2012年9月10日、東京都千代田区大手町にある東洋大学大手町サテライトで、第2回目となるワークショップ「電子行政オープンデータ戦略について」を開催しました。
当日は、講師を含め30名の参加者にお集まりいただき、2つの講演に加え、参加者全員での大変熱のこもったディスカッションが行われました
はじめに、庄司昌彦氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)から「電子行政オープンデータ戦略に関する提言の概要と検討」の講演をいただきました。
庄司昌彦氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)の講演資料はこちらにあります。
- 日本の政策形成過程を透明・国民参加・協働化するためにオープンガバメントが企画され、電子行政オープンデータ戦略はその一環である。東日本大震災の際に、協力・動員のメディアとしてネットが活用され、その中で政府のデータが公開され、国民に活用された。これが契機になった。またわが国は、「税金はどこに行った?」といった試行事例もある。
- 今回の電子行政オープンデータ戦略は、政府がゴーサインを出したという強いメッセージである。総務省と経済産業省はそれぞれコンソーシアム・フォーラムを組織化した。
- 許認可と結び付く形で政府には膨大なデータがあり、それを国民に利用してもらう。イギリスでは薬局や高齢者入居施設を探すサービス、オランダでは統計データの提供などの実践例があり、アメリカではアプリケーションの開発コンテストも行われている。
- オープンデータを進めるためには、API公開や開発イベントなどを進めるべきだ。また、国民のニーズと政府のデータとを結びつける仲介者ビジネスを育てる必要がある。
続いて、日本情報経済社会推進協会の坂下哲也氏から「公共地理空間情報の利用状況とオープンデータ」の講演をいただきました。
坂下哲也氏(日本情報経済社会推進協会)の講演資料はこちらにあります。
- 地理空間情報を利用したサービスでは、工事情報、イベント情報、店舗情報などを集めるのに最も手間がかかる。今は、サービス提供者はここで勝負しているが、政府のデータをもっと利用できるのであれば、情報を加工したりソーシャルネットと結合させたりする部分(つまりデータに付加価値をつける部分)が競争の場になる。
- 2010年にアイデアボックスで政府が国民の声を集め出したのをきっかけに、我々は政府に働きかけてきた。東日本大震災の際、緊急時なのにデータが公開されない問題が起き、オープンデータを容認する方向に政府は変わり出した。政府の持つデータの二次利用を促進するデータ戦略が必要である。
- 店舗の開業廃業、路外駐車場の設置、道路工事といった情報を元に新しいコンテンツが創出できる。新しいソリューションが提供できる。都市計画・地域事業創出、災害対策、CO2削減と円滑な移動、医療費削減などに役立てられる。
- オープンデータを進めるには、財産権、著作権、プライバシーなどが課題になる。行政は国民の負託で事務しているので、行政の持つ情報は国民みんなのものである、といった思想に変革していく必要がある。
講演終了後、講師も含め参加者全員で、オープンデータ戦略に関する活発な討論、意見交換が行われました。
- 民主党政権が戦略を打ち出したが、仮に政権が交代しても、オープンデータへの流れは変わらないだろう。行政自身も推進に舵を切っている。
- オープンデータ戦略ではすぐに対応可能なものから順番に公開していくことになっているが、国民が必要とする順番に出すようにすべきである。そのためには、国民の声を基に行政に指示する組織が必要だが、政府CIOはその役割を果たせるだろうか。
- 政府は政策目的を達成するためにデータを集めているわけで、国民のニーズがあるからといって政策目的と無関係なデータを集める必要はない。この点については歯止めが必要ではないか。
- 地理空間情報など、多くの情報は自治体が持っている。政府が戦略を決めたからといって自治体がその通り動くわけではない。戦略のいう通り、2013年までに自治体が動くとは思えない。
- やる気のある首長が主導して、地方で先行事例を積み上げていく必要があるのではないか。自治体間で競争させるのも一案だ。
- コンテストからインキュベーションにも結び付ける仕掛けが必要である。地方での先行事例の中で、公民が連携してビジネス化を進めるべきだ。オープンデータにはこんないいことがあるのだ、と国民も行政も気付く。それが普及のきっかけになるだろう。
- プライバシーは重要である。複数のデータを組み合わせたら、思わぬことが明らかになるかもしれない。オープンデータでのプライバシー問題に関する監視機能を、マイナンバーの第三者委員会に委ねてはどうか。
討論によって、オープンデータは今後の電子行政の重要な柱であること、推進のためには官民が連携して知恵を出す必要があること、情報の収集や利用に関するルールが必要であることなどが、参加者に共通の認識となりました。