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セミナーシリーズ第2回「デジタルファースト法はなぜ必要か」

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF
日時:416日火曜日1830分から2030
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室E
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6
講師:小木曽稔(新経済連盟政策部長)
司会:山田 肇(ICPF
定員:40 

小木曽氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、小木曽氏は資料を用いて次のように講演した。

  •  デジタルを阻む規制に最初に関わったのは医薬品ネット販売である。薬事法という法律に当時何ら書かれていないのに対面販売を強制する厚生労働省の省令はおかしかった。しかも、対面販売で薬剤師が確認すべき事項が因数分解して規定されていないから、それらの事項がネット経由では満たされないかも確認できない。2013年に最高裁で勝利したが、厚生労働省は要指導薬という新たな分類を処方薬と大衆薬の間に作りネット販売を妨害している。
  • 不動産の重要事項説明をネット経由でもできるようにするといった改革では、まずは社会実験をして問題がないかということの確認が必要という議論にならざるを得なくなり、解禁までには一定の時間を要している。
  • これらの経験から、インターネットとICTを活用して「新結合」を生み出す根本的な社会改革の必要性に目覚めた。デジタル化阻害五兄弟は、対面・面前原則、書面交付原則、印紙原則、押印原則、様式原則であるが、これらを打ち破る基本法が必要であると考え、安倍政権発足当初から提案してきた。
  • 今回のデジタル手続き法案は一歩前進だが、精神のみが書かれているので各府省は運用で安易な例外を作ってくるかもしれない。ここまでたどり着くのに六年もかかったのには感慨も深いが、あまりに遅すぎると思う。
  • 手続きにはいくつかの種類がある。官と民の間の手続きが今回の法案で規定されているが、地方公共団体については努力義務にとどまっている。民と民の手続きでも法律でこうしろと決められている場合がある。不動産の重要事項説明がその例だが、これを突破するには個々の事業法の改正が必要である。残念ながら今回の法案では一般的な見直し規定があるものの個別の事業法の改正が入ってるわけではない。さらに民と民の手続きで法律の規定もないものがあるが、これの多くは慣行に縛られている。このように分類すると、デジタル手続き法案は第一歩であり、まさにこの法案をもとにいかに次につなげられるかが焦点である。
  • シンガポールなどは国家ぐるみでスマート化に動いている。日本よりも中央集権的な性格が強いためと言えばそれまでだが、国主導で認証基盤やアプリケーションを整えていくのは、インドやシンガポールを始めとして世界の流れである。日本には立ち遅れるという危機感がない。
  • デジタルファーストをさらに進めるには、たとえば完全デジタル化で先行した地方公共団体や民間企業にはインセンティブが与えられるといった仕組みが必要である。マイナンバーカードの普及についても、スマートフォンのSIMカードに認証機能を搭載して生活のすべての局面で利用できるようにするといった利便性の向上が求められる。この部分は、閣法成立後の議員立法に期待する。
  • デジタルファーストが中小企業のバックオフィス業務を軽減するといったことについての広報も必要である。日本全体のバックオフィス業務は2兆円規模の生産性向上が可能であると新経済連盟は試算した。デジタルファーストは働き方改革にも役立つ。このような情報を広く伝えていく必要がある。
  • デジタル手続き法で、政府は「情報システム整備計画」を閣議決定することになった。この閣議決定にどの程度の力が生まれ、各府省の情報システム整備がコントロールできるかは、まだわからない。情報システム整備計画によって、紙による処理を残すなどの例外を極力排除させるなど、各府省をけん制できるようにならなければならない。情報システムの整備について、民間の知恵も入れて、政府として取り組むようになって欲しい。
  • デジタルファーストはデジタル基盤を新たな社会基盤にするという社会改革である。民間の知見も活用して、個人データと法人データを活用できる社会を構築していくべきだが、その全体像(グランドデザイン)やシステムアーキテクチャはまだ明らかになっていない。

