投稿者「ICPF」のアーカイブ

電子行政研究会ワークショップ「オバマ陣営のメディア戦略と戸別訪問」 海野素央明治大学教授

電子行政研究会では、参議院選挙におけるインターネット選挙運動を検証し選挙制度の改革を提言する目的で、勉強会(ワークショップ)を連続して開催しています。20131126日には明治大学海野素央教授に「オバマ陣営のメディア戦略と戸別訪問」について講演いただきました。勉強会には20名が参加し、活発な意見交換が行われました。

海野教授の主な主張点は次の通りです。

  • 2008年と2012年の大統領選挙、2010年の中間選挙で、オバマ陣営に選挙ボランティアとして参加した。特にコネがあったわけではなく、選挙事務所に出向いて申し出たのだが、オバマ陣営は多様性や包含(インクルージョン)を標榜していたので、快く受け入れてもらえた。
  • オバマのネット選挙は情報を受信することから始まる。年齢・性別・人種・大統領への親近感などを絞り込んだうえで、カスタマイズされたメッセージを発信する。日本では情報発信チャンネルが増えたと解釈され、「今日も頑張ります」の類のメッセージをやたらと発信していたが、オバマは違った。相手が大学生なら「学資ローンの利上げを阻止しよう」というのがカスタマイズされたメッセージである。医療制度・移民制度・学資ローン・気候変動などについて、相手に合わせてメッセージを送っていた。
  • ネットの利活用は若者を取り込む。2008年には、誰を副大統領に指名したかをメディアより先にネットに流した。2012年には、有権者登録をした若者の50%が投票した。オバマは人々の意見を傾聴する。そのうえで政治的なアクションを取る。だから、「僕らが進めてきた医療制度改革を止めてはならない」というように「僕ら(We)」を強調する言い方になる。それで、若者が燃え上がる。
  • 選挙運動のもう一つの柱が戸別訪問。選挙管理委員会から過去の投票行動情報付きで有権者名簿を入手し、たとえば民主党支持者だが時々しか投票に行かない人に狙いを絞り、戸別訪問する。戸別訪問も、相手の意見を傾聴し受容し、共通する価値観を見出すように行う。相手が自ら進んで投票に出向くようにするのだ。コミットメント(投票に行く約束)を得たら、サインをもらい、投票日の1週間前にコミットメントカード(約束カード)を相手に郵送する。過去の投票行動情報付きで有権者名簿など日本なら個人情報保護の対象となるだろうが、米国では入手は容易で、州によっては無償である。
  • 民主党支持者だが時々しか投票に行かない人のフェースブック友達を探し、友達から話をするという方法も取る。ネット選挙運動と戸別訪問はこのようにして連動・融合している。
  • 戸別訪問でどんな政治課題に関心があるか、どんな意見を持っているかを聞く。それが、政策立案に利用される。ここにも傾聴の姿勢がある。それが有権者の政治意識を高め、積極的参加をもたらす。戸別訪問の利点は、教育的側面・投票率アップ・政治意識と参加・ボランティア運動家の育成・若者の参加・ネットとの連動などである。選挙ボランティアの大半は若者であり、大学を一年間休学しているものもいる。活動することの意義を若者が理解して、ボランティアとして参加するのだ。
  • 戸別訪問は組織政党に有利という意見もあるが、実際は、組織政党の壁を破るのが戸別訪問である。顔を合わせて政治の話をすることで有権者の意識が変わり、政治家への親近度を強め、それで組織政党の壁を破ることができるのだ。
  • わが国で戸別訪問が認められていないのは間違っている。そんな国は中国とサウジアラビア位。戸別訪問には買収の危険があるなどと言う意見もあるが、すぐにツイッターで拡散するから歯止めがかけられる。ビッグデータ解析・有権者名簿の活用・戸別訪問、それにネット選挙運動が連動し、政治家と有権者が双方向でコミュニケーションをとるように変革していかなければならない。

電子行政研究会ワークショップ「マイナンバーは行政サービスをどう変えるか」 村本明彦氏(内閣官房社会保障改革担当室)他

201375日、東洋大学大手町サテライトにて、第5回ワークショップ「マイナンバーは行政サービスをどう変えるか」を開催しました。
当日は、講師を含め50名近くの参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーション、パネルディスカッション、そして参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、村本明彦氏(内閣官房社会保障改革担当室)から「マイナンバーが実現する新しい行政サービス」の講演をいただきました。

