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ZOOMセミナー「まちづくりのDX」

開催日時:9月6日火曜日 午後7時から最大1時間30分
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:内山裕弥氏(国土交通省都市局都市政策課・課長補佐)
司会:山田 肇(ICPF理事長)

内山氏の講演資料はこちらにあります。
内山氏の講演の映像(一部)はこちらでご覧いただけます。

冒頭、内山氏は次のように講演した。

  • 都市政策を取り巻く潮流は、人口拡大期(拡大する都市へ対応するためのインフラ整備、開発コントロールによるスプロール化対策)から、人口減少・少子高齢化による縮退期(都市機能の拡散、中心市街地の空洞化等に対応するための都市構造へのアプローチ)へと変遷してきた。ポストコロナ時代には「人間中心の社会」を実現するための新たな政策展開が求められている。マクロとミクロ、ハードとソフトの両面からデジタル技術を活用して市民QoLを向上させる「サービス・アプローチ」の観点で、都市政策を推進する必要がある。
  • まちづくりのDX実現会議では、まちづくりDXを次のように定義した。単なる既存施策のデジタル化だけではなく、 「デジタル技術の活用により既存の仕組みを変革」 し、 「新たな価値創出又は課題解決」 を図ることで、 「生活の豊かさ」 を実現すること。この定義の下で、まちづくりDX原則、重点取組テーマ、まちづくりDXのビジョンを検討した。
  • まちづくり DX では 、 インターネットや IoT 、 AI 、デジタルツイン技術等を活用してまちづくりに関する 空間的 、 時間的 、 関係的制約を超えて 、従来の仕組みを変革していく観点 が重要である 。これを踏まえ、五点のまちづくりDX原則を設定した。①サービス・アプローチ、②データ駆動型、③地域主導、④官民連携、⑤Open by default。
  • 都市活動の質/都市生活の利便性向上を目標に、これまでもエリアマネジメントが推進されてきたが、これにデジタル技術の活用を加えることで、都市サービスの提供へとエリアマネジメントを変革する(エリマネDX)。また、これまでの都市空間再編や都市構造アプローチについても3D都市モデル等のデジタル・インフラを活用した手法を取り入れる(都市空間DX)。さらに、都市データを活用したオープンデータ化の推進・オープンイノベーションの創出と、Project PLATEAUの推進を加え、4つの重点取組テーマとした。
  • 都市は多様な人、 価値 、 モノ 、 情報 、 データが行き交うプラットフォームとしての役割を担っており 、 様々な分野を横断 ・ 越境 ・ 接続し 、 相互作用の中で新しい価値や文化を生み出すオープン ・ イノベーションの基盤である 。そのための施策展開のキーワードとなるのが、 コモンズ 、 コモンセンス 、コモンプラクティスの 「 3つのコモン 」 である 。
  • まちづくりDXにおける役割分担では、官と民がそれぞれ担う領域の中間にある官民協調領域が重要である。地方公共団体、まちづくり団体と市民が協働して、共益的な都市サービスを提供していくことになる。この活動には研究機関も参加し、一体となって、①地域課題の整理、②政策目標の設定、③施策の立案、④施策の実施のサイクルを回していく。5年10年単位ではなく、アジャイル(機動的)に軌道修正していくのがよい。
  • まちづくりDXとして三つのビジョンを掲げた。第一は、持続可能な都市経営である。将来を見据えた都市計画、都市開発、まちづくり活動により長期安定的な都市経営を実現していく。第二は、一人ひとりに寄り添うまちである。住民ニーズを的確にとらえ、多様な選択肢を提供するオンデマンド都市を実現する。第三は、機動的で柔軟な都市設計である。社会情勢の変化や技術革新に柔軟に対応し、サービスを深化させ続ける都市を実現していく。

講演後、次のような質疑があった。

オープンデータについて
質問(Q):地点を表示するために住所を使ったり、地番を使ったり、緯度経度を使ったりしている。オープンデータとして連携する際には、まずデータのクレンジング、標準化が必要になるのではないか。
回答(A):標準化が必要なのは大前提。これに加え、標準化されていない過去データであっても、まずは準オープンデータとして公開していくという考え方を示している。
Q:まちの中でIoTが収集する情報など、今から得られる情報について標準化は進んでいるのか。
A:都市の中の様々な状況を表現するデータの形式がまちまちだと利用の際に問題が起きる。そこで、都市OSという考え方が出てきている。都市OSは、地域や提供者の枠を超えたサービス連携を実現するための仕組みである。
Q:建築確認申請など建築関係のデータも活用できるのではないか。
A:建築物の情報はまちづくりには欠かせない。重要なデータであるので、うまく利用できるようにしていきたい。

