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「ICT活用を教える現職教員の対応力強化策」

日時:2月27日火曜日18時30分から20時30分
場所:エムワイ貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
司会:山田 肇(ICPF理事長)
講師:上松恵理子(武蔵野学院大学)
定員:40名

上松氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、上松氏は次のように講演した。

日本では総務省がプログラミング教育推進事業を実施しているが、文部科学省等と連携することもなく、今年の3月で終了する。一方で、英国をはじめとする諸外国では取り組みが強化されている。今日はその状況を話す。 

BETTについて

  • 英国では、「BETTThe British Educational Training and Technology Show)」が毎年ロンドンで開催されている。Microsoftや富士通、レノボ等の大企業から小規模の企業まで多数出展しておいる。日本では東京ビッグサイトで行われる教育ICTソリューションEXPOのようなイベントであるが、日本と異なる点は教師と子どもたちが積極的に参加することである。日本では、IT企業と教員・自治体を結ぶビジネスの場として設けられているが、英国では教員が生徒を引率して会場を訪れ、それぞれが興味のあるブースを周るといった「学び」の要素が大きい。最も大きな違いは、教員自身が非常に熱心に学ぶ姿が多く見られる点である。「明日の授業で使用する教材」を研究するために、しっかり見聞きするという意気込みが感じられる。
  • 英国では博物館等を無料で観ることができる。この制度を利用して、児童生徒には課外授業の機会が多く与えられ、できるだけ実物を体験する。実物がなければVRを用いる。ICT教育について言えば、それはプログラミングをできるようにするのではなく、どのように動いているのかを理解することであり、多様なIT利用シーンを体験するために課外授業が用いられ、BRTTもその一環となっている。
  • BETT会場で現職教員の講演を聞いたが、教育学の普遍的な理論、たとえば教育目標等の分類学(ブルーム・タキソノミー)から実践内容の軸を外さないようにしていることが印象深かった。同時に、教員のリーダーシップも求められるようになった。日本の教員は均一な印象があるが、海外には教員を束ねる教員がいる。学校の中でITスキルのある教員が、教育学の普遍的理論を理解しつつ、他の教員にIT教育について教えるといった教員相互の共有の場が存在している。
  • 教員だけではなく、学習者である生徒もデータ分析する時代になってきた。個々のデータを教員が分析するのではなく、子どもたち自身が自分の学習データを分析できるようになるのがこれからの新しいフェーズである。いずれ、生徒の活動や評価が学校や国を超え行われれるようになるだろう。

教科Computingについて

  • ケンブリッジ大学のコンピュータラボラトリーは一般の大学が行っている単位制ではなく、時間制である。学士号は3年、修士号は1年のため、在学中は非常に忙しい。また、成績上位25%しか大学院に進学できない。教員一人に対して学生は一人か二人という小クラスもある。小学校でプログラミング教育が導入されたことから、かつては好きで独学でコンピュータを扱う学生がいた程度だったのが、今ではほとんどが使える状況になってきている。一方、日本には小中学校に情報の教科がない。英国では1995年から始まった教科「ICT」が2014年に廃止され、新教科Computingがスタートした。新1年生からプログラミング教育が必修と位置づけられている。
  • 教科Computingでは、他の学校にネット予約を行うことで、小学生が中学校や高校でのプログラミング授業の参観ができる。教員にとっては教え方の勉強になり、子どもたちにも興味のきっかけになる。

スイスとOECDについて

  • スイス・チューリッヒ大学情報学部長Informatics Europe代表理事であるエンリコ氏に面談した。ヨーロッパ諸国が加盟している情報学根付かせるための機関がInformatics Europeである。今はセキュリティやデジタルリテラシーも重視している。ヨーロッパには、ACMヨーロッパやボローニヤプロセス(ボローニャ合意)といった教育基準がある。こうして、国境を越えた協力や基準が進んでいる。
  • スイスの教育は州ごとに異なるが、日本同様、教員免許状更新講習の制度がある。初任者研修は23年。10年経験者研修が法定研修となっている。スイスでは高校に行くのは20%程度で、中学生の80%は専門学校や就職する。しかし、高校に行かなくても大学や大学院に入るチャンスがある。そのためプログラミングが好きな子どもは、専門学校に行った後に大学等に進学することも可能である。専門学校に行ってから大学進学する学生は非常にモチベーションが高い。また、スイスは銀行がとても多いが、大手銀行トップは専門学校から就職、その後、大学、大学院を経ているケースもある。
  • OECDEducation2030には、個々人に合わせられる学習環境、基礎的な力、識字と計算力、協働して結果をもたらす力、相互作用的で相互支援的な関係といった記載がある。

