カテゴリー別アーカイブ: 2013年度

電子行政研究会セミナー「東京都知事選挙におけるインターネット選挙運動」

2014326日、東洋大学大手町サテライトにて、第6回セミナー「東京都知事選挙におけるインターネット選挙運動」を開催しました。
当日は、講師を含め40名を超える参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーションと参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、松田馨氏(選挙プランナー/株式会社ダイアログ代表取締役社長)から、家入一真陣営の取り組みについて講演をいただきました。

  • 選挙プランナーとして、2006年の滋賀県知事選挙(嘉田候補)以来、多くの選挙に関わってきた。滋賀県知事選挙では、ネットの効果は限定的だったが、Google Analyticsなどを使って効果測定はできた。新人候補が現職に勝利し、翌日のテレビ報道からアクセス数が急増した。
  • 今回は、告知日の二日前に家入一真陣営から依頼があり、違反者を出さない、ボランティアに参加してもらう、参加して楽しかったと言ってもらう、の三つを目標に選挙活動を展開した。普段は100%勝つのが目的で仕事を請けるが、今回は勝つ気がないからできたことである。
  • 西田先生の主張する漸進的改良主義で選挙運動を展開した。Twitterハッシュタグで政策を募集し、「ぼくらの政策」としてまとめあげたのも、それである。スタッフは20代後半が多く、彼らには漸進的改良主義は当たり前の感覚だったようだ。Code for Japanのメンバー等、プログラミングスキルのある人たちがボランティアで応援してくれ、選挙ポスターを張るためのアプリ「ポスター祭り」(14千カ所をGoogleマップで表示)、「期日前投票祭り」などが次々生まれた。これらは、次の選挙でどの候補も自由に利用できる。
  • 発信より受信に力を入れた。受信に力をいれている候補者は今まで少なかったが、家入陣営はキャッチボールを重視した。Twitterでやり取りするのは、有権者との双方向のコミュニケーションであり、候補者は握手のかわりという位置づけで行っていた。
  • クラウドファンディングは目標500万円に対して、744万円(692人賛同)を集めることができた。政治資金規正法に違反しないため、寄附ではなく、売買契約という形にした。500円(イベントへの参加)、8000円(選挙カーで候補者とドライブ)、50万円(講演+グッズセット)などが商品で、50万円の講演を6名(内、候補者の友人が3名)が購入してくれた。小口購入よりも本人の人脈が生きた形である。魅力的なギフトをどうつくるのかが課題である。
  • オープン、フラット、フリーが家入選対の理念であり、「面白いから参加」から「参加から行動へ」と、有権者が移行するように促した。選挙は候補者から有権者、有権者から他の有権者への熱伝導であり、ネット選挙運動もそれを重視した。

続いて、音喜多駿氏(東京都議会議員/みんなの党東京都議会第6支部支部長)から「ITの活用で 政治と政治家はどのように変わるか」と題した講演をいただきました。

音喜多駿氏(東京都議会議員)の講演資料はこちらにあります。

  • 政治家になりたいと始めたブログの経歴は10年で、BLOGOSでは地方議員トップブロガーになった。2013年の東京都議会選挙では、ネットを駆使してボランティア400名を動員し、寄附も400万円集めることができ、初当選した。
  • 時には炎上することもあるが、その中から勉強できるし、次に発信する際には備えられるので、政治家はネット利用をためらうべきではない。政治家の役割は、人々の声を集約し政策形成に反映することだ。選挙運動は政治活動の一部であり、普段からネットを使うことが必要である。インターネットはツールであると同時に新しい政治空間であり、いつも街頭演説している駅の数、事務所の数が一つ増えたと認識すれば、利用に対するためらいは減る。
  • ネットで発すべき情報は、近況報告のようなすぐに忘れられるフロー型ではなく、ストック型の主張、考察、分析記事であるべきだ。それを積み上げていけば、記事はいつの間にか一人歩きし、発信した政治家への注目度が自然に醸成される。FacebookTwitterは、検索エンジンと同様に、ブログに誘導するために利用すべきである。政治家という立場だからこそ語られる情報を発信すべきである。ネット上では都議会の情報は少ないので、有意なポジションを占めることができた。
  • 東京都知事選挙を見て、ネットだけで勝てるものではない、地上戦につなげる導線にすべきだったと感じた。民主主義における選挙は、最良の候補を選ぶのではなく、相対的にましな候補を選ぶものだ。舛添候補はネットでも地上戦でも一番まともだったので、当選した。一方で、「突撃!おときた駿がゆく!都知事候補者に全員会いますプロジェクト」で、講演者は多数な反響を集めることができた。