まちづくりDXが目指すもの
Q:今日の話には、たとえば高齢者がどのように暮らすかというような話がなかった。都市基盤のうえで生活する市民の視点を加えるのがよいのではないか。
A:まちづくりDXは国のアクションプランなので個別具体的なソリューションについてあまり言及していないが、スマートシティ等が提供するサービスを実現するための基盤を議論している。ビジョンでは「人間中心のまちづくり」を掲げており、孤独の問題、防災の問題などは視野に入っている。
Q:オープンデータがあっても地方公共団体が知らない場合がある。まちおこしなどの住民活動への補助金制度の活用状況を整理して市役所にもっていったら、担当者は知らなかった。データ活用といっても簡単には進まないのではないか。
A:まちづくりDXでは地方自治体に加え、大学、市民、シビックテック団体、まちづくり団体など幅広い主体の協働を示している。様々な主体が知見をもちよることでDXが実現する。
Q:今後、どのように施策展開していくのか。
A:モデル都市を選定して経験を積み重ね、それを事例集として公表したり、ガイドラインを発行したりする。それらによって地方公共団体がまちづくりDXを採用しようとなったら、補助金を交付するといったステップを考えている。

ZOOMセミナー「自動車交通のDX」 KDDI株式会社大岸智彦氏

開催日時:7月14日木曜日午後7時から最大1時間30分
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:大岸智彦氏(KDDI株式会社技術統括本部技術戦略本部社会実装推進室モビリティサービスグループ コアスタッフ)
司会:山田 肇(ICPF理事長)

大岸氏の講演資料はこちらセミナーの動画(一部)はこちらで視聴できます

冒頭、大岸氏は次のように講演した。

  • KDDI総合研究所所属時には当初通信プロトコル関係の研究開発に従事していたが、2017年以降、コネクティッドカー、自動運転、MaaS分野に移り、今はコネクティッドカー要素技術・実証実験成果の実用化に取り組んでいる。
  • 自動車交通のDXについてCASEというキーワードがある。Connectedは車が常時ネットワークにつながること、Autonomousは車の運転が自動化されること、Shared & Servicesは車が複数者で共有されることで実現するサービス、Electricは電動化である。
  • Cについて:現状は0など限定された場所で限定されたサービス(決済や渋滞情報))を提供しているにすぎないが、今後は汎用的なサービスを提供できるようになり、拡張可能になる。安全運転診断、ドライバー見守りなど、すでに先駆的なサービスが提供され始めている。
  • Aについて:自動運転はレベル0~5までで定義されているが、商用車か自家用車かといった車種の相違、運行形態、道路環境によって自動運転の難易度・実現性は異なる。
  • 通信を伴う自動運転には、自動運転の状況を遠隔監視して必要に応じて介入する遠隔型自動運転と、自動運転車同士がお互いの意思(ゆずる/ゆずらない等)を交換して協調する協調型自動運転などがある。それぞれ、通信速度等への要求条件は異なる。
  • Cについて:カーシェア・個人間シェアが増えてきており、都心・若年層ほどその傾向が強い。さまざまな種類の移動サービスを需要に応じて利用可能な、単一のモビリティサービスに統合したMaaS(Mobility as a Service)への関心も高まっている。MaaSの普及促進には、プラットフォームやデータに関して、事業者間で共通化を図ることが重要である。全国各地のスマートシティプロジェクトでMaaSが実験されている。
  • Eについて:日本はEV化が遅れていると言われているが、自動車全体の台数が停滞しているのに対し、EV車は年々順調に増えている。EV購入意向がある人にとっては、車両価格が高いこと、走行距離、充電施設・充電時間が課題となっている。
  • KDDIでは、自動運転を支援する技術に関連して、遠隔型自動運転における遠隔監視システム等の研究開発・実証実験を進めている。また、地域でのデマンド型交通の実証実験を進めている。
  • 遠隔型自動運転では、2018年は私有地での実験、2019年は公道、2019年後半からは乗客あり実証実験へと進歩してきた。遠隔型自動運転では、車載カメラの映像を走行中に常時送信するため、広帯域、低遅延な通信環境が要求される。今後は自動運転状況を遠隔監視し、必要に応じて遠隔運転者が介入する、監視と遠隔運転を分離する方向に進歩していくと考えている。
  • 春日井市の高蔵寺ニュータウンは、住宅取得者の高齢化が進んでおり、今後、免許返納者が増えていくことが予測される地域である。ここで、春日井市と協力して実証実験を進めてきた。乗客と貨物を混載して最適ルートで地域内を走行する自動運転向け運行管理システムを開発して提供した。貨客混載型の自動運転×MaaS実証実験の紹介動画をご覧いただきたい。
  • また、移動通信・衛星通信を最適に切り替えながら、人が自動運転車からドローンへ荷物を受け渡す「半自動化配送」等について実証を予定しており、山間部でのヒト・モノ輸送に役立つと考えている。
  • 2030年を目途にモビリティプラットフォームを構築していきたい。自動運転車だけでなく、ドローンから空飛ぶクルマ、水中ロボットまでを統合したプラットフォームを提供する。このプラットフォームのうえで、物流、インフラ点検、防災、エンタメ、暮らしなど様々なサービスが提供されるようになる。
  • 今後は通信帯域の拡大により、各車両が常時大容量データを送受信するサービスが一般的になるだろう。それによって、車がセンサとなり、他の車に対してクラウド経由で、センシング情報を提供するサービスなども実現していくだろう。自動車交通のDXの要はコネクティッドカーである。
  • 一方、自動運転は商用車・限定エリアなどで小規模にスタートするだろう。事故時において、自動運転システムの責任分界点に関する明確な基準が定められるなど、自動運転システムの責任に関する法整備が定められれば、自動運転の普及が進むと考えている。