講演の後、次のような質疑応答があった。

デジタルファーストへの支持拡大について
Q(質問):医薬品のネット販売など、いかに主張を支持するサポータを増やすかが課題だったはずだ。薬局・ドラッグストアは薬剤師不足で困っている。この人材不足がネット販売で解消されると訴えれば支持が得られたのではないか。
A(回答):その通りだが、実際には薬剤師会やチェーンドラッグストア協会はネット販売に反対した。医薬品の販売は、薬局を前提とした専門家の配置の規制になっているのでそこは現状の立て付けではクリアしきれない。
C(コメント):自動走行バスはバス運転手の人で不足を解消するという効果がある。医薬品販売とはアナロジーがある。
Q:すでに六年が経過したという話があったが、スピード感をどう捉えているのか。
A:人口減少社会の中では、デジタルファーストは日本が生き残るための重要な課題である。きちんとKPIを定めて、各府省・地方公共団体を動かしていく必要がある。期限を定めると動くということもあるし、期限がわかれば民間も予見できるようになる。だから、KPIを期限付きで定めるのがよい。 

情報システム整備計画について
Q:情報システム整備計画は政府内で勝手に決めるのではなく、国民の目に見える形で議論して決めるべきではないか。
A:その通り。民間が参画して、対面を残す理由を問いただしたり、新しい技術の採用を提言できたりすべきだ。 

地方公共団体でのデジタル手続き化について
Q:地方公共団体には努力義務しか課していないというのが理解できない。どんな努力をしているかもチェックすべきではないか。
A:官民データ活用推進基本法では、第五条で地方公共団体に官民データ活用施策を策定・実施する責務を定めている。地方公共団体の努力をチェックする仕組みは確かに必要である。
Q:地方自治の本旨というが、本当に地域の個性を発揮すべきものと、共通でも構わないものとを分けて考えるべきではないか。
A:その通り。情報システムは国内共通で構わない。地方自治の本旨に反しているとは思えない。
C:地方交付税交付金を用いて情報システムの整備を地方公共団体に委ねると、他に交付金が流用される恐れがある。どの方法で地方公共団体の情報システム整備を支援するか、考え直す必要がある。 

国際競争力について
Q:シンガポールやインドに対する危機感が不足している問題をどう解決していくのか。
A:各府省に任せるだけでなく、経済界としても危機感を国民に訴え、改革をリードしていく必要があるし、そのように新経済連盟は動きたい。
Q:デジタル基盤ではAIも活用されるのだが、AI社会原則を守ることも重要ではないか。
山田:欧州が先ごろAI社会原則を決定し、日本も最終段階に入っている。日本と欧州のAI社会原則は整合しているが、社会原則など無視して突き進む中国や、企業の自由度が高い米国をけん制しないと、日欧がデジタル基盤の活用に出遅れる危険がある。多国間でAI社会原則の順守について議論していく必要があり、G20などに期待したい。
Q:海外に対して日本がデジタルファーストに変わりつつあると訴求すべきではないか。
A:確かに弱い。対外メッセージの発信のためにも、グランドデザインをきちんと書く必要がある。

電子行政研究会ワークショップ「企業コードの活用について」

2012727日、東京都千代田区大手町にある東洋大学大手町サテライトで、第1回目となるワークショップ「企業コードの活用について」を開催しました。
当日は、20名の参加者にお集まりいただき、2つの講演に加え、参加者全員での大変熱のこもったディスカッションが行われました。 

はじめに、新妻継良氏(日立製作所)から「企業コードの民間分野におけるユースケースと欧州等先進国における海外事例のご紹介」の講演をいただきました。

新妻継良氏(日立製作所)の講演資料はこちらにあります。

  • 日立グループでは、グループ内での取引先コード統一を既に行っており、取引状況全体の把握や取引の効率化、取引先企業情報維持管理コストの低減等の効果があった。
  • 2011年に、諸外国の企業コード導入状況について詳細な調査を行った。欧州では、企業コードは行政手続だけでなく企業間取引にも利用され、企業活動の基本的業務全般で企業コードが活用されている。
  • 企業コードによって企業情報の集約が容易になり、より鮮度の高い企業情報サービス等、新規ビジネス創出にもつながる。
  • 個人事業主や中小企業向けには企業マイページを通じたプッシュ型サービス提供等のメリットが期待できる。

続いて、東京工科大学の手塚悟教授から「企業コードにおける基本構想(案)の概要」の講演をいただきました。

手塚 悟氏(東京工科大学教授)の講演資料はこちらにあります。

  • これまでは、公共団体別に企業情報を管理していたため、自治体間で企業情報をやりとりするにも都度番号変換が必要だった。統一コードの導入により、こうした状況を改善できる。
  • 企業コードは国税庁が付番する法人番号と、分野別事業所番号で構成する。分野によって事業所の概念が異なるため、事業所番号を共通化することは困難(業法改正等が必要になる)。
  • 法人番号は基本2情報とともに公表され、民間活用の制限もない。オープンデータの基盤としても重要。
  • 社会保障の手続等では企業コードと従業員のマイナンバーとの連携が必要になるが、マイナンバーの取り扱いは更に検討が必要。