まとめ

  • 時代に合わせて柔軟に教育の枠組みを変化させる必要がある。英国をはじめ欧州諸国ではその動きが始まっている。現職教員は新しい枠組みでの教育ができるように一生懸命に勉強し続けている。一方で、他校に生徒を連れて見学に出向けたり、教材がネットに豊富にアップされていたり、教員が教員に教える相互協力の仕組みも存在する。こうして、現職教員のIT活用力が高まり、ITを活用する教育の効果も上がっていく。
  • そのような共有の仕組みの中で、プロジェクトベースドラーニングは2時間続きで行う方が、学習効率が良いといった知見が生まれてきた。教員研修もワークショップ型で実施して、評価をお互いに行うというのが一般的である。

講演後、次のような質疑があった。

ITを活用した教育について

Q(質問):シンガポールでは、タブレットを利用した教育が進んでいるのか?
A(回答):ICT教育はとても進んでいる。学習指導要領に一人一台と明記している国は多い。北欧は学習指導要領が非常に薄く、教員の裁量に任された部分が大きいので、教員が自らタブレット利用を進めている。その他先進国でも教室にPCが常設されているケース、BYODのケースがある。スマホの持ち込みが自由な国も多い。日本は平均して学習者約6人に1台しかない。
Q:ほとんどの.授業でスマホなどを使っているのか?
A:その通り。辞書や翻訳ソフトを利用したり、インターネットを使って調べ学習をしたりしている。もちろん、内容に応じて紙と鉛筆も併用している。例えばエストニアでは、教室に端末を持ち込んでいるのが普通の状況である。国語の授業はパソコンを使う。
Q:プログラミング教育ではオブジェクト指向といったことまで教えるのか?
A:そこまで教える必要はないとケンブリッジ大学の先生が述べていた。理由は先生がそれを教えるスキルに達していないこともある。また、小学校で音楽は必修だが、皆がピアニストになるわけではないのと同様に、皆がプラグラマーになるわけではなく、プログラミング的思考の基礎を身に着けておくのが重要であるという意見が多かった。学校の先生方の中には、プログラミングが好きになってもらいたいという思いもある。
Q:教科書だけ見てもイメージがわかない場合もあるのではないか?
A:インターネットも同じである。課外授業では、実物を見ることが大切にされている。体験学習にはVRを使うこともある。課外授業やネットでの学習を総合して、レポート、論文を書くことができるように、小学生にもそういった文章の書き方を教えている。 

英国での教員養成について

Q:講演資料にあったデジタルスクールハウスとは何か?
A:国の機関ではない。いろいろな会社がお金を出資して、教科Computingの授業を支えるためのワークショップを行ったり、教員の支援を行ったり、教科書を作っている。ヨーロッパには寄付や企業のお金で成り立つ公的機関が多い。教員は、困ったらそういうところにアクセスし、または、ワークショップ等に参加する。韓国では教員免許を持つICT支援員も存在するので研究授業なども企画できる。英国ではワークショップなどの企画は国が一斉に行うというものはなく国は関与していない。
Q:セキュリティは社会基盤で子供の時から学ぶという話があったが、教員育成を行うにはどうしているのか?
A:日本ではセキュリティを専門に学ぶ大学は多くない。まずは子どもにも道の渡り方を教えるようにセキュリティの概念を教えなければならない。基礎的なことはすべての子供に教える必要がある。そのためには、早期からデータの概念を理解し、それから、セキュリティを理解するというようなことが必要である。セキュリティの専門家が日本は不足しているため、とても時間がかかる。小学校から一斉に教科Computingを教えることになったため、教員育成は間に合わない部分があるが民間の機関や公的機関、OCRのような評価規準の機関のデータやテスト問題を教員が参照できるのでその点は教材もたくさんあり恵まれている。なかなか教員育成は大変である。これはイギリスを含めた欧州全体に言えることだが、大学教員よりも就職した方が高賃金のため、教員不足が課題である。