村本明彦氏(内閣官房社会保障改革担当室)の講演資料はこちらにあります。

  • 番号制度で導入する予定のシステムである情報提供ネットワークシステムとマイ・ポータルシステムの要件の検討、関係省庁や地方公共団体への説明を行っている。昨年度マイ・ポータルのユースケースの調査研究も行った。
  • 番号制度導入のメリットとしては、「住民」と「行政」の両者にとって過重な負担が軽減されることが挙げられる。
  • 現状、各種手当の申請時に、申請者は関係機関を回って、添付書類を揃える必要がある。
  • 番号制度の導入により、申請を受けた行政機関等が、関係各機関に照会を行うことで申請者が提出する添付書類が簡素化される。つまり、受付窓口での手続だけで完結する手続が増えるようになると考えられる。
  • 番号制度の導入により、行政機関等の間や業務間の連携が行われることで、より正確な情報を得ることが可能となり、真に手を差し伸べるべき者に対しての、よりきめ細やかな支援が期待される。
  • 現状、行政側では、確認作業等に係る業務に多大なコストが発生している。例えば、提供されるサービスの受給判定のために、他の行政機関等から収受した情報を確認する手間・作業の負担が大きく、また、外部から提供された情報と内部のデータと結び付ける際に、転記・照合・電算入力ミス等が発生する可能性がある。更には、手作業による事務、書類審査が多く、手間、時間、費用がかかるだけでなく、重複して作業を行うなど、無駄な経費が多いと考えられる。
  • 税分野を例に挙げると、例えば、市役所では、各機関から提出される資料を、「氏名・住所・生年月日」をキーとして、名寄せを行っているが、番号制度の導入により、同一人であることを確実に識別することができる「個人番号」をキーとした名寄せにより、正確で効率的な名寄せが可能となる。
  • 番号制度の導入により内閣官房が調達する予定の主なシステムには、情報提供ネットワークシステムと情報提供等記録開示システム、いわゆるマイ・ポータルがある。
  • 情報提供ネットワークシステムは、行政機関等の間の情報連携をするためのシステムであり、例えて言えば、いわば関所としての役割を果たす。つまり、あらかじめ法律において定められた情報照会・情報提供可能な行政機関等による情報連携を許可し、それ以外は認めない。また、法律において定められた事務(手続)のデータ(特定個人情報)のみ情報連携を許可することとなる。
  • 情報提供ネットワークシステムには、個人情報が蓄積されないので、個人情報の一元管理をしない。つまり、番号制度が導入されても、個人情報はそれぞれの情報保有機関側においてその事務に必要な範囲で管理されていることには変わりがない。
  • マイ・ポータルは、利用者が自宅のパソコンや行政機関等に設置されたパソコンから、自己の情報や各種行政サービスを閲覧できる個人用のホームページのようなものである。このようなマイ・ポータルには、大きく4つの機能が想定されている。
  1. 情報提供記録表示機能:自分の特定個人情報をいつ、誰が、なぜ情報提供したのか確認できる機能。
  2. 自己情報表示機能:行政機関等が持っている自分の特定個人情報を確認できる機能。
  3. ワンストップサービス:行政機関などへの手続を一度で済ませる機能
  4. プッシュ型サービス:一人ひとりにあったお知らせを表示できる機能。例えば、地方公共団体が妊婦さんへ、母親教室の案内を提供する等、適切な情報、一人ひとりにあった情報を提供できることが考えられる。
  • 昨年度実施した調査研究において、マイ・ポータルを活用することによって、行政サービスの向上等が期待されるユースケースを10件分析した。そのうちのいくつかを紹介する。
  1. 税分野では、税務当局から確定申告や出張相談窓口等の案内がプッシュ型サービスで通知され、国民健康保険料等の確定申告に必要な情報をマイ・ポータルの画面から確認できると考えられる。