講演終了後、次のような質疑があった。

コネクティッドカーの技術について
質問(Q):コネクティッドカーには、リアルタイム通信ができなかったために事故につながるという心配がある。スタンドアローンで緊急時に自動停止するような自動運転が主流ではないか。
回答(A):通信ができなくても自動運転できるというベースのうえで、コネクティッドカーとして協調運転する形になるだろう。例えば交差点での右直のシーンにおいて、対向車が今右折を開始しようとしていることが事前に分かれば、スムーズに速度調整できるようになる。
Q:協調運転などの場合に4G・LTEでも大丈夫なのか。
A:速度が遅ければよいが、走行速度が速い程5Gが必要になる。また、都心部のように取得すべき情報が多い地域でも5Gがよいだろう。
Q:路側にあるインフラ(信号等)との連携も研究されているが、もしそれが実現するとインフラも輸出しなければならなくなるのではないか。
A:日本の道路では、見通しの悪いところでインフラ連携がサポートするような利用方法がある。国ごとに事情は異なるので、インフラ連携は付加的なサービスになるだろう。
C(コメント):インフラ連携の国際標準化も進んでいる。課題の一つがセキュリティ。インフラからの情報が信頼できるかどうかを判断する必要があり、それを保証する標準が作成されている。

自動車交通の未来について
Q:実証実験ではゴルフカートを使っているが、コストはどの程度のものなのか。
A:LiDAR等の高価なセンサ等が搭載されるので、今は高級車くらいの値段になっている。コモディティ化すれば価格は下がってくると思われる。
Q:路面電車復活の動きがあるが、それよりも自動運転車による公共交通のほうが、トータルで、低費用ですむ可能性はないのか。
A:その通り。路面電車の場合、道路に施設を整備しなければならないが、施設整備が不要な自動運転は、それよりもトータル費用は下がる可能性はある。
Q:EVについて、懐中電灯の電池のように交換可能にして、ガソリンスタンドならぬ電池スタンドで交換できるというシステムも考えられていると聞いているか。
A:利用者が移動距離によりモビリティを変える(近場ならEVを使う)という方向になると思っていたが、確かにそのような仕組みができれば、EVは近場移動といった制約はなくなるだろう。
Q:車がセンサとなり、他の車に対してクラウド経由で、センシング情報を提供するサービスが紹介された。携帯電話の位置情報をもとに道路の開通・不通を検知しカーナビに反映させるサービスをAUはすでに提供している。その先にどんなサービスを考えているのか。
A:今はそのような位置情報をもとにしたサービスだけだが、ほかのセンサ情報を活用する方向に発展していくだろう。例えばバッテリーの充電量を知って余剰電力を回すスマートグリッドとの連携なども考えられる。
Q:法整備は重要だが、人々の心理にも対応する必要があるのではないか。子供だけ、視覚障害者だけが乗っている自動運転車が走っていても、周りの人々は安心して見守るようにしていく必要がある。
A:運転席がある車が自動運転しているから人は違和感を覚える。自動運転車の形状(例えば運転席が無い四角い車両)というものが周囲に認知されれば違和感を持つ人が減る。また歩行者とのコミュニケーションを行うUIも研究されており、左折などする際には車外にそれを表示するようにすれば、皆は安心するだろう。