ICPF×アゴラ緊急シンポジウム「電波改革で訪れるビジネスチャンス」

日時:20171219日(火)183020201800受付開始)
会場:エムワイ貸会議室四谷三丁目 ルームA
160-0004 東京都新宿区四谷3-12 丸正総本店ビル6F
登壇者:
原英史(規制改革推進会議投資WG座長)
山田肇(情報通信政策フォーラム理事長)
池田信夫(株式会社アゴラ研究所所長)
真野浩(株式会社コーデンテクノインフォ代表取締役) 

原氏の講演資料はこちらにあります池田氏の講演資料はこちらにあります

「電波改革で訪れるビジネスチャンス」と題して規制改革推進会議の答申について議論するシンポジウムを開催した。以下はICPF事務局による要約である。 

すべてがインターネットに接続され(Internet of EverythingIoE)、産業・医療・交通・環境・教育・防災など多様な都市機能が統合され効率よく提供されるスマートシティが実現されようとしている。IoEやスマートシティ時代の電波利用は今までとは全く異なるものになる。新時代を展望して、電波行政の改革方針が答申として打ち出された。 

答申が強調する電波発射状況調査によって使用頻度が低い免許人・周波数帯が明らかになれば、返納させたり他の用途と共用させたりする「電波の区画整理」が実施できる。 

今までは周波数や変調方式といった物理的な規定とその上での利用形態を統合して電波免許を付与してきた。これからは物理的な規定と利用形態を分離すべきである。無線ネットワークはIP網として構築し、その上でいろいろに利用するのがよい。無線IP網自体は利用形態(サービス・コンテンツ)が異なっても変える必要はない。 

今まではある免許人が撤退したのち、次の免許人がサービスを開始するまでに長い空白期間があったが、無線IP網の形式にすれば空白期間はなくなる。同じ無線IP網のうえで多くのサービス提供者が競争するという形態での市場競争も実現できる。また、使用頻度が低い旧免許人は他社が提供する無線IP網を利用すればよい。 

無線IP網のうえを流れるサービス・コンテンツが利益の源泉である。無線IP網自体は多様なサービスを支えるインフラであり、水道事業が最低限の利益で営まれているように無線IP網から多くの利益は期待できない。したがって、無線IP網のための電波をオークションにかけても高額で落札されることはない。 

オークションの実施は電波改革の中心的な課題ではない。無線IP網を水道網のように公営で構築することすら考えられる。区画整理をして空き周波数を作り、共用を基本とした新しい利用形態を実現することが電波改革の焦点である。

テレビ放送の価値は多額をかけて制作されるコンテンツである。電波を飛ばして視聴者に届ける伝送が価値ではない。コンテンツの伝送路として無線(デジタルテレビ放送)があり、ケーブルテレビがあり、ネット同時送信が今後提供される。電波改革は、テレビ局にとっては価値の高いコンテンツを配信するルートが増えるチャンスである。ただし、著作権法が(無線)放送、有線放送、ネット送信を相互に異なって規定している点など、電波以外にも改革を求められる法制度が存在する。 

多様な利用形態の無線網の共用は公共用電波でも進めるべきである。答申では公共安全LTEの構築が提言されているが、その方向を向いた施策であり、電波の有効利用を加速する。

セミナー「自動走行バスの現状と今後」

日時:10月24日火曜日18時30分から20時30分
場所:エムワイ貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
司会:山田 肇(ICPF理事長)
講師:大澤定夫(SBドライブ株式会社) 

