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「OECDのAI原則」 平野晋中央大学国際情報学部長

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)
日時:7月25日木曜日18時30分から20時30分
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
講師:平野晋(中央大学国際情報学部長)
司会:山田 肇(ICPF)

平野氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、平野氏は次のように講演した。

  • 中央大学国際情報学部は1期生が4月に入学したばかりの新しい学部で、〈IT〉と〈法律〉の2つ(IT + Law = iTL)を学ぶほか、グローバル教養(SDGsや倫理・哲学など)も身に着ける。産官学のリンク(Ichigaya-Tamachi Link = iTL)になるのが目標である。
  • AIやロボットは人類の脅威か? 脅威と言う人も、心配無用という人もいる。良い面を極大化しリスクを極小化することが重要であり、欧州ではこれを「信用できるAI(trustworthy AI)」と表現している。
  • 工学技術の進歩に人の知恵が追い付いていないことが問題であり、自身は法律家なので予防法学の視点で考えている。予防法学は3つのP(Predict, Provide, and Protect 予測し、備え、防護する)で表せる。
  • hard lawではなく、拘束力のないルールであるsoft law(ガイドラインや原則など)がAIやロボットの分野では有効である。hard law(法規制)であまり締め付けると開発企業が萎縮してしまい、AIの発展が経済発展につながらなくなってしまう。AIのメリットをどんどんと社会に浸透させていくことも必要である。
  • 2016年2月に総務省で「AIネットワーク化検討会議」が始まった。当初は8原則であったが、これはOECDのプライバシー8原則に倣った。同年6月に高松で開催されたG7情報通信大臣会合で総務大臣が公表したところ各国からの反応が非常に良かった。総務省だけでなく、政府全体として推進するために内閣府に「人間中心のAI社会原則検討会」が2018年5月に立ち上げがった。
  • 日本での成果を2016年から何度もOECDにインプットしてきたが、OECDでもAI原則をつくるための「AIGO(エイゴ又はエイ・アイ・ゴーと発音」(Artificial Intelligence expert Group at the OECD)と呼ばれる「AI専門家会合」が立ち上がった。先般、今年の5月にOECDの原則が出来上がり理事会で承認され、加盟国以外も参加してOECDのAI原則になった。OECDでの作成過程では橋問題(自動運転の車にスクールバスが突っ込んできたとき、スクールバスにぶつかって30名の児童が死亡するのと、橋の欄干に進路を取り乗員1名が死亡するのと、どちらが正しいか)なども例示し、AIの開発や利活用の課題を明らかにして、原則を作っていった。米国でにも日本の成果をインプットすべく国際平和基金で発表した。
  • OECDのAI原則の構造は、大きくSection1(AIの管理原則)とSection2(政府が取り組むべき事項)に分かれており、それぞれ5項目が含まれている。
  • 管理原則は英語ではPrinciples for responsible stewardship of trustworthy AIという。stewardshipは日本語に訳しにくいため正式な訳でも「スチュワードシップ」とカタカナになると思われ、管理する責任という意味合いである。これには次の5項目が含まれる。

原則1:包摂性のある成長、持続可能な開発、幸福をもたらすものであること
原則2:人権や民主主義の尊重など人間中心の諸価値で構築され、必要に応じて人間の判断が介入できること
原則3:透明性を確保し責任ある情報開示を行うこと
原則4:堅ろうであり、セキュリティ、安全のリスクを管理すること
原則5:上記諸原則と正常な動作に責任と説明義務を負うこと

  • それぞれの原則についてOECD資料に説明が付いている。日本語訳も作成される予定であり、正式にはそれを参照して欲しい。
  • わが国は、OECDのAI原則に対して多くの貢献をしてきた。.内閣府、総務省で作成した原則はOECD原則の基盤となっている。