まちづくりや他のサービスとの連携について
Q:モビリティプラットフォームのうえで各種のサービスが提供されるという説明だったが、各種サービスのDXとつながることが大切ではないか。遠隔医療で調剤された医薬を患者宅まで自動的に運搬するというような形を展望したいのだが。
A:モビリティはそれ自体が目的ではない。モビリティによって提供されるものを人々は必要としている。観光かもしれないし、医薬の運搬かもしれない。だから、サービス側と連携するのは必然的な方向である。医療サービスとの連携では質問にあったようなサービスの可能性もあるが、KDDIにおいて昨年度つくば市で取り組んだ病院向けのオンデマンド配車サービスの実証実験の経験から、院内での移動が困難な患者に自動的な移動手段を提供するであるとか、次回の診察日が決まったら当日に自動運転の送迎車が配車されるといったサービスなどが大事と考えている。
Q:たとえば自動運転公共交通の普及には地方行政の役割が大切ではないか。自治体に期待するものはあるか。
A:自治体の理解とサポートは重要である。市民の理解を醸成していくためには住民向けの説明会などを積み重ねていかなければならない。春日井市では毎月のように自動運転サービスの説明会を行い、住民の理解を得ている。公共交通政策の立案、民間事業者間での利害関係の調整などでも期待が大きい。
Q:全国各地のスマートシティの中にMaaSが組み込まれているが、それでも自治体の役割が大きいのではないか。
A:その通りだが、それに加えて、スマートシティの場合には地元の大学の役割も大きい。MaaSの場合、オンデマンドタクシーを新規事業者が提供するわけではなく、地元のタクシー業者の組合が提供している。このように、スマートシティの場合には、公共と民間、アカデミアの連携が必須である。

ZOOMセミナー「生涯教育・高等教育のDX」 情報通信総合研究所中村邦明氏ほか

開催日時:6月8日水曜日 午後7時から最大1時間30分
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:中村邦明氏・船津宏輝氏(情報通信総合研究所)
司会:山田 肇(ICPF理事長)