講演終了後、講師も含め参加者全員で、企業コードに関する活発な討論、意見交換が行われました。

  • プライバシーの問題がない企業コードこそ電子行政において最初に取り組むべき課題だったのではないか。なぜ、eJapan計画以来10年たった今ごろ企業コードを議論しているのか。
  • 今までの電子行政とは、既存の組織・業務はそのままに、単に電子化を図ることに過ぎなかった。その限界が明らかになり、業務横断的に利用する企業コードにやっと脚光があたったのではないか。
  • 今までの電子行政とは、既存の組織・業務はそのままに、単に電子化を図ることに過ぎなかった。その限界が明らかになり、業務横断的に利用する企業コードにやっと脚光があたったのではないか。
  • 企業コードを利用することで最も利益を得る省庁はどこか。国税庁か。その省庁が推進役とならないでIT室に委ねて、果たして企業コードは本当に実現できるのか。推進役として政府CIOを設置すべきではないか。
  • 企業の側にはどのような利益があるのか。それが明確化されないと押し付けられたという印象だけが残り、活用する方向に進まないのではないか。
  • 企業コードはプライバシー問題がないというが、個人事業主を対象にすると住所等が公開される問題が起きる。個人事業主は自分の意思で企業コードに参加するか選択できるようにすべきだ。
  • 府省から市町村、広域事業連合など官の組織にも企業コードを付与する必要がある。実際にそのようにする計画はあるのか。官側はその必要性を理解しているのか。

討論によって、企業コードは未だ基本構想段階であること、電子行政推進のために早期に実現すべき事項であること、推進役を定める必要があることなどが、参加者に共通の認識となりました。

電子行政研究会セミナー「東京都知事選挙におけるインターネット選挙運動」

2014326日、東洋大学大手町サテライトにて、第6回セミナー「東京都知事選挙におけるインターネット選挙運動」を開催しました。
当日は、講師を含め40名を超える参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーションと参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、松田馨氏(選挙プランナー/株式会社ダイアログ代表取締役社長)から、家入一真陣営の取り組みについて講演をいただきました。

  • 選挙プランナーとして、2006年の滋賀県知事選挙(嘉田候補)以来、多くの選挙に関わってきた。滋賀県知事選挙では、ネットの効果は限定的だったが、Google Analyticsなどを使って効果測定はできた。新人候補が現職に勝利し、翌日のテレビ報道からアクセス数が急増した。
  • 今回は、告知日の二日前に家入一真陣営から依頼があり、違反者を出さない、ボランティアに参加してもらう、参加して楽しかったと言ってもらう、の三つを目標に選挙活動を展開した。普段は100%勝つのが目的で仕事を請けるが、今回は勝つ気がないからできたことである。
  • 西田先生の主張する漸進的改良主義で選挙運動を展開した。Twitterハッシュタグで政策を募集し、「ぼくらの政策」としてまとめあげたのも、それである。スタッフは20代後半が多く、彼らには漸進的改良主義は当たり前の感覚だったようだ。Code for Japanのメンバー等、プログラミングスキルのある人たちがボランティアで応援してくれ、選挙ポスターを張るためのアプリ「ポスター祭り」(14千カ所をGoogleマップで表示)、「期日前投票祭り」などが次々生まれた。これらは、次の選挙でどの候補も自由に利用できる。
  • 発信より受信に力を入れた。受信に力をいれている候補者は今まで少なかったが、家入陣営はキャッチボールを重視した。Twitterでやり取りするのは、有権者との双方向のコミュニケーションであり、候補者は握手のかわりという位置づけで行っていた。
  • クラウドファンディングは目標500万円に対して、744万円(692人賛同)を集めることができた。政治資金規正法に違反しないため、寄附ではなく、売買契約という形にした。500円(イベントへの参加)、8000円(選挙カーで候補者とドライブ)、50万円(講演+グッズセット)などが商品で、50万円の講演を6名(内、候補者の友人が3名)が購入してくれた。小口購入よりも本人の人脈が生きた形である。魅力的なギフトをどうつくるのかが課題である。
  • オープン、フラット、フリーが家入選対の理念であり、「面白いから参加」から「参加から行動へ」と、有権者が移行するように促した。選挙は候補者から有権者、有権者から他の有権者への熱伝導であり、ネット選挙運動もそれを重視した。