続いて、立命館大学の西田亮介特別招聘准教授から講演をいただきました。

西田亮介氏(立命館大学特別招聘准教授)の講演資料はこちらにあります。

  • 情報社会論をテーマに、データを元に、研究している。ネット選挙運動の解禁についても毎日新聞と共同でデータ分析するなど、研究を進めている。本人の基本的立場を要約すると、ネット選挙運動解禁はさらに進めるべき、クラウドファンディングはグレーゾーンで政治資金規正法改正が必要、電子投票については慎重などである。
  • ネット選挙運動解禁には二つの側面がある。動員のためのネット選挙運動とネット選挙運動を切り口にした政策過程の透明化であり、個人的な興味は後者である。ネット選挙運動は公職選挙法を改正して実現したが、それによって、均質な公平性とする旧来の選挙運動と斬進的改良主義を旨とするネット選挙運動が一つの法律の中に併存することになった。その結果、法律を横断した大局的な知見はなくなり、また、この先、放送法の下での放送とネット動画との関係や、領域横断が容易なウェブサービスの規制が困難である問題などが起きてくると思われる。
  • クラウドファンディングについて、実質的に寄付ではないのか、楽天LoveJapanが献金者のデータを渡しているのは問題ないのかといった見方ができる。政治資金規正法上はグレーゾーンであるが、クラウドファンディングを進めたいと考えているので、むしろ政治資金規正法の改正を求めたい。
  • 2014年東京都知事選挙について毎日新聞との共同研究し記事になった。記事にも書いたが、発信力、拡散力、話題力、メディア露出、注目度、関心度などといった項目で、主要候補はそれぞれ異なる特性を持っていた。また、世論調査では知事選の争点の関心では景気と雇用だったが、Twitterで候補に関連して投稿された内容の多くは原発・エネルギーであった。世論調査とのずれは、仲間の間でコミュニケーションが連続しやすい主題の総量が増えているためと解釈できる。原発、憲法、安全保障がそれに相当する。
  • Google Trendsの動向では、家入陣営は検索対象にもなりきれなかったし、10万票と得票率2%の壁を超えられたわけでもない。しかし、政治家のつぶやきの「くだならさ」がネット以外の媒体でも報道できるようになったという点(ネットの衆人環境性)は、政治の透明化に役立った。この先、時間が経過し、情報が蓄積すればより有益なものになるだろう。

後半は、山田肇東洋大学教授(電子行政研究会副委員長)の司会で、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

ネットを介した政治家と有権者の双方向的な関係の構築について

  • ネッ選挙運動トと従来型選挙運動にどちらに力をいれるべきかについて、当面は従来型優先で一致した。しかし、ネット選挙運動にはコストをかけずに最低限のことができるという特質があり、優先度はいずれ変わっていくだろうという意見が大勢を占めた。
  • どの選挙に出るつもりか、当選ラインを見極めたうえで、ネット選挙運動を実践すべきだという意見が多かった。参議院全国比例や東京地方区が適していると意見や、国政選挙は政党支持率に左右されるので全国比例区が有効とは言えないという意見、23区内の区議選に可能性があるという意見、政令指定都市の首長選挙が適しているといった意見が交錯した。
  • 家入陣営はネットで政策を募集したが、政策の整合性をどうするのかという指摘があった。政治家の活動は日々有権者の声を集めることであり、政治活動として告知日前に取り組んだのであれば評価できたという意見も出た。政治家の役割の一つに苦渋の決断をするということがあるという指摘に対しては、政治家の決断は大事な仕事だが、有権者に納得してもらうことが必要で、そのためには対話が欠かせないという意見もあった。
  • 双方向性について、ターゲット広告の手法を導入するといった、今後の可能性にも議論が及んだ。自民党がIPアドレスを読み取ってトップページを組み替えたなど、すでに工夫は始っている。メールマガジンの配信などについて、より新しい戦術が開発される余地があるという結論になった。
  • 日本では匿名が当たり前だが、そんな状況でも双方向性は実現できるのかという質問が出た。これに対して、匿名なアカウントには返信はせず、身元が明確な場合は丁寧に返すといった実践例が紹介されたが、一方で、政治家は公人であり、非対称性は当然で、政治家は匿名を気にするべきではないという意見も出た。わが国では党議拘束が強いため党所属議員は独自意見を言いにくいということが、双方向性の支障になるという意見も出た。

