2013年度」カテゴリーアーカイブ

電子行政研究会ワークショップ「オバマ陣営のメディア戦略と戸別訪問」 海野素央明治大学教授

電子行政研究会では、参議院選挙におけるインターネット選挙運動を検証し選挙制度の改革を提言する目的で、勉強会(ワークショップ)を連続して開催しています。20131126日には明治大学海野素央教授に「オバマ陣営のメディア戦略と戸別訪問」について講演いただきました。勉強会には20名が参加し、活発な意見交換が行われました。

海野教授の主な主張点は次の通りです。

  • 2008年と2012年の大統領選挙、2010年の中間選挙で、オバマ陣営に選挙ボランティアとして参加した。特にコネがあったわけではなく、選挙事務所に出向いて申し出たのだが、オバマ陣営は多様性や包含(インクルージョン)を標榜していたので、快く受け入れてもらえた。
  • オバマのネット選挙は情報を受信することから始まる。年齢・性別・人種・大統領への親近感などを絞り込んだうえで、カスタマイズされたメッセージを発信する。日本では情報発信チャンネルが増えたと解釈され、「今日も頑張ります」の類のメッセージをやたらと発信していたが、オバマは違った。相手が大学生なら「学資ローンの利上げを阻止しよう」というのがカスタマイズされたメッセージである。医療制度・移民制度・学資ローン・気候変動などについて、相手に合わせてメッセージを送っていた。
  • ネットの利活用は若者を取り込む。2008年には、誰を副大統領に指名したかをメディアより先にネットに流した。2012年には、有権者登録をした若者の50%が投票した。オバマは人々の意見を傾聴する。そのうえで政治的なアクションを取る。だから、「僕らが進めてきた医療制度改革を止めてはならない」というように「僕ら(We)」を強調する言い方になる。それで、若者が燃え上がる。
  • 選挙運動のもう一つの柱が戸別訪問。選挙管理委員会から過去の投票行動情報付きで有権者名簿を入手し、たとえば民主党支持者だが時々しか投票に行かない人に狙いを絞り、戸別訪問する。戸別訪問も、相手の意見を傾聴し受容し、共通する価値観を見出すように行う。相手が自ら進んで投票に出向くようにするのだ。コミットメント(投票に行く約束)を得たら、サインをもらい、投票日の1週間前にコミットメントカード(約束カード)を相手に郵送する。過去の投票行動情報付きで有権者名簿など日本なら個人情報保護の対象となるだろうが、米国では入手は容易で、州によっては無償である。
  • 民主党支持者だが時々しか投票に行かない人のフェースブック友達を探し、友達から話をするという方法も取る。ネット選挙運動と戸別訪問はこのようにして連動・融合している。
  • 戸別訪問でどんな政治課題に関心があるか、どんな意見を持っているかを聞く。それが、政策立案に利用される。ここにも傾聴の姿勢がある。それが有権者の政治意識を高め、積極的参加をもたらす。戸別訪問の利点は、教育的側面・投票率アップ・政治意識と参加・ボランティア運動家の育成・若者の参加・ネットとの連動などである。選挙ボランティアの大半は若者であり、大学を一年間休学しているものもいる。活動することの意義を若者が理解して、ボランティアとして参加するのだ。
  • 戸別訪問は組織政党に有利という意見もあるが、実際は、組織政党の壁を破るのが戸別訪問である。顔を合わせて政治の話をすることで有権者の意識が変わり、政治家への親近度を強め、それで組織政党の壁を破ることができるのだ。
  • わが国で戸別訪問が認められていないのは間違っている。そんな国は中国とサウジアラビア位。戸別訪問には買収の危険があるなどと言う意見もあるが、すぐにツイッターで拡散するから歯止めがかけられる。ビッグデータ解析・有権者名簿の活用・戸別訪問、それにネット選挙運動が連動し、政治家と有権者が双方向でコミュニケーションをとるように変革していかなければならない。

電子行政研究会ワークショップ「マイナンバーは行政サービスをどう変えるか」 村本明彦氏(内閣官房社会保障改革担当室)他

201375日、東洋大学大手町サテライトにて、第5回ワークショップ「マイナンバーは行政サービスをどう変えるか」を開催しました。
当日は、講師を含め50名近くの参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーション、パネルディスカッション、そして参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、村本明彦氏(内閣官房社会保障改革担当室)から「マイナンバーが実現する新しい行政サービス」の講演をいただきました。