  2. 介護に関する分野、障害者に関する分野では、例えば、利用できる介護サービスや補助制度の案内 地方公共団体が行う支援等の情報、居住地で受けられるサービスの案内等をプッシュ型サービスで通知できると考えられる。
  3. 被災時においては、現状は、震災時にウィークリーマンションや親戚宅等の避難所以外の場所にいると情報が届かないケースも考えられる。マイ・ポータルにおいて、各種支援制度のお知らせを通知すれば、どこにいても情報を見ることができ、情報送信側である、地方公共団体側で利用者がお知らせを閲覧したことをわかる仕組みにしておけば、情報を確認していない人への対応など次の段階へ進むことができると考えられる。
  • 自分も難病になった親族の介護等に関する申請手続をしたことがあるが、その時、どういう補助制度が適用されるのか、いつどこへ、どのような手続をすればよいのかが、分らなかった。例えば、難病になったという情報を地方公共団体が把握し、その後の手続のきっかけとなる参考情報をプッシュ型サービスで通知できれば、大変役立つのではないかと考える。
  • ワンストップサービスは、電子申請により実現されることになると考えるが、既存の電子申請システムが多数存在していることも踏まえ、利便性の高いシステムを今後検討する必要がある。その際、すべての申請を電子申請とすると考えると逆に利便性が低下することも考えられる。つまり、電子申請を実現することにより便利になる手続と、窓口で対面によりサービスを提供すべきものとはきちんと分けて検討すべきである。
  • 例えば、介護タクシーの助成申請において、領収書の提出が必要なケースもあり、電子申請だけでは完結しないといったケースがある。その場合、タクシー会社が領収金額を行政機関に届くような仕組みとし、領収書の提出を不要とする等についても検討すべきである。つまり、マイ・ポータルが導入されることにより、電子申請の実現だけを検討するのではなく、利用者の利便性が最も向上するように、事務手続自体を変えることを検討する必要があると考える。
  • 調査研究では、マイ・ポータルのユースケースの分析を踏まえてデモ画面を作り、高齢者、障害者を含む一般の方々に評価してもらった。その際、文字色等の問題や情報量の問題等、配慮すべき事項について、整理した。
  • また、デモ画面の評価では、予防接種、介護・障害者支援、妊娠出産等、家族のための支援サービスの評価が特に高かった。一方、セキュリティに対する不安の声もあった。
  • 現在、マイ・ポータルでは、「個人番号カード」による公的個人認証を利用したログインを予定しているが、今後、ID/PWによるログインも検討する必要があると考えられる。
  • 地方公共団体の電子申請システムでは電子証明が必要な手続、ID/PWが必要な手続、ID/PWも必要としない手続などがある。マイ・ポータルでも、複数の選択肢があって良いと考えられ、今後検討していくべきと考えられる。
  • マイ・ポータルのトップページには、マイ・ポータルへのログイン画面だけでなく、例えば、全ての人を対象としたお知らせの表示や行政機関等のリンク集を設置した方が、利用者の利便性が向上すると考えられる。
  • 社会保障・税番号制度の導入に向けたロードマップでは、今年の12月末までに、別表第一と第二の詳細を定める主務省令を制定する予定である。個人番号の通知は平成2710月頃を予定しており、平成281月から個人番号カードの交付、個人番号の利用が始まる。さらに、情報提供ネットワークシステム、マイ・ポータルの運用開始が平成29年から始まり、具体的には、平成29年1月から国の機関の連携、同7月を目途に地方公共団体との連携が開始される予定である。
  • 平成261月から情報提供ネットワークシステム等の設計・開発等をしていく予定。工程管理のプロである工程管理支援業者も調達し、開発等の進捗管理だけでなく、特にテスト時では、国と地方自治体との連携・調整の支援も行うことを考えている。
  • 「特定個人情報保護委員会」は、平成26年に設置する予定である。また、番号制度に関する広報で正確な情報をお知らせして、皆さまからの意見を聞くことも重要と考えている。