講演後、以下のような質疑が行われた。

OECDでの議論について
Q(質問):リスクを最小化するためにsoft lawだけで大丈夫か。
A(回答):総務省の初期の会議でもその懸念が指摘されたが、hard lawは産業界が嫌がった。しかし、指摘の通りsoft lawだけでずっと続けるのは適切ではない。AIの利用が進めば問題点がより明確に見えてくるはずなので、その時に考えるのが良い。
Q:まだ開発が進んでいないので、今はhard lawはまだ時期早いということか。
A:その通りである。
Q:兵器利用などの話題は出てこないのか。
A:兵器など軍事利用はスコープの範囲外として国内では議論してきた。OECDも同じである。AIの軍事利用は国連で議論されている。
Q:AIは単数か複数か。複数のAIがあると、互いの判断が干渉しあい、思わぬ事故が起きる可能性もあるのではないか。
A:そこまでの議論にはならなかったが、ネットワークにつながった時に危害が生じないようにという話は総務省で検討された。なお「AI」を単体で捉えるよりも、寧ろ「AIシステム」として全体として捉えた上で、システム全体として安全を実現すべきという話に成った。
Q:東京消防庁はロボット掃除機がファンヒータを押して火事が起きることがあると警告した。ロボット掃除機の開発者もファインヒータの開発者も相互干渉など想定しない。この件はAIではないが、検討が必要だと思う。
A:リスク対策がきちんとされているかが重要となることは同感である。ちなみに、内閣府の「AI社会原則」の場合にはAIを広く定義しており、今の時点ではAIを用いない高度なシステムも含まれている。
Q:OECDに日本の結果を持っていった時に、入らなかったものはあるか。
A:ほとんど入った。OECDの事務局も「日本は非常に貢献してくれた」と言っている。記憶に残る程の議論になったのは、stewardshipという単語ぐらいであると思う。和訳が難しい単語なので。
Q:個人情報保護法では事前同意の原則があるが、認知症などで判断能力がなくなった場合には困ってしまう。GDPRも完全な人間を前提にして考えられたものである。同様に、AIを利用する場面について判断できない人のことは考えられているのか。
A:まだ考えられていない。医療のインフォームド・コンセントも本人同意を得るのが難しい場合には家族や代理人が同意することになっていると思われる。私見になるが、類推すると同じような考え方になるのではないか。
Q:意思決定という点で、AIに人格、法人格は与えられるのか。
A:内閣府、OECDでは議論されていないと思う。私の本(『ロボット法』)では扱っている。自動運転の賠償責任について自動運転車を「法人」のように捉えて保険の基金(vehicle)とする考えがあるが、おもしろい考え方である。

説明責任について
Q:ディープラーニングなどは説明できない技術である。天気予報も説明はできないが「晴れ」らしいということになる。説明責任はどのように考えればいいのか。
A:OECDの透明性と説明可能性では、「文脈に応じた説明」と書いてあり、すべてやれという話になっていない。どういう情報を使った、どういう分析をしたのかということに対する説明責任も原則として大きな影響がある場合に限られよう。囲碁AIは生死に関係ないので、説明責任は比較的にはさほど重要でないと考えられる。他方、与信や人事評価などは重要な判断になるので、不利な影響を被る人々には説明が重要となる。しかし、学生の就活エントリー・シートを人間(企業の採用担当者等)が不採用と判断した場合は「何で?」とあまり聞かれないが、AIがすると説明責任があるというのは個人的には不思議だと思っている(すなわち前者においても本来ならば説明責任があるべきとも思われる)。このような反応の違いの原因は、人間の判断よりもAIの方が信頼されていないからこそ生じるのではないかと思われる。
Q:AIの原則で、人間が判断する機会を与えるとあるが、判断スピードは人間のほうが遅い。馬を買って訓練し、行き先を告げると連れていってくれるようになった。ある日、交差点で馬が人にぶつかって人が死亡してしまった。馬を買って訓練した人が責任を持つのか?
A:学習させた人にも責任の一端があるように思われるが、状況で変わる部分もある。注意義務違反では、予見できたかできなかったか、危険を回避すべきであったか否かで判断がわかれる。馬に任せきりとなるとこれに違反したことになり得る。動物なので信用できないとなれば、AIも信用できないというように予見されるかもしれない。いずれにしろ、生死に関わるとなると高い注意義務が発生する。
Q:飛行機事故の際に事故調査委員会が原因を調べ、天変地異によるもの、整備が悪いなど航空会社の責任、飛行機自体が悪かった、という3ついずれかの結論を出す。自動運転も事故が起きたときに、ドライブレコーダーのようにデータがあれば、調査してどの原因がわかるようになる。
A:OECDの原則にも検証可能性が含まれている。更に総務省のAI諸原則にも、データがないと事故分析できないのできちんと残しておくということが書かれている。ただ何年分・何時間分残すかなどは、未だ明確ではない。そのような詳細は、今後検討されていくと思われる。

AIを利用する企業の説明責任について
Q:AIを組み込んだシステムをお客様に提供し、そのお客様が業務で利用しているという多層構造になる。多層化したビジネスになった時に、AIシステムを業務で利用する人に対して説明し、さらにエンドユーザにも説明するとなると、どう説明したらよいか難しい。何か参考になるものはないか。
A:総務省のAI利活用ガイドライン・AI利活用原則には「詳説」があり参考になる。分野別の各論はこれからである。
Q:業種業態に関わらずAIが増えていき企業が消費者に対応していくことになるが、ガイドラインなどどこまでチェックすればいいのか悩ましい。OECDや総務省のものを重点的にみればいいのか。
A:その通りだと思う。総務省のAI利活用ガイドライン・AI利活用原則の詳説には、いろいろなケースが書かれており参考になる。内閣府の人間中心のAI社会原則はすべての前提になる。