クラウドファンディングについて

  • 日本には個人献金の習慣がないので、クラウドファンディングは迂回ルートとも考えられる、という意見が出た。現行の政治資金規正法をきちんと読めば、クラウドファンディングは寄付にあたるのではないかという意見が出た。これは、クラウドファンディングを否定するものではなく、限りなくグレーなので、公権力が恣意的に運用する恐れがあると指摘するものであった。
  • 政治資金パーティーと比較して、政治資金パーティーで集められない人がクラウドファンディングを使うという指摘が出た。ただし、クラウドファンディングを寄付として扱うと、政治資金規正法に基づく規制がかかり、匿名献金の排除、外国人献金の排除などの反映に三ヶ月もかかるため、今は寄付ではなく売買契約として扱うしかないという説明もあった。

公職選挙法の改正について

  • 日常的な政治活動でいくら金を使っても規制されず、選挙期間にだけ総額規制がかかるのはおかしい。日常を含め、グロスで規制する必要があるとの意見が出た。公職選挙法が時代に追いついていない、選挙運動期間の再定義が必要であるとの意見が強かった。
  • 国会議員は今のルールで当選してきているので、自ら変えるインセンティブがない。それを変えるためには、メディアを動かす必要がある、という意見も出た。関連して、新人候補はどのように選挙運動をしていくのか、投票行動のパラメータを数値化できるのかといった質問も出た。これについて、ネットは数値化できるので効果測定しやすいという一般論の上で、リスティング広告での誘導が最後の三日間でのアクセス数の増加に結び付いたという川崎市長選の実績などが報告された。ネットの可能性を信じるべきで、黎明期だからチャンスがあるという意見も出た。
  • ネット利用は、ニコニコ動画で立候補会見を放送するのが常識化したように、模倣されやすい。だから、ネット利用では横並びになるの、それ以外のリソースでの影響が必要となる。マスメディアで報道されやすい現職が有利なのはそのためだ、という説明があった。一方で、事前の世論調査では政策が第一で、人柄は第二と回答する有権者が、出口調査では人柄(総合的な判断)を重視したと回答するという傾向が指摘された。ネットでの政策に関わる言論活動はまだ信頼されていないという指摘があった。

討論によって、ネット選挙運動には政治の透明化をはじめ様々な可能性があるものの、まだ有効に活用されているとは言い難く、法改正も含めたさらなる取り組みが必要との認識が共有された。

電子行政研究会セミナー「地方自治体の番号制度対応と電子自治体サービスの展開」

2014314日、東洋大学大手町サテライトにて、第5回セミナー「地方自治体の番号制度対応と電子自治体サービスの展開」を開催しました。
当日は、講師を含め50名を超える参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーションと参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、向井治紀氏(内閣官房内閣審議官)から「共通番号制度における個人情報保護について」の講演をいただきました。

向井治紀氏(内閣官房内閣審議官 社会保障改革担当)の講演資料はこちらにあります。

  • マイナンバー制度では、第三者機関の設置、特定個人情報保護評価、目的外使用の禁止、罰則強化などの歯止めを設けた。システム面では、分散管理、アクセス制限、通信の暗号化などを行う。このように、マイナンバー制度は個人情報を保護しつつ、行政事務での利活用を図るものである。
  • 個人番号カード(ICチップ)の空き容量を使えるようになっている。健康保険証の代わりなど、自治体が条例を定める形で、新たな利用形態が生まれてくるだろう。
  • 特定個人情報保護委員会は、個人情報保護、情報処理の有識者、民間、自治体からの委員で構成され、保護と利用のバランスを実現する。委員会が策定する民間に対するガイドラインがこれから重要になる。
  • 保護に偏りすぎると使い勝手が悪くなる。番号制度の民間活用を早くという声があるが、番号を付ける範囲を拡大するよりも、本人確認の拡大を求める声が強い。マイナンバー法によって、ネットにおける本人確認について民間も公的個人認証を利用できるようにしている。
  • 今後の可能性として、医療分野では市町村間での連携、災害時の過去の病歴取得などが挙げられる。番号だけで郵送できるマイ郵便番号などのアイデアもある。マイナンバーもパーソナルデータもこれからの経済に不可欠であり、保護しつつも、活用できるようにしていきたい。