続いて、NTTクラルティ株式会社の小高公聡氏から「マイ・ポータルへの期待」の講演をいただきました。

小高公聡氏(NTTクラルティ株式会社)の講演資料はこちらにあります。

  • 障害者の場合、一般の行政手続に加え、医療、年金、福祉サービスを中心として行政手続を行う機会が多いが、そこには多くのバリアがある。視覚障害の場合、まず役所の窓口に行くことが困難である。また、書類を記入することができない、そもそも通知を郵送で受け取っても、郵便物の内容が分からないといったこともある。
  • 電子申請ができれば非常に便利だが、現在の電子申請には様々なバリアがある。例えば、読み上げソフトでは操作ができない、時間制限があって入力が間に合わない等。また、IDカードの取得のために役所に行くこともバリアになる。申請データの入力時に、別の用紙を参照しながら(見ながら)行う必要があることも視覚障害者にはバリアになる。
  • そこで、以下の理由からマイ・ポータルが期待される。①自宅で手続きができる、②自分でできる(プライベートな事柄等を他人や家族に知らせずに済む)、③情報連携のシステムにより別の紙情報の参照が不要になる。
  • 特にプッシュ型サービスは、紙ベースの情報を読むことができない視覚障害者には有効である。(プッシュ型のお知らせに対する)返答機能によって、それだけで手続ができれば、パソコンに不慣れな障害者にとっても非常に便利である。
  • ただし、マイ・ポータルには以下のことが求められる。まず第一は、システムにおけるアクセシビリティへの対応である。例えば、「見出し」属性を正しく付ける、画像に代替テキストを含める、色に依存した情報提供は行わないなど、JIS規格(JIS X 8341-3)への準拠が求められる。そしてシステム自体のアクセシビリティに加えて、その前段階である登録作業が容易に行えるか、IDカードが他のカードと触って識別できるかなど、システム以外のところも重要になる。マイ・ポータルは、このようなアクセシビリティへの配慮を徹底し、さまざまな人が真に使えるシステムとなって欲しい。

続いて、東洋大学の山田肇教授(電子行政研究会副委員長)が「電子行政と公民連携」の講演を行いました。

山田 肇氏(東洋大学教授)の講演資料はこちらにあります。

  • 5年、10年先を見据え、根本的に考え方自体を変えた方が良いのではないかという極論を示す。
  • 2009年に電子政府ユーザビリティガイドライン、セキュリティガイドラインが策定されたが、その後棚ざらしにされた。住基カードも利便性向上が期待できないため普及していない。
  • セキュリティについては、マイナンバー法に対し参院で附帯決議を付けており、マイ・ポータルでより高度な認証を求めている。これでは行政側が過剰にセキュリティ対応をして、結果的に使いにくいものになってしまう恐れがある。
  • 解決策として、民間が競争下で電子申請アプリケーションを提供し、国民はその中から選ぶ形にしてはどうか。政府は、申請受付後の処理のみ電子化する。アプリケーション・インターフェース(API)が定まっていれば可能である。
  • ポータルについても、民間のポータルサイトに自治体からのお知らせが表示されれば良い。国民は、日常的に利用しているポータルをマイ・ポータルとして使う。民間と政府でデータをやり取りするルールが定まっていれば可能である。
  • 行政事務について行政データが蓄積され、オープンデータ化して、APIを通じて外部へ提供される。その際には、国民にとって使いやすい形になるように民間事業者がデータを編集することになる。
  • 行政と民間の間に公開されたAPIがあれば、正のスパイラルを作ることができる。
  • 民間の役割が大きくなり、セキュリティが不安だと思われるが、既に国民はネット証券で大きな額の取引をしている。セキュリティはシステム設計の問題であり、公が民に勝るわけでもその逆でもない。
  • タブレット端末は、使いやすさを優先する設計思想の成果である。その成果を政府は利用すれば良い。行政サービスでも、利用者の使いやすさを最優先して欲しい。
  • APIを公開し、民間にアプリ開発を競争させるべきである。ユーザインタフェースを民間に任せることができれば、公共機関は内部システムの開発のみで済むので、コスト削減効果もある。21世紀の電子行政は公民連携で実現する。情報の分野でもPFIを活用して欲しい。

