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セミナーシリーズ第4回「デジタル活用共生社会とウェブアクセシビリティ」 犬童周作総務省課長ほか

共催:情報通信政策フォーラム(ICPF)、ウェブアクセシビリティ推進協会(JWAC)
日時:5月30日木曜日18時30分から20時30分
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
講師:
デジタル活用共生社会実現会議報告と実現への道筋 犬童周作総務省情報流通振興課長
討論:情報受発信でのウェブアクセシビリティの課題 渡辺隆行東京女子大学教授(JWAC理事長)
司会:山田 肇(ICPF理事長、JWAC理事)
定員:40名

冒頭、犬童課長は資料に基づいて次のように講演した。

犬童課長の資料はこちらにあります。

  •  わが国は高齢化が進行しており、高齢化率は2065年に4割に近づくと予想されている。多くの高齢者は就業意欲が高くこれに応えていく必要がある一方、虚弱化が進行していくとともに、その高齢の期間もより長期に及ぶようになる。障害者総計860万人と高齢者等を合計すると日本国内でUD(ユニバーサルデザイン)を求める人々の数は膨大である。
  • 男女共同参画が推進されて女性就労M字カーブは解消されつつあるが、課題は残っている。在留外国人は増加する一方で、彼らをいかに社会に包摂するかも課題になっている。
  • 他方、猛烈な速度で情報通信技術は革新を続けている。ウェアラブル端末(IoT)を使って高齢者の心拍などをモニターし、適切に介護することも可能になってきている。関連のベンチャー企業も生まれている。さらに、第五世代移動通信がサービスイン直前だが、超高速・低遅延・多数同時接続性を活かして多様なサービスが提供できるようになると期待されている。
  • このような中、AI(人工知能)の進化も著しい。人間が画像を見ると脳が活動するが、脳活動を解析してどんな画像を見ているかをある程度は再現できるようになってきた。遠隔ロボット等を利用すれば、寝たきりの人も店頭で接客できるサービスも出始めてきている。めがね型のカメラをかけ、カメラで通行する人や車、自転車等を検出し、その情報を視覚障害者に伝え視覚障害者が自律的に外出できるようにする実証も行われている。
  • 高齢者、障害者、女性、外国人などの課題を情報通信技術で解決し、多様な人々が共生する社会を作りたい。そのため、総務省と厚生労働省の大臣政務官が共宰して「デジタル活用共生社会実現会議」が昨年11月に設置され、3月に報告がとりまとめられた。なお、同会議の下に設置された電話リレーサービスWGだけは継続検討中である。
  •  報告の主なポイントの一つが「デジタル活用支援員」である。地域のNPOやICT企業の退職者などが高齢者や障害者に寄り添って、例えば、高齢者であれば移動弱者、交通弱者、オンライン行政手続きなどの各課題に応じ、スマホ等のICT活用して解決していくための支援を考えていきたい。教室で教えるだけではなく、顔見知りになった地域の支援員が対象者の自宅で教えるといったことも共助の世界としてつながっていくことを期待している。技術進歩が急速なので、最新動向を支援員の間で共有できるポータルサイトも構築したい。
  •  AI活用は個々人の状態に応じた機器やサービスの提供を可能にする。今まではサンプルの平均値を出して、それに合う機器やサービスしか提供されなかったため、たとえば折角の補聴器も人によっては使いにくいといった事態が起きていた。これからはIoTやAIで一人ひとりの聴力(音の強度だけではなく、周波数感度なども含めて)に合わせた補聴器が提供できるようになるし、海外では開発も行われている。
  •  しかし、そのためにはAIが学習するデータが大量に蓄積されていなければならない。そこで、様々な障害者等の障害の状況や困りごとを共有できる障害情報共有プラットフォームの構築を構想している。企業はこれを閲覧することで個別の事情がより深く理解できるようになり、新製品やサービスの開発の気づきにつながっていく。製品のよい点・悪い点も共有プラットフォームに掲載され、個々人が自分に合った製品を選択する際に参考にできる。これが、報告の第二の主要点。
  •  第三は、個々の機器サービスがアクセシビリティ基準のどの内容に対応しているかを共通のテンプレートで自己宣言する仕組みの構築。政府調達の要件にもこの自己宣言の仕組みを参考にしていくことも考えている。
  •  報告には、このほか、地域ICTクラブの全国展開、多様な人々の就労支援、多言語対応とオープンデータ化などが盛り込まれた。

