未分類」カテゴリーアーカイブ

教育 なぜ民主党政権は教育の情報化ビジョンを打ち出したのか 鈴木寛元文部科学副大臣

知識社会を生き抜くデジタル世代は情報通信を活用して教育されることになりますが、デジタル世代の教育に利用されるデジタル教科書・教材はどのような形を取り、普及のためにどのような制度改革が求められるのでしょうか。初中等教育を担当する教員には何が求められ、教育活動をはじめとする担当業務はどのように変わっていくのでしょうか。
シリーズ第1回として、鈴木寛氏に講演いただきました。鈴木氏は、民主党政権で文部科学副大臣を務められ、戦略「教育の情報化ビジョン」の策定に尽力されました。この戦略は現政権でも引き継がれています。

日時:10月24日(木曜日) 午後6時30分から
場所:東洋大学白山キャンパス5号館1階 5105教室
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:鈴木寛(元文部科学副大臣)

冒頭、鈴木氏は資料を用いて講演した。講演での主な強調点は次のとおりである。

  • 通商産業省に勤務して1997年頃から、教科「情報」を作るよう文部省を説得した。教育の情報化は、それ以来のライフワークである。
  • 21世紀の社会に生きていく子供たちに役立つため、今までの一斉学習に加えて、個別学習と協働学習を推進するというのが、情報通信技術(ICT)を活用する目的である。教育の情報化ビジョンを策定し、教育基本法に基づく教育振興基本計画の中にICTの活用を明記した。
  • 人間がどのように学習するかは4タイプに分かれるという。(1)耳から、(2)目で文字を追って、(3)目で図画・動画を見て、(4)身体を使っての4タイプ。これまでのレクチャー型の一方向型の学び、アナログ教科書の学びは、タイプ1とタイプ2の子どもには向いているが、タイプ3とタイプ4は見捨てられてきた。ICTによって、これらの子どもたちを教育するのが、学び方のカスタマイズ(個別学習と協働学習)である。
  • OECD調査では日本は成績上位者の比率が高い。しかし、下位層の比率も高く底上げする必要がある。教科書にキャラクタが登場すると学習意欲が高まるといった子供たちの特徴を利用して、教育の情報化によって学ぶ意欲を高めたい。
  • 障害児の教育に情報化は欠かせない。小1プロブレムの原因の一つは発達障害だが、そのような子供たちほど、カスタマイズした教科書・教材が欠かせない。
  • 教育の情報を進めるために、教員のICT活用能力を高める施策を展開してきた。教員はこの先10年で1/3が入れ替わる。教育の情報化を進めるチャンスであるが、一方で、ベテランの教育技術を若手に引き継ぐ必要もある。教員免許を取得する教員養成のカリキュラムに、ICT活用指導力の項目を入れるべきだし、教職大学院でも教えるべきと、てこ入れしてきた。
  • 校務の情報化、とりわけ、児童個々人について学習カルテも作成すべきである。国民IDと同様の学習者IDが必要になる。たとえ転校しても、学習カルテでつまずきをトレースできる。パッケージ型ではなく医師のように、個々の児童に対して教育をすべきだが、プライバシーの問題等、課題は多く、実現していない。
  • コンテンツが数多く開発され、おおむね出揃った。必要な財源を確保するため、基礎自治体に対する交付金も実施している。教育の情報化を進める準備は整っている。