村本明彦氏(内閣官房社会保障改革担当室)の講演資料はこちらにあります。

  • 番号制度で導入する予定のシステムである情報提供ネットワークシステムとマイ・ポータルシステムの要件の検討、関係省庁や地方公共団体への説明を行っている。昨年度マイ・ポータルのユースケースの調査研究も行った。
  • 番号制度導入のメリットとしては、「住民」と「行政」の両者にとって過重な負担が軽減されることが挙げられる。
  • 現状、各種手当の申請時に、申請者は関係機関を回って、添付書類を揃える必要がある。
  • 番号制度の導入により、申請を受けた行政機関等が、関係各機関に照会を行うことで申請者が提出する添付書類が簡素化される。つまり、受付窓口での手続だけで完結する手続が増えるようになると考えられる。
  • 番号制度の導入により、行政機関等の間や業務間の連携が行われることで、より正確な情報を得ることが可能となり、真に手を差し伸べるべき者に対しての、よりきめ細やかな支援が期待される。
  • 現状、行政側では、確認作業等に係る業務に多大なコストが発生している。例えば、提供されるサービスの受給判定のために、他の行政機関等から収受した情報を確認する手間・作業の負担が大きく、また、外部から提供された情報と内部のデータと結び付ける際に、転記・照合・電算入力ミス等が発生する可能性がある。更には、手作業による事務、書類審査が多く、手間、時間、費用がかかるだけでなく、重複して作業を行うなど、無駄な経費が多いと考えられる。
  • 税分野を例に挙げると、例えば、市役所では、各機関から提出される資料を、「氏名・住所・生年月日」をキーとして、名寄せを行っているが、番号制度の導入により、同一人であることを確実に識別することができる「個人番号」をキーとした名寄せにより、正確で効率的な名寄せが可能となる。
  • 番号制度の導入により内閣官房が調達する予定の主なシステムには、情報提供ネットワークシステムと情報提供等記録開示システム、いわゆるマイ・ポータルがある。
  • 情報提供ネットワークシステムは、行政機関等の間の情報連携をするためのシステムであり、例えて言えば、いわば関所としての役割を果たす。つまり、あらかじめ法律において定められた情報照会・情報提供可能な行政機関等による情報連携を許可し、それ以外は認めない。また、法律において定められた事務(手続)のデータ(特定個人情報)のみ情報連携を許可することとなる。
  • 情報提供ネットワークシステムには、個人情報が蓄積されないので、個人情報の一元管理をしない。つまり、番号制度が導入されても、個人情報はそれぞれの情報保有機関側においてその事務に必要な範囲で管理されていることには変わりがない。
  • マイ・ポータルは、利用者が自宅のパソコンや行政機関等に設置されたパソコンから、自己の情報や各種行政サービスを閲覧できる個人用のホームページのようなものである。このようなマイ・ポータルには、大きく4つの機能が想定されている。
  1. 情報提供記録表示機能:自分の特定個人情報をいつ、誰が、なぜ情報提供したのか確認できる機能。
  2. 自己情報表示機能:行政機関等が持っている自分の特定個人情報を確認できる機能。
  3. ワンストップサービス:行政機関などへの手続を一度で済ませる機能
  4. プッシュ型サービス:一人ひとりにあったお知らせを表示できる機能。例えば、地方公共団体が妊婦さんへ、母親教室の案内を提供する等、適切な情報、一人ひとりにあった情報を提供できることが考えられる。
  • 昨年度実施した調査研究において、マイ・ポータルを活用することによって、行政サービスの向上等が期待されるユースケースを10件分析した。そのうちのいくつかを紹介する。
  1. 税分野では、税務当局から確定申告や出張相談窓口等の案内がプッシュ型サービスで通知され、国民健康保険料等の確定申告に必要な情報をマイ・ポータルの画面から確認できると考えられる。
  2. 介護に関する分野、障害者に関する分野では、例えば、利用できる介護サービスや補助制度の案内 地方公共団体が行う支援等の情報、居住地で受けられるサービスの案内等をプッシュ型サービスで通知できると考えられる。
  3. 被災時においては、現状は、震災時にウィークリーマンションや親戚宅等の避難所以外の場所にいると情報が届かないケースも考えられる。マイ・ポータルにおいて、各種支援制度のお知らせを通知すれば、どこにいても情報を見ることができ、情報送信側である、地方公共団体側で利用者がお知らせを閲覧したことをわかる仕組みにしておけば、情報を確認していない人への対応など次の段階へ進むことができると考えられる。
  • 自分も難病になった親族の介護等に関する申請手続をしたことがあるが、その時、どういう補助制度が適用されるのか、いつどこへ、どのような手続をすればよいのかが、分らなかった。例えば、難病になったという情報を地方公共団体が把握し、その後の手続のきっかけとなる参考情報をプッシュ型サービスで通知できれば、大変役立つのではないかと考える。
  • ワンストップサービスは、電子申請により実現されることになると考えるが、既存の電子申請システムが多数存在していることも踏まえ、利便性の高いシステムを今後検討する必要がある。その際、すべての申請を電子申請とすると考えると逆に利便性が低下することも考えられる。つまり、電子申請を実現することにより便利になる手続と、窓口で対面によりサービスを提供すべきものとはきちんと分けて検討すべきである。
  • 例えば、介護タクシーの助成申請において、領収書の提出が必要なケースもあり、電子申請だけでは完結しないといったケースがある。その場合、タクシー会社が領収金額を行政機関に届くような仕組みとし、領収書の提出を不要とする等についても検討すべきである。つまり、マイ・ポータルが導入されることにより、電子申請の実現だけを検討するのではなく、利用者の利便性が最も向上するように、事務手続自体を変えることを検討する必要があると考える。
  • 調査研究では、マイ・ポータルのユースケースの分析を踏まえてデモ画面を作り、高齢者、障害者を含む一般の方々に評価してもらった。その際、文字色等の問題や情報量の問題等、配慮すべき事項について、整理した。
  • また、デモ画面の評価では、予防接種、介護・障害者支援、妊娠出産等、家族のための支援サービスの評価が特に高かった。一方、セキュリティに対する不安の声もあった。
  • 現在、マイ・ポータルでは、「個人番号カード」による公的個人認証を利用したログインを予定しているが、今後、ID/PWによるログインも検討する必要があると考えられる。
  • 地方公共団体の電子申請システムでは電子証明が必要な手続、ID/PWが必要な手続、ID/PWも必要としない手続などがある。マイ・ポータルでも、複数の選択肢があって良いと考えられ、今後検討していくべきと考えられる。
  • マイ・ポータルのトップページには、マイ・ポータルへのログイン画面だけでなく、例えば、全ての人を対象としたお知らせの表示や行政機関等のリンク集を設置した方が、利用者の利便性が向上すると考えられる。
  • 社会保障・税番号制度の導入に向けたロードマップでは、今年の12月末までに、別表第一と第二の詳細を定める主務省令を制定する予定である。個人番号の通知は平成2710月頃を予定しており、平成281月から個人番号カードの交付、個人番号の利用が始まる。さらに、情報提供ネットワークシステム、マイ・ポータルの運用開始が平成29年から始まり、具体的には、平成29年1月から国の機関の連携、同7月を目途に地方公共団体との連携が開始される予定である。
  • 平成261月から情報提供ネットワークシステム等の設計・開発等をしていく予定。工程管理のプロである工程管理支援業者も調達し、開発等の進捗管理だけでなく、特にテスト時では、国と地方自治体との連携・調整の支援も行うことを考えている。
  • 「特定個人情報保護委員会」は、平成26年に設置する予定である。また、番号制度に関する広報で正確な情報をお知らせして、皆さまからの意見を聞くことも重要と考えている。