続いて、篠原俊博氏(総務省自治行政局住民制度課長)から「地方自治体における共通番号対応の現状と独自の利活用計画について」の講演をいただきました。

篠原俊博氏(総務省自治行政局住民制度課長)の講演資料はこちらにあります。

  • 制度改正はクラウド化のよいタイミングであり、新藤総務大臣もクラウド化に熱心である。システム構成でキーとなる中間サーバーはクラウド化し、東西2カ所に設置し、東西で相互バックアップする。
  • 地方自治体の既存システムの改修には国費を付けた。住基システム、税務システムの改修などが実施できる。ただし、ランニング費用は地方の負担となる。
  • 住基カードが廃止され、個人番号カードに切り替わる。表面には必ず顔写真が載る。裏面はコピーされることを想定して、個人番号と氏名、生年月日が載る。
  • 公的個人認証が民間に開放される。文章の真正性を確認するという利用方法だけでなく、スムーズなログインに使える利用者証明の機能が追加される。今までネックだったカードリーダーに替えて、NFC付スマートホンを使えないか検討している。
  • カードの普及とよいコンテンツは鶏と卵の関係にある。自治体によっては、条例による独自利用を考えているところもあり、期待したい。

続いて、向井氏、篠原氏の講演を受けて、柴山昌彦衆議院議員(衆議院内閣常任委員長)から総括講演をいただきました。

  • マイナンバーについては施行令などの策定作業が遅れているという批判があり、手探りのところもあるが、スケジュール通り実施する。
  • パーソナルデータの保護と利活用については、政治的な決断が必要である。なぜなら、日本人は保護について非常にセンシティブだからだ。機微情報の扱いに慎重過ぎたがために、かえって、ネットセキュリティ対応が遅れてしまっている。それが、米欧のとの機微情報のやりとりの遅れにも繋がっている。
  • 医療情報はマイナンバーとは別にすべきという議論もあるが、どうするかは政治的な決断である。複数の番号の連携は複雑になるため、個人的には、一つの番号で統合すべきと考えるが、違う意見の政治家もいる。
  • 自治体での取り組み例として、千葉での市役所と介護施設との橋渡しサービス、柏市のスマートホンを用いた健康管理などを聞いている。マイナンバーによる医療情報の連携は、ニーズが高いと認識している。金融分野では、預金の名寄せは、所得の把握のみならず、金融機関間のセキュリティ情報の共有にも結び付く。

後半は、山田肇東洋大学教授(電子行政研究会副委員長)の司会で、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

【主な意見・論点】
地方自治体でのマイナンバー制度対応について
Q(質問):財政措置について、所有からサービス利用の流れに対応して、柔軟な財政処置をお願いできるのか?
A(回答、篠原):クラウドを用いたサービス利用を推進している。補助も年限などはあるが、対応できるはずなので、個別に質問して欲しい。
Q:宛名番号が住民の数より多い場合があると聞いているが?
A(篠原):住民の23倍ある場合もあり、データクレンジングしないといけない。まずは、必要なデータにマイナンバーを紐付けて、余力があればクレンジングをして欲しい。
Q:各自治体が提供するサービスは使い易さが必要ではないか?
A(篠原):ユーザービリティが大切。マイポータルの画面を如何に使い勝手の良いものにするか、ガイドラインも出している。外国人に対しても多言語化で対応する。 

マイナンバーの利用範囲拡大(当面)について
Q:公的個人認証の民間利用が重要だというが、千葉市熊谷市長が実印の時代は終わったとつぶやいて議論になったことがある。公的個人認証を用いることで実印をやめられるのか?
A(向井):実印に法的な根拠はなく、実社会での利用に対して自治体がサービスをしているもの。不動産取引は対面だが、今後は必ずしも対面でなくても良くなるかも知れない。
Q:医療分野での利用には政治的な決断が必要だが、厚生省の検討会では、社会保障費の抑制や効率化を前提として議論しないのが問題である。
A(柴山):その通り。手書きによる診療報酬請求には膨大なコストがかかっていたが、今は電子化された。導入によって得られるメリットがコストを上回れば政治的決断で進められる。 