その後、以下のような質疑があった。

C(コメント):障害児の教育について。日本では「障害児=遅れた子ども」という認識が強い。ディスレクシア(難読症)も遅れた子どもに位置づけられている。アメリカでは、スピルバーグのようにディスレクシアだが優れた能力を持つ者は活躍している。
A(回答):発達障害と知的障害は異なる。認知の問題で難読になったりする。標準的な環境で学びが難しい子供の学習が、少し環境をカスタマイズすることで劇的に改善する。今まで発達障害に関する大規模な調査は行われていなかったが、調べたところ、クラスの1割弱が発達障害と分かった。そのような子供たちにカスタマイズした教育を提供するには情報化が欠かせない。教員免許を取得する際、発達障害の知識を与え、発達障害向けの教育実習を行わせる必要がある。
Q(質問):個別教育の先には統合教育か分離教育を展望しているのか? アメリカでは統合教育を行っているが、それに合わせて、飛び級や落第もある。
A:これについては分離教育・統合教育の大論争があった。それは超えたかった。そこで、一斉学習に加えて、個別学習と協働学習という表現をした。分離の究極が個別学習、統合を一歩推し進めたのが恊働学習であり、双方が大事と明示的に意識する中で、分離か統合かを超越して欲しい。
Q:課題は教員。22歳で免許を取って教壇に立つが、その後は、当時教わったことをベースとして教育を行っている。ダンスや英語を必修にする際に大騒ぎになったように、教員のスキルアップが非常に大切ではないか?
A:多くの教員は能力もあり優秀だ。ただ、価値観は転換してもらわなければならない。学習指導要領のノルマをこなすのに一杯で、恐怖感に満ちた責任感が感じられるのは困る。教育には、履修主義と習得主義のふたつがある。ノルマをこなすのは履修主義だが、これからは習得主義の要素を入れていくべきだと考えている。ICTを用いることで、小テストといった形で、子供たちの理解がその日のうちにすぐにわかる。
Q:予算について聞きたい。小中学生はだいたい1000万人いる。タブレットを配布したら1000億円かかる。様々なことを考えると、予算足りないのでは? 財務省は出してくれるのか?
A:川端文科大臣は、その後、総務大臣になった。そして、10か年で8000億円の教育教材機器費を交付税として特別計上した。地方にお金は回っている。予算は取っている。やる気のある首長は使い始めている。
Q:貧困家庭でもデジタル教科書を使うためには、支援を行う必要がある。そのような予算もあるのか?
A:首長の問題、教育長の問題である。予算は確保したので、後はガバナンスの問題である。
Q:根本的に、どういう子どもを育てたいか? どのような能力を育てたいか?
A:これまでの教育は、優秀な工場労働者の担い手を育成する、世界一の工業立国を目指した教育だった。暗記力と反復力が生きる力であった。これからは、クリエイティブ・コラボレイティブ・アート・ワーカー。様々な違った価値観を持った人たちがチームを作って、新しい価値を創造していく必要がある。普通教育としては、判断力とコミュニケーション力を育てなければならない。
C:OECDの成人力調査を見ると、日本人は読解力の割に稼いでいない。国家として、新しい価値を創造していく人を育てる教育が必要である。
Q:日本人は考える力が足りないと言われる。デジタル教科書で考える力は伸びるのか?
A:日本人が考える力がないというのは迷信である。PISA調査は、まさに21世紀流の考える力を測っている。しかし、日本には飛びぬけた人材がいない。なぜ、ジョブズが出ないのか、東大の考える力をなんとかしろ、というのであれば、とびぬけた層についての独創的な発想力について強化が必要というならわかるが、一般的に思考力がないかのようにいうのは間違いだ。デジタル教科書は、個々の子供にカスタマイズし、個々に刺激を与え、考えさせることができるツールになるだろう。
Q:今までの学校教育は、それぞれの学校で、教室で、教員が講義をしてきた。これは非効率で、全ての教員が講義に長けているとは限らないので、デジタルコンテンツでの代用ができればよいのでは?
A:すでにMOOCsが始めている。JSTには素晴らしい理科教材が集まっている。民間業者が教員向けに教材を作成している。しかし、そうしたよい内容をいかに生徒に獲得させ定着させるかを阻害する要因の一つが、一人ひとりの教員が抱える生徒数の多さ。韓国は21世紀の初めに教育税を創設して教員数を大幅に増やしている。
Q:教材の利用に制限はないのか?
A:ない。学習指導要領は、教科書を用いることは求めているが、副教材は自由である。
Q:教育現場で起きていることは特別なことではない。企業も同じだ。企業で社員の能力を査定にする、査定する側に器がないのが課題になっている。教育でも、出席すればよいといった価値判断がある。教育をいかに変えても、企業が改善しなければ、数年で染まってしまうのではないか?
A:おっしゃるとおりである。就職試験と入学試験が問題だ。いくら学習指導要領をいじろうが、パイロット授業を行おうが。私立文系の暗記型マークシート入試が改善されない限り変化は起きない。入社試験も同様だ。
Q:根本的なことが変わらないといつまでも変わらないということか?
A:日本の企業の経営陣は高齢化しすぎ。学び直しをしていない。少なくても、10年に一回は見直すことが必要である。ICTがわからない経営者は即刻引退すべきと思っている。一方で、正しい採用と昇進を行っている企業もあるし、大学でも良いことを行っているゼミがある。今の若者はちゃんと勉強しているし、変化は起きつつあるのではないか。
Q:教育のデジタル化と聞くと、今やっている授業をコンテンツにするだけというイメージを持つ。情報を疑い、正確に判断する能力が求められているのではないか?
A:教育のデジタル化といった言葉は使ったことがない。主体的、積極的な学習者を養成する、学びのイノベーションを進めている。情報活用能力、メディアリテラシーは教科「情報」の中で教育することになっている。ただし、教科「情報」を大学入試に組み込まない限り、大きな変化は起きないかもしれない。
Q:国際交流について教えてもらいたい。海外とのやりとりが重要ではないか? 教材を海外展開するべきではないか?
A:おっしゃるとおり。今あるものを英訳するだけで、提供できるものはたくさんある。特に、理科教材は良いものがある。教材メーカーの海外展開の話になるのだと思う。

アクセス ウェブアクセシビリティの推進 後藤芳一日本福祉大学教授ほか

情報通信政策フォーラム(ICPF)とウェブアクセシビリティ推進協会(JWAC)は、第30回情報通信学会大会の特別セミナー「ウェブアクセシビリティの推進」を協賛した。約20名が参加して実施された特別セミナーの概要は次のとおりである(文責:山田肇)。

月日:6月23日(日曜日)
時刻:10時00分~12時00分
場所:東洋大学白山キャンパス6号館3階6204教室

続きを読む

メディア J-POPの未来 麻生香太郎氏(作詞家・評論家)

この十年ほどの間に音楽産業に大きな変化が生じてきました。2012年の音楽ソフト(CD、DVD等)生産金額は3108億円で、前年度より持ち直したものの、2002年の5790億円に比べれば約半減しました。音楽配信の市場規模は543億円に過ぎず、期待ほど成長していません。
一方で、コンサートは活況を呈し、チケット価格の上昇が続いています。政府はクールジャパンの一環としてJ-POPの海外展開を支援しています。「初音ミク」に象徴されるボーカロイドも多くの人々の関心を集めています。
わが国の音楽産業はどんな方向に向かうのでしょうか。J-POPにはどのような未来が待っているのでしょうか。セミナーシリーズ「メディアの未来」の第2回では、最近『誰がJ-POPを救えるか?』を刊行された麻生香太郎氏をお招きし、「J-POPの未来」についてお話しいただくことにしました。
皆様多数のご来場をお待ちします。

続きを読む