続いて、NTTクラルティ株式会社の小高公聡氏から「マイ・ポータルへの期待」の講演をいただきました。

小高公聡氏(NTTクラルティ株式会社)の講演資料はこちらにあります。

  • 障害者の場合、一般の行政手続に加え、医療、年金、福祉サービスを中心として行政手続を行う機会が多いが、そこには多くのバリアがある。視覚障害の場合、まず役所の窓口に行くことが困難である。また、書類を記入することができない、そもそも通知を郵送で受け取っても、郵便物の内容が分からないといったこともある。
  • 電子申請ができれば非常に便利だが、現在の電子申請には様々なバリアがある。例えば、読み上げソフトでは操作ができない、時間制限があって入力が間に合わない等。また、IDカードの取得のために役所に行くこともバリアになる。申請データの入力時に、別の用紙を参照しながら(見ながら)行う必要があることも視覚障害者にはバリアになる。
  • そこで、以下の理由からマイ・ポータルが期待される。①自宅で手続きができる、②自分でできる(プライベートな事柄等を他人や家族に知らせずに済む)、③情報連携のシステムにより別の紙情報の参照が不要になる。
  • 特にプッシュ型サービスは、紙ベースの情報を読むことができない視覚障害者には有効である。(プッシュ型のお知らせに対する)返答機能によって、それだけで手続ができれば、パソコンに不慣れな障害者にとっても非常に便利である。
  • ただし、マイ・ポータルには以下のことが求められる。まず第一は、システムにおけるアクセシビリティへの対応である。例えば、「見出し」属性を正しく付ける、画像に代替テキストを含める、色に依存した情報提供は行わないなど、JIS規格(JIS X 8341-3)への準拠が求められる。そしてシステム自体のアクセシビリティに加えて、その前段階である登録作業が容易に行えるか、IDカードが他のカードと触って識別できるかなど、システム以外のところも重要になる。マイ・ポータルは、このようなアクセシビリティへの配慮を徹底し、さまざまな人が真に使えるシステムとなって欲しい。