中村氏・船津氏の講演資料はこちらにあります。
講演の一部の動画はこちらでご覧いただけます。

冒頭、両氏は次のように講演した。

  • コロナ禍を受けて、政府は遠隔授業に関する規定を緩和して、状況に応じた柔軟な対応を大学に求めた。遠隔授業により修得する単位数の上限60単位を解除したのが一例である。2020年5月時点で90%の高等教育機関が遠隔授業を実施していた。7月時点では24%が全面遠隔で、60%はハイブリッド(併用型)に移行した。
  • 大学はオンラインコミュニケーションツールを活用して学びを継続させ、学習以外においても学生への支援に努めた。リモートでの実技・実験にVRなどの新たなデバイスを活用した取り組みも進められている。
  • 教育でのデジタルは進展している。ZOOMやTeamsでグループディスカッション等を行う際の、教育シーンに適した補助ツールが開発されている。学修管理システム(LMS)もmoodle、WebClass、manaba等が利用されている。
  • 2021年の調査では約80%の学生がオンラインで授業を受け、57%の学生はオンライン授業に満足している。学生のオンライン授業への受容性は比較的高い。
  • これまで日本人のライフステージは“単線型”だったが、「教育」「会社勤め」「学び直し」「組織に雇われないはたらき方」といった段階を繰り返した後に「引退」に至る“マルチステージ型”へと転換していく。その中で、リカレント教育の必要性が高まっている。リカレント教育とは、社会人になった後も教育機関に戻って学習し、知識・スキルのアップデートを行った後、再び社会で活躍する生涯学習システムである。
  • しかし、25~64歳のうち、大学等の高等教育機関で教育を受けている日本人の割合は5%に留まる。OECD平均16.6%を大きく下回っており、大学等に戻って学び直すという習慣が他国と比べて定着していない状況にある。
  • 社会人になった後も自らのキャリアについて考え、必要なスキルを身につけることができるように、いつでもどこでも学びにアクセスできる環境の構築が必要である。政府はリカレント教育の定着に動き出した。「未来投資戦略2018」「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針2019)」等において目標と方針が示され、それ以降、関連省庁において充実化に向けた取組みが進められている。また、骨太の方針2022においても継続して目標と方針が示されている。
  • 多くの社会人学習者において、自己啓発を行う目的は現職での活躍やキャリアアップを通じた収入増加である。収入が増加すれば次の学習支出への経済的余裕も生まれる。
  • 社会人のうち、自己啓発を行った人を推計した。情報通信業、金融業などでは比率が高いが、いずれの業界においても、年間支出額が1万円未満に多くの学習者が分布している状況にある。社会人学習者には、受講すべきコース選びや訓練機関が発見できないという課題もある。そこで、文科省は社会人の学びを支援するためポータルサイト「マナパス」を開設した。
  • 社会人層では、コロナ禍において「自由時間が増えた」「オンライン学習サービスを利用したいという気持ちが高まった」という声が聞かれ、今後のオンライン学習市場の拡大が期待される。これを受けて、Schooなどのオンライン学習プラットフォームは会員数を伸ばし、視聴される講座にも変化が見られる。また、ビジネススキル等を学べるグロービスやLinkedInラーニングでは会員数や視聴時間が大幅に増加した。
  • MOOCは、誰もが時間・場所に関係なく原則無料で受講できる大規模公開オンライン講座である。ユーザには場所・時間に関係なく無料で受講可能という利益があり、教育コンテンツ提供側も知名度向上や将来の人材・生徒の確保に繋がると期待している。
  • 2012年頃から米国の大学関係者によってMOOCプラットフォームが誕生した。最大のMOOCはCourseraで、約200の大学や企業が提携して、約4,500講座を提供している。国内では2013年に日本オープンオンライン教育推進協議会がJMOOCを設立し、国内における普及を推進している。複数の講座配信プラットフォーム(gacco、OLJ、OUJMOOC、Fisdom)をまとめるポータルサイトの役割を果たしており、JMOOCサイトで全ての講座を閲覧、検索、受講できる。
  • MOOCで提供されるサービスの利用は基本無料となっているが、プレミアムコンテンツや修了証明発行等の有料サービスも導入されている。MOOCの修了率は平均で約5~10%程度であり、ユーザ側のモチベーション維持が課題である。これに対して、ブロックチェーンを活用した改ざん不能な「デジタル修了証」を発行するようにしたところ、修了率は20%近くまで向上した。
  • 教員負担を軽減するために、ICTを活用して教員が容易に作成できるサービスの開発も進められている。NTTドコモによる、AIを活用してMOOC講座を制作するシステムがその一例である。
  • 多くの企業では、コロナ禍が企業研修にオンラインを取り入れるきっかけとなっている。社会福祉法人の上越あたご福祉会(新潟県上越市)では、心肺蘇生や誤嚥についてVRを使って実践的な演習を受講できるようにしている。教育分野でのAR/VRは今後の市場拡大が予測される。
  • ICTを活用した学習のオンライン化には時間や場所にかかわらず様々な学びが実現できる利点があり、人生100年時代に向けた社会基盤の構築に寄与する。

講演後、以下のような質疑があった。

オンライン教育の現状について
Q(質問):政府がリカレント教育を推進する上での課題は何か。
A(回答):受講する側からすると政府からの支援が広く認知されていないという問題があり、厚生労働省等が補助金を提供したり、文部科学省が情報ポータルを提供するなど努力を続けている。
C(コメント):デジタルでリカレント教育を推進するためには、政府と教育界、産業界も協力する枠組みを作り運営することが求められる。骨太の方針で掲げても、動かないのは枠組みがないからではないか。
Q:社会教育法に基づく施設、例えば公民館、博物館、美術館等がいっそうデジタルに対応する必要があるのではないか。図書館が電子図書館に進んでいるのが唯一の例外のように思われる。また、学習者のリテラシーにも問題がある。
A:課題は認識されている。教育コンテンツのデジタルでの提供とともに、高齢者のデジタルリテラシーを高める施策も進められている。
C:博物館等ではデジタルでのコンテンツ提供を始めている。スミソニアン博物館のレベルに比べれば低いが、動き出している。
Q:Courseraが圧倒的に受講者を集める理由は何か。
A:正確な背景はわからないが、講座が多く選択肢があることが、高い受講者数につながったと考える。しかし、受講しても修了率は低い(5から10%)ので、受講者数だけで評価するのは適切ではない。