マイナンバーの利用範囲拡大(将来)について
Q:個人番号は捨てられないのだから、どこまで国が情報を管理するか国民が選択できないのであれば、利用範囲はなるべく狭い方がよいのではないか?
A(向井):危惧されているのは、将来、極めて中央集権的な政権が誕生して、個人情報を濫用することだが、それは国民が政治的に選択することである。
A(柴山):濫用した時の歯止めにはシステム的なものと法的なものがある。しかし、ここまでペーパーレスが進んでいない先進国は日本ぐらい。歯止めは用意するにしても、利活用は進めるべきだ。
Q:データマイニングやプロファイリングで、あまりに個人を特定できるのは、プライバシーの観点から危険ではないか?
A(向井):その点で国のやっていることは民間の足下にも及んでいない。どこまで匿名化したらよいかの議論は難しい。最終的には、匿名化したデータを元に戻さないことを、何らかの方法で担保する必要があるだろう。
Q:番号制度は行政のために作られており、民間活用のための設計がなされていない。もう少し時間をかけるべきではないか。
A(柴山):犯罪行為に使われてしまう意見があるという指摘だと思う。Suicaの件は、民間活用を考える格好の事例だと思う。個人番号をなりすましでとられるのを防ぐのは大前提。個人情報の利用は、第三者委員会でマルチステークホルダーで検討するのが大切である。 

国民のITリテラシー向上について
Q:柴山議員が出演されていたBS番組で、国民のITリテラシーをどう向上させるかと言っていたが。
A(柴山):国民のリテラシー向上には、子供の頃からの教育が重要。文科省に総務省から派遣して検討させている。e-ネットキャラバンもやっている。すぐにリテラシーを上げることは難しいが、できることを地道にやっていきたい。
Q:住民への広報が十分でない。
A(篠原):平成25年度予算では、法案が通るかどうか不確定だったため、確かに落ち込んだ。26年度は内閣官房で予算を取っている。自治体で広報をしてもらうためのポスターなどのアイテムを提供する。
A(柴山):市のイベントなどを通して全ての年代に啓発していきたい。国民のITリテラシー向上のきっかけにしたい。

討論によって、番号制度の運用に当たっては個人情報の適切な活用と保護を両立させる工夫や、国民の意識・リテラシーを高める取り組みが重要であること等が明らかとなりました。

電子行政研究会セミナー「マイナンバーの活用はどんな未来を拓くか」

2014128日、TKP東京駅前会議室カンファレンスルーム2にて、第4回セミナー「地方自治体の番号制度対応と電子自治体サービスの展開」を開催しました。
当日は、講師を含め50名近くの参加者にお集まりいただき、2人の講師によるプレゼンテーション、パネルディスカッション、そして参加者全員での全体討論が行われました。 

はじめに、三木浩平氏(千葉市総務局次長情報統括副管理者)から「千葉市における番号対応と新しい電子自治体サービス」の講演をいただきました。

三木浩平氏(千葉市総務局次長情報統括副管理者)の講演資料はこちらにあります。

  • 千葉市では番号制度に対応するための仕組み作りとともに、情報連携による独自サービスの検討も進めている。
  • 千葉市では、番号制度対応の推進は業務推進改革課が行っている。他の自治体では情報システム部のところが多いが、最近は徐々に業務側にシフトしてきているようだ。
  • 基本計画は1月中に固める予定である。策定の目的は、全庁的な意識を統一するためであり、恩恵を受ける市民が限られている番号制度について市民に説明をするためである。トップを市長とし、課長によるPTを、また、数部門にまたがる場合はWGを組成し、昨年8月に全庁体制を立ち上げた。しかし、データ量や更新頻度など政省令が出るのを待つ必要があるものもある。
  • 情報連携インフラでは、統合DBを設け、それと中間サーバーを連携することで、外部とのインタフェースを1カ所にした。番号制度対応とともに、汎用機上のレガシーシステムのパッケージへの移行を並行して行う。パッケージはノンカスタマイズを目指している。
  • 調達仕様書において、番号制度対応の仕様が決まっておらず盛り込めなかったため、事業者から提案を求める形にしたが、大手ベンダーと中小ベンダーとは提案力に大きな差があった。
  • 業務の見直しにおいては、抜本的な見直しと制度対応の見直しを並行して進めている。前者は住民サービスの向上で、後者は法律への対応である。抜本的な見直しにおいては、総合窓口を目指している。webコンシェルという、市のサイトから必要な情報を案内するサービスの導入や、プッシュ型のお知らせサービスを検討している。マイポータルについてはどのようなものになるのか不透明であるが、市民ポータルは必要であり、例えば、窓口に行かなくても済んだり、行く場合でもサービスの前さばきができたりというようなことを検討している。
  • 宛名番号のデータクレンジングが必要である。例えば、転出した後に、再度転入した場合、新たな宛名番号が振られている。付与済みではあるが、現在未使用の番号が50万件ある。機械的な名寄せが困難なものは、日常の業務の中で対応していくしかなく、移行には相当時間がかかる。
  • 新サービスでは、個人番号カードのICの空き領域に複数のカードをまとめること、市民ポイントの付与、窓口訪問前にWebによる情報の事前入力、企業コードを活用した、企業と市役所を結ぶ電子私書箱を検討している。
  • 特定個人情報保護評価(PIA)への対応だが、千葉市では全項目評価になる。対応については、国からは自治体で考えるようにとされており、自治体によってバラバラの状態。説明責任を果たせるプロセスが必要なため、千葉市では、プライバシーマークで実績のあるJISQ 15001を援用し実施する。
  • 個人番号カードの交付方法については、総務省の方針とは違う、来庁時にカードの作成を市民に働きかける方式を総務省に提案している。
  • システムの調達だが、スケジュールの集中と、派遣法の改正により、SE不足の声が出始めている。そうなると、入札価格の高止まりの懸念があり、できるだけ早期の調達が必要。千葉市は国に対して、対応のための各種ツールの提供を要望しており、内閣官房が対応することになった。