続いて、東洋大学の山田肇教授(電子行政研究会副委員長)が「電子行政と公民連携」の講演を行いました。

山田 肇氏(東洋大学教授)の講演資料はこちらにあります。

  • 5年、10年先を見据え、根本的に考え方自体を変えた方が良いのではないかという極論を示す。
  • 2009年に電子政府ユーザビリティガイドライン、セキュリティガイドラインが策定されたが、その後棚ざらしにされた。住基カードも利便性向上が期待できないため普及していない。
  • セキュリティについては、マイナンバー法に対し参院で附帯決議を付けており、マイ・ポータルでより高度な認証を求めている。これでは行政側が過剰にセキュリティ対応をして、結果的に使いにくいものになってしまう恐れがある。
  • 解決策として、民間が競争下で電子申請アプリケーションを提供し、国民はその中から選ぶ形にしてはどうか。政府は、申請受付後の処理のみ電子化する。アプリケーション・インターフェース(API)が定まっていれば可能である。
  • ポータルについても、民間のポータルサイトに自治体からのお知らせが表示されれば良い。国民は、日常的に利用しているポータルをマイ・ポータルとして使う。民間と政府でデータをやり取りするルールが定まっていれば可能である。
  • 行政事務について行政データが蓄積され、オープンデータ化して、APIを通じて外部へ提供される。その際には、国民にとって使いやすい形になるように民間事業者がデータを編集することになる。
  • 行政と民間の間に公開されたAPIがあれば、正のスパイラルを作ることができる。
  • 民間の役割が大きくなり、セキュリティが不安だと思われるが、既に国民はネット証券で大きな額の取引をしている。セキュリティはシステム設計の問題であり、公が民に勝るわけでもその逆でもない。
  • タブレット端末は、使いやすさを優先する設計思想の成果である。その成果を政府は利用すれば良い。行政サービスでも、利用者の使いやすさを最優先して欲しい。
  • APIを公開し、民間にアプリ開発を競争させるべきである。ユーザインタフェースを民間に任せることができれば、公共機関は内部システムの開発のみで済むので、コスト削減効果もある。21世紀の電子行政は公民連携で実現する。情報の分野でもPFIを活用して欲しい。

後半は、3名の講師によるパネルディスカッションの後、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

  • プッシュ型サービスによる情報提供から電子申請へつながるシームレスなサービスがキラーコンテンツになるのではないか。
  • マイ・ポータルから、使えるサービスにどの程度繋がっているかが鍵になる。
  • 魅力ある情報を自治体、関係省庁からお知らせすることが重要。提供情報の有益性等については、官官(特に自治体間)で競ってほしい。
  • 機微情報を扱うので厳重なセキュリティ対策が必要と言われるが、機微情報をきちんと使えるようにすることが重要。例えば障害の情報は機微情報だが、行政の窓口に行って代読代筆をしてもらえば、その時点で周囲の人に機微情報が漏れてしまうこともある。ネットを通じて独力で申請することができ、自分で情報を管理できることが重要である。
  • マイ・ポータルへは、個人番号カードでのログインしか認めないと、利用者の利便性が低下することから、ID/PWでのログインも認めるべきとの意見もある。ID/PWでのログインも認めることとするならば、セキュリティに関しては、情報漏洩の影響度等、リスクについて、きちんと周知する必要がある。その上で、ログイン方法を自分で選択できるようにしても良いのではないか。
  • アクセシビリティについて、全盲だけでなく、色弱等、様々な障害を想像して配慮して欲しい。定期的にチェックして改善することが重要。
  • ライフスタイルの変化への対応が求められる。例えば共働き世帯では日中に行政窓口へ行くことが難しく、オンラインサービスが必要になる。
  • ブロードバンドアクセスは無線が主の時代になりつつあり、モバイル端末対応も重要。モバイル化によって、ユースケースや利用シーンの考え方も変わるのではないか。
  • マイ・ポータルの構築では、いずれかの自治体で先行的に実験し、問題点を洗い出して、最終版を作るべき。いきなり全体を作ると、使いにくいまま何年も使い続けることになり、マイ・ポータルへの信頼が消えてしまう。
  • いずれかの自治体で先行的に実験すると言う考え方もあるが、例えば、マイ・ポータルの4つの機能を徐々に拡充していくやり方もある。マイ・ポータルの運用開始時には、機能を絞り、開発規模の大きい電子申請の実施を検討し、組み入れていくなど、段階的に機能を増やすという考え方もあるのではないか。
  • これまでの電子行政はアクセシビリティが整備されず、何度も裏切られてきたので、ユーザーテストを頻繁に実施して使えるものにして欲しい。
  • 番号制度では、自由の拡大、プライバシー、生存権の向上の3つが重要と考える。
  • 生存権的な観点では、年金のミスの解消や災害時の生存確認等での活用が期待できる。他の行政サービスと組み合わせることで、生存権の向上に様々寄与できる。
  • 障害者が災害を察知することは非常に大変。要援護者の情報を基に、災害情報を本人に通知する仕組みがあるととても良い。
  • マイ・ポータルを代理人で扱えることについても検討する必要がある。例えば法定代理人は、本人(被代理人)の「個人番号カード」を利用してログインするという考え方もあるが、そもそも、マイ・ポータルに代理機能を設置した方が良いと考える。税理士業等との関係でも、代理機能があればより利便性が向上するのではとの期待もある。
  • 低所得者では、情報機器を購入できないことが多い。このような人を支援する施策を実施してほしい。
  • マイ・ポータルで全てが完結するわけではない。様々なところへ繋がる、行政サービスの起点になるものというイメージで捉えて欲しい。