教育や啓発の必要性について
Q:5Gに向けてサイバーセキュリティ教育を子供のうちからしなくてはいけないという話がある。AIについても教育も早期に実施すべきと思う。そのような機会を立ち上げたりしないのか。
A:内閣府の人間中心のAI社会原則の中に、幼児教育からリカレント教育まで必要と書いた。そこに書かれているので政策として進められることになる。具体的なアイデアはまだないこれからと思われる。国際情報学部でもAIを研究教育で取り上げるが、全国的な教育はこれから広がっていくだろう。
C(コメント):今生きている人は全員、自動車の便利さとリスクを知っている。AIは急に現れたので大人も何も知らないから、大人に対しても教育しなくてはいけない。
Q:AIの専門家でない一般の人々に、説明責任などに配慮したAIを作っていますと言ってもわからない。のギャップはどうするのか。
A:啓発が必要で、そこには「信頼」が重要である。立法府、行政府のみならず企業にも、わかりやすく伝えることをきちんと進めてもらいたい。なおAI開発ガイドラインは常識的な内容であり、企業が守れるものになっている。ここから信頼が生れてくると考えている。
Q:日産は衝突防止機能を宣伝しているが、何時間もハンドルの上に手を浮かしていられるはずはない。間違った宣伝をするとAIの良さが伝わらないのではないか。
A:ヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)の問題であり、レベル4からレベル5に移行する際の大きな論点である。ちなみに中華航空のエアバスの名古屋空港の事故も自動と手動の切りかえが原因だったので参考になろう。
C:普通は進行方向を向いているイメージだが、メルセデスベンツのCMでは4人が向かいあって座っている。そこまで自動運転を信頼できるかというと、CMが実現するのは遠い先だろう。

セミナーシリーズ第3回「デジタル手続き法で企業運営は変わるか」 木村康宏freee株式会社執行役員

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)
日時:5月17日金曜日18時30分から20時30分
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
講師:木村康宏(freee株式会社 執行役員社会インフラ企画部長)
司会:山田 肇(ICPF)
定員:40名

木村氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、木村氏は概略次の通り講演した。

  • 日本の労働生産性は先進7か国中最下位である。特に中小企業はバックオフィス業務の生産性が低い。しかし、行政への手続きなどバックオフィス業務の7割は自動化できる。中小企業にデジタル変革をもたらすという目標でfreee株式会社は設立された。
  • 電子政府は「不便」という次元を超えて「国際的な競争劣位」を産んでいる。民間サービスは使い勝手を最大限重視しているが、電子政府は使いにくい。電子政府の「コンシューマライゼーション」が必要である。システムが使いにくいために、使えるべき制度が使えないというのは、単に利便の問題を超えて、人権問題でもある。
  • 年末調整は従業員が必要事項をスマホ入力すれば、後は自動計算して電子申告までできるようになっている。所要時間は1/5に削減された。しかし、官からは住民税の通知書が紙で届き、納付書を持って銀行窓口に並ぶ状況である。従業員が転居すれば同じような手続きをいくつもの役所に行う必要がある。会社設立も雛形を使って定款が作成でき、士業が電子定款の作成を代行するサービスもある。しかし、官の側から「定款のインデントを直せ」といった趣味の領域の指示まで来る。電子だけでは完結しない。
  • 電子行政では関連する手続きをすべてポータル経由で一括してできるようにしなければならない。また、途中で紙が入ることなくデジタル完結する必要がある。デジタル手続法によって、そんな「あるべき姿」を実現する要素が整う。
  • さらに、API公開で民間側が使い勝手の良いサービスを提供できるようになる。freeeはクラウド会計サービスのAPIを公開しているが、それを利用していろいろな会社がそれぞれにアプリを提供している。なかには政治資金収支報告書の自動作成アプリまである。官がAPIを公開すれば同じようになるだろう。
  • 中途半端な電子化ではUX(User eXperience)は向上しない。創業では定款認証の際に公証人に(TV電話は可とされたとはいえ)面接する手順・手数料が残った。印鑑届書も残存した。面接は反社会的勢力による創業を排除するためだが、士業が代理で面接できるという抜け道が残っている。創業に伴って銀行口座を開設する際にも反社会的勢力でないことを確認するという重複もある。印鑑は勝手に代理として押印することが問題になっている。この状況で紙手続きを義務として残すことは疑問である。
  • さらに先を展望して「紙手続きをそのまま残すのはタブー」と言いたい。一気呵成のデジタル化が必要で、そのためには電子証明書の普及促進、電子を利用する者へのインセンティブ付与、原則を電子とすること(電子を特例扱いにして、届出・申請が必要なのが現在のやり方)、受益者負担の発想を捨てることなどが必要である。電子申請システムの利用に受益者負担で費用を徴収するという方式では、利用者が少なければ費用が上がり、ますます利用者を減らす悪循環が起きる。
  • デジタルデバイドの是正という課題が常に指摘される。しかし、高齢者・中小企業でもスマホを使いこなすケースは多いし、離島の人が紙での手続きのために本土に出かけるというのは、逆に「アナログデバイド」ではないか。
  • 将来を展望すれば、手続き・届出自体を無くするのが重要である。官がすでに保有しているデータを組み合わせれば新たな手続きは不要となるというケースもある。ワンストップ化の先で、手続きで止まることのない「ノンストップ化」に進むべきだ。