続いて、茨城県五霞町の矢島氏から「小規模自治体の番号制度 課題・対応」について、資料を基に講演をいただきました。

矢島征幸氏の講演資料はこちらにあります。

  • 番号制度導入の目的は、住民満足アップ、業務効率アップである。
  • 五霞町は人口9千人と小さいが、仕事は大きいところと変わらず、人手不足である。このため、業務の効率化が課題となっていた。そこで、茨城県の4市町で共同してクラウドの導入を決めた。4市町のシステムは、ベンダーは違っていたが、移行年度の合意ができたことが大きい。すでに、クラウドが稼働中である。クラウド化の協議会に県がアドバイザーとして入っており、その支援があったことが重要だった。
  • パッケージはノンカスタマイズを目指す。半年前には改修が必要だった機能も、ベンダーの対応が進みパッケージが進化したのでノンカスタマイズで対応ができそうである。
  • 協議会の発足から1ヶ月で公告を出した。提案への評価は現場の職員に担当させた。全庁に対してデモを実施することで、職員の意識が向上した。これにより番号制度でどこをどう変えればよいか分かるようになった。
  • 首長から職員までいろいろなレベルで番号制度研修会を実施している。首長からのピンポイントの質問もあり、有意義であった。

後半は、山田肇東洋大学教授(電子行政研究会副委員長)司会によるパネルディスカッションの後、参加者も含めた全体討論、意見交換が行われました。

【主な意見・論点】

全国での同時開始に関する質疑
Q(質問):県がアドバイザーになっていると言うことは、県としては県内の全ての自治体を同じシステムにすることを考えているのか?
A(回答、参加した茨城県から)それは考えていないが、小さい自治体が多いため、できるかぎり同じシステムを使って、相互に業務支援をできるのが望ましいと思っている。ただし、総務省のアンケート結果を見ると独自指向が強いようだ。
Q:宛名番号のデータクレンジングは行っているのか? 千葉市のような苦労はないのか? 時間を取られることはないのか?
A(矢島):住民登録外の対応が大変だが、五霞町は人口9千なので手作業でも行けると思っている。しかし、協議会の4市町でも、大きい市では負担がかかっている。
Q:千葉市から、千葉県の他の自治体に対して、千葉市のシステムを利用しないかといった働きかけをしているのか?
A(三木):県内では、電子申請は共同だが、各自治体、独自志向が強くて難しい。政令市同士の相乗りも難しい。レガシーからパッケージに移行する際、同じパッケージを採用するという事例がある。
Q:このような質問を続けてきたのは、SEが不足しているという話があったからだ。共同利用しないと間に合わないのではないか。
A(三木):千葉市は、国と自治体との意見交換の構成メンバーである。当初は相乗りを想定していた。国からはLG1ASPの中小市町村での利用を推奨するということになりそうだ。
A(矢島):協議会では後乗りの自治体も募集しているところである。
Q:国からの要件の提示時期にばらつきがあると言うことだが、具体的には?
A(三木):未だに、未定だったり、概略すら書かれていなかったりしている箇所が、膨大にある。中間サーバーに格納しておかなければいけない情報や、開示の内容が曖昧だったりする。
A(矢島):うちは進捗が遅れているので、公表された範囲の中で進めている。
A(三木):番号法の別表に記載のあるもので、庁内にない情報がいくつかある。法令作成時に参考にした自治体には、おそらくあったのだろう。国には、そのような情報は市、県、国のどこが持つのか整理していただきたい。 