討論によって、マイナンバー、マイ・ポータルによる新しい行政サービスは国民向けの行政サービス向上ばかりでなく、障害者をはじめ国民全体の生存権の向上にも関わる重要な取組であること、使いやすく利用価値の高いサービスとするため幅広い連携が重要であることなどが、参加者に共通の認識となりました。

電子行政研究会セミナー「東京都知事選挙におけるインターネット選挙運動」 松田馨株式会社ダイアログ社長ほか

2014326日、東洋大学大手町サテライトにて、第6回セミナー「東京都知事選挙におけるインターネット選挙運動」を開催しました。
当日は、講師を含め40名を超える参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーションと参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、松田馨氏(選挙プランナー/株式会社ダイアログ代表取締役社長)から、家入一真陣営の取り組みについて講演をいただきました。

  • 選挙プランナーとして、2006年の滋賀県知事選挙(嘉田候補)以来、多くの選挙に関わってきた。滋賀県知事選挙では、ネットの効果は限定的だったが、Google Analyticsなどを使って効果測定はできた。新人候補が現職に勝利し、翌日のテレビ報道からアクセス数が急増した。
  • 今回は、告知日の二日前に家入一真陣営から依頼があり、違反者を出さない、ボランティアに参加してもらう、参加して楽しかったと言ってもらう、の三つを目標に選挙活動を展開した。普段は100%勝つのが目的で仕事を請けるが、今回は勝つ気がないからできたことである。
  • 西田先生の主張する漸進的改良主義で選挙運動を展開した。Twitterハッシュタグで政策を募集し、「ぼくらの政策」としてまとめあげたのも、それである。スタッフは20代後半が多く、彼らには漸進的改良主義は当たり前の感覚だったようだ。Code for Japanのメンバー等、プログラミングスキルのある人たちがボランティアで応援してくれ、選挙ポスターを張るためのアプリ「ポスター祭り」(14千カ所をGoogleマップで表示)、「期日前投票祭り」などが次々生まれた。これらは、次の選挙でどの候補も自由に利用できる。
  • 発信より受信に力を入れた。受信に力をいれている候補者は今まで少なかったが、家入陣営はキャッチボールを重視した。Twitterでやり取りするのは、有権者との双方向のコミュニケーションであり、候補者は握手のかわりという位置づけで行っていた。
  • クラウドファンディングは目標500万円に対して、744万円(692人賛同)を集めることができた。政治資金規正法に違反しないため、寄附ではなく、売買契約という形にした。500円(イベントへの参加)、8000円(選挙カーで候補者とドライブ)、50万円(講演+グッズセット)などが商品で、50万円の講演を6名(内、候補者の友人が3名)が購入してくれた。小口購入よりも本人の人脈が生きた形である。魅力的なギフトをどうつくるのかが課題である。
  • オープン、フラット、フリーが家入選対の理念であり、「面白いから参加」から「参加から行動へ」と、有権者が移行するように促した。選挙は候補者から有権者、有権者から他の有権者への熱伝導であり、ネット選挙運動もそれを重視した。

続いて、音喜多駿氏(東京都議会議員/みんなの党東京都議会第6支部支部長)から「ITの活用で 政治と政治家はどのように変わるか」と題した講演をいただきました。

音喜多駿氏(東京都議会議員)の講演資料はこちらにあります。

  • 政治家になりたいと始めたブログの経歴は10年で、BLOGOSでは地方議員トップブロガーになった。2013年の東京都議会選挙では、ネットを駆使してボランティア400名を動員し、寄附も400万円集めることができ、初当選した。
  • 時には炎上することもあるが、その中から勉強できるし、次に発信する際には備えられるので、政治家はネット利用をためらうべきではない。政治家の役割は、人々の声を集約し政策形成に反映することだ。選挙運動は政治活動の一部であり、普段からネットを使うことが必要である。インターネットはツールであると同時に新しい政治空間であり、いつも街頭演説している駅の数、事務所の数が一つ増えたと認識すれば、利用に対するためらいは減る。
  • ネットで発すべき情報は、近況報告のようなすぐに忘れられるフロー型ではなく、ストック型の主張、考察、分析記事であるべきだ。それを積み上げていけば、記事はいつの間にか一人歩きし、発信した政治家への注目度が自然に醸成される。FacebookTwitterは、検索エンジンと同様に、ブログに誘導するために利用すべきである。政治家という立場だからこそ語られる情報を発信すべきである。ネット上では都議会の情報は少ないので、有意なポジションを占めることができた。
  • 東京都知事選挙を見て、ネットだけで勝てるものではない、地上戦につなげる導線にすべきだったと感じた。民主主義における選挙は、最良の候補を選ぶのではなく、相対的にましな候補を選ぶものだ。舛添候補はネットでも地上戦でも一番まともだったので、当選した。一方で、「突撃!おときた駿がゆく!都知事候補者に全員会いますプロジェクト」で、講演者は多数な反響を集めることができた。