後半は、3名の講師によるパネルディスカッションの後、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

  • プッシュ型サービスによる情報提供から電子申請へつながるシームレスなサービスがキラーコンテンツになるのではないか。
  • マイ・ポータルから、使えるサービスにどの程度繋がっているかが鍵になる。
  • 魅力ある情報を自治体、関係省庁からお知らせすることが重要。提供情報の有益性等については、官官(特に自治体間)で競ってほしい。
  • 機微情報を扱うので厳重なセキュリティ対策が必要と言われるが、機微情報をきちんと使えるようにすることが重要。例えば障害の情報は機微情報だが、行政の窓口に行って代読代筆をしてもらえば、その時点で周囲の人に機微情報が漏れてしまうこともある。ネットを通じて独力で申請することができ、自分で情報を管理できることが重要である。
  • マイ・ポータルへは、個人番号カードでのログインしか認めないと、利用者の利便性が低下することから、ID/PWでのログインも認めるべきとの意見もある。ID/PWでのログインも認めることとするならば、セキュリティに関しては、情報漏洩の影響度等、リスクについて、きちんと周知する必要がある。その上で、ログイン方法を自分で選択できるようにしても良いのではないか。
  • アクセシビリティについて、全盲だけでなく、色弱等、様々な障害を想像して配慮して欲しい。定期的にチェックして改善することが重要。
  • ライフスタイルの変化への対応が求められる。例えば共働き世帯では日中に行政窓口へ行くことが難しく、オンラインサービスが必要になる。
  • ブロードバンドアクセスは無線が主の時代になりつつあり、モバイル端末対応も重要。モバイル化によって、ユースケースや利用シーンの考え方も変わるのではないか。
  • マイ・ポータルの構築では、いずれかの自治体で先行的に実験し、問題点を洗い出して、最終版を作るべき。いきなり全体を作ると、使いにくいまま何年も使い続けることになり、マイ・ポータルへの信頼が消えてしまう。
  • いずれかの自治体で先行的に実験すると言う考え方もあるが、例えば、マイ・ポータルの4つの機能を徐々に拡充していくやり方もある。マイ・ポータルの運用開始時には、機能を絞り、開発規模の大きい電子申請の実施を検討し、組み入れていくなど、段階的に機能を増やすという考え方もあるのではないか。
  • これまでの電子行政はアクセシビリティが整備されず、何度も裏切られてきたので、ユーザーテストを頻繁に実施して使えるものにして欲しい。
  • 番号制度では、自由の拡大、プライバシー、生存権の向上の3つが重要と考える。
  • 生存権的な観点では、年金のミスの解消や災害時の生存確認等での活用が期待できる。他の行政サービスと組み合わせることで、生存権の向上に様々寄与できる。
  • 障害者が災害を察知することは非常に大変。要援護者の情報を基に、災害情報を本人に通知する仕組みがあるととても良い。
  • マイ・ポータルを代理人で扱えることについても検討する必要がある。例えば法定代理人は、本人(被代理人)の「個人番号カード」を利用してログインするという考え方もあるが、そもそも、マイ・ポータルに代理機能を設置した方が良いと考える。税理士業等との関係でも、代理機能があればより利便性が向上するのではとの期待もある。
  • 低所得者では、情報機器を購入できないことが多い。このような人を支援する施策を実施してほしい。
  • マイ・ポータルで全てが完結するわけではない。様々なところへ繋がる、行政サービスの起点になるものというイメージで捉えて欲しい。

討論によって、マイナンバー、マイ・ポータルによる新しい行政サービスは国民向けの行政サービス向上ばかりでなく、障害者をはじめ国民全体の生存権の向上にも関わる重要な取組であること、使いやすく利用価値の高いサービスとするため幅広い連携が重要であることなどが、参加者に共通の認識となりました。

電子行政研究会ワークショップ「オープンデータと行政・市民活動」 村上文洋氏(三菱総合研究所)他

2012119日、東京駅八重洲口近くにあるTKP東京駅ビジネスセンター1号館で、第3回ワークショップ「オープンデータと行政・市民活動」を開催しました。
当日は、講師を含め20名以上の参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーション、鼎談、そして参加者全員でのディスカッションが行われました。 

はじめに、村上文洋氏(三菱総合研究所)から「公共データのオープン化は社会や企業にどのような影響をもたらすか」の講演をいただきました。

村上文洋氏(株式会社三菱総合研究所)の講演資料はこちらにあります。

  • 東日本大震災は、オープンデータの可能性や必要性を実感する契機のひとつとなった。新しいスタイルで様々な情報が活用される一方で、情報の所在が一定せず分かりにくい等の課題も明らかになった。
  • EUではオープンデータに関するEU指令が出ており、その経済効果を1400億ユーロと試算。
  • アメリカでは大統領が「オープンガバメントに関する覚書」を発表し強力に推進。
  • 日本でも電子行政オープンデータ戦略が決定され、さらに産官学が連携する「オープンデータ流通推進コンソーシアム」が旗揚げ。
  • オープンデータ推進には様々な課題が階層的に存在しており、今後、技術開発や標準化だけでなく、著作権やライセンスの整備、オープンデータに関する社会的コンセンサス作りなどを進める必要がある。

