように実現していくか検討している。
Q:利用者の利益や国民が喜ぶ話はあるのか?
A:具体的な現場の声を資料にいくつか事例としてまとめているが、例えば佐賀県のひとつの例では、大病院で検査して、結果の説明は、かかりつけ医が担当したという事例もある。大病院では検査して結果説明を受けるのに1日がかりになることから検査を受けることを躊躇していた人が検査を受けてくれたといった例が報告されている。
Q:医療ネットワークは二次医療圏、介護ネットワークは市町村。両者の間の圏域の違いはクリアできているのか?
A:ネットワークがひとつである必要はない。医療と介護が必要な範囲で繋げられるかが重要。例えば、岡山県の例では、医療連携は全県規模のネットワークであるが、在宅医療介護連携は市町村規模で運営され、必要な範囲でそれぞれのシステムの情報が共有される仕組みを構築している。
Q:連携するときに問題になるのがセキュリティ。厚生労働省はガイドラインを出しているのか? ガイドライン遵守を確認するための体制はどうなっているのか?
A:厚生労働省では、情報セキュリティのガイドラインを出しており、経産省や総務省も関連するガイドラインを出している。医療機関がガイドラインに従って個人情報を適切に扱っていただくことが基本だが、システム提供側も適切な対応が必要。 

医療等IDについて
Q:マイナンバーカードを保険証にすると被保険者番号が本人にも見えないことになる。被保険者番号が見えないことについてデメリットはないのか?
A:被保険者番号は残るが、マイナンバーカードでオンライン資格確認を行う場合に、被保険者番号をどのように確認できるようにするかについては、担当部署で検討中と承知している。
Q:今、マイナンバーを隠すように色々な所で言っている。そのため、いざそれを活用しようとしても利用する人が出てこなくて、結局、ほとんどの人が別のカード持ち歩くようになるのではないか?
A:前職(内閣府)でマイナンバーの広報を担当していたが、キャッシュカードの口座番号と同じで、マイナンバーはむやみに見せていいものではないが、必要な手続のみで使用するもので、マイナンバーを他人に「絶対に見せるな」ということは政府としては言っていない。マイナンバーそのものの使用とマイナンバーカードのICチップの使用がまったく異なることの理解を広げていくことが必要と考える。
Q:「医療等ID」の「等」には何が含まれているのか?
A:医療等IDの利活用分野としては、医療・介護、健康分野などを想定してユースケースを整理している。
Q:研究利用について地方自治体の個人情報保護ルールがまとまっていない。そのあたりはどう考えているのか?
A:これは医療だけに限らない話であるが、地方自治体の個人情報保護のルールはそれぞれの地方自治体が条例で決めるものとなっていることはご指摘のとおり。公立病院でも改正個人情報保護法を踏まえた対応が必要と認識。

行政 マイナンバーカードを活用した地域経済好循環の拡大に向けた取組

日時:12月16日(金曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館1階 5101教室
東京都文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:三木浩平(総務省自治行政局地域情報政策室企画官)

