ビジネス シェアエコノミー:サービス展開への挑戦

シェアエコノミー(共有型経済)は20世紀にはなかったビジネス形態ですが、ネットを活用することで実現に至りました。日本経済新聞に連載記事が掲載されるなど社会的な関心は高まりつつありますが、わが国に根付かせるには、制度(法律・規制・慣習等)の壁を突破しなければなりません。本セミナーシリーズでは、制度問題を中心に据えて、シェアエコノミーについて広範に議論していきます。
第1回にはAirbnbの田邉泰之氏とスペースマーケットの重松大輔氏をお招きし、空いている時間や場所に関する情報をネットで提供し、人々の活用を促すサービスの展開についてお話を伺いました。

日時:9月29日(月曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師
田邉泰之氏(Airbnb日本カントリーマネージャー)
重松大輔氏(スペースマーケット代表取締役・CEO)

田邉氏の講演資料はこちらにあります

講演要旨(田邊氏)

  • Airbnbは2008年創業で、2014年5月に日本法人を立ち上げた。
  • サンフランシスコで初めてAirbnbを利用した際の、自身の体験を通してAirbnbのサービスを紹介する。物件の詳細情報や評判(利用者による口コミ)、保有者(ホスト)との事前のコミュニケーションで、宿泊する場所を決める。ホストは地元の人でしかわからない、ガイドブックには掲載されていない情報を教えてくれ、このおもてなしがゲストの方に非常に喜ばれる。ローカルな家に泊まると、地元の人と同じような生活が体験でき、そこの文化や生活についてより深く知ることができる。
  • Airbnbがグローバルのプラットフォームであること、そしてソーシャルの力を使っていることで安全性を確保している。ゲストの評判やSNSの登録利用状況などを確認して、ホストは泊めてよいか判断ができる。場合によっては宿泊をお断りできる。ホストからの支払いはAirbnbが一時預かり、宿泊開始日から24時間後にホストに渡される。その間に宿泊をキャンセルも可能である。宿泊後はホストとゲストがレビューを書く。知らないところに泊まるのは不安だと思われるかも知れないが、SNSがあるから個人が自分のブランドを確立でき、利用者の人となりが確認できるのでこのシステムが成り立っている。また、いろんな国でAirbnbを使おうと思うと、どの国で利用してもホストにいいコメントを書いてほしいという思いが働くので、部屋を大事使おうという気持ちになる。それでも、万が一備品破損等が起きたら、日本では8千万円を上限にAirbnbが補償する仕組みがある。
  •  Airbnbは地域への経済効果がある。ブラジルワールドカップの際、第三者が調査したところ、外国からの観客の20%がAirbnbで泊まったという結果がでた。このように、宿泊ニーズが高くなるイベントなどの時だけ宿泊を提供することもできる。パリなどで提供している物件は70%がホテル密集地以外であり、2年前の試算では郊外に240億円の経済効果があった。宿泊費は直接地元の住民に支払われ、その収入をローンや生活費に使う。また、Airbnb利用者には長期滞在者が多く、使われるお金も多いという結果もある。
  • Airbnbのユーザーは、現地の文化をより深く理解したいと思っている方が多いため、訪日するゲストには、東京-京都-大阪の、いわゆるゴールデンルート以外のところにも行ってもらい、より深く日本の文化を学んでいただきながら広範囲への経済効果を実現できればと思う。今後、Airbnbのみならず、シェアリングエコノミーのビジネスが発展できるような法整備の必要がある。

講演要旨(重松氏)