講演後、次のような質疑があった。

デジタル活用支援員について
Q(質問):支援員を資格化してはどうか。それによって支援員も技術知識をアップデートするだろう。
A(回答):資格化までは念頭にないが、地域ごとのルールは作る。それも併せて支援員制度への認知を高め、支援員を利用する障碍者・高齢者等を増やしていく。
Q:字幕で教える支援員も生み出していただきたい。
A:その通りである。支援員は多様なコミュニケーション手段で支援するべきだ。

実現への道について
Q:机上の空論にならないか心配だ。大風呂敷を広げるのではなく、少しずつ機動的に(アジャイルに)進めてほしい。
A:今日話したことを一気に実現しようとは考えていない。少しずつ進めて社会に定着させていきたい。
Q:今日の話は総務省だけでは実現しない。
A:経済産業省、厚生労働省などとも協力して報告を実現させていく。
Q:データの共有化は極めて重要で、是非進めてほしい。
A:視覚障害者団体は視覚障害者のニーズしか知らない、というような状況を変えていきたい。他の障害を重複して持っておられる方もいるし、他の障害者のニーズを知ることで相互理解が進むのも大切である。

中長期的な課題について
Q:政府調達でアクセシビリティ対応を強制するといったところまで進まないと状況は改善されないのではないか。
A:会議でも法整備を進めるべきという意見が出た。議員立法という話も聞くが、実効性を伴うには閣法も政府全体で検討していくべき。ただし、閣法を提案するには社会の意識を変革していく必要があり、今はそれに向かっているところ、と理解して欲しい。
Q:障害者自身が権利を強く主張しなければ法整備は進まないのではないか。
A:その通り。一方で、講演したように多様な機器が利用可能になり、ベンチャー企業も誕生している。これらを使いこなすことで、障害者の権利が満たされていくという側面もある。実現会議は報告の中で後段を強調している。

第二部では渡辺氏の司会でウェブアクセシビリティについて討論が実施された。

セミナーシリーズ第3回「デジタル手続き法で企業運営は変わるか」 木村康宏freee株式会社執行役員

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)
日時:5月17日金曜日18時30分から20時30分
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
講師:木村康宏(freee株式会社 執行役員社会インフラ企画部長)
司会:山田 肇(ICPF)
定員:40名

木村氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、木村氏は概略次の通り講演した。

  • 日本の労働生産性は先進7か国中最下位である。特に中小企業はバックオフィス業務の生産性が低い。しかし、行政への手続きなどバックオフィス業務の7割は自動化できる。中小企業にデジタル変革をもたらすという目標でfreee株式会社は設立された。
  • 電子政府は「不便」という次元を超えて「国際的な競争劣位」を産んでいる。民間サービスは使い勝手を最大限重視しているが、電子政府は使いにくい。電子政府の「コンシューマライゼーション」が必要である。システムが使いにくいために、使えるべき制度が使えないというのは、単に利便の問題を超えて、人権問題でもある。
  • 年末調整は従業員が必要事項をスマホ入力すれば、後は自動計算して電子申告までできるようになっている。所要時間は1/5に削減された。しかし、官からは住民税の通知書が紙で届き、納付書を持って銀行窓口に並ぶ状況である。従業員が転居すれば同じような手続きをいくつもの役所に行う必要がある。会社設立も雛形を使って定款が作成でき、士業が電子定款の作成を代行するサービスもある。しかし、官の側から「定款のインデントを直せ」といった趣味の領域の指示まで来る。電子だけでは完結しない。
  • 電子行政では関連する手続きをすべてポータル経由で一括してできるようにしなければならない。また、途中で紙が入ることなくデジタル完結する必要がある。デジタル手続法によって、そんな「あるべき姿」を実現する要素が整う。
  • さらに、API公開で民間側が使い勝手の良いサービスを提供できるようになる。freeeはクラウド会計サービスのAPIを公開しているが、それを利用していろいろな会社がそれぞれにアプリを提供している。なかには政治資金収支報告書の自動作成アプリまである。官がAPIを公開すれば同じようになるだろう。
  • 中途半端な電子化ではUX(User eXperience)は向上しない。創業では定款認証の際に公証人に(TV電話は可とされたとはいえ)面接する手順・手数料が残った。印鑑届書も残存した。面接は反社会的勢力による創業を排除するためだが、士業が代理で面接できるという抜け道が残っている。創業に伴って銀行口座を開設する際にも反社会的勢力でないことを確認するという重複もある。印鑑は勝手に代理として押印することが問題になっている。この状況で紙手続きを義務として残すことは疑問である。
  • さらに先を展望して「紙手続きをそのまま残すのはタブー」と言いたい。一気呵成のデジタル化が必要で、そのためには電子証明書の普及促進、電子を利用する者へのインセンティブ付与、原則を電子とすること(電子を特例扱いにして、届出・申請が必要なのが現在のやり方)、受益者負担の発想を捨てることなどが必要である。電子申請システムの利用に受益者負担で費用を徴収するという方式では、利用者が少なければ費用が上がり、ますます利用者を減らす悪循環が起きる。
  • デジタルデバイドの是正という課題が常に指摘される。しかし、高齢者・中小企業でもスマホを使いこなすケースは多いし、離島の人が紙での手続きのために本土に出かけるというのは、逆に「アナログデバイド」ではないか。
  • 将来を展望すれば、手続き・届出自体を無くするのが重要である。官がすでに保有しているデータを組み合わせれば新たな手続きは不要となるというケースもある。ワンストップ化の先で、手続きで止まることのない「ノンストップ化」に進むべきだ。