三木氏の講演資料はこちらにあります。

三木氏は講演資料を用いて概略次のように講演した。

  • マイキープラットフォームはマイナンバーカードを利用するサービスであるが、マイナンバー自体は利用せず、利用者自身が設定したマイキーIDを利用する。
  • 既に、マイナンバーカードを利用した各種証明書のコンビニ交付は実施されており、交付できる証明書の種類は各自治体が決定している。
  • 20177月よりマイナポータルを本格的に開始する予定で、これは国民向けのマイページとなる。国と自治体がオンラインで連携することで、自治体から市民に対するプッシュ型の通知(乳幼児予防接種のお知らせなど)や「子育てワンストップサービス」などが展開される。
  • マイナンバーカードのICチップの空き容量部分を「マイキー」と呼び、これを利用したサービスがマイキープラットフォームとなる。
  • マイキープラットフォームは3つの要素に利用できる。①マイナンバーカードを公的サービス(自治体の図書館や施設利用など)の利用者カードの代用として使う、②自治体ポイントプログラム(自治体で実施されている子育て支援ポイント、健康ポイント、介護支援ポイントなど)の業務システムとして共同利用する、③全国企業のポイントを自治体ポイントへ交換する。
  • マイナンバーカードのICチップには公的個人認証(JPKI)のしくみが搭載されており、署名と利用者用電子証明書の2種類が入っている。利用者用電子証明書のシリアル番号に結びつけられて利用者が任意に登録したIDを「マイキーID」と呼び、このIDで「マイキープラットフォーム」にオンラインでアクセスすることになる。
  • マイキープラットフォームには「ID管理テーブル」が作成されており、「マイキーID」を親番として、その利用者が利用している図書館の利用カード番号やその他の自治体施設の利用カード番号、商店街の利用カードの番号などを登録することができる。
  • 図書館利用カードに活用するケースを例にすると、まず窓口端末でマイナンバーカードをカードリーダで読み込むと、利用者用電子証明書のシリアル番号が読み取られ、マイキープラットフォームにオンラインで参照をかける。マイキープラットフォームでは、シリアル番号でアクセスされたマイキーIDについて、それに紐づけられた図書館の利用カード番号が検索される。図書館の窓口端末に図書館利用カード番号が通知される。これにより、マイナンバーカードを提示するだけで、登録された様々な図書館が利用できるようになる。
  • 図書館には、自動貸し出し機など、さまざまなシステムがあるため、それらでもマイキーを使うことができないか、主要な図書館システムの開発業者数社と協議中である。
  • ボランティアポイントや健康ポイントなど、自治体の既存ポイントサービスをポイント管理クラウドで管理できるように準備している。1ポイント=1円は共通ルールにしたいと考えている。貯めたポイントの使い方は自治体がルールを決める。公的サービスに利用できるようにしたり、地元の商店街で商店街ポイントと交換して利用したりといった想定をしている。
  • 商店街にポイントカードが無い場合は、二次元バーコードのあるポイント券を印刷するなど色々な方法が取れるように考えている。
  • クレジットカードのポイントや航空会社のマイルなど全国レベルで実施されているポイントサービスで、そのポイントを地域ポイントに交換できるようにする。例えば、航空会社のマイレージであれば、航空会社のマイページにアクセスして、ポイント交換をメニューで選択するが、このメニューのひとつに地域ポイントへの交換を出してもらう。
  • ポイントの移行時に自治体の経理事務が必要になるが、マイキープラットフォームには決済代行の仕組みも検討しており、カード会社からある自治体に1万ポイント移行された場合は、決済代行サービスがカード会社に請求し、ポイントに相当する金額を自治体が指定する口座に振り込むことを想定している。
  • 地域のイベント期間中に交換する(県外から多くの観光客が訪れる祭りなど)とプレミアポイントがつくといった、観光プレミアムポイントサービスも検討している。被災地支援プロジェクトなど寄付に近い形のサービスも検討している。
  • 全国ポイントを地域ポイントに交換したいというニーズがあるかという点では、交換レートを良くすることで、地域ポイントへの交換へのインセンティブにしたいと考えており、全国ポイントの事業者にお願いをしているところである。地域側も、魅力あるものを提供するよう検討してもらいたいと思っており、例えば、大規模なイベントでの最前列の席のチケットは、地域ポイントじゃないと購入できないなどといった工夫をすることなどが考えられる。
  • 自治体側で準備が必要なのは、パソコンとカードリーダ(タイプBが読み取れるも)。ここに、マイキープラットフォームのソフトをダウンロードしてもらう形となる。自治体のアカウントをマイキープラットフォームに設定することで、利用可能となる。
  • 現在、入札公告を準備しており、WTO案件となるため、2.5か月の公告期間となる。20172月から実証事業の環境設定を4か月ほどで行い、システムテストを経て、20178月より実証実験を展開する予定となっている。環境設定が4か月と短いが、クラウド等の標準パッケージ機能で実施する予定なので、十分な期間と考える。
  • 全国ポイントの事業者で実証実験に参加するのは、8社(クレジット会社5社、航空会社2社、携帯電話会社1社) 