大澤氏の講演資料はこちらにあります

大澤氏は冒頭、次のように講演した。

  • SBドライブは通信・IoTのソフトバンク、ビッグデータのYahoo! Japanと自動運転技術の先進モビリティの3社が出資して2016年に設立された自動運転ベンチャである。バス型の自動運転モビリティを目指す、交通事業者向けにBtoB事業を展開をポイントとして、自動運転の時代の運行管理を支えるICTサービスの用意を目指している。
  • バス型自動運転には、ドライバー不足、バス会社の7割が赤字、廃止路線の増加、買い物弱者が増加といった公共交通の課題解決に貢献できる可能性がある。将来的には先進国で少子高齢化が進行するため、日本の自動運転バスが海外でも活躍するビジネスチャンスがある。
  • 経済産業省の平成28年度スマートモビリティシステム研究開発・実証事業専用道路での走行を試みたが、SBドライブはその先を行く他車も走行する一般道で特定ルートを定時運行するモビリティを2018年度後半に実現することを目指している。
  • 実際の交通状況とニーズを軸に考えるため、現時点で4地域と協定を締結している。地方都市モデルとして福岡県北九州市、中山間地域モデルとして鳥取県八頭町、観光地モデルとして長野県白馬村、地方都市で地域の自動車メーカーも巻き込んだ静岡県浜松市である。また、内閣府を始めとする国家プロジェクトに参画し経験を蓄積中である。
  • 将来的には交通事業者に対するBtoBビジネスとして、サービスと車両をパッケージで提供予定である。バスによる公共交通で課題である運転手の人件費が、より低額の運行管理システム運用費に置き換えられれば、ビジネスとして認知されるだろう。これがSBドライブのビジネスチャンスである。
  • 自動運転技術は認知→判断→制御の三要素が連なって成り立っている。認知に関わるセンサ類や判断に関わるGPUなどは価格の低下が著しい。3Dマップ・GPSなど複数の組み合わせで 自己位置推定を行うことが可能になり、AIを活用した障害物認知等の信頼性が大幅に向上している。
  • 2017年3月の沖縄・南城市での実証実験はレベル2.5ぐらいで実施した。アクセルとステアリングを自動化し、海外沿いの交差点のない一般道を片道1㎞走行した。運行管理システムの動作検証、ロボットによる社内アナウンス、バス停への4cm程度の近接停車(正着制御技術)、障害物回避を実証した。交通事業者を中心にモニター-調査を実施したが、乗車前には不安との回答が大半を占めた。しかし、説明と乗車後は安心が大半を占める結果となった。

ICPF事務局注記:レベル2は部分自動運転、レベル3は条件付自動運転、レベル4は高度自動運転で、レベル3まではシステムが要請すればドライバーが対応しなければならない。

  • 6月から7月にかけて石垣島で実証実験をした。新石垣空港~離島ターミナル(片道16km)で最高速度40㎞、アクセルとステアリングを自動化したレベル2.5ぐらいである。交差点での信号待ちなど、南城市に比べて本格的な実験となった。街路樹がある道路ではGPSが検知しにくく自動走行制御がむずかしいなどの課題も発見された。
  • 7月には芝公園で、フランスNAVYA製のARMAを用いて1周150mをレベル3で走行する一般公開試乗会を実施した。ARMAは世界25カ国で10万人が乗車した世界で最も走行実績のある自動運転バスである。

講演後、次のような質疑があった。

自動走行バスの技術等に関する質疑

質問(Q): GPSが街路樹に邪魔されるという話があったが、準天頂衛星で改善されるのか? 今はトンネル内を走行できないのか?
回答(A):改善されるだろう。トンネルなどGPSを検出できない場所では縁石や白線を検出して走行する方法などがある。
Q:道路に電磁誘導のラインを敷設する方式と比べてSBドライブの自律走行方式は有利なのか?
A:走行距離が長ければ電磁誘導のラインを敷設するインフラ協調型は不利になる。しかし、自律走行といってもトンネルなどでは周囲から誘導する可能性もあり、一部分はインフラ協調方式となるだろう。
Q:NAVYAのARMAがレベル4で走行している国はあるのか?
A:スイスの観光地で走行している。

ICPF事務局脚注:スイス・ヴァレー州シオン市で自動走行バスのサービスが提供されている。

自動走行バスが発揮する価値などに関する質疑

Q:レベル2では効果がないのではないか?
A:レベル1の自動ブレーキなどがすでに自動車に装備されるようになってきた。それだけでも事故低減の効果は出ている。レベル2でも公共交通に貢献する部分はあるが、目標はドライバーが不要になるレベル4である。
Q:南城市での実証実験で乗車後も不安を感じたという回答者が出たのはなぜか?
A:回答者は主にバス事業を営む交通事業者であった。彼らの中には自分の運転と比較して不安を感じた人もいた。石垣島では一般人を乗せたが、拍手が出るくらいに好評だった。
Q:バス運用者の態勢に影響は出るか?
A:始業前点検など運用者がすべき作業は変わらない。ただ、自動走行バスの部品の消耗度などは自動測定できるので予防保全に移っていくだろう。
Q:過疎地のほうが対向車も少なく信号もない。最初のターゲットなのか?
A:その通りだが、都会での運用も目標にしている。