続いて、横浜市政策局政策課政策支援センターの関口昌幸氏から「横浜市におけるオープンデータへの挑戦」の講演をいただきました。

関口昌幸氏(横浜市政策局政策課)の講演資料はこちらにあります。

  • 横浜市は、オープンデータ推進により新しい形での都市再生を目指している。
  • 背景として、超高齢化社会が目前に迫り官民協働で地域課題への対応が必要になっていること、従来型の就労モデルが通用しなくなり、地域に新たな雇用を創出して活性化する必要が生じていることがある。
  • オープンデータによる地域産業振興には、民間と行政が新しい形で協働する戦略が必要になる。特に地域課題の解決には、地域の人々のニーズや意見を集約するしくみが必要。それらの情報を集め、ジョイントベンチャー等につなぐしくみが重要になる。
  • 横浜市ではオープンデータの推進は行政だけでなく民間と共同で進める。そのための体制づくりと様々なイベントを進めている。

続いて、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボの杉浦裕樹氏から「横浜の地域情報化の担い手たちの活動」の講演をいただきました。

  • 横浜で、多様なプレイヤーの活動の場づくりを進めている。
  • 地域には様々なコミュニティがあるが、相互のつながりが薄い。これらのつながりづくりが重要なテーマ。ICTを活用するが、基本は人と人とのつながりを作るということである。
  • 横浜が抱える課題をビジネスチャンスに変えるという視点で取り組んでいる。地元の企業やIT人材を集めたワークショップ、ウェブを活用した地域情報の共有、シェアオフィスの運営などを通じて、新しい連携を生み出し、都市のイノベーションを推進する。

後半は、3名の講師による鼎談の後、講師も含め参加者全員で、地域社会のオープンデータに関する活発な討論、意見交換が行われました。

  • 大きなビジネスを生み出すビッグデータとは別に、コミュニティビジネスを生み出すオープンデータの効果には違う視点があるのではないか。
  • オープンデータは従来の電子会議室等の取組と異なり、産業活性化、雇用創出まで視野に入れ、広がりのある取り組みを進める点が特徴。
  • 地域のオープンデータは、情報流通の「場」を作ることが重要である。ソーシャルビジネスにはさまざまな担い手がおり、それらの人々の活動と行政を結びつける場作りが重要。GDPに出ない地域活性化効果につながる。
  • 地域課題の状況をわかりやすい形でオープンにすることが大事。よりきめ細かい情報の共有が、自分の地域を自分でマネジメントする形に結びつく。
  • 従来はボランティアベースだった地域活動を担える層が希薄化している。これをビジネスとして捕らえ、コミュニティサービスが金銭を通じて回っていくしくみづくりが重要。
  • 行政サイトは出す情報量が10年で大幅に増えたが、見る人は少ない。情報の小売業ではなく卸売業をやることが必要では。行政情報と民間情報をあわせて提供するプラットフォームが必要になる。
  • 自分が持っているデータとオープンデータで提供されるデータを組み合わせて自分たち用の情報を作っていくという構造、メカニズムを考える必要がある。
  • これまで社会的課題の把握は「勘」によっていたが、それが本当に課題なのかを、オープンデータで確認ができるようになるのではないか。
  • GIS等でリアルタイムデータが表示できるようになれば、関心ある人の関心を喚起するしくみとして有効ではないか。
  • ビッグデータが注目されているが、実はロングテールのところが重要ではないか。
  • ロングテールをいかに自治体がリアルタイムに把握し地域企業と共有していくかが課題。
  • 自治体内部ではデータはリアルタイムで入ってくるが、それらをどう見せるかができていない。自治体間の比較など、見る人の立場で見せるように変えていく必要がある。
  • データそのもののオープン化は重要だが、企業・市民・公共をつなぐ情報連携のしかけをどう作るか、リアルの取組も含めて全体のアーキテクチャを考える必要がある。

討論によって、地域のオープンデータは地域社会の維持・活性化につながる重要な取組であること、データのオープン化だけでなく、産官民をつなぐしかけづくりがきわめて重要であることなどが、参加者に共通の認識となりました。

電子行政研究会ワークショップ「電子行政オープンデータ戦略について」 坂下哲也氏(日本情報経済社会推進協会)他

2012910日、東京都千代田区大手町にある東洋大学大手町サテライトで、第2回目となるワークショップ「電子行政オープンデータ戦略について」を開催しました。
当日は、講師を含め30名の参加者にお集まりいただき、2つの講演に加え、参加者全員での大変熱のこもったディスカッションが行われました 