続いて、立命館大学の西田亮介特別招聘准教授から講演をいただきました。

西田亮介氏(立命館大学特別招聘准教授)の講演資料はこちらにあります。

  • 情報社会論をテーマに、データを元に、研究している。ネット選挙運動の解禁についても毎日新聞と共同でデータ分析するなど、研究を進めている。本人の基本的立場を要約すると、ネット選挙運動解禁はさらに進めるべき、クラウドファンディングはグレーゾーンで政治資金規正法改正が必要、電子投票については慎重などである。
  • ネット選挙運動解禁には二つの側面がある。動員のためのネット選挙運動とネット選挙運動を切り口にした政策過程の透明化であり、個人的な興味は後者である。ネット選挙運動は公職選挙法を改正して実現したが、それによって、均質な公平性とする旧来の選挙運動と斬進的改良主義を旨とするネット選挙運動が一つの法律の中に併存することになった。その結果、法律を横断した大局的な知見はなくなり、また、この先、放送法の下での放送とネット動画との関係や、領域横断が容易なウェブサービスの規制が困難である問題などが起きてくると思われる。
  • クラウドファンディングについて、実質的に寄付ではないのか、楽天LoveJapanが献金者のデータを渡しているのは問題ないのかといった見方ができる。政治資金規正法上はグレーゾーンであるが、クラウドファンディングを進めたいと考えているので、むしろ政治資金規正法の改正を求めたい。
  • 2014年東京都知事選挙について毎日新聞との共同研究し記事になった。記事にも書いたが、発信力、拡散力、話題力、メディア露出、注目度、関心度などといった項目で、主要候補はそれぞれ異なる特性を持っていた。また、世論調査では知事選の争点の関心では景気と雇用だったが、Twitterで候補に関連して投稿された内容の多くは原発・エネルギーであった。世論調査とのずれは、仲間の間でコミュニケーションが連続しやすい主題の総量が増えているためと解釈できる。原発、憲法、安全保障がそれに相当する。
  • Google Trendsの動向では、家入陣営は検索対象にもなりきれなかったし、10万票と得票率2%の壁を超えられたわけでもない。しかし、政治家のつぶやきの「くだならさ」がネット以外の媒体でも報道できるようになったという点(ネットの衆人環境性)は、政治の透明化に役立った。この先、時間が経過し、情報が蓄積すればより有益なものになるだろう。

後半は、山田肇東洋大学教授(電子行政研究会副委員長)の司会で、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

ネットを介した政治家と有権者の双方向的な関係の構築について

  • ネッ選挙運動トと従来型選挙運動にどちらに力をいれるべきかについて、当面は従来型優先で一致した。しかし、ネット選挙運動にはコストをかけずに最低限のことができるという特質があり、優先度はいずれ変わっていくだろうという意見が大勢を占めた。
  • どの選挙に出るつもりか、当選ラインを見極めたうえで、ネット選挙運動を実践すべきだという意見が多かった。参議院全国比例や東京地方区が適していると意見や、国政選挙は政党支持率に左右されるので全国比例区が有効とは言えないという意見、23区内の区議選に可能性があるという意見、政令指定都市の首長選挙が適しているといった意見が交錯した。
  • 家入陣営はネットで政策を募集したが、政策の整合性をどうするのかという指摘があった。政治家の活動は日々有権者の声を集めることであり、政治活動として告知日前に取り組んだのであれば評価できたという意見も出た。政治家の役割の一つに苦渋の決断をするということがあるという指摘に対しては、政治家の決断は大事な仕事だが、有権者に納得してもらうことが必要で、そのためには対話が欠かせないという意見もあった。
  • 双方向性について、ターゲット広告の手法を導入するといった、今後の可能性にも議論が及んだ。自民党がIPアドレスを読み取ってトップページを組み替えたなど、すでに工夫は始っている。メールマガジンの配信などについて、より新しい戦術が開発される余地があるという結論になった。
  • 日本では匿名が当たり前だが、そんな状況でも双方向性は実現できるのかという質問が出た。これに対して、匿名なアカウントには返信はせず、身元が明確な場合は丁寧に返すといった実践例が紹介されたが、一方で、政治家は公人であり、非対称性は当然で、政治家は匿名を気にするべきではないという意見も出た。わが国では党議拘束が強いため党所属議員は独自意見を言いにくいということが、双方向性の支障になるという意見も出た。

クラウドファンディングについて

  • 日本には個人献金の習慣がないので、クラウドファンディングは迂回ルートとも考えられる、という意見が出た。現行の政治資金規正法をきちんと読めば、クラウドファンディングは寄付にあたるのではないかという意見が出た。これは、クラウドファンディングを否定するものではなく、限りなくグレーなので、公権力が恣意的に運用する恐れがあると指摘するものであった。
  • 政治資金パーティーと比較して、政治資金パーティーで集められない人がクラウドファンディングを使うという指摘が出た。ただし、クラウドファンディングを寄付として扱うと、政治資金規正法に基づく規制がかかり、匿名献金の排除、外国人献金の排除などの反映に三ヶ月もかかるため、今は寄付ではなく売買契約として扱うしかないという説明もあった。