講演の後、以下のテーマについて質疑があった。

個人情報保護の課題について
Q(質問):今日の説明の中に個人情報保護のことが一度も出てこなかった。しかし、これが電子化を阻む最大の壁ではないか?
A(回答):システムは個人情報をきちんと管理しているという点を、個別のプレーヤーが、日々の営業活動の中で丁寧に訴えることがまず必要である。また、タンス預金よりも銀行預金のほうが安全なのは、コストを掛けて管理されていること、それが銀行法で規制されていること等が背景にあるが、個人情報もスタンドアローンで保管するよりもクラウドで保管するほうが安全と理解してもらうためには、先程の個別のプレーヤーの日々の取り組みに加えて、個人情報の保管に関する法律(個人情報保護法や個別の業法)で規制するのがよいし、現にそうされている。さらに、これら、個別のプレーヤーのレベルと、社会的ルールのレベルの二つのレベルで、継続的に取り組んでいくことで、社会的理解を醸成してく必要がある。お金を銀行に預ける預金・貯金行為も、社会的理解を得て広まるのに時間がかかった。情報を預けることも同じこと。今日の説明では、この点は自明と思っていたので省略した。
Q:地方公共団体にはシステムをインターネットに接続しないという問題があるが、どう考えるか?また、行政組織間の情報連携を阻むものはなにか?
A:自治体においては、個人情報保護が本質的でない形で必要以上に求められていることが影響していると考えている。また、行政間のシステム・情報連携には、事前に本人同意を求めるしかないが、それ自体は丁寧に実施すれば無理なことではないと思う
C(コメント):行政は個別の施策ごとに情報を収集し、収集した情報の利用範囲をその施策内に留める傾向がある。最初から利用範囲を広くするといった対応も必要になる。
C:システムはセキュアに設計し、システム間はセキュアに接続するようにできれば、ネットワーク自体はインターネットで構わない。これを進めれば、エストニアのX-roadと同様にシステム間の連携が当たり前になっていくだろう。

デジタル完結の推進について
Q:一気呵成のデジタル化というがどこから手を付けるべきか?
A:電子証明書の普及が本丸である。しかし、それには時間がかかるので、まずは受益者負担の考え方を放棄するということから進めてはどうか。
Q:一気呵成のデジタル化といっても、官側のやる気が問題になる。どこから進めようとしているのか?
A:中小企業経営にとって社会保険と創業は重要と考え、そこから進めるように主張している。創業は手間・対象数的には大きくないが、創業をデジタルで完結させることで、創業フェーズが終わっても手続きをデジタルでやる習慣が出来る。デジタルネイティブな法人が増えることに意義がある。
C:飲食店は開廃業が多い。飲食店を開業する際には、税務署に開業届を出すのに加えて、食品衛生について保健所に、防火について消防署に届けて検査を受ける必要がある。このような具体的な事例を取り上げて攻めるのもよいのではないか。
Q:創業にはビジネスプランの構築という長い準備段階がある。それを考えれば、印鑑届で少々時間を要しても問題はないという意見にどう反論するのか?
A:物理的な時間だけが問題なのではない。創業者がもっとも繁忙な時期に各種手続きに同じ情報の入力が求められたり、印鑑届を求められたり、意義が不明確な手数料を徴収されたりするのは、心理的な負担になる。そこを改善すれば、だれでも簡単に創業できるようになる。
C:創業はその人にとって一生に数回だが、士業にとっては毎日の業務である。士業は手続きを負担に感じないだろうが、一般の人は負担に感じるということを理解すべきだ。
Q:freeeの確定申告を利用しているが、一部の金融機関は口座データ連携に対応していない。どう突破するか?
A:最近のWeb事業者はAPI連携に当たり前のように取り組んでいるが、伝統的なサービス事業者は、銀行を含めてAPI公開に消極的である。これを突破する必要がある。
Q:既にあるデータを利用するというのは大切である。統計調査の場合、すでに官に提出した情報を再記入するように求めるのは調査対象側の協力意思を削ぐ。この問題をどう考えるか?
A:民間サービスではKPIをトラッキングできるように最初からシステムを設計する。統計は広い意味で政府のKPIとも言える。電子政府も統計調査が自動的にできるように、必要な情報がトラッキングできるように設計する必要がある。

公開シンポジウム デジタル社会における楽しい働き方 杉山知之デジタルハリウッド大学・大学院学長ほか

主催:デジタルハリウッド大学・freee株式会社
共催:情報通信政策フォーラム(ICPF 

登壇者:
小林史明(衆議院議員/IT戦略特命委員会事務局次長)
佐々木大輔(freee株式会社代表取締役)
杉山知之(デジタルハリウッド大学・大学院学長)
山田肇(情報通信政策フォーラム理事長) ※モデレータ

開催日時:2017427日(木)19:00-21:00(受付開始18:30
開催場所:デジタルハリウッド大学大学院
101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ アカデミア3