  • スペースマーケットは世界中のあらゆるスペースを貸し出すことを目標に、今年の4月にサービスを開始した。前職のフォトクリエイトで、場所(Venue)の価値に気づいて、このビジネスを立ち上げた。オーナーからの成果報酬(20~50%)と保険サービスが収益源である。
  • Airbnbはすばらしいが、宿泊型は規制のために日本ではやりにくい。宿泊なしなら現在の法律の範囲でいける。平日に結婚式場に行くとガラッとしており、非常にもったいない。そこで、結婚式場という法人と、結婚式場でイベントを開きたい法人を結ぶBtoBとして、この事業を始めた。
  • 現在約800のスペースを貸し出している。映画館、古民家、お化け屋敷、銭湯、ベンチャー企業のスペース、帆船など。スペース在庫・顧客やりとり履歴・予約受付・売上など、スペース収益化の一元管理を、貸主に代わって実行する。借主は、いくつかの物件情報を見て、オンライン予約する。このほか、新しい切り口のスペース活用を企画提案するなど、アイデア出しのところからの手伝い(コンシェルジュサービス)も行っている。
  • スペースマーケットが生み出した価値は、場の新しい価値とコンテンツの新しい価値である。会議室で会議するのは普通だが、水族館の会議は新しいし、新しい発想も生まれるだろう。増上寺もスペースマーケットで貸し出している。最近はお寺で何かやりたいという引き合いが多い。映画館で大手情報会社がキックオフをやったり、伊豆大島でシェアオフィスをやったり。鎌倉の古民家で経営会議をしたり。
  • 大型アライアンスも組んでいる。ビーナスフォート、東急グループの会議室、ブルーノート東京、スタジオアルタ、白川村の重要指定文化財、日南市の物件、朝日新聞社のホール。大手不動産会社、ケータリング運営会社、研修運営会社、ウエディング事業者など様々アライアンスを組んでいる。
  • 日本中のハコモノ行政の残骸を宝にすべきだ。公立学校も、毎年400から500が廃校になっている。過疎地では、住民が数人しかいない島を丸ごと貸しきりたいという話もある。スペースマーケットは地域活性化にも貢献できる。

講演後の質疑の概要は次のとおり。

信用の付与について
Q(質問):田辺氏はゲストの信用とホストの信用ついて言及したが、重松氏はどのように考えているか?
AS(回答、重松氏):スペースマーケットは法人間の賃貸借であり、両者が法人であることで一定の信用力は担保されていると認識している。登記簿謄本をチェックするとか、一筆かかせるとかして、怪しい借主は断ることもある。貸すサイドもプライド高いところが多い。支払いは前金制であり、回収リスクはない。保険にも加入してもらっている。

法律等の制度との関係について
Q:2名とも法律について言及しているが、制度問題をどう考えているか?
AT(回答、田辺氏):今の法律には、Airbnbのようなサービスは該当しないと認識している。貸し方によって様々ですので、今の段階では、ホストの方に事前に確認をお願いしている。
AS:いきなりCtoCでは、規制ですぐつぶされると思った。既に商慣習として確立しているBtoBから始めたが、これからは、つぶされない程度に、CtoCもやりたい。
Q:Airbnbは、旅館業法との兼ね合いについて官庁との間で見解を確認しているのか? また、個々の宿泊場所で周辺住民とコンセンサスができていない状態もあるように思う。Airbnbはホストに法律順守することを求めているが、それだけではすまないと思う。
AT:今が決していい状態とは認識していない。はっきりしていない状態である。クリアにすべく動いている。周辺とのコンセンサスについては24時間対応しているが、問い合わせがたくさんあるわけではない。いずれにしろ、できるだけ早く解決したいと思っている。
C(コメント):法律が古臭いという考え方もある。日本生まれの検索サービスがなかったのは著作権法で許されなかったからだが、同じように、このケースも、法律が古いのではないかと考える余地がある。
Q:マスコミは法令違反と報道するだろうが、対抗するために、ロビーイング活動をしているのか? 海外でもロビーイングもやって、前に進んだと認識している。日本でも行うべきだ。
AT:このビジネスを通じてローカルの人が恩恵を受けられるようにという想いで色々な活動をしている。海外旅行者が東京、大阪、京都だけで帰ってしまうのはもったいないので、いろんなローカルカルチャーを知っていただきたい。Airbnb利用者には発信力があるので、海外で日本の良さを知らせてほしい。このような観点から議員と接触すると、議員も出身地のすばらしさを訴えたりされる。
Q:金髪の人が住宅に出入りするだけでびっくりするが?
AT:政府は訪日外国人を1000万人から2000万人とする目標を掲げているが、2000万人の目標に達した時の海外の方への対応の準備を、すこしでもAirbnbでお手伝いできればと思う。
Q:提供する物件は戸建てか集合住宅か? 集合住宅だと安全面の問題もある。Airbnbから管理組合に対しアドバイスすることはあるか。
AT:家一軒丸々借りるタイプ、部屋一つだけ貸すタイプ、ホストと宿泊者が共有するタイプの三種類がある。ホストが責任を持って自分の貸される環境を把握し、法律を守って弊社サービスを活用いただくようにお願いをしている。
Q:Airbnbの仕組みを理解し、活用するためには、英語の規約しか掲載していないのは問題ではないか?
AT:法務部門のチェックが完了したので、当社の規約は間もなく日本語化される。