公職選挙法の改正について

  • 日常的な政治活動でいくら金を使っても規制されず、選挙期間にだけ総額規制がかかるのはおかしい。日常を含め、グロスで規制する必要があるとの意見が出た。公職選挙法が時代に追いついていない、選挙運動期間の再定義が必要であるとの意見が強かった。
  • 国会議員は今のルールで当選してきているので、自ら変えるインセンティブがない。それを変えるためには、メディアを動かす必要がある、という意見も出た。関連して、新人候補はどのように選挙運動をしていくのか、投票行動のパラメータを数値化できるのかといった質問も出た。これについて、ネットは数値化できるので効果測定しやすいという一般論の上で、リスティング広告での誘導が最後の三日間でのアクセス数の増加に結び付いたという川崎市長選の実績などが報告された。ネットの可能性を信じるべきで、黎明期だからチャンスがあるという意見も出た。
  • ネット利用は、ニコニコ動画で立候補会見を放送するのが常識化したように、模倣されやすい。だから、ネット利用では横並びになるの、それ以外のリソースでの影響が必要となる。マスメディアで報道されやすい現職が有利なのはそのためだ、という説明があった。一方で、事前の世論調査では政策が第一で、人柄は第二と回答する有権者が、出口調査では人柄(総合的な判断)を重視したと回答するという傾向が指摘された。ネットでの政策に関わる言論活動はまだ信頼されていないという指摘があった。

討論によって、ネット選挙運動には政治の透明化をはじめ様々な可能性があるものの、まだ有効に活用されているとは言い難く、法改正も含めたさらなる取り組みが必要との認識が共有された。

電子行政研究会セミナー「地方自治体の番号制度対応と電子自治体サービスの展開」 向井治紀内閣官房内閣審議官ほか

2014314日、東洋大学大手町サテライトにて、第5回セミナー「地方自治体の番号制度対応と電子自治体サービスの展開」を開催しました。
当日は、講師を含め50名を超える参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーションと参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、向井治紀氏(内閣官房内閣審議官)から「共通番号制度における個人情報保護について」の講演をいただきました。

向井治紀氏(内閣官房内閣審議官 社会保障改革担当)の講演資料はこちらにあります。

  • マイナンバー制度では、第三者機関の設置、特定個人情報保護評価、目的外使用の禁止、罰則強化などの歯止めを設けた。システム面では、分散管理、アクセス制限、通信の暗号化などを行う。このように、マイナンバー制度は個人情報を保護しつつ、行政事務での利活用を図るものである。
  • 個人番号カード(ICチップ)の空き容量を使えるようになっている。健康保険証の代わりなど、自治体が条例を定める形で、新たな利用形態が生まれてくるだろう。
  • 特定個人情報保護委員会は、個人情報保護、情報処理の有識者、民間、自治体からの委員で構成され、保護と利用のバランスを実現する。委員会が策定する民間に対するガイドラインがこれから重要になる。
  • 保護に偏りすぎると使い勝手が悪くなる。番号制度の民間活用を早くという声があるが、番号を付ける範囲を拡大するよりも、本人確認の拡大を求める声が強い。マイナンバー法によって、ネットにおける本人確認について民間も公的個人認証を利用できるようにしている。
  • 今後の可能性として、医療分野では市町村間での連携、災害時の過去の病歴取得などが挙げられる。番号だけで郵送できるマイ郵便番号などのアイデアもある。マイナンバーもパーソナルデータもこれからの経済に不可欠であり、保護しつつも、活用できるようにしていきたい。

続いて、篠原俊博氏(総務省自治行政局住民制度課長)から「地方自治体における共通番号対応の現状と独自の利活用計画について」の講演をいただきました。

篠原俊博氏(総務省自治行政局住民制度課長)の講演資料はこちらにあります。

  • 制度改正はクラウド化のよいタイミングであり、新藤総務大臣もクラウド化に熱心である。システム構成でキーとなる中間サーバーはクラウド化し、東西2カ所に設置し、東西で相互バックアップする。
  • 地方自治体の既存システムの改修には国費を付けた。住基システム、税務システムの改修などが実施できる。ただし、ランニング費用は地方の負担となる。
  • 住基カードが廃止され、個人番号カードに切り替わる。表面には必ず顔写真が載る。裏面はコピーされることを想定して、個人番号と氏名、生年月日が載る。
  • 公的個人認証が民間に開放される。文章の真正性を確認するという利用方法だけでなく、スムーズなログインに使える利用者証明の機能が追加される。今までネックだったカードリーダーに替えて、NFC付スマートホンを使えないか検討している。
  • カードの普及とよいコンテンツは鶏と卵の関係にある。自治体によっては、条例による独自利用を考えているところもあり、期待したい。