以下の記録は作成した山田肇が責任を負います。

登壇者を含め総計97名と会場は満席となった。冒頭、佐々木大輔freee株式会社代表取締役が次のような講演を行った。

  • 日本の生産性は諸外国に比べて低いが特に中小企業の生産性は大きな課題である。freeeは中小企業の起業・運営・成長をサポートする。
  • 注目したのはバックオフィス業務であり、これを効率化することによって楽しく働く環境が整備される。バックオフィスを含め全部をクラウド化することで効率が上がる。
  • freee自体も小さな企業であるが「カルチャーに投資する」「1:1でとことん話し込む」「チームでミッションステートメントをつくる」などを掲げて、freeeの開発したバックオフィスシステムを活用して経営してきた。おかげで3年連続して働きがいのある会社ランキングに入賞できた。
  • freeeが目指すのはクラウド完結型社会である。行政など会社の外とのやりとりがクラウドで完結できないボトルネックである。 

次に、杉山知之デジタルハリウッド大学・大学院学長が講演した。

  • あるとき、21世紀になったらどのように仕事をするか考えた。結論は、力がある人はフリーランスになりプロジェクトベースで離合集散するハリウッドの姿だった。それがデジタルハリウッド大学(DHU)設立に結びついた。
  • デジタルハリウッドスタジオという事業を行っている。好きなことを、好きな時間に、好きな場所で、自分らしく働くをテーマとして掲げて女性の活躍を応援している。次世代主婦・ママデザイナー1万人育成が目標で、主婦・ママ専用スタジオを設立してきた。
  • スタジオはハイブリッド・ラーニングで進めている。オンライン講座を自分のペースで勉強したうえで、スタジオに集まり深掘りする。流行り言葉で言えば反転学習である。
  • 受講生の7割以上が学んだ成果を仕事に結びつけている。スタジオ出身の女性たちが組織した米子コンテンツ工場は女性の力で地域を活性化しようとしている。「一人ではできなくても、みんなだとできる気がする。」と彼女たちは言う。ハイブリッド・ラーニングで顔を合わせてきた成果である。卒業生ネットワークは重要である。 

その後、山田肇ICPF理事長をモデレータとしてパネル討論が実施された。小林史明自由民主党衆議院議員が以下のように口火を切った。

  • 20世紀は大量生産が中心の社会だったが、人口減少、グローバル化、IT化により、第二創業期に入っている。しかし、その成功モデルが作られていない。
  • ITを導入して働き方を変えていくときの課題の一つが人材評価である。

これに対して佐々木氏は次のように発言した。

  • 売上金額を並べれば評価が決まった時代は終わった。今日も社員人事評価について徹底的に議論してきた。定性的な評価が重要な時代と認識しており、話し合いの徹底が重要と考えている。 

また、小林氏は杉山氏の講演について次のように質問した。

  • 人生100年時代が来て80年の人生にもう20年が加わった。社会人から高齢者までモチベーションアップの場が必要になっている。大学はどのような役割を担うのか。

杉山氏は次のように回答した。

  • 現在の社会状況と高校までの教育がずれている。普通の大学は教養を学び、その後、専門科目を学ぶ。DHUは逆にしている。専門科目を深掘りしようとすると学生が教養不足に気付くので、後から補うのがよい。また、複雑な世の中に対応できるようにDHUは社会人教育からスタートした。

以後、多様なテーマで意見が交わされたが、発言者名は省略し概要を紹介する。

シニアへの教育機会の提供について

  • 起業家の年齢構成を中小企業白書で見ると60歳以上が32.4%を占めていることに気付く。シニアへの教育機会の提供は重要である。
  • 若者が今から大学で学習しても社会に出るのは早くても2020、第一線になるのは2030年である。即効性のあるのは社会人学生への教育である。
  • シニアが起業した小企業はfreeeのような企業にとって重要な顧客である。彼らはいろいろなことを勉強し、また、経理の数値をよくしようと実践を重ねている。タブレット、アプリを誰もが使える時代になりシニア層へのハードルが下がってきた。
  • 思いついきたときに学習できることが大事であり、MOOC(無料オンライン講座)も広まっている。しかし、オンライン学習には著作権の問題がある。
  • 著作権法の改正は政治の宿題である。行政手続も同様にデジタルを前提に変革する必要がある。官民データ基本法が議員立法された理由はここにある。

行政の電子化について

  • 起業するときは23種類の書類が必要という話があった。公証役場は本人の出頭を求めている。出頭すると本人確認にマイナンバーカードの提出を求める。それなら、最初から電子手続できるのに改善が進んでいない。
  • 印鑑主義と対面原則は課題である。印鑑を3Dプリンターに作られたらどうするのか聞くと誰も答えられない。全社員にマイナンバーカードを作ってもらいたいし、社員証にマイナンバーカードを使ってほしい。マイナンバーカードを普及させることは行政の電子化に役立つ。
  • 税金の納付・還付には多数の書類を使っている。マイナンバーカードの広範な活用は重要なステップである。個人の確定申告は電子的にできるが、法人ではまだ実現していない。これは国家的損失である。
  • これからはマイナンバーカードによる手続きを義務化しなければならないかもしれない。地方は圧倒的にデジタル化されてないが、これを突破するようにIT企業は地方の市場を取りに行ってほしい。
  • 印鑑証明書は紙に精緻に陰影を表現しているため3Dプリンターがあれば複製は誰でもできる。マイナンバーカードよりも印鑑証明書の方が危ない。

