電波 M2Mをめぐる各国の動向

 

日時:1月16日(金曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館5103教室
文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:木賊智昭氏(マルチメディア振興センター 副主席研究員)

木賊氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、木賊氏は資料を用いて次のように説明した。

  • M2MとはITシステムと遠隔センサー/機器/装置/設備等が直接通信することで相互に情報交換するための技術/仕組みの総称である。遠隔でのデータ収集/監視/制御に活用することで、業務プロセスの効率化、サービスの高度化、新たなサービスの創出など、これまでは難しかったビジネスの変革や公共インフラの革新が可能になると期待される。
  • 通信キャリアにとって国内の携帯通信加入者の増加の頭打ちと加入者の成長の鈍化が懸念される中、M2Mが新たな通信サービス市場を牽引することが期待されている。
  • M2Mには、輸送分野(輸送管理、車両メンテナンスなど)、エネルギー分野(スマートメータリング、利用ピーク時対応など)、医療管理分野(遠隔での患者監視、医療資産の調査・管理など)からスマートシティまで多様な応用分野がある。
  • M2Mはデバイス、ネットワーク、プラットフォーム、アプリケーションを統合して提供される。アプリケーションやインテグレーションの収益性が高い一方、ネットワーク自体の収益性は低く、収益全体の10%前後を占めるに過ぎないとの調査もある。
  • このため、欧米の通信キャリアは、通信インフラを越えて、他社との提携や自社ブランドの構築によるM2Mソリューションの提供を志向している。多くの場合は他社との提携だが、買収等を通じて自営でソリューションを提供することもある。
  • 米国では、顧客のアプリケーション開発を支援し、独自にデバイスを認証するサービスを提供するなど、顧客ニーズに迅速に対応している。M2M専担部署を設置、組織面での強化を実施し、コンサルティング、アフタサービスを包摂している。
  • M2Mは、共通化、オープン化に今後より一層の競合が予想される。

講演後、質疑が行われた。議論の要旨は次の通り。

通信キャリアのM2Mビジネス
Q(質問):M2Mで飛び交うデータに課金しても大きな収益にはならない。通信キャリアは儲からないので、どういうビジネスをしようというのか?
A(回答):付加価値が勝負である。顧客への窓口となり、コンサルティング・インテグレーションで利益を上げる。すべて自前では無理なので、買収という形で外部の知恵と経験を取り込んでいる。
Q:日本のキャリアはまだそこまで行っていないのか?
A:新領域事業として立ち上げ始めたところである。M2Mに注目はしているが、本格的に取り組むという点では、まだこれからである。
C(コメント):M2Mで飛び交うデータの収益だけを考えるということが、日本のキャリアの対応を遅らせているのは事実である。

M2Mビジネスの各要素
Q:個別のM2Mではなく、多くのM2Mに共通なものとしてプラットフォームを提供するといった動きはあるか?
A:標準化の動きはあるが、共通のプラットフォームの提供には至っていない。
Q:サービスごとに品質(サービスレベル)がまちまちなのに、共通化・オープン化に進めるのか?
A:サービスレベルを共通化しようというものではなく、M2Mで取得したデータを共同利用しようというものである。
Q:標準化の主要プレイヤーは誰か?
A:プラットフォームではOneM2Mなどあるが、標準化を目指すフォーラムが乱立している。まだ、どれが主流になるかわからない。

M2Mと規制
Q:M2Mで多くのデバイスをばら撒いたが、2G(第二世代移動通信システム)の廃止でデバイスを交換しなければならなくなった、というような事態は起きないのか?
A:AT&Tやベライゾンはまもなく2Gを廃止する。しかし、その際、デバイスについて面倒を見るとは言っていない。デバイス交換については、ユーザー自身による対応をサポートする別のニッチビジネスが生まれている。M2Mシステムは10年、20年サービスが提供されるということが前提であり、特に欧州のスマートメータのように政府政策や法制化を通じて普及した場合には、今後、交換の責任も課題になるだろう。一方で、SIMを遠隔から書き換えるeSIMも開発されている。通信キャリア一社に10年、20年と依存し続けなくてもよくなる可能性も出てきている。
Q:M2Mが進むことで、世の中に不安が生まれるといったことはないのか。たとえばプライバシー?
A:デバイスが勝手に収集したデータが流出すると深刻なプライバシー問題が起きる。まだ、M2Mに固有の規制はないし、不要な規制はM2Mの発展を阻害する恐れもあるが、野放図にデータが活用できるというのは不適切である。データの管理策が、M2Mサービスにとって差別化因子となる可能性もある。
Q:共通化・オープン化でデータの流出の危険が増すのではないか?
A:再利用によって安全が損なわれていく恐れがある。責任の所在は、今後の重要規制課題である。
Q:M2Mデバイスへの電波利用料も問題ではないのか?
A:M2Mデバイスも、3GやLTEで通信している。その点では、スマートフォンと同じ電波利用料を課すというのは合理的であるが、飛び交うデータ量を考慮した低い料額設定の要望もある。サービス内容や収益性に照らして、電波利用料の料額が高すぎるとM2Mの普及を阻害する。無線局免許の新たなカテゴリーとしてM2Mデバイスを規定しなければ、抜本的な解決はないだろう。