ビジネス シェアエコノミー:求められる制度改革

日時:11月27日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師
マイク・オーギル氏(Airbnbアジア太平洋公共政策局長)
山田肇氏(東洋大学経済学部教授)
福田峰之氏(自由民主党衆議院議員、同党IT戦略特命委員会事務局長)

オーギル氏の講演資料はこちらにあります
山田肇氏の講演資料はこちらにあります

冒頭、オーギル氏が資料を用いて次のように説明した。

  • Airbnbは世界の人々(ゲスト)が泊まりたいところを探すことができ、あるいは、自宅を貸したいという人(ホスト)が登録できるプラットフォームである。基本的には、宿泊業者向けの仕様ではなく個人による利用を想定している。
  • ホームシェアリングのメリットは下記の通り。
    • ホストは、副収入を得、家賃の支払い、養育費などに使える。
    • 地域経済の活性化に役立つ。ホストの多くがホテル密集地域の外に所在しているので、ゲストがホテルに止まったら訪問しなかったであろう地域で消費活動を行う。
    • ホテルに滞在する旅行者と比べ、1箇所に長く滞在し、多くを支出する傾向がある。
    • 大規模なイベントの際に宿泊先を柔軟に供給を確保でき、イベント後には供給を抑えられる。ブラジルで行われたワールドカップでは、観客の宿泊先を政府が準備できなかったため、Airbnbが支援し、結果として、旅行者の20%がAirbnbの物件に宿泊した。ブラジルオリンピックについても協力予定。
  • Airbnbには190カ国、34,000都市、800,000件の住宅リスティングがある。これは、800,000のホストそれぞれに適用される190カ国34,000都市の様々な法律規則に対応する必要があるということ。プラットフォームは取り締まり側の立場ではないので、ホストとゲストが効率的につながれるように取り組んでいる。
  • 各国における法律がどのようなものかを理解した上で、ホームシェアリングができるように当局に働きかける活動を行っている。日本では、法律をどのように解釈するかによるが、ホストはAirbnbを使った活動が規制される恐れがある。
  • 旅館業法は短期の賃貸借を規制し、これは、公衆衛生上、滞在場所の清潔さを担保する目的である。しかし、無償であれば、一般家庭に寝泊まりすることは規制されない。また、具体的にどの段階で宿泊業者として旅館業法の規制対象になるかも明確ではない。
  • これらのような細かい点に目を向けるよりも、重要なのはどのような公共政策を推進するかである。世界の事例を紹介する。
    • オーストラリアのクイーンズランド州。休暇や定年退職後の住居が多いが、滞在期間・料金などをはじめ、自分の物件の短期賃借については規制がない。ところが、住宅地の物件がパーティーハウスとして使用され、近隣住民から苦情がでた。州はパーティーハウス法を定め、パーティーハウスの活動を規制する方針を示した。すべてを禁止して経済的な機会をすべて失うのではなく、問題に焦点を当てて立法化を図った賢い対策である。
    • アムステルダムは、その都市に住む人々がその物件に居住し続けられる可能性を高めることも視野に入れ、2014年上期に法律を制定した。ホテルへの用途変更なしに、自宅を同時に4人までなら貸し出すことを許可し、5人以上になるとホテル業とした。
    • フランスでは、法律改正が行われ、自分の主たる住居については、許可無く賃借することが可能になった。別荘・別宅の賃借については、住宅供給量の少ないパリなどの都市部と、別荘が多いリゾート部のニーズの違いに配慮し、各都市の判断とした。
    • 英国のピクルス大臣は、「1970年代に作られた法律を、現代のライフスタイルに合わせる時期が来た」と述べている。最近も、国としてシェアエコノミー分野をリードしていくというメッセージも発している。
    • 各国での動向における共通した考え方は、自分の主要住居を賃借するのは自由であるべきということと、地域のニーズにあわせる柔軟性を優先するべきということだ。
    • 友人や親戚を家に泊めるのには規制がかからず、ホテル・旅館業は規制が伴うが、ホームシェアはこの二極の間にある。日本においても議論が盛り上がることを期待する。