人々の多様性を受け入れる教育について
Q:オンラインのリカレント教育は、時間が取れないなどの問題がある社会人に適切なサービスである。障害を持つ人も同様に受講に課題を抱えているので、リカレント教育が利用できるようにするのがよい。このために教材に字幕を付けるなどの対応が必要になる。多様な人に学習機会を提供するという点について、どう考えているか。
A:各MOOCは障害者向けに注目しており、対応しようとしている。NTTドコモによるAIを活用してMOOC講座を制作するシステムの場合、講義素材はテキストで作成されるので、字幕化は容易である。このように、障害者への対応にも活用できる技術も開発が進んでいる。
C:実際にオンラインを活用して社会人大学院で学んだ。遠隔地に住んでいるが、東京で開講している大学院にアクセスできたというのが最大のメリットであった。使い方によって多くの可能性があると考えている。
A:教える側からしても、多様な人にリーチできる。「だれでも学べる」教育の民主化がオンラインで進む可能性がある。一方で、教育者の自由化(いろいろなところで教える)も始まっているのではないか。
C:予備校では優秀な少数の教員がオンライン講義をするという形式に変わっている。教員の能力によって、教員間の格差が広がっていく可能性がある。
C:教える側にも多様性が実現できる。全盲の人がオンラインで講義できる。そのような意味で、オンライン教育には教員側にも学習者側にも多くの可能性がある。教育のユニバーサルデザインが求められる。

ZOOMセミナー「地方議会のDX:委員会へのオンライン参加」 高倉良生東京都議会議員ほか

開催日時:5月18日水曜日 午後7時から1時間
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:高倉良生氏(東京都議会議員)
討論者:湯淺墾道氏(明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授)
司会:山田 肇(ICPF理事長)

冒頭、高倉氏は次のように講演した。講演の動画(一部)はこちらで視聴できます。

  • コロナに感染して欠席する議員が出ると想定されたので、委員会についてオンライン参加できるように2年前に条例を改正した。オンライン参加は育児などでも必要になると考えられるが、まずはコロナ対応ということで条例にした。
  • 2022年3月9日に初めて、予算特別委員会にある議員がオンライン参加した。発言時だけでなく、最初から最後までオンライン参加するという条件で実施された(委員会室のレイアウトはこちらから閲覧できます)。
  • 初めての出来事なので、メディアの注目を浴び日本経済新聞等で報道された。委員会運営には特別な支障はなかったが、事前に議会事務局が議員の自宅に行き設定するなどの作業をした。
  • 予算特別委員会にオンライン参加した議員は、体調には問題はなかったが、その後の都市整備委員会は欠席した。メディアに注目された委員会だけオンライン参加するのは適切ではないという意見が出て、感染した場合には委員会開催前にオンライン参加申請を出し、体調が急変しない限り出席するという運用をすることになった。
  • 議員が本会議場にいる必要があるというのが総務省の法解釈で、本会議についてオンライン参加は行われていない。
  • 都議会には聴覚障害のある議員がいるが、その議員はパソコンからの合成音声を用いて本会議で質問した。また、その議員はパソコンの音声認識ソフトを利用して他者の発言を聞いて議会活動を行っている。
  • 都議会では委員会はインターネット中継され、議員は配布されたiPadで資料を見るようになっている。コロナの蔓延は議会の在り方について再考する機会を作り、民間企業から見ればまだまだだろうが、少しずつDXは進み始めた。ただし、大きく意見が異なる会派・議員がいる中で合意を形成して進むしかないというのが議会である。