続いて、音喜多駿氏(東京都議会議員/みんなの党東京都議会第6支部支部長)から「ITの活用で 政治と政治家はどのように変わるか」と題した講演をいただきました。

音喜多駿氏(東京都議会議員)の講演資料はこちらにあります。

  • 政治家になりたいと始めたブログの経歴は10年で、BLOGOSでは地方議員トップブロガーになった。2013年の東京都議会選挙では、ネットを駆使してボランティア400名を動員し、寄附も400万円集めることができ、初当選した。
  • 時には炎上することもあるが、その中から勉強できるし、次に発信する際には備えられるので、政治家はネット利用をためらうべきではない。政治家の役割は、人々の声を集約し政策形成に反映することだ。選挙運動は政治活動の一部であり、普段からネットを使うことが必要である。インターネットはツールであると同時に新しい政治空間であり、いつも街頭演説している駅の数、事務所の数が一つ増えたと認識すれば、利用に対するためらいは減る。
  • ネットで発すべき情報は、近況報告のようなすぐに忘れられるフロー型ではなく、ストック型の主張、考察、分析記事であるべきだ。それを積み上げていけば、記事はいつの間にか一人歩きし、発信した政治家への注目度が自然に醸成される。FacebookTwitterは、検索エンジンと同様に、ブログに誘導するために利用すべきである。政治家という立場だからこそ語られる情報を発信すべきである。ネット上では都議会の情報は少ないので、有意なポジションを占めることができた。
  • 東京都知事選挙を見て、ネットだけで勝てるものではない、地上戦につなげる導線にすべきだったと感じた。民主主義における選挙は、最良の候補を選ぶのではなく、相対的にましな候補を選ぶものだ。舛添候補はネットでも地上戦でも一番まともだったので、当選した。一方で、「突撃!おときた駿がゆく!都知事候補者に全員会いますプロジェクト」で、講演者は多数な反響を集めることができた。

続いて、立命館大学の西田亮介特別招聘准教授から講演をいただきました。

西田亮介氏(立命館大学特別招聘准教授)の講演資料はこちらにあります。

  • 情報社会論をテーマに、データを元に、研究している。ネット選挙運動の解禁についても毎日新聞と共同でデータ分析するなど、研究を進めている。本人の基本的立場を要約すると、ネット選挙運動解禁はさらに進めるべき、クラウドファンディングはグレーゾーンで政治資金規正法改正が必要、電子投票については慎重などである。
  • ネット選挙運動解禁には二つの側面がある。動員のためのネット選挙運動とネット選挙運動を切り口にした政策過程の透明化であり、個人的な興味は後者である。ネット選挙運動は公職選挙法を改正して実現したが、それによって、均質な公平性とする旧来の選挙運動と斬進的改良主義を旨とするネット選挙運動が一つの法律の中に併存することになった。その結果、法律を横断した大局的な知見はなくなり、また、この先、放送法の下での放送とネット動画との関係や、領域横断が容易なウェブサービスの規制が困難である問題などが起きてくると思われる。
  • クラウドファンディングについて、実質的に寄付ではないのか、楽天LoveJapanが献金者のデータを渡しているのは問題ないのかといった見方ができる。政治資金規正法上はグレーゾーンであるが、クラウドファンディングを進めたいと考えているので、むしろ政治資金規正法の改正を求めたい。
  • 2014年東京都知事選挙について毎日新聞との共同研究し記事になった。記事にも書いたが、発信力、拡散力、話題力、メディア露出、注目度、関心度などといった項目で、主要候補はそれぞれ異なる特性を持っていた。また、世論調査では知事選の争点の関心では景気と雇用だったが、Twitterで候補に関連して投稿された内容の多くは原発・エネルギーであった。世論調査とのずれは、仲間の間でコミュニケーションが連続しやすい主題の総量が増えているためと解釈できる。原発、憲法、安全保障がそれに相当する。
  • Google Trendsの動向では、家入陣営は検索対象にもなりきれなかったし、10万票と得票率2%の壁を超えられたわけでもない。しかし、政治家のつぶやきの「くだならさ」がネット以外の媒体でも報道できるようになったという点(ネットの衆人環境性)は、政治の透明化に役立った。この先、時間が経過し、情報が蓄積すればより有益なものになるだろう。