次に、山田氏がシェアエコノミーと制度改革について、資料を用いて説明した。

  • 空き施設・空き時間・少額資金といった余剰資源を社会全体として有効利用し経済効率を上げるのがシェアエコノミー。しかし、過去二回のセミナーでも見てきたが、シェアエコノミーは規制の壁にぶつかる。安倍改革は地方創生を進めようとしているが、地域創生にシェアエコノミーは活用可能である。しかし、制度の壁が阻害する。
  • 自動車の同乗には道路運送法、お遍路さんに自宅の空き部屋を賃借するには旅館業法施行令、景勝地の古民家を企業の経営会議に貸し出すために増改築するには建築基準法、造り酒屋巡りの旅を購買型クラウドファンディングで募集すると旅行業法が阻害する。信用金庫が、新興企業向けに投資型クラウドファンディングの出資者を募集するには、金融商品取引法に基づく日本証券業協会の自主規制が阻害する。
  • 様々な緩和策は取られつつある。国家戦略特区において、旅館業法の適用除外が承認されているが、外国人旅行客に限定され、さらには、7〜10日以上の滞在に限ると限定的であり、理解に苦しむ。
  • 新しい時代に対応した、新しい制度を実現するように、政治家の指導力に期待する。

この後、福田氏より以下のコメントがあった。

  • シェアエコノミーができるのはITが発展し、情報の共有と展開できることで成立するビジネスモデルと理解している。自民党のどのチャンネルでこういった話をしていくかが重要。
  • 自民党には長い歴史のある部門会議があるが、そこで話すと既存事業者がいままで話し合いをして積み上げてきたものがあるので、なかなか話が進まないだろう。そういった経緯のない自民党のIT戦略特命委員会だと整理しやすいはず。
  • また、シェアエコノミーの拡大は、国が想定していなかった。既存の事業とシェアエコノミーがWin-Win関係を構築することを目的に議論に入ることが極めて重要。
  • 例えば、外国人旅行者行きたいと思う田園風景が残る地域にはホテルや旅館がない。そうした地域でシェアエコノミーによって古民家が貸し出されれば、近所の旅館やホテルの負担とならず、観光地としての存在感が上がれば、さらに旅行者を呼びこむことができる。賃借行為をするなら、地域により多くの人を集めるというポイントから入ることが重要。
  • 賃借以外にも、クラウドファンディング分野においても、大手の投資会社、証券会社にとってクラウドファンディングの対象となる少額の投資はビジネス対象とならないことが多い。投資者の保護という視点を行政はあげがち。これは、投資はリスクを伴うことを前提としているが、銀行と同じ感覚でいる人が多いためだ。投資額が少額になるほど一般人による投資が増えるため、文句が出る可能性が高い。
  • 日本が新しいビジネスをつくるためには、「自己責任」という文化を育てなければならない。若い世代の感覚は変わってきており,新しいビジネスをうむための土壌ができてきている。ワークシェアという概念も浸透してきているが、シェアする人同士をつなぐプラットフォームが必要。それをつくっていきたい。
  • 日本特有の話だが、部屋を貸したら物が盗まれた場合、盗んだ相手が悪くても裁判沙汰にしたくないという。だから安全性などを重んじるルール作りをしてきた歴史がある。大掛かりには変えられないので、5年後、10年後のそれぞれの時点で最適なバランスと考えていく必要がある。
  • シェアエコノミーを推進する際に、納税の観点も欠かせない。税収が入るのであれば、財務省が味方になりこれは強力だ。

