ビジネス シェアエコノミー:クラウドファンディングの可能性

インターネットを通じた資金調達の手段として「クラウドファンディング」に対する注目が高まり、海外では研究開発や文化・芸術活動など幅広い分野で活用されています。わが国でも、クラウドファンディングの運用サービスが始まり、注目度が高まっています。一方で、クラウドファンディングによるプロジェクトには、資金調達に成功しても製品開発が遅れるといった、様々な問題が発生する危険性があります。プロジェクトの信頼性を高めるには、運営基準の明確化など、制度を整備していかなければなりません。今回のセミナーでは、中山亮太郎氏に運営会社の立場から、長島剛氏に地域振興の立場から講演いただき、議論を深めていきました。

日時:10月29日(水曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:
中山亮太郎氏(株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング代表取締役社長)
長島剛氏(多摩信用金庫価値創造事業部長)

長島氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、中山氏は要約次のように講演した。

  • 英語圏では2009年頃より、クラウドファンディングが始まった。いろいろな形態があるが、貸付型はクラウドファンディングというよりもマイクロファイナンスである。世界的には、クラウドファンディングの中でマイクロファイナンス市場が最も大きい。購買型では、米国のKickstarterが成功事例である。
  • 日本では東日本大震災にあわせて発達していったため、新しい形の寄附として扱われる傾向があった。サイバーエージェント・クラウドファンディングも、「ずいぶん社会性の高い事業を始めたね」といわれたことがある。当社を介して新たなアイデアプロダクトやプロジェクトが大きく育ってもらうことが目標であり、慈善事業ではない。
  • サイバーエージェント・クラウドファンディングは、月間60~100件のプロジェクトを手掛けている。プレゼンテーションシートをアップしてもらい、支援者に魅力的なアイデアかどうかを資金の支援を伴う形で評価するシステムだ。SNSでは気楽に「いいね」を押すが、クラウドファンディングでは金を出すので、アイデアに対する賛同の本気度がわかる。FBの「いいね」と集まる金額に全く相関関係はない。
  • ウェアラブルなどアイデア性の豊かな新製品、/映像・音楽やゲーム・アニメなどのコンテンツなど、みんなが待ち望んでいるものを市場に出すきっかけとしてクラウドファンディングはもっと利用可能性が高い。実際に、中小メーカーの新商品先行予約を兼ねてのプロジェクト、クリエイターによる制作費用やPR費用集めのプロジェクトなどに利用されている。
  • プロジェクトに賛同した人々(ユーザ)には、拠出した金額に応じてリターンがある。このリターンを購入するという売買契約だから、購入型と呼ばれている。プロジェクトが成功するのは購入する人がいるということなので、百貨店のバイヤーなども当社サイトを見て正規販売を申し出てくる。こうして、クラウドファンディングはプレマーケティングとして利用でき、アイデアを創出した事業家が流通に対しても良い条件で商談にのぞめる。流通が強い今までの日本の流れとは逆の作用が働き始めている。お金が伴ったYesの声が集まったエビデンスがあるので販路開拓力がアップする。・新たなサービスとして、「makuake meet up」を定期的に開催している。成功した事業者と大手百貨店・専門販売会社・有名EC企業を引き合わせる場を作っている。
  • 事業家には個別にアドバイスは行う。サイトに載せてもすぐ支援者が集まるわけではないので、事業家自身も情報発信してもらう。昨今のクラウドファンディングの発展はSNSの普及に依ることが大きい。当社の場合、親会社経由での宣伝も行うし、メディアとも親しくしているので、いろいろなメディアで紹介してもらっている。
  • 目標に達しなければ返金するAll or Nothing型と、目標に達しなくても初めてしまうAll in型がある。前者は発注ロット分の資金調達などに利用され、後者はPR費用集めなど、あればあるだけ助かるような場合に利用される。決済種類の豊富さは鍵。クレジットカードだけだと集められる資金は目標の6割程度。銀行振込、ネットバンキング、コンビニ決済も利用可能としている。
  • 最近は金融機関と話すことが多い。購入型クラウドファンディングで資金調達に成功した事業家は売上計画の信憑性が高いから、創業間もない段階でも金融機関は貸出できる。金融機関から、顧客紹介の観点で、提携を求められることも多い。与信上限まで貸出しを受けている会社が新規事業を立ち上げるが追加融資できない状況で、当社を使って資金調達につなげるケースもある。
  • 当社は、集まった金額と15%をコミッションフィーとして受領している。