後半は、山田肇東洋大学教授(電子行政研究会副委員長)の司会で、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

ネットを介した政治家と有権者の双方向的な関係の構築について

  • ネッ選挙運動トと従来型選挙運動にどちらに力をいれるべきかについて、当面は従来型優先で一致した。しかし、ネット選挙運動にはコストをかけずに最低限のことができるという特質があり、優先度はいずれ変わっていくだろうという意見が大勢を占めた。
  • どの選挙に出るつもりか、当選ラインを見極めたうえで、ネット選挙運動を実践すべきだという意見が多かった。参議院全国比例や東京地方区が適していると意見や、国政選挙は政党支持率に左右されるので全国比例区が有効とは言えないという意見、23区内の区議選に可能性があるという意見、政令指定都市の首長選挙が適しているといった意見が交錯した。
  • 家入陣営はネットで政策を募集したが、政策の整合性をどうするのかという指摘があった。政治家の活動は日々有権者の声を集めることであり、政治活動として告知日前に取り組んだのであれば評価できたという意見も出た。政治家の役割の一つに苦渋の決断をするということがあるという指摘に対しては、政治家の決断は大事な仕事だが、有権者に納得してもらうことが必要で、そのためには対話が欠かせないという意見もあった。
  • 双方向性について、ターゲット広告の手法を導入するといった、今後の可能性にも議論が及んだ。自民党がIPアドレスを読み取ってトップページを組み替えたなど、すでに工夫は始っている。メールマガジンの配信などについて、より新しい戦術が開発される余地があるという結論になった。
  • 日本では匿名が当たり前だが、そんな状況でも双方向性は実現できるのかという質問が出た。これに対して、匿名なアカウントには返信はせず、身元が明確な場合は丁寧に返すといった実践例が紹介されたが、一方で、政治家は公人であり、非対称性は当然で、政治家は匿名を気にするべきではないという意見も出た。わが国では党議拘束が強いため党所属議員は独自意見を言いにくいということが、双方向性の支障になるという意見も出た。

クラウドファンディングについて

  • 日本には個人献金の習慣がないので、クラウドファンディングは迂回ルートとも考えられる、という意見が出た。現行の政治資金規正法をきちんと読めば、クラウドファンディングは寄付にあたるのではないかという意見が出た。これは、クラウドファンディングを否定するものではなく、限りなくグレーなので、公権力が恣意的に運用する恐れがあると指摘するものであった。
  • 政治資金パーティーと比較して、政治資金パーティーで集められない人がクラウドファンディングを使うという指摘が出た。ただし、クラウドファンディングを寄付として扱うと、政治資金規正法に基づく規制がかかり、匿名献金の排除、外国人献金の排除などの反映に三ヶ月もかかるため、今は寄付ではなく売買契約として扱うしかないという説明もあった。

公職選挙法の改正について

  • 日常的な政治活動でいくら金を使っても規制されず、選挙期間にだけ総額規制がかかるのはおかしい。日常を含め、グロスで規制する必要があるとの意見が出た。公職選挙法が時代に追いついていない、選挙運動期間の再定義が必要であるとの意見が強かった。
  • 国会議員は今のルールで当選してきているので、自ら変えるインセンティブがない。それを変えるためには、メディアを動かす必要がある、という意見も出た。関連して、新人候補はどのように選挙運動をしていくのか、投票行動のパラメータを数値化できるのかといった質問も出た。これについて、ネットは数値化できるので効果測定しやすいという一般論の上で、リスティング広告での誘導が最後の三日間でのアクセス数の増加に結び付いたという川崎市長選の実績などが報告された。ネットの可能性を信じるべきで、黎明期だからチャンスがあるという意見も出た。
  • ネット利用は、ニコニコ動画で立候補会見を放送するのが常識化したように、模倣されやすい。だから、ネット利用では横並びになるの、それ以外のリソースでの影響が必要となる。マスメディアで報道されやすい現職が有利なのはそのためだ、という説明があった。一方で、事前の世論調査では政策が第一で、人柄は第二と回答する有権者が、出口調査では人柄(総合的な判断)を重視したと回答するという傾向が指摘された。ネットでの政策に関わる言論活動はまだ信頼されていないという指摘があった。