「柔軟な働き方」の必要性について

  • 働き方改革では残業時間を規制するが、どこかでルールをつくる必要があり、制限のなかで工夫していくのがよい。
  • 労働人口は減少し2050年には労働人口が5000万人を下回る。そのころには人の取り合いになるのだから、柔軟で働きがいのある環境を実現しておかなければならない。地方だけでなく東京もそうなっていく。
  • 個人事業主・中小企業だけでなく、副業もクラウド会計システムがあれば便利だ。副業を認めることは重要であり多様な人材の獲得にもつながる。
  • MITは教員に週4日間の労働を課している。他の1日は他のことをしても良い。企業の役員している人も多いが、これはアカデミアとビジネス双方にメリットがある。
  • 副業には法的なリスクも存在する。たとえば、だれが保険を負担するか。厚生労働省としてガイドラインを作る方向だが、デフォルトを副業可にして、禁止もできるようにするのがよい。

人工知能やロボットでの労働の代替について

  • 会計計算など月に一回人手で入力していたのが自動化されると、数字を見るようになる。目の前の作業から解放され、好奇心をもって数字を見て、自動的にクリエイティブになっていく。
  • 現在のAIは人間の脳のように万能型でない。アルファGoは囲碁に特化している。人工知能は特定業務では人間よりもパフォーマンスを発揮するが、AIに委ねて余裕の生まれた人間には、取り組める領域が拡大する。
  • 人口減少を機会としてとらえている。センサーやロボットなどは日本の強みである。もう一回、日本にチャンスが回ってきた。産業革命は人力からの解放であり、第四次産業革命は単純な情報処理からの解放である。チームをマネジメントするのは人間の仕事として残る。
  • 失業率が下がっていることによって雇用保険に余裕がでてきている。これをリカレント教育に使い、社会人を再教育してロボット時代に備えることが重要である。

会場から、若手は現場をみているが決定権は上の世代にあるというように、世代間のアンバランスが問題ではないかという質問があった。パネリストは次のように回答した。

  • 人は自分の意見が尊重される環境で働きたいと考えている。これが経営側のプレッシャーとならないような職場であれば人はやめていく。人材の流動化を起こしていく必要がある。
  • 一つに依存することによって交渉力が落ちる。依存から脱却は独立ではなく、「より多くへの依存」ではないか。
  • 全世界でみると人口の半分は30歳以下である。「Don’t believe over 30.」を掲げて自分たちで市場をつくっていけば良い。

わが国で労働生産性上げるというが、営業の生産性が低いのではないかという質問も出た。今までの慣行の改革についてパネリストは次のように意見を表明した。

  • 営業の仕事の問題点は、20%しか営業してない、残りの80%は移動に使っているということだ。ビデオ会議を使っての営業などを進める必要がある。
  • 経営が最終的に人工知能におきかわるかは、Noだと思う。経営は人工知能にはできない。経営はいろんな変数がありどれを重視するかでゴールが変わる。経営には感情・理念が大事になってくる。
  • 政府の役割はデジタル社会では小さくなっていく。地域らしいビジネスが重要で構造改革特区はそのためにあり、サンドボックスという提案がある。一つだけ規制緩和するのではなく、何でもやっていい特区をサンドボックスとして指定し挑戦するのがよい。
  • 世界とどう戦うかは世界基準で考えるべきである。

最後に、パネリストはそれぞれ次のようにまとめの発言を行った。

佐々木氏:労働の生産性はモチベーションによって変わる。事務作業を減らして楽しい仕事をできるようにfreeeの事業を進めていきたい。
小林氏:デジタルの社会を楽しい社会にしていきたい。マイナンバーカードで行政のデジタル化を進めていく。努力が見える化される、場所と時間にとらわれない、そんな社会が実現するようにしていきたい。
杉山氏:デジタルファーストにするために、やり残していることはたくさんある。一つずつ壁を壊していく必要がある。 

最後に山田氏が全体を次のようにまとめた。

デジタル化が進み、一人ひとりがそれぞれの価値観に応じて働き方を選択できる未来が展望できた。楽しい働き方は夢ではないが、そのためには、多くの規制改革や生涯教育の充実が求められる。クラウド完結型社会の実現のために取り組むべき課題が今日のシンポジウムで見えてきた。

知的財産 特許調査から始まる特許の有効活用 鷲尾裕之氏(特許戦略コンサルタント)

日時:11月9日(水曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス6号館6302教室
東京都文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:鷲尾裕之(特許戦略コンサルタント)