次に、長島氏が要約次のように講演した。

  • 多摩地域をひとつの「県」としてとらえた場合、「多摩県」は静岡県、四国4県、ニュージーランドと同規模である。この県の地域金融機関として、地域や個人の幸せづくりを求める価値創造事業部が設置され、130人規模である。信用金庫はNPOや生協に近く、地域の人たちが出資している法人なので、地域の活性化のために働くのが責務である。
  • 価値創造事業部では、新製品を生み出したり地域モデルを作り上げた人に、多摩ブルーグリーン賞を授与し表彰している。昨年は、ワンモアというクラウドファンディング事業者も表彰した。
  • 業務のひとつとして創業支援を行っている。事業目的を特定してセミナーを実施し、また、創業の後押しも行っている。ネイルサロン創業セミナーには大勢の女性が集まった。
  • 国や都が創業者に補助金を拠出する施策に認定支援機関として協力している。国が実施している、平成24年からの累計9,423件の創業補助金のうち、多摩信金は228件を手掛けたが、これは多摩地域での補助金受領者の86%を占める。
  • 東京・多摩のおみやげプロジェクトというものがある。多摩土産を検索する人は少ないが、販売業者はよくチェックし、都内のお土産ショップで売られるようになる。これは、地域資源であるお土産を販売業者につなげる、マッチングプロジェクトである。クラウドファンディングは、カネとヒトを、ITを使って結び付けるマッチングツールであると認識している。
  • ITを用いずに、リアルにつなげるプロジェクトが、多摩地域には以前から多数存在している。高齢者のグループが、オリジナルの「一筆箋」一万部?を売るために、3000円会費でパーティを開き、お土産として一筆箋を配布した例があるが、これは、リアルなクラウドファンディングである。立川駅南口のビルオーナーが少額ずつ出資し、(株)まちづくり立川を創業した。ビルオーナーは、立川の価値が下がると家賃が下がるという悩みを抱えていた。会社の事務局長に一橋大学の新卒者を採用したところ、彼女が農産物の直売ショップなどいろいろなアイデアを出し、イベントなども企画協賛するようになった。これも、リアルなクラウドファンディングである。
  • 今日はコミュニティビジネスに関する冊子を配布したが、この冊子の発行費用は賛同した組織が分担し、多摩信用金庫も(全額出してもよいといったが)一部を負担している。だから、この冊子はクラウドファンディングでできている。こうした動きを地域で作っていくと、行政や市民・企業とお金がつながっていくのではないか。
  • その先に、ITを用いたクラウドファンディングがある。名古屋にはmomoという、NPOの金融機関(コミュニティ・ユース・バンク)がある。地元の信用金庫と協力して、NPOの金融機関のあり方について提言する「白書」を作ろうとし、その資金をクラウドファンディングで集めている。まだ、このような事例は多いわけではないが、発展に期待している。

講演の後、次のような質疑応答があった。

事業形態について
Q(質問):サイバーエージェントクラウドファンディングは「購入型」である。購入型の場合、BtoCビジネス事業者が中心で、BtoB事業者は利用が難しい。結果、プラットフォームとしてサイバーエージェントクラウドファンディングを選ぶ事業家も限られる可能性があるだろう。購入型の形態をとっていることの理由について教えてほしい。
AK(回答、中山)投資型への参入は悩んでいる。投資型の場合、お金の「色」が変わってくる。投資家の満足する程度、事業家の信用情報を提供できるか、当社の業務上ワークするかが問題で、会社としてのオペレーションコストがかかる。組合投資はミュージックセキュリティ―ズがやっているが、事業家の監査費用もかさむ。株式型も来年度から解禁される予定だが、悩ましい。配当による還元は現実的でなく、投資家としてはキャピタルゲイン狙いとなる。有望なベンチャーであれば、ベンチャーキャピタルから数億円単位で資金調達可能であり、クラウドファンディングで1億円程度あつめても…という感じだろう。株式型クラウドファンディングで資金調達する事業家は「有望なベンチャー」のステージにはいっていない事業家だが、有望なベンチャーでも上場までいきつくのは経験上1/20程度であり、投資家のモチベーションはあがらないかもしれない。株式型解禁後は、日証協が細かいオペレーション決めるが、運営コストも莫大になる懸念があり、手掛けるプラットフォームがないと利用も進まない。
Q:多摩信用金庫はクラウドファンディングとどのような形で関与していくことを考えているか。クラウドファンディング事業者に顧客を紹介するといった情報提供に特化するのか、資金調達窓口として機能することも想定しているのか?
AG(回答、長島):多摩信金としてやるかどうかは決まってないが、検討はしている。高齢者の窓口としても、信用金庫が有効だろう。
Q:運営会社間での競争のポイントは?
AN:競合する運営会社は100社くらいある。社会貢献感で始める人が多く、出ては消えといった業者も多い。「鶏と卵」論ではあるが、面白い案件を出す事業家(鶏)とユーザ(卵)を抱えている運営会社が強い。
Q:サイバーエージェントクラウドファンディングは百貨店だから、会員多いのが強いになる。一方で、クラウドファンディングで研究開発費用のみ集める、政治資金を集める等の特殊性のある運営会社であれば生き残れるか?
AN:研究開発や政治に興味があることと、クラウドファンディングを利用して出資することとは必ずしもイコールではないと思う。当社は、サイトを訪れることでワクワクするという感覚いかに演出するかを考えている。そいう観点でサービス設計をしている。1週間に1回程度は見てもらえるように、悲壮感のあるものはやめるようにしている。これが生き残るための重要な要素ではないか。