討論によって、ネット選挙運動には政治の透明化をはじめ様々な可能性があるものの、まだ有効に活用されているとは言い難く、法改正も含めたさらなる取り組みが必要との認識が共有された。

電子行政研究会セミナー「地方自治体の番号制度対応と電子自治体サービスの展開」

2014314日、東洋大学大手町サテライトにて、第5回セミナー「地方自治体の番号制度対応と電子自治体サービスの展開」を開催しました。
当日は、講師を含め50名を超える参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーションと参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、向井治紀氏(内閣官房内閣審議官)から「共通番号制度における個人情報保護について」の講演をいただきました。

向井治紀氏(内閣官房内閣審議官 社会保障改革担当)の講演資料はこちらにあります。

  • マイナンバー制度では、第三者機関の設置、特定個人情報保護評価、目的外使用の禁止、罰則強化などの歯止めを設けた。システム面では、分散管理、アクセス制限、通信の暗号化などを行う。このように、マイナンバー制度は個人情報を保護しつつ、行政事務での利活用を図るものである。
  • 個人番号カード(ICチップ)の空き容量を使えるようになっている。健康保険証の代わりなど、自治体が条例を定める形で、新たな利用形態が生まれてくるだろう。
  • 特定個人情報保護委員会は、個人情報保護、情報処理の有識者、民間、自治体からの委員で構成され、保護と利用のバランスを実現する。委員会が策定する民間に対するガイドラインがこれから重要になる。
  • 保護に偏りすぎると使い勝手が悪くなる。番号制度の民間活用を早くという声があるが、番号を付ける範囲を拡大するよりも、本人確認の拡大を求める声が強い。マイナンバー法によって、ネットにおける本人確認について民間も公的個人認証を利用できるようにしている。
  • 今後の可能性として、医療分野では市町村間での連携、災害時の過去の病歴取得などが挙げられる。番号だけで郵送できるマイ郵便番号などのアイデアもある。マイナンバーもパーソナルデータもこれからの経済に不可欠であり、保護しつつも、活用できるようにしていきたい。

続いて、篠原俊博氏(総務省自治行政局住民制度課長)から「地方自治体における共通番号対応の現状と独自の利活用計画について」の講演をいただきました。

篠原俊博氏(総務省自治行政局住民制度課長)の講演資料はこちらにあります。

  • 制度改正はクラウド化のよいタイミングであり、新藤総務大臣もクラウド化に熱心である。システム構成でキーとなる中間サーバーはクラウド化し、東西2カ所に設置し、東西で相互バックアップする。
  • 地方自治体の既存システムの改修には国費を付けた。住基システム、税務システムの改修などが実施できる。ただし、ランニング費用は地方の負担となる。
  • 住基カードが廃止され、個人番号カードに切り替わる。表面には必ず顔写真が載る。裏面はコピーされることを想定して、個人番号と氏名、生年月日が載る。
  • 公的個人認証が民間に開放される。文章の真正性を確認するという利用方法だけでなく、スムーズなログインに使える利用者証明の機能が追加される。今までネックだったカードリーダーに替えて、NFC付スマートホンを使えないか検討している。
  • カードの普及とよいコンテンツは鶏と卵の関係にある。自治体によっては、条例による独自利用を考えているところもあり、期待したい。

続いて、向井氏、篠原氏の講演を受けて、柴山昌彦衆議院議員(衆議院内閣常任委員長)から総括講演をいただきました。

  • マイナンバーについては施行令などの策定作業が遅れているという批判があり、手探りのところもあるが、スケジュール通り実施する。
  • パーソナルデータの保護と利活用については、政治的な決断が必要である。なぜなら、日本人は保護について非常にセンシティブだからだ。機微情報の扱いに慎重過ぎたがために、かえって、ネットセキュリティ対応が遅れてしまっている。それが、米欧のとの機微情報のやりとりの遅れにも繋がっている。
  • 医療情報はマイナンバーとは別にすべきという議論もあるが、どうするかは政治的な決断である。複数の番号の連携は複雑になるため、個人的には、一つの番号で統合すべきと考えるが、違う意見の政治家もいる。
  • 自治体での取り組み例として、千葉での市役所と介護施設との橋渡しサービス、柏市のスマートホンを用いた健康管理などを聞いている。マイナンバーによる医療情報の連携は、ニーズが高いと認識している。金融分野では、預金の名寄せは、所得の把握のみならず、金融機関間のセキュリティ情報の共有にも結び付く。