続いて、向井氏、篠原氏の講演を受けて、柴山昌彦衆議院議員(衆議院内閣常任委員長)から総括講演をいただきました。

  • マイナンバーについては施行令などの策定作業が遅れているという批判があり、手探りのところもあるが、スケジュール通り実施する。
  • パーソナルデータの保護と利活用については、政治的な決断が必要である。なぜなら、日本人は保護について非常にセンシティブだからだ。機微情報の扱いに慎重過ぎたがために、かえって、ネットセキュリティ対応が遅れてしまっている。それが、米欧のとの機微情報のやりとりの遅れにも繋がっている。
  • 医療情報はマイナンバーとは別にすべきという議論もあるが、どうするかは政治的な決断である。複数の番号の連携は複雑になるため、個人的には、一つの番号で統合すべきと考えるが、違う意見の政治家もいる。
  • 自治体での取り組み例として、千葉での市役所と介護施設との橋渡しサービス、柏市のスマートホンを用いた健康管理などを聞いている。マイナンバーによる医療情報の連携は、ニーズが高いと認識している。金融分野では、預金の名寄せは、所得の把握のみならず、金融機関間のセキュリティ情報の共有にも結び付く。

後半は、山田肇東洋大学教授(電子行政研究会副委員長)の司会で、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

【主な意見・論点】
地方自治体でのマイナンバー制度対応について
Q(質問):財政措置について、所有からサービス利用の流れに対応して、柔軟な財政処置をお願いできるのか?
A(回答、篠原):クラウドを用いたサービス利用を推進している。補助も年限などはあるが、対応できるはずなので、個別に質問して欲しい。
Q:宛名番号が住民の数より多い場合があると聞いているが?
A(篠原):住民の23倍ある場合もあり、データクレンジングしないといけない。まずは、必要なデータにマイナンバーを紐付けて、余力があればクレンジングをして欲しい。
Q:各自治体が提供するサービスは使い易さが必要ではないか?
A(篠原):ユーザービリティが大切。マイポータルの画面を如何に使い勝手の良いものにするか、ガイドラインも出している。外国人に対しても多言語化で対応する。 

マイナンバーの利用範囲拡大(当面)について
Q:公的個人認証の民間利用が重要だというが、千葉市熊谷市長が実印の時代は終わったとつぶやいて議論になったことがある。公的個人認証を用いることで実印をやめられるのか?
A(向井):実印に法的な根拠はなく、実社会での利用に対して自治体がサービスをしているもの。不動産取引は対面だが、今後は必ずしも対面でなくても良くなるかも知れない。
Q:医療分野での利用には政治的な決断が必要だが、厚生省の検討会では、社会保障費の抑制や効率化を前提として議論しないのが問題である。
A(柴山):その通り。手書きによる診療報酬請求には膨大なコストがかかっていたが、今は電子化された。導入によって得られるメリットがコストを上回れば政治的決断で進められる。 

マイナンバーの利用範囲拡大(将来)について
Q:個人番号は捨てられないのだから、どこまで国が情報を管理するか国民が選択できないのであれば、利用範囲はなるべく狭い方がよいのではないか?
A(向井):危惧されているのは、将来、極めて中央集権的な政権が誕生して、個人情報を濫用することだが、それは国民が政治的に選択することである。
A(柴山):濫用した時の歯止めにはシステム的なものと法的なものがある。しかし、ここまでペーパーレスが進んでいない先進国は日本ぐらい。歯止めは用意するにしても、利活用は進めるべきだ。
Q:データマイニングやプロファイリングで、あまりに個人を特定できるのは、プライバシーの観点から危険ではないか?
A(向井):その点で国のやっていることは民間の足下にも及んでいない。どこまで匿名化したらよいかの議論は難しい。最終的には、匿名化したデータを元に戻さないことを、何らかの方法で担保する必要があるだろう。
Q:番号制度は行政のために作られており、民間活用のための設計がなされていない。もう少し時間をかけるべきではないか。
A(柴山):犯罪行為に使われてしまう意見があるという指摘だと思う。Suicaの件は、民間活用を考える格好の事例だと思う。個人番号をなりすましでとられるのを防ぐのは大前提。個人情報の利用は、第三者委員会でマルチステークホルダーで検討するのが大切である。 

国民のITリテラシー向上について
Q:柴山議員が出演されていたBS番組で、国民のITリテラシーをどう向上させるかと言っていたが。
A(柴山):国民のリテラシー向上には、子供の頃からの教育が重要。文科省に総務省から派遣して検討させている。e-ネットキャラバンもやっている。すぐにリテラシーを上げることは難しいが、できることを地道にやっていきたい。
Q:住民への広報が十分でない。
A(篠原):平成25年度予算では、法案が通るかどうか不確定だったため、確かに落ち込んだ。26年度は内閣官房で予算を取っている。自治体で広報をしてもらうためのポスターなどのアイテムを提供する。
A(柴山):市のイベントなどを通して全ての年代に啓発していきたい。国民のITリテラシー向上のきっかけにしたい。

討論によって、番号制度の運用に当たっては個人情報の適切な活用と保護を両立させる工夫や、国民の意識・リテラシーを高める取り組みが重要であること等が明らかとなりました。