自動走行バスに関わる規制緩和などに関する質疑

Q:講演中の動画では、バスの運行が集中管理センタで管理されているようになっていた。集中管理センタに人が付いているのでは人件費は削減できないのではないか?
A:国は安全最優先で集中管理センタに人が付くのを求めている。道路交通法はジュネーブ条約に沿った法律であり、車の操縦は人が行わなければならない。操縦する人が必ずしも車の中にいる必要はないと警察庁は解釈して、集中管理センタ方式をガイドラインで定めている。
Q:今後、レギュラトリーサンドボックスで実証実験をする予定という話が出たが、サンドボックス内では集中管理センタ方式を外すのか?
A:安全最優先なので集中管理センタ方式である。ただ、今までは集中管理センタの監視者にも2種免許を求めていたが、これがサンドボックス特区内で緩和されるとありがたい。実車を運転するスキルが不要となれば、それだけでも経費削減に役立つだろう。

次いで大澤氏は規制等に関係する事項として次の五点を指摘するスピーチを行った。

  • 地方の自動運転に関するバス購入費の助成金、運用費に対する助成金が必要になる。2012年のEV向け充電スタンドの助成金規模およそ1000億円が求められる。
  • 信号情報を車両が取得できる環境を早急に整えて欲しい。
  • 実証実験としては専用道路、優先道路でない混在交通での推進が求められる。
  • 自動運転車に対するいたずら、迷惑行為に対する罰則強化などの法整備が必要になる。
  • 各省庁に跨る各種申請に関するワンストップ窓口の設置を求める。

助成金については、補助に頼るのではなくビジネスとして自立できる必要があるという意見、ユニバーサルサービス基金を創設して都会の利用者が負担する制度がよいという意見が会場から出た。
信号機との協調については、信号色の検出などは自動車業界全体として取り組むべきという意見と、青赤黄色で情報を伝えるのではなくデジタルで交通を制御する方向に自動車業界全体として取り組むべきという意見が出た。
申請窓口のワンストップ化については、電子申請全般の課題として解決すべきという意見が出た。

セミナー「客観的な根拠に基づく政策形成」

日時:9月28日木曜日18時30分から20時30分
場所:エムワイ貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
司会:山田 肇(ICPF理事長)
講師
宮部勝弘(内閣官房行政改革推進本部事務局企画官)
上瀬 剛(NTTデータ経営研究所パートナー)

宮部勝弘氏の講演資料はこちらにあります。

上瀬 剛氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、司会(山田氏)が次のようにあいさつした。

行政策は必要性と有用性と効率性で評価されるべきである。特に有用性と効率性は数値で評価するのが適切な項目である。根拠に基づく政策形成(EBPM)は、施策の事前評価・事後評価で活用されるようになるだろう 

宮部氏から次のような講演があった。

  • EBPMに明確な定義はない。政府としても手探りの状態である。一方でイギリス、アメリカを中心に取り組みが進展している。Evidenceとは何か、これは単にDataではない。「政策がアウトカムへ影響を及ぼした因果関係」といった定義も存在している。
  • わが国では、「官民データ活用推進基本法」によって「データ活用により得られた情報を根拠にして行政は行われる」と規定された。また、統計改革推進会議で「欧米ではEvidence Baseなのに日本はEpisode Base(業界の声、担当者の印象など)で施策が実施されてきた」との指摘があった。
  • 山本行革担当大臣が統計改革を宣言し、大阪学院大学の三輪教授を大臣補佐官に任命した。それが、一連の動きのきっかけである。その後、統計改革推進会議が設置され、EBPMとともにデータの整備を促すことになった。一例がGDP統計での「サービス部門統計」の充実である。
  • 統計改革推進会議は、官房長官を議長に、行革大臣、経済財政大臣、総務大臣、財務大臣、経産大臣、日銀総裁(日銀は統計データの作成者というだけでなく、ヘビーユーザーでもある)有識者9人で構成された。
  • 体制を作り、各府省の理解も得つつ徐々に浸透させる方針が三輪補佐官から説明し、了承された。その結果、各省にEBPM推進の責任者を置く、統計の改善(問題を解決する、統計が使われているかを確認する)と、政策の改善を図るEBPMサイクルを確立するなどが提言された。
  • 各省のEBPM推進統括官が集まるEBPM推進委員会が設置された。ここで、統計等データの提供についてガイドラインを策定する。研究者からの多くの要望・苦情(データの提供が遅いなど)が寄せられてきたことも背景としている。公益性、機密保護を維持しつつ、提供を容易にする方向である。
  • EBPMの推進や統計の改善のために、どういう人材を確保・育成するかは現在検討中である。年度末を目処に検討を進める。職員には基本的なリテラシーは身につけてもらう(データ分析までできる必要はないが)。
  • 3本の矢による先行取り組みとして、秋の行政レビューはEBPMの発想でも実施することにした。事業をいくつかピックアップし、レビューを模擬セッションで試行したところ、事業の必要性と目的の明確化、手段の合理性(実施内容の妥当性、予算執行の効率性)、事業の有効性について、必ずしも良い説明ばかりではなかった。そもそも被説明変数がはっきりしないと因果関係もはっきりしないが、必ずしも被説明変数を明確にしないまま施策の立案が行われ、比較も確認もできない、といった問題がある。
  • EBPMの定着までには、試行錯誤で510年かかるだろうが、徐々に進めていきたい。