職員の意識改革と新サービスに関する質疑
Q:公募型の調達は今までもしていたのか?でなければ、今回なぜ行ったのか?
A(矢島):今回が初めて。それまでは、平成6年からずっと同じベンダーだった。県が主体的な考え方を育成してくれた。
Q:千葉市では現場職員の参加はあるのか?
A(三木):千葉市では、各課のなかにシステム班がある分散管理である。市長からのトップダウンでそれを乗り越えた。番号制度対応では、主管課がアンケートなどで積極的に働きかけた。
Q:番号制度対応による新しいサービスを考えているか?
A(矢島):現状はまだ考えていないが、来年度取り組む予定。
Q:全庁的な最適化のための仕組みを検討しているか?
A(三木):オープンデータ事業の取り組みの中で、事務を特定する「商品コード」が無いことが分かった。法律が変われば、事務の名称が変わったりするため、紐付けができていない。来年度、Content Management System の再構築において、「サービスコード」をふることにした。

個人情報保護に関する質疑
QPIAの実施時期は、全システム同時期か?バラバラか?
A(三木):今年度は3システムで実施予定である。
A(矢島):個人情報保護ファイル簿の更新をずっとしていなかった。そこから始める必要がある。
Q:自治体ごとの個人情報保護条例との関連は?
A(三木):適用範囲の解釈が分かれている。個人番号が業務システムに入っていなければ良いとしているところもあるようだが、千葉市では対象としている。 

討論によって、番号制度は自治体にとって様々な業務改革や新しい住民サービス提供のチャンスとなること、対応のためには全庁一体での取り組みを進める工夫が重要であること等が、参加者に共通の認識となりました。

健康 感染症の発生を早期に警告する症候群サーベイランス

インフルエンザやノロウィルスが流行しています。これら感染症について、かかりつけ医などが投入した患者情報を自動収集し疫学的な解析を行い、発生と流行を早期に判断して公衆衛生的対応をとる一連の技術が、症候群サーベイランスです。
症候群サーベイランスはビッグデータ解析の応用分野としても大変有望ですが、わが国では、諸外国に比べ実用化が遅れています。今回のセミナーには、国立感染症研究所感染症情報センターの大日康史主任研究官をお招きし、わが国における研究開発・実用化の動向、世界各国との比較、広く利用するための制度的課題などについて、講演していただきした。

日時:2月12日(水曜日) 午後6時30分から
場所:東洋大学白山キャンパス5号館3階 5301教室
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:大日康史氏(国立感染症研究所)