その後、活発な議論が行われたが、要旨は次の通り。

制度改革への動き

  • 自らの都市でのシェアエコノミーの台頭が政策担当者に認識されつつある。サンフランシスコやアムステルダム、英国では、すでにシェアエコノミーのプラットフォームの使用頻度が高く、認知度が高くなり、政治的に対応を取ることが喫緊の課題だった。都市に国においても、最初は厳しい対応を求めることが多かったが、認識が高まってきて柔軟に変わった。今後は、問題が起こる前に法整備をしてしまおうという動きになり、このようなトレンドがさらに高まる。自らの資産、家、車を共有するために、どのような法制度・枠組みが作られるべきかという考え方が必要である。
  • 米国ポートランドでは三カ月前に法律改正し、自宅をホームシェアできるようになった。一番大きなハードルはホテル税の徴収で、Airbnbが代行者としてゲストからホテル税を直接徴収し、収められるようにし政府が課題意識を持つ点について、民間からもさまざまなアイディアを出すのがよい。
  • 改革のための政策提言は、政権与党の担当政策部会に持ち込むと、最も動きが早く効果的である。関係のない政治家に働きかけても無駄である。シェアエコノミーに関わる企業を束ねて団体として行動するべきだ。個別企業がばらばらに政治や役所にアプローチしても、アプローチされた側が困る。
  • 選挙区の住民が声を上げることが効果的と思われる。大切な一票を握っている個人の声が重要になる。
  • 法律が変わるまでやらないということをしていたから、日本はIT業界で遅れてしまった。グレーゾーンであるならやればいい。そのうち法律は変わる。決着が付けられるまで待っていたら、外資にすべて持って行かれてしまう。黒を押し切るのは良くないが、グレーならまずやってみてみるべき。政治家も後押しできる。

経済へのインパクト

  • 経済へのインパクトはないのか? ホテルに滞在しなくなったり、車の購入をしなくなる。安く泊まれる宿泊施設があれば、既存の業者の価格にも影響がある。デフレの推進につながるのではないか。
  • 単純に置換えられたら経済は縮小する。たとえば自動車メーカーは、これまでは売るだけだったのが、これからはITを使い、乗車中にレストランを予約すれば付随料金を課すなど知恵を使う必要がある。シェアエコノミーは、空いているもの、いままで使っていないかったところなど、東京の外の経済活性化のビジネスモデルとして可能性がある。当初からそういう計算をした上で進めるべき。
  • ホームシェアリングは観光業にネガティブな結果がでたことはない。シドニーではAirbnbに登録されている住居の75%は、ホテル密集地の外にある。Airbnbの使用率も高いが、同時にホテルの稼働率・宿泊料金が上がっている。2012年〜2013年の1年間に生み出された経済効果は215,000,000ドルあったといわれている。それからさらに1年経過しているのでおそらく数字は2倍以上になっているだろう。
  • 従来の業界と共存していかなければならないが、大手ホテルのマリオットの例を挙げると経営者はAirbnbのファンであり、かつマリオットの競合ではないと明言している。セグメントが違うからだ。
  • 四国のお遍路さんは88箇所まわるが、殆どの人が自動車で回る。これは正しくないが、歩こうとすると、1日30キロを1週間連続して歩く体力が必要になる。過疎地のため多くある空き部屋にお遍路さんが泊まれるようになれば、その地域が復活するかもしれない。

安全の確保

  • Airbnbはシステム全体が「信頼」を核としており、この信頼の担保が重要な課題である。150人ほどの担当者がいつも目を光らせ、悪い動きがないか監視している。また、2方向のレビューシステム(ゲストがホストを評価し、ホストもゲストを評価する)が存在する。悪評が立てば、その人は追放され、安全が担保される。ゲストから入金されたお金を預かり、ゲストがチェックインした24時間後にホストに振り込むことにしている。宿泊場所がない、汚いなどの問題がある場合は、ホストに支払われない。
  • サイバーエージェントクラウドファンディングによると、クラウドファンディングで集めた資金を持ち逃げするよりも、オレオレ詐欺のほうが効率が良いため、犯罪者が紛れ込みにくいそうだ。