次に上瀬氏が講演した。

  • 主要国では官民をあげてデータ活用の環境整備を進めている。政策形成へのデータ活用における世界的潮流として注目されるのがEBPMEvidence Based Policy Making)である。EBPMは、エビデンスを活用し、効果的・効率的な政策運営を目指すものである。政策の運営に必要なデータの適正な処理・活用方法やデータマネジメントを実施するためのノウハウ、環境整備が求められる。
  • 財源が限られているなかでEBPMの重要性は高まっている。いかにデータを行政に取り込めるか。許認可や価格設定に活用可能性がある。行政データをデータプラットフォームに取り込み、そこに正しいノウハウを充て国民に公開する。
  • Evidence」の定義だが、明確な定義はないが、「バイアスのない方法により得たデータをバイアスのない方法で分析して得られた結果」と正樹氏らが提案している。
  • 通常EBPMで根拠として活用されるのはランダム化比較実験の結果である。他に準実験も重視される。それ出来なければ多様なリアルデータも対象とし、ICTにより分析を洗練させることで、実験を越えた知見を目指すことになる。しかし、リアルデータ比較では実際の政策効果を評価するのはかなり難しく、バイアス、ノイズの影響をいかにミスリードしないようにできるかが重要になる。
  • 米国ははるかに進んでいる。データを集め利用する環境が整備されている。個人でもクレジットの信用スコアを簡単に知ることが出来るなど、良くも悪くもデータがプラットフォームとして整備されている。一方で個人情報保護などに問題もある。英国ではWhat Works Centreによる政策レビューが行われ、執行部隊とは別に客観的に評価するシステムが整っている。日本ではデータは十分に活用されていないし、データの公開も限られている。個人情報保護の難しさ、省庁間連携のなさ、縦割り行政などが影響している。WWCでは、評価の信憑性をレイティングしている。これは日本でも導入したいものだ。評価部隊が切磋琢磨する仕組みになるからだ。
  • 米国では、莫大なデータを共有し、活用できる仕組みがある。オバマ政権後半に特に強化された。成果をだせばメリットを還元し、うまくいかなければ次の施策に繋げるという形で各省の施策を競争させている。失敗したら怒られるだけでは職員のモチベーションを保てずうまくいかない。アメとムチのバランスが重要である。
  • 労働省が失業給付期間の最小化のためにEBPMを活用した事例がある。再就職支援プログラムとの連携で失業を押さえるとともに、失業給付期間の最小化にも効果がでた。
  • ニューヨーク市では犯罪防止への取り組みが行われている。全てがEBPMによる効果ではない(ジュリアーノ市長の過激な政策等のミックス効果)が、犯罪は目に見えて減少した。2:8の法則でやるべきことを順序づけ、最大の問題を特定し、高いパフォーマンスが得られるポイントに力を集中して解決するという手順が根付いてきている。
  • 英国では、既存のデータをまずはチェックする足りなければデータを集めるデータをクレンジングする施策を評価するその結果で次の施策を実施するというサイクルを動かしている。データには、時には心理学、行動経済学的観点も含まれる。
  • EBPMの有望領域として「人口減少」関連施策を提言したい。政策効果が上がる可能性が高い。EBPMの推進にはデータ連携基盤を如何に作るかが最大の課題である。そのほか、政府がEBPMをきちんと位置づけ、EBPMへの理解を促進する必要がある。