講演資料はこちらにあります

冒頭、大日氏より概略次の通りの講演があった。

  • 感染症法に基づいて、感染症患者の発生状況を把握している(感染症発生動向調査)が、7から10日遅れで、いかに迅速に把握するかが課題となっている。感染症発生動向調査は医師が診断して保健所に報告し集約という流れで、診断に重きを置いている。しかし、パンデミック、新型感染症、まれな病気に関しては診断が遅れる場合もある。新しい病気は、そもそも診断ができない。結果的に、誤った診断になることもある。
  • バイオテロのように遅れることが致命的な場合もある。そこで、診断ではなく症状から情報収集をしようという考え方が生まれた。これが「症候群サーベイランス」である。熱っぽいなと思ったら、普通は一般用医薬品(OTC)を服用するから、これをモニターする。その先の外来受診・学校の欠席・救急外来受診・救急車の要請なども、それぞれモニターする。それらを多面的に見て、いろいろな情報を重ね合わせることで、ノイズを除去し、精度を高めるようになっている。
  • OTC購入の数は営業情報であり、入手に費用が掛かる。診断情報は電子カルテから取得できるが、病院・診療所向けの電子カルテはベンダーそれぞれに仕様が異なっている。また、医療機関では、個人情報保護の観点から、機関外に情報を一切出さないことが命題となっている。日本の個人情報保護法には公衆衛生に関する除外規定が存在するが、それに沿っての情報収集はできていない。アメリカの場合、電子カルテ導入に補助金が出るが、保健所からアクセスできることというのが補助の条件になっている。そこで、わが国では薬局サーベイランスと学校・保育園サーベイランスが主に利用されている。
  • アメリカでは、2007年時点では、緊急外来で80〜90%症候群サーベイランスを実施しており、そのほか、毒物摂取ホットラインや911コールも加えている。イギリスでは、数年前のアイスランドの噴火の際に、国民に目や呼吸器の症状が増えていないかを調査したことがあった。
  • 日本の薬局サーベイランスは薬局における処方薬の処方数をモニターするものである。薬局での処方薬の処方は99.9%電子化されているので、現場の負担なしに、処方翌日午前7時にそれを集約している。地域ごとの処方数や、処方した患者のおおまかな年齢などが自動的に分析され、グラフ等が作成される。
  • 日本の学校欠席者情報収集システム(学校欠席者サーベイランス)は、欠席者数だけでなく『熱があるので学校を休ませます』といった診断前の情報も保護者からの連絡で集約されている。保育園の場合も同様である。学校欠席者情報収集システムは22県に導入されている。群馬県、茨城県、三重県、奈良県では、保育園と学校の両方に導入されている。
  • 先日、浜松市や広島市のノロウィルスの集団感染が起きた。広島市では学校欠席者情報収集システムを導入していたので、下痢や嘔吐の欠席者数がとんでもないことになっていることを早期に把握できた。浜松市ではモニタリングしていなかったから、患者数が徐々に増えて報道された。
  • オリンピックやサミットといった国際的に重要なイベントが開催されるときに、バイオテロの確率が高くなる。2020年には東京オリンピックが予定されているので、昨年10月の東京国体の際に東京都と共同でサーベイランスを強化した。薬局・学校サーベイランスに東京都からの救急車出動状況を加えて、感染症を早期探知し、異常探知時には、保健所が対応するようにした。これからも海外要人の来日時などに同様の強化を行うことになっている。

講演後、次のような質疑があった。

電子カルテなど他の情報の活用について
Q(質問):いろいろな情報源から集めることによって、ノイズが減るという説明があった。しかし、今は実質的に処方薬と学校の情報しかない。学校には休みの期間があるから、他の情報源も確保する必要があるのではないだろうか?
A(回答):ごもっともである。保育園が開園していればその情報を得るとか、救急車搬送とか。しかし、今のところはむずかしい。
Q:それでは、米国のように診療所に電子カルテを普及させ、そこから情報を取得できないのか?
A:その通りだが、膨大な予算がかかるので、政府が取り組むかどうかである。
Q:診察結果を症候群サーベイランスに反映するのは、個人情報にあたらないのでは? なぜ病院はやらない?
A:個人情報流出の可能性をゼロにしたいという過剰な発想がある。地域内での電子カルテネットワークがあるところもあるが、カルテの相互利用程度でしかない。

新型感染症の早期探知の可能性について
Q:このような現状で、新型感染症の流行を早期検知できるのか?
A:これ以上早く見つけるのは不可能である。天然痘であっても、最初は、医師は水疱瘡だと診断するだろう。だから診断から情報収集するのは、症候群サーベイランスよりも遅い。今のものが最善である。
Q:それでは、鳥インフルエンザのヒトヒト感染は、早期探知できるのか?
A:夏であれば可能だが、季節性インフルエンザが流行している今の季節では、むずかしいだろう。
Q:どの地域に注意が必要といった判断はどのように行うのか?
A:データ表示までは自動で行い、それを見て人が二次的な判断を行う。

重要行事の際のサーベイランスの強化について
Q:サーベイランスの強化とはどういう意味か?
A:強化していないときは情報交換していない。互いの収集情報はわからない。強化しているときには情報共有する。
Q:普段から情報交換すればよいのでは?
A:47都道府県の一斉実施は、感染研の態勢では無理である。情報統合して判断するのに、短くても一県当たり30分くらいかかるからである。
Q:特別なときにしか、症候群サーベイランスを実施していないイメージがあるが?
A:学校欠席者情報収集システムなどは、各県がそれぞれの日常業務に使うものだ。このように、日常的に使われていなければ緊急時には利用できない。感染研は症候群サーベイランスにそれを利用しているのである。だから、日常的に症候群サーベイランスを実施するという態勢ではない。