講演の後、以下のテーマについて質疑があった。

個人情報保護の課題について
Q(質問):今日の説明の中に個人情報保護のことが一度も出てこなかった。しかし、これが電子化を阻む最大の壁ではないか?
A(回答):システムは個人情報をきちんと管理しているという点を、個別のプレーヤーが、日々の営業活動の中で丁寧に訴えることがまず必要である。また、タンス預金よりも銀行預金のほうが安全なのは、コストを掛けて管理されていること、それが銀行法で規制されていること等が背景にあるが、個人情報もスタンドアローンで保管するよりもクラウドで保管するほうが安全と理解してもらうためには、先程の個別のプレーヤーの日々の取り組みに加えて、個人情報の保管に関する法律(個人情報保護法や個別の業法)で規制するのがよいし、現にそうされている。さらに、これら、個別のプレーヤーのレベルと、社会的ルールのレベルの二つのレベルで、継続的に取り組んでいくことで、社会的理解を醸成してく必要がある。お金を銀行に預ける預金・貯金行為も、社会的理解を得て広まるのに時間がかかった。情報を預けることも同じこと。今日の説明では、この点は自明と思っていたので省略した。
Q:地方公共団体にはシステムをインターネットに接続しないという問題があるが、どう考えるか?また、行政組織間の情報連携を阻むものはなにか?
A:自治体においては、個人情報保護が本質的でない形で必要以上に求められていることが影響していると考えている。また、行政間のシステム・情報連携には、事前に本人同意を求めるしかないが、それ自体は丁寧に実施すれば無理なことではないと思う
C(コメント):行政は個別の施策ごとに情報を収集し、収集した情報の利用範囲をその施策内に留める傾向がある。最初から利用範囲を広くするといった対応も必要になる。
C:システムはセキュアに設計し、システム間はセキュアに接続するようにできれば、ネットワーク自体はインターネットで構わない。これを進めれば、エストニアのX-roadと同様にシステム間の連携が当たり前になっていくだろう。