講演終了後、以下のような質疑があった

マイナンバーカードを用いる心理的な壁
質問(Q):マイナンバーは人には見せてはいけないと言われてきた。マイナンバーが記載されているマイナンバーカードを市中で利用することへの心理的壁をどのように突破するのか?
回答(A):マイナンバー制度について、あまり理解されておらず、従ってマイナンバーとマイナンバーカードの違いも十分認知されていない。マイナンバーそのものを利用することは制限されているが、この事業では、マイナンバーカードでアクセスできるマイキーIDを利用するということ。現在、各自治体や図書館の担当者に事前に説明に回っている。実証事業が開始される年度に入れば、一般向けに広報する予定である。関心を引くためため、キャンペーンが必要だと思っている。図書館窓口など公的サービスで利用することは心理的バリアが低いため、そこから開始したい。
Q:マイナンバーカードそのものを紛失しても個人情報が流失しまうわけではないことは理解しているが、紛失してから再発行までの時間が問題である。警察への届け出から再発行までの手続きを簡素化すべきではないか?
A:所管が違うためそれについては、コメントはできない。マイキープラットフォームでは利用者用電子証明書のシリアル番号を直接利用せずに、マイキーIDを設定する理由は、証明書は5年ごとに更新するため、そのたびに使えなくなってしまわないように工夫した部分である。つまり、マイキーIDはシリアル番号が新しくなっても引き継げる。また、マイキーID自体は自分で付番する任意の番号であり、変更もできる。
Q:マイキープラットフォームでは、個々のポイント利用の記録は保有できないとなっているが、ポイントの有効期限なども確認できないのか? 情報をビジネスに利用したいのではないか?
A:例えばカード会社から1000ポイント移したなどのポイント移行履歴情報は確認できる。地域ポイントでどの商品を購入したとか、図書館の貸出履歴といった消費や利用の情報は保有しない。
コメント(C):戦前の思想統制から、図書館の貸出履歴も思想に関わるセンシティブな情報と見る人たちがいる。貸出履歴によるリコメンドも問題になった。利用者側が持つカード側に貸出履歴を持たせるのはよいが、図書館のシステム側では貸し借りのトランザクションだけが管理されている。
A:マイナンバーカードに関係する事業なので、過敏に反応されることも想定して、慎重な取り扱いにしている。
QICチップにマイナンバーが入っているのだから、マイキーを利用する際に、マイナンバーのデータを取ろうとすれば盗れるのではないか?
A:アプリを改造して、シリアル番号だけでなく、ICチップからマイナンバーも読み取れるようにすることは不可能ではない。ただし、マイナンバーを法律に指定されている用途以外に取得した場合は罰則が科せられる。しかも、マイナンバーそのものは、何の意味もない数字であり、盗ってもインターネットや個人が所有する情報端末では参照できない。マイナンバーにつながる個人情報(特定個人情報)は、専用のネットワークに接続された専用端末を、利用権限を与えられた職員が認証の元で使用しないと閲覧できない。図書館の端末からではマイナンバーのシステムにつながらないし、図書館職員のIDではアクセスできない。

マイキープラットフォームに対するニーズ
Q:マイキープラットフォームのニーズはどこにあるのか? 全国規模で、税金をかけてやる意味があるのか?
A:マイキープラットフォームは、マイナンバーカードや公的個人認証など既存のしくみをそのまま利用し、その上に構築する。また、個別の自治体用に個別のしくみを構築するのではなく、全国共同利用のしくみとすることで、廉価な利用料金でサービスを利用することができる。
Q:図書館カードを複数所持しているイメージになっているが、多くの人は、一番近い図書館のカードを1枚持っているだけである。図書館カードと体育館カードなら話は分かる。図書館の次のターゲットは何か?
A:博物館や美術館が想定されている。これら施設では、入場料を徴収しているため、ポイント利用も進めることができる。
C:住基カードは国民の利便性向上では評価は低かったが、行政のコスト削減にはメリットがあった。ニーズの話を聞いても、鶏と卵の話しになるのではないだろうか。
Q:民間が既にやっているサービスを国がやるのは民業圧迫ではないか?
A:民間のポイント移行サービスは、全国ポイントから別の全国ポイントに移行するものであり、全国ポイントを地域の商店街などで使えるようなしくみがない。また、この事業では、全国ポイントを自治体ポイントにはできるが、逆はない。民間との棲み分けはできると思う。
Q:マイキープラットフォームは自治体職員でもまだまだ理解できておらず、勉強会などを重ねている状況にある。特に経済課の職員にとっては、地域の商店街にどう説明するかということに頭を悩ませている。商店街にとってもメリットといえば、換金率になるかと思うが、そのあたりはどうか?
A:ポイントの交換率を良いと感じるか、悪いと感じるかは、個人の意識の問題になってしまう。カード会社のポイントをプレゼントに変えるのではなく、地域ポイントに変えたいと思わせることが重要である。また、ポイント制度を運用する場合、ポイント分を負債(引当金)として計上しなくてはいけない。クレジットカード会社のポイントは、一般には4割は使われないままとなっているそうで、このポイントを外に吐き出したいとクレジットカード会社は考えるため、地域ポイントへの交換率を良くしてくれるように協力してくれるのではないか。商店街にとっても、この事業への参加は、カードリーダの購入やインターネット接続料金ぐらいの小さい投資額で参加できる。観光プレミアムポイントやイベントポイントなどで地域経済に効果があることを見せていくことができればと思う。
Q:マイキーIDは民間利用できるのか? 図書館もツタヤが指定管理者をしており区別しにくい。
A:利用できる。基本は、地域の商店街などが想定されるが、それぞれの自治体ポイントの利用ルールを決めるのは自治体である。