電波 電波の再編成を加速する新しいシステムの提案

H24勉強会「電波の再編成を加速する新しいシステムの提案」

鬼木甫氏が執筆し、InfoCom REVIEW第58号(情報通信総合研究所、2012年11月発行)に掲載された「周波数再編成(利用変更・移転)のエコノミクスⅡ(前編) -新システム(EMM)による再編成加速の提案-」および掲載予定の後編について、同氏をお招きして勉強会を開催した。

日時:2月5日(火曜日) 午後1時30分から4時30分まで
場所:東洋大学大手町サテライト(新大手町ビル1階)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:鬼木甫氏(大阪大学・大阪学院大学名誉教授)
コメンテータ:林紘一郎氏(情報セキュリティ大学院大学)

講演資料はこちらにあります。 概要 図表
コメント資料はこちらにあります。 コメント

鬼木甫氏が資料に基づいて講演後、林紘一郎氏がコメントした。コメントでの指摘事項と鬼木氏の回答は概略次のとおりである。

林:使用料率rをある程度大きくしなければ、目的である経済的価値を反映した周波数の再編成は実現しないのではないか。
鬼木:やってみなければわからない。いずれはコメントのとおりrをある程度大きくするとしても、導入時のショックを防ぐために最初は年率0.1~0.2%などゼロに近い水準から始め、関係するプレイヤーに与える影響について学習していくのが適切であろう。
林:提案で電波免許は永久の権利になっているが、事情変更によって移転を求めるという考え方を取っているのか。
鬼木:移転を求める際に事情変更などを条件にしてはいない。土地で言えば、「不定期借地権」に相当すると考えている。いつ止めさせられるかわからないが、その確率は平均してごく低い。もちろん止めさせられたときは、自分の選んだ補償金が手に入る。実際には制度が落ち着いた状態では、毎年たとえば全帯域の1%程度を少しずつ再編成していくということになるのではないか。
林:技術進歩を促進する方向でのインセンティブが必要ではないか。
鬼木:免許帯域を節減し、一部を返納すれば、免許人は電波使用料を節約した上に補償金を入手する。そのような形で、より効率的な電波利用のための技術進歩を誘導するように考えている。3月に発行する後編(6節)で説明している。

その後、会場との間で次のような質疑があった。

鬼木提案の実現可能性について
Q(質問):電波割り当ての見直しにどのようにつなげていくのか。
A(回答):規制当局が電波割り当てを見直しする際に、電波の価値を基準の一つにできる。それによって、割り当てに経済的価値が反映されるようになる。
Q:鬼木方式を導入すると今までの電波利用料よりも高額の電波使用料を支払わなければならない事業者も出る。そんな事業者の反対をどのように抑えるのか。
A:電波再編成がもたらす国民全体の利益を考え、かつ経済的価値を反映した電波使用料を電波の共同所有者である国民(政府)に支払うという、この新方式の大義に理解を得ていくしかない。
Q:防衛用途にまで課金するというのも公平原則から理解できるが、そこに焦点が当てられすぎると、せっかくの新提案がつぶされる恐れがある。
A:たしかにそうだが、防衛省の負担が増す反面、防衛担当者が、電波利用を節約して得た補償金をそのための高度技術導入に使うことができる。
C(コメント):この提案は、テストベッドを作って試行し、価値を見極める必要がある。一方で、公平原則については賛成である。有線、無線を問わず、ネットワークを建設する際に公共財産を利用する場合には財産価値に見合った負担をするという原則にすべきである。

現行の電波利用料との関係など
Q:電波利用料の位置づけは変わるのか。
A:電波利用料がスタートした際は、マネジメントコストを電波利用者が応分に負担するということだった。それが拡大し、今では電波税のようになっている。提案している電波使用料は、土地などの固定資産税と類似する電波税であり、一般財源として扱うのが適切である。なお長期的には現行電波利用料より高額になるだろうが、そこに至るまではどちらか高い方だけ徴収するよう提案したい。
Q:農地と宅地で固定資産税が違うように、排他的利用と共用で電波使用料を変えるといった方法はあり得るのか。
A:考えられる。実践段階の課題である。

コモンズへの課金について
Q:コモンズにまで経済的価値を示させるのは行き過ぎではないか。それによって、利用者数が減るのは弊害である。
A:その懸念はある。しかし一方で、公平原則を尊重する必要もある。またコモンズには大きな経済的価値があることが露わになり、経済的価値の低い帯域をコモンズに転換する再編成が起きる可能性もある。
C:コモンズへの課金に賛成である。コモンズの経済的価値を明らかにすることで、コモンズ化が促進される。それにコモンズには干渉問題があり、解決のためにはマネジメントコストがかかる。それを電波使用料として負担すればよい。

オークションに関係して
Q:オークションには価格高騰の懸念が存在するが。
A:それは、欧州でオークションを開始したころの一時的現象である。小さなオークションからスタートして経験を積んでいけば、高騰という事態は避けられたし、すでに業界は学習を済ませている。
Q:オークションでは、有力事業者が金にものを言わせて免許を独占するそれがあるのではないか。
A:それは、オークションの実施方法でいかにでも回避できる。実際にオークション導入国では、競争法・独占禁止法などを適用してこれを実現している。

最後に山田肇氏が、「オークションでは実施しない限りその帯域の経済的価値は明らかにならない。一方、鬼木提案によれば、全帯域について経済的価値を明らかにさせることができる。その点で、鬼木提案は画期的である。」とまとめ、勉強会は終了した。