デジタル完結の推進について
Q:一気呵成のデジタル化というがどこから手を付けるべきか?
A:電子証明書の普及が本丸である。しかし、それには時間がかかるので、まずは受益者負担の考え方を放棄するということから進めてはどうか。
Q:一気呵成のデジタル化といっても、官側のやる気が問題になる。どこから進めようとしているのか?
A:中小企業経営にとって社会保険と創業は重要と考え、そこから進めるように主張している。創業は手間・対象数的には大きくないが、創業をデジタルで完結させることで、創業フェーズが終わっても手続きをデジタルでやる習慣が出来る。デジタルネイティブな法人が増えることに意義がある。
C:飲食店は開廃業が多い。飲食店を開業する際には、税務署に開業届を出すのに加えて、食品衛生について保健所に、防火について消防署に届けて検査を受ける必要がある。このような具体的な事例を取り上げて攻めるのもよいのではないか。
Q:創業にはビジネスプランの構築という長い準備段階がある。それを考えれば、印鑑届で少々時間を要しても問題はないという意見にどう反論するのか?
A:物理的な時間だけが問題なのではない。創業者がもっとも繁忙な時期に各種手続きに同じ情報の入力が求められたり、印鑑届を求められたり、意義が不明確な手数料を徴収されたりするのは、心理的な負担になる。そこを改善すれば、だれでも簡単に創業できるようになる。
C:創業はその人にとって一生に数回だが、士業にとっては毎日の業務である。士業は手続きを負担に感じないだろうが、一般の人は負担に感じるということを理解すべきだ。
Q:freeeの確定申告を利用しているが、一部の金融機関は口座データ連携に対応していない。どう突破するか?
A:最近のWeb事業者はAPI連携に当たり前のように取り組んでいるが、伝統的なサービス事業者は、銀行を含めてAPI公開に消極的である。これを突破する必要がある。
Q:既にあるデータを利用するというのは大切である。統計調査の場合、すでに官に提出した情報を再記入するように求めるのは調査対象側の協力意思を削ぐ。この問題をどう考えるか?
A:民間サービスではKPIをトラッキングできるように最初からシステムを設計する。統計は広い意味で政府のKPIとも言える。電子政府も統計調査が自動的にできるように、必要な情報がトラッキングできるように設計する必要がある。

協賛シンポジウム ヘルスケア分野のICT活用が可能にするQOL・QOD向上 浅沼一成厚生労働省課長他

本シンポジウムでは、健康・医療・介護の分野におけるAI・ビッグデータ等の情報技術の活用がQOLQOD向上のためにどう貢献できるかについて、国内・海外の先進事例の紹介も含めながら議論した。

主催:株式会社国際社会経済研究所(IISE)・アクセシビリティ研究会
協賛:特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム
開催日時:2019423日(火曜) 14:00-17:3013:30開場)
開催場所:大手町ファーストスクエアカンファレンス Room A
東京都千代田区大手町151ファーストスクエア イーストタワー2F 

以下、文責:山田 肇

基調講演では浅沼一成厚生労働省大臣官房厚生科学課長が次のように講演した。AIは患者に最適な医療を提供し、医療従事者の負担を軽減する。しかし、例えば画像診断であれば医師法でどう取り扱うか、機器であればどう承認するかという課題がある。これを解決し社会実装するため、規制緩和を含め、コンソーシアムを組んで検討している。コンソーシアムの主査を医療関係者ではなくソニーの北野氏(AI倫理にも関わっている)に依頼したのも、改革の意思を示すものである。

野﨑一徳大阪大学歯学部附属病院医療情報室副室長・病院准教授は、老化と共にどのように歯が失われていくか研究している。全国の歯科医師の診察がNDBNational Database)に記録され、パノラマX線写真もある。それらをAIにかけると歯科疾患の特徴が浮き上がっていく。このAIで新しい患者の情報を診断すると、その患者の疾患進行が予測できる。たとえば、スマートフォンで咬合状態の写真を取りAIにかけるだけで、歯が失われていくシミュレーション動画を添えて、指導できる。こうして歯科疾患の進行が押さえられるようになる。

萩原悠太株式会社PREVENT代表取締役は次のように講演した。企業の健康保険組合では5%の社員が52%の医療費を使っている。健康診断結果からこの5%に入るリスクが高い10から15%の社員を見つけ出し、それらの社員に健康指導するサービスを提供している。その結果、ほとんどの社員のQOLが向上するという成果も紹介された。生活習慣の改善を促し続けていくことで発症リスクが低下していき、社員のQOLが向上し、長期的には医療費が低減されていく。

遊間和子株式会社国際社会経済研究所主幹研究員は英国の状況を報告した。英国でも社会の高齢化が進展し、「ゆりかごから墓場まで」の社会保障が揺らいでいる。そこでICTを使った医療の変革に動き出した。たとえば、患者データを研究や保険政策立案にオプトアウトで活用できるようにした。ICT利用の一環として、終末期ケアに関する情報共有システムも動き出した。かかりつけ医、地区看護師、ホスピススタッフなど多職種の専門家が終末期の患者の情報にアクセスできる。情報には「どのような死を迎えたいか」という希望も書かれ、それが尊重される。希望を登録した後に死亡した2180名のうち75%は希望の場所で死亡できた。ケアに要した費用も、未登録者の年間平均2600ポンドに対して、登録患者は500ポンドと節減できた。