鷲尾氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、鷲尾氏は次のように講演した。

  • リケンテクノスで技術開発、分析、知的財産の仕事をして独立した。分析研究をやっていたことが、侵害行為とは何か、どう立証するかといった知的財産業務に役立った。
  • 特許とは、「特許権」である。特許庁に出願し、特許要件というハードルをクリアしたものに権利が与えられる。そして、権利付与は原則特許庁が行う。一方、特許侵害の判断を行うのは裁判所である。特許権は発明に対して与えられるが、発明とは「技術的思想」である。特許明細書を読むというのは、技術的思想を読み取ることであり、それが、たとえば特許侵害の基準にもなる。「特許請求の範囲」に書かれているものは技術的思想である。一方、「実施例」は技術そのものである。
  • 特許審査の対象は発明であって、過去の発明と技術的思想が同一か、進歩性があるかなどが、対比される。一方、侵害を争うときには、第三者の製品、つまり現物が技術的思想の範囲(特許発明の技術的範囲)に入るかどうかが争われる。
  • パイオニア発明が出来れば事業は安泰か? 答えはNOである。後発他社は「あの発明があるから、この分野は参入できない」と思う必要はない。パイオニア発明があっても、特許要件を満たせば特許は取れる。後発他社は、先行特許と互いに侵害し合っている状態を作り出すことでその分野に入っていく。パイオニア発明をした企業は、後発他社の参入を防ぐために、最初の出願から一年半以内に改良特許を大量に出願すべきである。
  • リケンテクノスはポリ塩化ビニル樹脂コンパウンドのトップ企業で安泰なビジネスをしていたので、その頃は特許化しようという思想がなかった。その後、新素材が出て、その分野に入ろうとしたら、そこは特許重視の世界だった。そこで、技術陣と知的財産部が協力して特許化を進めていった。技術屋が特許の重要性を理解して、知的財産部を道具として使った。「知財力ランキング」で評価されたのはここである。技術屋は継続して事業として利益を作るシステムを作らなければならない。技術屋は知的財産部を使うようにするべきだし、知的財産部は技術屋の技術を理解しなければならない。
  • 特許調査とは特許地図を書くことである。その技術分野において自社の立ち位置がどこにあるか。他社の特許はどこにあるのか。他社製品も調べなければならない。自社の強み・弱みを知り、いつでも訴訟に対応出来るように準備しておくのが特許調査である。そして、侵害の事実を証明できる証拠を得るのが分析という仕事である。
  • 熱可塑性プラスチックは、分子量に分布がある、特定の長さの分子を見ても構造の分布がある、混合物である。プラスチック市場で中間加工メーカーは異なるプラスチックを溶融混練して、組成して販売する。それを成形加工メーカーが買って成形し(溶かす、流す、固める)、完成品メーカーが買って組み立てる。
  • プラスチックは、レシピが同じでも作り方次第で異なるものが出来上がる。成形条件で性能が変わってしまう。しかし、日本では製造方法の権利化は、米国の裁判におけるディスカバリのような制度がないので、侵害を争うのが難しい。そこでレシピを出願するのだが、レシピが同じでも違うものができるということは頭が痛い。何を権利化するかよく考えなければ無駄になる。自社が権利化し、他社を侵害する権利範囲は何か。それを検討する必要がある。
  • 特許調査では漏れがあってはいけない。キーワードでの絞り込みは困難で、それでも電気、通信分野と比較すれば関連特許は少ないので、いざとなったら力業に頼る。全部読むわけだ。技術者と同等の知識を持つ知的財産部員が調べて、技術者にプレゼンするのがよい。製品の現在の流れ、将来の市場の方向性を考えて、奥の深い出願をする。拒絶理由が来たら、狭いが有効な権利を取る。特許調査では、権利の安定性・行使の容易性を評価する必要がある。
  • 特許付与された権利の6割は無効化されている。私見だが、実際には、9割くらいには無効理由があると思っている。権利侵害の証明の難しい特許権も無視される。そのような情報も他社との交渉で役に立つので、特許調査で押さえておく必要がある。