後半は、山田肇東洋大学教授(電子行政研究会副委員長)の司会で、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

【主な意見・論点】
地方自治体でのマイナンバー制度対応について
Q(質問):財政措置について、所有からサービス利用の流れに対応して、柔軟な財政処置をお願いできるのか?
A(回答、篠原):クラウドを用いたサービス利用を推進している。補助も年限などはあるが、対応できるはずなので、個別に質問して欲しい。
Q:宛名番号が住民の数より多い場合があると聞いているが?
A(篠原):住民の23倍ある場合もあり、データクレンジングしないといけない。まずは、必要なデータにマイナンバーを紐付けて、余力があればクレンジングをして欲しい。
Q:各自治体が提供するサービスは使い易さが必要ではないか?
A(篠原):ユーザービリティが大切。マイポータルの画面を如何に使い勝手の良いものにするか、ガイドラインも出している。外国人に対しても多言語化で対応する。 

マイナンバーの利用範囲拡大(当面)について
Q:公的個人認証の民間利用が重要だというが、千葉市熊谷市長が実印の時代は終わったとつぶやいて議論になったことがある。公的個人認証を用いることで実印をやめられるのか?
A(向井):実印に法的な根拠はなく、実社会での利用に対して自治体がサービスをしているもの。不動産取引は対面だが、今後は必ずしも対面でなくても良くなるかも知れない。
Q:医療分野での利用には政治的な決断が必要だが、厚生省の検討会では、社会保障費の抑制や効率化を前提として議論しないのが問題である。
A(柴山):その通り。手書きによる診療報酬請求には膨大なコストがかかっていたが、今は電子化された。導入によって得られるメリットがコストを上回れば政治的決断で進められる。 

マイナンバーの利用範囲拡大(将来)について
Q:個人番号は捨てられないのだから、どこまで国が情報を管理するか国民が選択できないのであれば、利用範囲はなるべく狭い方がよいのではないか?
A(向井):危惧されているのは、将来、極めて中央集権的な政権が誕生して、個人情報を濫用することだが、それは国民が政治的に選択することである。
A(柴山):濫用した時の歯止めにはシステム的なものと法的なものがある。しかし、ここまでペーパーレスが進んでいない先進国は日本ぐらい。歯止めは用意するにしても、利活用は進めるべきだ。
Q:データマイニングやプロファイリングで、あまりに個人を特定できるのは、プライバシーの観点から危険ではないか?
A(向井):その点で国のやっていることは民間の足下にも及んでいない。どこまで匿名化したらよいかの議論は難しい。最終的には、匿名化したデータを元に戻さないことを、何らかの方法で担保する必要があるだろう。
Q:番号制度は行政のために作られており、民間活用のための設計がなされていない。もう少し時間をかけるべきではないか。
A(柴山):犯罪行為に使われてしまう意見があるという指摘だと思う。Suicaの件は、民間活用を考える格好の事例だと思う。個人番号をなりすましでとられるのを防ぐのは大前提。個人情報の利用は、第三者委員会でマルチステークホルダーで検討するのが大切である。 

国民のITリテラシー向上について
Q:柴山議員が出演されていたBS番組で、国民のITリテラシーをどう向上させるかと言っていたが。
A(柴山):国民のリテラシー向上には、子供の頃からの教育が重要。文科省に総務省から派遣して検討させている。e-ネットキャラバンもやっている。すぐにリテラシーを上げることは難しいが、できることを地道にやっていきたい。
Q:住民への広報が十分でない。
A(篠原):平成25年度予算では、法案が通るかどうか不確定だったため、確かに落ち込んだ。26年度は内閣官房で予算を取っている。自治体で広報をしてもらうためのポスターなどのアイテムを提供する。
A(柴山):市のイベントなどを通して全ての年代に啓発していきたい。国民のITリテラシー向上のきっかけにしたい。

討論によって、番号制度の運用に当たっては個人情報の適切な活用と保護を両立させる工夫や、国民の意識・リテラシーを高める取り組みが重要であること等が明らかとなりました。