続いて湯淺氏が講演した。湯淺氏の講演資料はこちらから閲覧できます。

  • 議会のDXについて意見提起を続けた来た中で、都道府県議会議長会デジタル化専門委員会の委員を務めた。すでに報告書が出ているので参考にしていただきたい。
  • 議会のデジタル化の背景には、新型コロナウイルス感染症拡大による気づきがある。「危機に強い議会」にする必要があった。
  • 議会Webサイトを通じた広報、意見聴取や、議員のSNSによる発信等様々なものが行われているが、一方通行のコミュニケーションが多い。委員会へのオンライン参加は、住民とのコミュニケーションを双方向化するきっかけになるかもしれない。
  • 本会議については「地方自治法の「出席」(同法第113条及び第116条第1項)は現に議場にいることと解される」という総務省の解釈がある。これは委員会には適用されないので、地方議会で委員会へのオンライン参加を認める条例の制定が進んできた。大阪府議会と、今日説明があった東京都議会では実際にオンライン参加が実施された。
  • 将来的には、「自然人が物理的にその場にいることが出席なのか」という点を改めて考え直す必要がある。障害を持つ議員の可能性も考えれば、アバターやロボットの利活用もあり得るのではないか。
  • 議会手続き全体を見ると、会議へのオンライン参加以外にもデジタル化可能な要素が多くある。議決(電子投票の導入)、選挙、検査、監査の請求、意見書の提出等、デジタル化していくのがよい。また、オンラインによる会議の規律維持のあり方については議会自ら考えるべきである。
  • 住民との関係では、現在は地方自治法の規定で文書で請願しなければならないが、請願・陳情も紙ではなくタイムスタンプを利用してデジタル処理できる。最後に残るのはオンラインでの傍聴の在り方で、勝手に録音したり、勝手に発言するのを防ぐ必要がある。
  • 地方議員には秘書がいないので、議員のサポートなど、一時的にはコストがかかる。しかし、まもなくボーンデジタルに慣れたデジタルネイティブの世代が選挙権を持つようになる。デジタル化を進めて議員と住民の距離を縮めていくのがよい。

講演後、次のような質疑があった。

Q(質問):議会は慣習を重視するなど動きが遅いイメージがあるが、委員会へのオンライン参加について抵抗はなかったのか。
TA(高倉氏回答):慣習というのは議会を運営する中で築かれてきた伝統なので、簡単には崩せない。しかし、今回のオンライン参加についてはコロナ対応で抵抗はなかった。
TA:議会には考え方が違う会派と議員がいるので、合意形成には時間がかかる。そこで、東京都議会では「議会の在り方検討会」を作って議会に関する課題について議論できるようにしている。いっそうの議会のDXも検討会で議論していけばいいのではないか。
Q:紹介された検討会のように熟議の過程をすべて公開するわけにはいかないとしても、情報公開という観点で議会のDXは重要ではないか。
YA(湯淺回答):平場で大きな議論をいきなりしても収拾がつかない恐れがある。議会を運営するために事前に議論するということは一定程度認めてもよい。住民が不満を持っているのは、何がどこで決まっているか見えないという点である。ここで話し合っているという場に関する情報は公開する必要がある。また、予算など可決するまで公開されない例もあるが、住民の理解を高めるために公開してもよいのではないか。
YA:なお、デジタル化に伴って議員や職員のプライバシー情報が過剰に公開されないように守る必要性については指摘しておきたい。
TA:慣習をそのままにしていくのは適切ではない。住民との距離を縮めるにも、議論にあたっての正確な情報は、議員の専有物ではないので公開していくのがよい。DXを上手に活用して、都民が決定に参画していくというのが本来の姿と考えている。
Q:議会では「音声で質疑しなければならない」という規則はあるのか。
TA:都議会では質疑は音声で行われている。それ以外に文書で質問して文書で回答を得るという方法もある。音声が不明瞭な方もいるし、言い間違えもあるので、音声と共にテキストを使うことを検討するのもよいのではないか。
YA:音声での質疑と文書の提出と回答が国会でも地方議会でも行われてきた。しかし、音声認識・音声合成などを利用することで、今後は音声とテキストが融合していくだろう。
Q:公明党は「小さな声を聴く力」をアピールしているが、「小さな声の人」がオンラインで議員活動するという方向に進むべきではないか。
TA:活発に動き回れる元気な人しか議員になれない、という従来のイメージは改めてもよいのではないか。様々に課題を抱えた人も社会を構成する一員である。「小さな声の人」も議員になっていく道が開かれていくべきと考える。
Q:国会へのオンライン参加は憲法に反しないと衆議院憲法審査会が結論を出したが、今後どのように影響が出るだろうか。
YA:衆議院の結論は総務省の解釈にも影響を与える可能性がある。今後、本会議へのオンライン参加が進むきっかけになるかもしれない。