講演後、次のような質疑があった。

企業経営の観点から
質問(Q):相手と交渉するために大量に特許を取ってしまう状況に陥ることもあるだろう。特許調査は力業といっていたが、実際どれくらい読むのか?
回答(A):2~3,000件は読む。これは中間加工だけの話。合成のも合わせれば15,000くらい読む。
Q:調査の時に1人で読んでいると属人的になると思うが、その知識をどのように共有していたのか?
A:PPTに定期的にまとめて、参加自由で月1でプレゼンして共有していた。研究所の月次報告会でも、月次報告書を予習しておいて出願案件、サンプル検討停止、回避設計などの議論をした。
Q:そうすると技術者も効率的に協力してくれるのか?
A:難しいケースも少しはあるので効果の向上を意図して、各部署の若手で、やる気ありそうな人を特許担当にしてもらってまず彼等に話していった。
コメント(C):キヤノンでも月1で会議をしている、とセミナーで話があった。キヤノンにしろ、リケンテクノスにしろ、特許に強い企業はそういうことをきっちりやっている、という印象がある。
Q:リケンテクノスの売上規模だと、知的財産活動にかけられるお金には限界があると思う。ほとんど弁理士と維持費に消える。それでも知的財産にお金をかけようとするのであれば、会社の将来像を考えてやる必要があると思うが、それについて経営陣とはどういう関係を築いていたのか?
A:当時の経営陣は柱であるポリ塩化ビニル樹脂の世界は、自社が国内トップメーカーとしてノウハウの世界を作って特許の世界とは一線を画していたため、知的財産のことを深くは知らない人が多かった。しかし、専門の知的財産部に最終的には任せる経営の懐の深さとそれを支える知的財産部長の能力はあった。最近は、知的財産の価値を知るスーパー技術者が経営陣に入ってきた。弁理士に頼めば権利は取りやすいが1件20万円掛かるので、重要なものだけは頼んで、後は知的財産部員で書いて経費削減をしていた。
C:リケンテクノスみたいに知的財産活動について良い評価を受けても、経営者から「お金がかかりすぎないか?」と言われてしまう。日本全体の意識を高めないといけない。

特許の権利化について
Q:年30万件くらいの審査請求を、2,000人の審査官で見ているので、見落としてそのまま特許になってしまったものもあるのでは?
A:そう思う。私もセミナー等では、拒絶理由通知に対しては面接に行くのがいいといっている。特許庁の調査は外注で行ったり、過去のものを列挙して拒絶される場合もある。手が回らなくて、権利化されることもあると思う。
Q:化学特許は特許期間20年の満期まで特許を維持するパターンが多いのか?
A:そう。途中で放棄してくれたらラッキー。まずないが。
C:移動通信の世界は10年くらいで技術が入れ代わっていくので、どんどん権利放棄している。特許の維持費が高くつくからだ。
A:プラスチックはなかなか新しい技術は出てこないので、たまに新しい素材とかが出てくると、こぞって権利化する。
Q:特許審査の際に、キーワードで読んで、審査官が「これは有効ではない」という場合がある。たとえば、無線機の技術は誰が書いても同じようにキーワードが並ぶので、そこだけ見てはじかれてしまう。
A:そういうときは、対比表を作る。審査対象となる特許出願と既存特許の構成要素を並べ、何が違うのか説明できるかが大事。審査官が読むということを考えて書いている。ただ、そこを読み取れない審査官もいるので、そういう時は面接にいって、その内容を補正書や意見書に落とし込む。そこまでやらないとダメな場合もある。
Q:読み取り方を考えるように、特許請求の範囲も織り込んで考えているということか?
A:そう。よく分かっている技術者は複数の特許に分割可能な、深みのある、将来を見越した明細書を書いてくれる。同じ権利範囲を取るにしても、審査官が納得しないようであれば、どんどん分割して、別の審査官に見てもらうようにする。分割できるようにするためには元の明細書をいかに深く書いておけるかが大事。狭い権利範囲であっても他社が実施しなくてはいけない「嫌がられる」権利をとることが肝心。

特許侵害訴訟とパテントトロールについて
Q:日本で製造方法の特許侵害立証が難しいというのは調べようがないからであって、アメリカには裁判におけるディスカバリ制度があるから有効な権利となる、という理解でよいか?
A:日本では特許権者が侵害行為を立証しなければならないハードルが高い。他社の工場に入って調べることは出来ないから。
Q:リケンテクノスは無効審判をしたことはあるのか?
A:ある。しかし、特許侵害訴訟はない。
Q:化学業界で少ないのか?
A:プラスチックの世界ではあまり聞かない。お手紙(警告書)は行き来しているようだが。
Q:会社によってはお手紙を見ないみないところもある。そのような企業は知的財産をどうとらえているのか?
A:私見だが、様々な技術分野に有効な権利を持つ企業は強気でいられる。ただし、総じて化学企業はおとなしいと感じる。もっと、ガンガン訴訟をやった方が、国際競争力向上の観点ではよいと思う。
Q:相手が製品を全く作らないとすると、侵害をいわれるだけで対抗できないのではないか?
A:そういう状況だと、理論はともかく事実上は確かにそうなる。
Q:製品を作らないところが特許を取ると非常に強い権利になってしまう、という理解でいいか?
A:それで正しい。それを防ぐ法律はあるが、機能しているとは考えにくい。
Q:通信の世界では、他社の特許を買い取って権利侵害を訴える企業(自分では作らない(パテントトロール)がいて問題になっているが、化学の世界でもそういうのはいるか。特許を取っておいて、全く別のことをしている企業はあるのか? 私の会社では、自社の主力分野(たとえば業務用無線)よりも他分野(移動通信)の特許を取った方が利益が出る。そのような考え方はないか。
A:特に聞いたことはない。ただ、リケンテクノスではオールリケンでどう特許を取るかを考えていた。