パネルディスカッション「ICTが可能にするQOLからQODへのシームレスな対応」は山田 肇東洋大学名誉教授がコーディネーターとなって実施された。パネリストは川添高志ケアプロ株式会社代表取締役社長、北見万幸横須賀市福祉部次長、野﨑一徳氏、萩原悠太氏、平尾 勇株式会社地域経営プラチナ研究所代表取締役(前松本ヘルス・ラボ副理事長)。

冒頭に川添氏が訪問看護で重要なのは多職種関係者の間での情報連携であると、訪問看護実務の関係者を対象にした調査結果を発表した。次いで北見氏が、連絡先も分からないまま孤独で死亡する人が増えている状況を説明し、リビングウィルも含め、終末期の意思の事前登録の重要性を講演した。

その後、議論が行われた。その中では、個人情報保護が今は強調されているが、個人の保護を優先して健康・医療・介護情報のマイナンバーを用いた連携を、リビングウィルも含めて行うべきという考え方が表明された。また、予防にAIが広く活用される可能性が見えてきたことを踏まえて、先進地域での小規模な実証実験を実施したのち、エビデンスに基づいて診療報酬制度を改定して全国拡大するのがよいという意見も表明された。

パネルディスカッションの最後で以下のまとめが提示された。

  • ICTの利活用は患者本人のQOLQODを向上させる効果がある。
  • 本人のQOL向上が家族のQOL向上に、さらに訪問看護師等関係者のQOL向上にもつながり、リビングウィルの活用などを通じてQODの向上に結び付く。
  • IoTなどによる個人の健康状態のモニターと、AIも活用したビッグデータの統計解析が両輪で、個別化医療・介護が実現する。
  • ICTを広く利用していくためには、米国「21世紀医療法」などに負けない革新的な医療ハードウェア・ソフトウェアの早期認可制度が必要である。

セミナーシリーズ第2回「デジタルファースト法はなぜ必要か」 小木曽稔新経済連盟政策部長

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF
日時:416日火曜日1830分から2030
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室E
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6
講師:小木曽稔(新経済連盟政策部長)
司会:山田 肇(ICPF
定員:40 

小木曽氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、小木曽氏は資料を用いて次のように講演した。

  •  デジタルを阻む規制に最初に関わったのは医薬品ネット販売である。薬事法という法律に当時何ら書かれていないのに対面販売を強制する厚生労働省の省令はおかしかった。しかも、対面販売で薬剤師が確認すべき事項が因数分解して規定されていないから、それらの事項がネット経由では満たされないかも確認できない。2013年に最高裁で勝利したが、厚生労働省は要指導薬という新たな分類を処方薬と大衆薬の間に作りネット販売を妨害している。
  • 不動産の重要事項説明をネット経由でもできるようにするといった改革では、まずは社会実験をして問題がないかということの確認が必要という議論にならざるを得なくなり、解禁までには一定の時間を要している。
  • これらの経験から、インターネットとICTを活用して「新結合」を生み出す根本的な社会改革の必要性に目覚めた。デジタル化阻害五兄弟は、対面・面前原則、書面交付原則、印紙原則、押印原則、様式原則であるが、これらを打ち破る基本法が必要であると考え、安倍政権発足当初から提案してきた。
  • 今回のデジタル手続き法案は一歩前進だが、精神のみが書かれているので各府省は運用で安易な例外を作ってくるかもしれない。ここまでたどり着くのに六年もかかったのには感慨も深いが、あまりに遅すぎると思う。
  • 手続きにはいくつかの種類がある。官と民の間の手続きが今回の法案で規定されているが、地方公共団体については努力義務にとどまっている。民と民の手続きでも法律でこうしろと決められている場合がある。不動産の重要事項説明がその例だが、これを突破するには個々の事業法の改正が必要である。残念ながら今回の法案では一般的な見直し規定があるものの個別の事業法の改正が入ってるわけではない。さらに民と民の手続きで法律の規定もないものがあるが、これの多くは慣行に縛られている。このように分類すると、デジタル手続き法案は第一歩であり、まさにこの法案をもとにいかに次につなげられるかが焦点である。
  • シンガポールなどは国家ぐるみでスマート化に動いている。日本よりも中央集権的な性格が強いためと言えばそれまでだが、国主導で認証基盤やアプリケーションを整えていくのは、インドやシンガポールを始めとして世界の流れである。日本には立ち遅れるという危機感がない。
  • デジタルファーストをさらに進めるには、たとえば完全デジタル化で先行した地方公共団体や民間企業にはインセンティブが与えられるといった仕組みが必要である。マイナンバーカードの普及についても、スマートフォンのSIMカードに認証機能を搭載して生活のすべての局面で利用できるようにするといった利便性の向上が求められる。この部分は、閣法成立後の議員立法に期待する。
  • デジタルファーストが中小企業のバックオフィス業務を軽減するといったことについての広報も必要である。日本全体のバックオフィス業務は2兆円規模の生産性向上が可能であると新経済連盟は試算した。デジタルファーストは働き方改革にも役立つ。このような情報を広く伝えていく必要がある。
  • デジタル手続き法で、政府は「情報システム整備計画」を閣議決定することになった。この閣議決定にどの程度の力が生まれ、各府省の情報システム整備がコントロールできるかは、まだわからない。情報システム整備計画によって、紙による処理を残すなどの例外を極力排除させるなど、各府省をけん制できるようにならなければならない。情報システムの整備について、民間の知恵も入れて、政府として取り組むようになって欲しい。
  • デジタルファーストはデジタル基盤を新たな社会基盤にするという社会改革である。民間の知見も活用して、個人データと法人データを活用できる社会を構築していくべきだが、その全体像(グランドデザイン)やシステムアーキテクチャはまだ明らかになっていない。