はじめに、庄司昌彦氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)から「電子行政オープンデータ戦略に関する提言の概要と検討」の講演をいただきました。

庄司昌彦氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)の講演資料はこちらにあります。

  • 日本の政策形成過程を透明・国民参加・協働化するためにオープンガバメントが企画され、電子行政オープンデータ戦略はその一環である。東日本大震災の際に、協力・動員のメディアとしてネットが活用され、その中で政府のデータが公開され、国民に活用された。これが契機になった。またわが国は、「税金はどこに行った?」といった試行事例もある。
  • 今回の電子行政オープンデータ戦略は、政府がゴーサインを出したという強いメッセージである。総務省と経済産業省はそれぞれコンソーシアム・フォーラムを組織化した。
  • 許認可と結び付く形で政府には膨大なデータがあり、それを国民に利用してもらう。イギリスでは薬局や高齢者入居施設を探すサービス、オランダでは統計データの提供などの実践例があり、アメリカではアプリケーションの開発コンテストも行われている。
  • オープンデータを進めるためには、API公開や開発イベントなどを進めるべきだ。また、国民のニーズと政府のデータとを結びつける仲介者ビジネスを育てる必要がある。

続いて、日本情報経済社会推進協会の坂下哲也氏から「公共地理空間情報の利用状況とオープンデータ」の講演をいただきました。 

坂下哲也氏(日本情報経済社会推進協会)の講演資料はこちらにあります。

  • 地理空間情報を利用したサービスでは、工事情報、イベント情報、店舗情報などを集めるのに最も手間がかかる。今は、サービス提供者はここで勝負しているが、政府のデータをもっと利用できるのであれば、情報を加工したりソーシャルネットと結合させたりする部分(つまりデータに付加価値をつける部分)が競争の場になる。
  • 2010年にアイデアボックスで政府が国民の声を集め出したのをきっかけに、我々は政府に働きかけてきた。東日本大震災の際、緊急時なのにデータが公開されない問題が起き、オープンデータを容認する方向に政府は変わり出した。政府の持つデータの二次利用を促進するデータ戦略が必要である。
  • 店舗の開業廃業、路外駐車場の設置、道路工事といった情報を元に新しいコンテンツが創出できる。新しいソリューションが提供できる。都市計画・地域事業創出、災害対策、CO2削減と円滑な移動、医療費削減などに役立てられる。
  • オープンデータを進めるには、財産権、著作権、プライバシーなどが課題になる。行政は国民の負託で事務しているので、行政の持つ情報は国民みんなのものである、といった思想に変革していく必要がある。

講演終了後、講師も含め参加者全員で、オープンデータ戦略に関する活発な討論、意見交換が行われました。

  • 民主党政権が戦略を打ち出したが、仮に政権が交代しても、オープンデータへの流れは変わらないだろう。行政自身も推進に舵を切っている。
  • オープンデータ戦略ではすぐに対応可能なものから順番に公開していくことになっているが、国民が必要とする順番に出すようにすべきである。そのためには、国民の声を基に行政に指示する組織が必要だが、政府CIOはその役割を果たせるだろうか。
  • 政府は政策目的を達成するためにデータを集めているわけで、国民のニーズがあるからといって政策目的と無関係なデータを集める必要はない。この点については歯止めが必要ではないか。
  • 地理空間情報など、多くの情報は自治体が持っている。政府が戦略を決めたからといって自治体がその通り動くわけではない。戦略のいう通り、2013年までに自治体が動くとは思えない。
  • やる気のある首長が主導して、地方で先行事例を積み上げていく必要があるのではないか。自治体間で競争させるのも一案だ。
  • コンテストからインキュベーションにも結び付ける仕掛けが必要である。地方での先行事例の中で、公民が連携してビジネス化を進めるべきだ。オープンデータにはこんないいことがあるのだ、と国民も行政も気付く。それが普及のきっかけになるだろう。
  • プライバシーは重要である。複数のデータを組み合わせたら、思わぬことが明らかになるかもしれない。オープンデータでのプライバシー問題に関する監視機能を、マイナンバーの第三者委員会に委ねてはどうか。

討論によって、オープンデータは今後の電子行政の重要な柱であること、推進のためには官民が連携して知恵を出す必要があること、情報の収集や利用に関するルールが必要であることなどが、参加者に共通の認識となりました。