事業家の信用について
Q:クラウドファンディングで資金を集める事業家の信用をどのように担保しているか? Kickstarterは持ち逃げリスクに対し、一定の責任を負うことを宣言しているが。
AK:当社の場合は2つのバリアがある。犯罪するには、金額規模が小さく、非常に効率が悪いため、詐欺目的の者はクラウドファンディングを利用しない。もう一つはコミュニケーションで、当社がしっかり審査している。提案する製品に関する経験はあるか、必要なメンバーはそろっているかなど、ベンチャーキャピタル投資での審査と同様のイメージであると理解してもらえばよい。毎月300件程度チェックしている。資金を渡した後に生産が遅れがちになる場合には、事前アナウンスさせるように、進捗を管理している。遅れるのであれば事前にユーザに告知するよう言っている。
Q:地域金融機関は地域の事業者がよく見えているから、信用問題は起きにくいかもしれないが、クラウドファンディングが普及していく過程で、事業者の信用をどのように確認(担保)できると考えているか?
AG:多摩信用金庫は、地域の中の安定株主となるために投資する場合がある。しかし、クラウドファンディングという形で投資を仲介することを業として行うことは認められていない。だから一般論になるが、小口分散がポイントと考える。一人が1億円出資するのと、10万円ずつ1000人が出資するのでは、出資者のリスクは大きく違う。それに、地域密着のクラウドファンディングであれば、地元住民とつながっているので、あまり心配していない。
Q:途中で資金ショートを起こし製作できないこともあると思うが、成果物の引き渡しは義務か?
AN:特定商取引であり、売買契約に該当するため、必ず手元に渡さなければならない。利用規約には、最悪渡らないかもしれないと書いているが、そうならないようにコントロールしている。
Q:そのようにリスクが高いのであれば、寄附型の方がうまくワークするのではないか?
AK:成果物をもらえた方がうれしい。集まる金額に10倍くらいの開きがある。

全国と地域の関係について
Q:サイバーエージェント・クラウドファンディングの場合、ユーザは全国に分散していても構わないので、ニッチなプロジェクトでもユーザが探しやすいだろう。一方で、どこかの地域を特定してのプロジェクトは存在するのか?
AK:「応援してくれる人はだれだろう」、という掘り起しをまず行う。十勝と群馬での映画案件では、十勝の場合は十勝住民と出身者をターゲットにした。群馬の場合は太田市出身在住者、主演者ファン、監督のファンをターゲットにした。このように、「応援してくれる人はだれだろう」を最初に考える。一方で、アメーバ会員には、あまねく案件を告知している。
Q:地域を限ったクラウドファンディングでは、ニッチな支援者が集まらないかもしれない。大手のクラウドファンディング運営会社と提携することはありうるだろうか?
AG:もちろん、ありうる。一方で、多摩住民は、新宿に行くときは「東京に行く」というように、東京住民ではないと思っている方も多い。中には、多摩の船であればどんな船でも乗るという人もいるし、多摩信用金庫も同じ思いを持っている。
Q:多摩信金の事業モデルは他地域へのモデルにもなると思う。全国に横展開していくようなことは考えているか?
AG:信金同士営業エリアはほとんど重なっていないため競合しない。他の信用金庫から視察が多く、多摩信用金庫は事業モデル全てを公開している。全国に行って講演もしている。地域金融機関のいいところである。

購買型クラウドファンディングと権利
Q:アニメーション業界は積極的にクラウドファンディングを使っているが、制作したコンテンツに付随する著作権はユーザに分配する必要はないのか?
AK:権利は渡さなくてよい。エンドロールに名前を載せるといった約束をしっかり実行するだけでよい。制作資金をクラウドファンディングだけで集めることには危険がある。失敗することが判明しても、資金使途が縛られていることから制作しなければならないという状況に陥る。ここが悩みどころである。一方、クラウドファンディングで宣伝費を集めるのは、プロモーションにもなるので良いと思う。
Q:特許取得費用として資金を募るケースはどうか?
AN:投資家の投資モチベーションがないため、ワークしないだろう。BtoBビジネスは汗臭く泥臭くやったほうがが資金調達しやすい。

その他
Q:外国人をユーザとすることはありうるか。目的を持った旅行者たちから資金を集めることはできないか?
AK:「日本でこんなツアーをやろう。クラウドファンディングで100人集まったら実施する」というプロジェクトは可能性がある。問題は旅行業法の登録が必要かもしれないこと。とか。当社のツールを旅行会社に提供することで問題解決できないか検討中である。また、当社のサイトは、外国からユーザを集めるために、年内をめどに、英語版を作成中である。
AG:多摩地域の旅館業者へのヒアリングでは、宿泊者の3~4割は外国人になっている。多摩地域には酒蔵が7つあり。立川あたりの宿泊者を酒蔵に連れていけば、外国人観光客と多摩地域のつながりができる。