講演の後、次のような質疑応答があった。

デジタルファーストへの支持拡大について
Q(質問):医薬品のネット販売など、いかに主張を支持するサポータを増やすかが課題だったはずだ。薬局・ドラッグストアは薬剤師不足で困っている。この人材不足がネット販売で解消されると訴えれば支持が得られたのではないか。
A(回答):その通りだが、実際には薬剤師会やチェーンドラッグストア協会はネット販売に反対した。医薬品の販売は、薬局を前提とした専門家の配置の規制になっているのでそこは現状の立て付けではクリアしきれない。
C(コメント):自動走行バスはバス運転手の人で不足を解消するという効果がある。医薬品販売とはアナロジーがある。
Q:すでに六年が経過したという話があったが、スピード感をどう捉えているのか。
A:人口減少社会の中では、デジタルファーストは日本が生き残るための重要な課題である。きちんとKPIを定めて、各府省・地方公共団体を動かしていく必要がある。期限を定めると動くということもあるし、期限がわかれば民間も予見できるようになる。だから、KPIを期限付きで定めるのがよい。 

情報システム整備計画について
Q:情報システム整備計画は政府内で勝手に決めるのではなく、国民の目に見える形で議論して決めるべきではないか。
A:その通り。民間が参画して、対面を残す理由を問いただしたり、新しい技術の採用を提言できたりすべきだ。 

地方公共団体でのデジタル手続き化について
Q:地方公共団体には努力義務しか課していないというのが理解できない。どんな努力をしているかもチェックすべきではないか。
A:官民データ活用推進基本法では、第五条で地方公共団体に官民データ活用施策を策定・実施する責務を定めている。地方公共団体の努力をチェックする仕組みは確かに必要である。
Q:地方自治の本旨というが、本当に地域の個性を発揮すべきものと、共通でも構わないものとを分けて考えるべきではないか。
A:その通り。情報システムは国内共通で構わない。地方自治の本旨に反しているとは思えない。
C:地方交付税交付金を用いて情報システムの整備を地方公共団体に委ねると、他に交付金が流用される恐れがある。どの方法で地方公共団体の情報システム整備を支援するか、考え直す必要がある。 

国際競争力について
Q:シンガポールやインドに対する危機感が不足している問題をどう解決していくのか。
A:各府省に任せるだけでなく、経済界としても危機感を国民に訴え、改革をリードしていく必要があるし、そのように新経済連盟は動きたい。
Q:デジタル基盤ではAIも活用されるのだが、AI社会原則を守ることも重要ではないか。
山田:欧州が先ごろAI社会原則を決定し、日本も最終段階に入っている。日本と欧州のAI社会原則は整合しているが、社会原則など無視して突き進む中国や、企業の自由度が高い米国をけん制しないと、日欧がデジタル基盤の活用に出遅れる危険がある。多国間でAI社会原則の順守について議論していく必要があり、G20などに期待したい。
Q:海外に対して日本がデジタルファーストに変わりつつあると訴求すべきではないか。
A:確かに弱い。対外メッセージの発信のためにも、グランドデザインをきちんと書く必要がある。