ZOOMセミナー「デジタル庁の発足と今後」 平井卓也自由民主党衆議院議員(初代デジタル大臣)

開催日時:4月13日水曜日 午後7時から1時間
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:平井卓也氏:自由民主党衆議院議員(初代デジタル大臣)
司会:山田 肇(ICPF理事長)

デジタル・ニッポン2022~デジタルによる新しい資本主義への挑戦~」要旨はこちらからダウンロードできます。

平井氏は「デジタル・ニッポン2022」を用いて次のように講演した。講演の一部を動画で視聴できます。

 

  • 世界の経済社会が大きく変革している一方、わが国には閉塞感がある。その一因がデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れであり、国家競争力も30年の間に落ちてきた。デジタルインフラは整っているが利活用が進まず、スタートアップが誕生しておらず、企業のアジリティが不足しているのが課題である。
  • 「デジタル・ニッポン2022」がまもなく公表されるが、「デジタルによる新しい資本主義への挑戦」という副題を付けた。まずは、デジタル庁の司令塔として役割を強化していく必要がある。デジタル庁には、デジタル人材の育成や規制改革の推進、成長戦略の柱といった役割も果たす必要がある。これらを強化していきたい。
  • 新しい資本主義のゴールのイメージは、成長と分配の好循環、課題解決による市場の拡大により付加価値を高めて成長する社会であり、誰もが成長と幸せを実感できる持続可能な社会である。
  • そして、新しい資本主義とDXの関係を、価値観と成長エンジンの二側面で整理した。価値観であるが、ESGやSDGs等の社会貢献・社会課題解決が重視されてきており、企業は社会課題の解決に働く中で成長していくというのが理想である。労働者はリモートワークの進展で場所を問わず働けるようになり、地方にいてもウェルビーイング(幸福感)を高められる。それがデジタル田園都市国家である。
  • 成長のエンジンが0である。プラットフォーマ(GAFA)が中心な影響力を行使してきたWeb2.0から脱却し、個と個がつながるWeb3.0でスタートアップを育てていきたい。これらのスタートアップが新しい産業の中心になっていく。
  • 自由民主党はWeb3.0のホワイトペーパーを公表している。新しい資本主義においても、デジタル・ニッポンにおいても、Web3.0は重要な役割を果たす。消費者保護などの規制・標準化・イノベーションの促進などについて、きちんと論点整理しているので、このホワイトペーパーをぜひお読みいただきたい。
  • 新潟県山古志村には800人のリアル住民がいるが、錦鯉のNFTを発行することで「デジタル住民」を募集し、関係人口、コミュニティーの創出につなげている。まだ実証実験段階だが、0を先取りした動きであり、全国に広まっていく可能性がある。Web3.0に通じた人材を共有することで普及を図っていきたい。
  • 個と個がつながる0では、プラットフォーマを介することなしに、個と個の間でスマートコントラクトが成立していく。解放された世界の中で、個々の信用でいろいろなことができるようになる。株式会社とは異なる形式の組織も出てくる。こんな新しい世界が生まれていくのにデジタル庁の果たす役割は大きい。
  • デジタル庁の特徴はプロジェクト形式であることだ。プロジェクトには官民から多くに人材が集まってくる。プロジェクト管理手法を徹底することと共に、人材育成と評価に力を入れていくのがよい。
  • デジタル庁は、新しい社会を形成していくためにチャレンジする組織であり、それを表現するようにビジョンやミッションを決めてきた。「デジタル庁は楽しい」とデジタル庁に働く人も国民も評価する組織文化を形成していきたい。

講演終了後、次のような質疑があった。

行政DXに関連して
質問(Q):行政DXには、マイナンバーで紐づけしての行政機関間での業務連携が求められるのではないか。
回答(A):マイナンバーが特定個人情報である以上、オープン番号としては使えない。しかし、重点計画で明記したスマートフォンで60秒以内に手続きが完結する、7日間で行政サービスが立ち上げられるなどを実現するには、マイナンバーを使った情報連携をせざるを得ない。そこで、個人が希望したらマイナンバーで情報連携してサービスが受けられるといった利用方法を法律に追加していきたい。マイナンバーがスマートフォンに搭載され個人の意思で使えるというようになれば、状況は一気に変わっていく可能性がある。
Q:全国の地方公共団体に行政DXを広めていくために、どう支援するのか。
A:デジタル庁はプロジェクト形式であるが、プロジェクトで活躍した人は全国に知識を広めていく役割を果たす。情報共有も進めていく。デジタル庁や個人情報保護委員会に地方からの出向者も、行政DXを普及するのに役立つ。デジタル関係人材の共有化に向けた仕組み、ある地方公共団体で開発してうまく使えたアプリを他で利用するなどの情報と知識の共有の仕組みを支援していきたい。
Q:DXには公民連携が不可欠ではないか。
A:特に社会問題解決型の事業など、スタートアップに協力を仰ぎたい場合がある。スタートアップ専用の交付金を作り調達の対象にできるようにして、事業を進めると共に人材を育成する等によって、民間との連携を進めたい。
Q:デジタル庁が旧来の行政組織の方向に逆戻りする恐れないないのだろうか。
A:組織文化のマネジメントとして、デジタル庁のをミッション、ビジョン、バリューを作り出す際に徹底的に皆で議論した。ミッション、ビジョン、バリューを徹底していくのが大臣の仕事である。

新しい資本主義に関連して
Q:デジタル化によって働く場所を選ばないことによって、人材が海外に流出するのはないか。
A:リモートワークで支障がないということがわかってきた。それによって、本社機能を地方に移す事例も出てきている。日本の地方には多くの魅力があるので、そこで働きたい人が増えるという流れをさらに強めていきたい。そのためには、地方の教育。医療、自然なども充実する必要があり、それがデジタル田園国家構想である。日本で働きたいと思う海外の人材もいるので、スタートアップ専用のビザを発給する仕組みを作っていきたい。日本に魅力を感じている海外の人々が来やすいように税制なども変えていく必要がある。