二つの講演の後、次のような話題について質疑が行われた。

現状の取り組みに関わる質疑

質問(Q):政策評価の対象としては何が有効なのか?
宮部回答(AM):まだ手探りでやっているのだが、行政の様々な意思決定に活用できそうだと感じている。これまで各国でEBPMが発展してきた分野の代表格は、労働・教育・医療。これらはデータを多く取れ、予算規模も大きかった。それがEBPMを発展させた要因になっていると思う。
上瀬回答(AK):政策上のプライオリティがあり、かつデータが取りやすいところから始めるしかない。費用、容易度、データクオリティ、インパクト等などを考えて試行錯誤することになるだろう。逆に、国策としてやらざるを得ないオリンピック整備などに適用しても効果は見込めないのでEBPMの対象とするのは不適当である。
コメント(C): JR東日本はEBPMを推進してきた。Suicaで旅客データを収集し、それをベースに新路線の開拓など様々な事業を進めて、ビジネスを成功させた。
AM:正にそう思う。民間は切迫感があり活用の意識がある。政府のデータを公開すると、民間マーケティングなどにも活用が考えられる。
Q:人材育成の必要性はよく分かるが、それをどの範囲にどのように行うか方針はあるのか?
AM:今進めているところで確定的なものはない。現在は使う側、作る側の育成の検討を進めている。基本的なリテラシーについては役人も国民も必要があると思う。IT教育については文科省も進めている。
QEBPM推進統括官はどのくらいの役職の人物を想定しているのか?
AM:上位の審議官クラスの役職者を想定している。
CCIOの時には各省官房長が指定されたが、忙しすぎて、結局民間のCIO補佐官に丸投げされている。そのようなことにならないようにしてほしい。
Q:講演の中にDataEvidenceではないという発言が出てきたが、それは本当に正しいのか?役所のdataについては、そもそも電子化されていないという問題がある。
AM:「データ=エビデンスではない」というのは「因果関係を示せないものはエビデンスではない」という意味である。紙のデータなどでも、有用なものは電子化を進める方針。最近は申請の電子化などでデータの入力から電子化が進められている。一方で電子申請を可能にしたが、利用が進まないものもある。ともかく、大企業に紙で届け出させるとかというのは止めさせたいと思う。 

将来像に関する質疑

QAIを活用するのはいいが、AIで答えが出てもロジックモデル自体、あるいはロジックモデルの善し悪しが分からない。そのようなものを使っていいかという問題がある。うまくいっているうちはよいが、いずれ問題になるのではないか?
AKAIを何に対して使うか、どこまで使うかというのは議論の余地はあると思う。
AM:説明責任があるので、その施策を採用する際のAIのロジックが不明であれば、役人が改めて考えることになると思う。
QEBPMを自治体に展開するつもりはないか?
AM:政府もこれからなので自治体に進めるようには言いづらいが、オープンデータについては法律上自治体も進めるように規定されている。直接何かをするように、というわけではないが、将来的には自治体にも広まっていくだろう。国が持っているデータを自治体に活用してもらい、自治体が持っているデータを加えて、さらに様々な分野で活用出来るようになるのではないか。
Q:自治体への展開に際し、ありがちなのはデータのフォーマットがバラバラになったり、ツールの二重投資になったりの懸念があると思う。展開にあたっては、中央省庁が音頭をとってフォーマットやツールを決めた方がいいと思うが、検討範囲に入っているか?
AM:内閣官房の方では標準化や定義について話をしているので、そこで議論になっているかもしれない。データ整備先行になるのか、活用マインドから始まるのか。マインド自体が足りていないという部分もある。データをどう繋ぐかという点については総務省の方で検討を進めている。
Q:政府の中でEBPMにトライアルしているが、データを出せば民間が勝手にやってくれることも十分考えられる。どこまでオープン化を展望しているのか?
AM:長期的には、民間開放が進んでいくと考えている。ガイドラインにより情報を出せるようにしたいと思う。アメリカでは、統計のサンプルファイルも多く提供されており、日本でもそのようなものを整備して増やせば、活用が進むと思う。特に地方でのデータ整備の推進も上げられているので整備は進められていくと思う。
Q:民にデータが行く場合には、そのとたんにデータ提供の価格が上がって、それがボトルネックになることが考えられる。そのようなことにならないようにしてほしいのだが?
AM:普通は特定の企業だけに出すということにはならないので安心して欲しい。 

最後に司会が次のようにまとめセミナーは終了した。

行政職員がデータを用いようと思うのが第一歩。その先でデータを説明できるようになる。そこまでいけば、アメリカや英国のようにデータに基づいて政策決定できるきっかけになる。