地域振興について
Q:両者のビジネスで外部からの訪問者を増やし、地域を振興するということについて、どう考えるか?
AS:地方には豊かな資源と、無駄な建物と、古民家がいっぱいある。みんな何とかしたいと思っているので、その一つのソリューションになると考えている。新しいビジネスツーリズムというジャンルができるのではないか? 都会での研修を古民家で行えば、お金も落ち、地域の活性化にもつながる。
AT:プライベートの時間も使って、Airbnbのサービスでお役に立てないか模索している。隠岐の島にも、高野山にも伺って色々お話をさせていただいた。魚沼にも伺ったが、コシヒカリで有名でありながら、実は限界集落もあることを知った。Airbnbとして、体験型宿泊という形式で、微力ながらも地域振興に貢献ができないかと模索している。
Q:たとえば、小諸市は消滅に限りなく。空きスペースはいっぱいあり、そっくり使ってもらいたい。スペースマーケットが小諸市長にプレゼンするというような可能性はあるのか?
AS:よろこんで、小諸にも行きたい。
Q:国内で最も施設を余らせているのが公共である。どの程度公共に営業をかけているか?
Q:学校は緊急時の避難場所になることも多く、廃校だから取り壊しという選択肢は少なく、メンテナンスコストだけ自治体にのしかかる。なぜ、自治体はスペースマーケットのビジネスモデルに乗らないのか?
AS:自治体は横並びで、前例はないの?という質問ばかりで辟易している。自治体向営業はストップしていたが、白川村は先方から要請がきた。日南市も、日本一アライアンスが組みやすい自治体と銘打って、前例を作るとがんばっている。まずは、これらと協力していく。

その他、ビジネスについて
Q:Airbnbの稼働率はどのくらいか? また、国内の4000件の地域分布を知りたい。
AT:稼働率は場所によって違うが、東京では8割は埋まっている。東京に2000件で、その他は大阪、京都が多い。仙台、沖縄は検索数が多いので、提供物件数を増やしていきたいと思う。
Q:スペースマーケットのサイトには物件の写真が提供されているが、撮りに行っているのか? また、すべてをネットで営業しているのか、それとも足を使っての営業もあるのか?
AS:貸主は法人であり、自社の物件については相応に写真を持っている。それがない法人は、有料で写真を撮りに行く。大きいところを借りる場合には、下見も発生する。大規模な法人には、訪問営業して成約させることもある。学生のインターンにも頑張ってもらっている。
Q:Airbnbで海外の物件に泊まる場合、英語でコミュニケーションが必要になる。日本人のゲストにとってハードルが高いのではないか? これはホストになる場合も同じ。SNSとして、Facebookを使うことが利用上マストなのか?
AT:やりとりはチャット形式になっているので、かしこまった文章能力は必要ない。簡単な文章での対応が可能である。ただ、日本人の利用者特有のニーズもあるとAirbnbの本社にも伝えている。来年はさらに日本のお客様にもっと使いやすいように改善できるように頑張る。
Q:人種・宗教等で、こんな人には泊まってほしくないという要望は叶えられるのか?
AT:サイト自体には機能はないが、自分の物件紹介には何でも記載できるので、ゲストは女性限定等と表示する方もいる。個人ベースでゲストを受ける、受けないを判断できる。