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電波 M2Mをめぐる各国の動向 木賊智昭マルチメディア振興センター副主席研究員

 

日時:1月16日(金曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館5103教室
文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:木賊智昭氏(マルチメディア振興センター 副主席研究員)

木賊氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、木賊氏は資料を用いて次のように説明した。

  • M2MとはITシステムと遠隔センサー/機器/装置/設備等が直接通信することで相互に情報交換するための技術/仕組みの総称である。遠隔でのデータ収集/監視/制御に活用することで、業務プロセスの効率化、サービスの高度化、新たなサービスの創出など、これまでは難しかったビジネスの変革や公共インフラの革新が可能になると期待される。
  • 通信キャリアにとって国内の携帯通信加入者の増加の頭打ちと加入者の成長の鈍化が懸念される中、M2Mが新たな通信サービス市場を牽引することが期待されている。
  • M2Mには、輸送分野(輸送管理、車両メンテナンスなど)、エネルギー分野(スマートメータリング、利用ピーク時対応など)、医療管理分野(遠隔での患者監視、医療資産の調査・管理など)からスマートシティまで多様な応用分野がある。
  • M2Mはデバイス、ネットワーク、プラットフォーム、アプリケーションを統合して提供される。アプリケーションやインテグレーションの収益性が高い一方、ネットワーク自体の収益性は低く、収益全体の10%前後を占めるに過ぎないとの調査もある。
  • このため、欧米の通信キャリアは、通信インフラを越えて、他社との提携や自社ブランドの構築によるM2Mソリューションの提供を志向している。多くの場合は他社との提携だが、買収等を通じて自営でソリューションを提供することもある。
  • 米国では、顧客のアプリケーション開発を支援し、独自にデバイスを認証するサービスを提供するなど、顧客ニーズに迅速に対応している。M2M専担部署を設置、組織面での強化を実施し、コンサルティング、アフタサービスを包摂している。
  • M2Mは、共通化、オープン化に今後より一層の競合が予想される。

講演後、質疑が行われた。議論の要旨は次の通り。

通信キャリアのM2Mビジネス
Q(質問):M2Mで飛び交うデータに課金しても大きな収益にはならない。通信キャリアは儲からないので、どういうビジネスをしようというのか?
A(回答):付加価値が勝負である。顧客への窓口となり、コンサルティング・インテグレーションで利益を上げる。すべて自前では無理なので、買収という形で外部の知恵と経験を取り込んでいる。
Q:日本のキャリアはまだそこまで行っていないのか?
A:新領域事業として立ち上げ始めたところである。M2Mに注目はしているが、本格的に取り組むという点では、まだこれからである。
C(コメント):M2Mで飛び交うデータの収益だけを考えるということが、日本のキャリアの対応を遅らせているのは事実である。

M2Mビジネスの各要素
Q:個別のM2Mではなく、多くのM2Mに共通なものとしてプラットフォームを提供するといった動きはあるか?
A:標準化の動きはあるが、共通のプラットフォームの提供には至っていない。
Q:サービスごとに品質(サービスレベル)がまちまちなのに、共通化・オープン化に進めるのか?
A:サービスレベルを共通化しようというものではなく、M2Mで取得したデータを共同利用しようというものである。
Q:標準化の主要プレイヤーは誰か?
A:プラットフォームではOneM2Mなどあるが、標準化を目指すフォーラムが乱立している。まだ、どれが主流になるかわからない。

M2Mと規制
Q:M2Mで多くのデバイスをばら撒いたが、2G(第二世代移動通信システム)の廃止でデバイスを交換しなければならなくなった、というような事態は起きないのか?
A:AT&Tやベライゾンはまもなく2Gを廃止する。しかし、その際、デバイスについて面倒を見るとは言っていない。デバイス交換については、ユーザー自身による対応をサポートする別のニッチビジネスが生まれている。M2Mシステムは10年、20年サービスが提供されるということが前提であり、特に欧州のスマートメータのように政府政策や法制化を通じて普及した場合には、今後、交換の責任も課題になるだろう。一方で、SIMを遠隔から書き換えるeSIMも開発されている。通信キャリア一社に10年、20年と依存し続けなくてもよくなる可能性も出てきている。
Q:M2Mが進むことで、世の中に不安が生まれるといったことはないのか。たとえばプライバシー?
A:デバイスが勝手に収集したデータが流出すると深刻なプライバシー問題が起きる。まだ、M2Mに固有の規制はないし、不要な規制はM2Mの発展を阻害する恐れもあるが、野放図にデータが活用できるというのは不適切である。データの管理策が、M2Mサービスにとって差別化因子となる可能性もある。
Q:共通化・オープン化でデータの流出の危険が増すのではないか?
A:再利用によって安全が損なわれていく恐れがある。責任の所在は、今後の重要規制課題である。
Q:M2Mデバイスへの電波利用料も問題ではないのか?
A:M2Mデバイスも、3GやLTEで通信している。その点では、スマートフォンと同じ電波利用料を課すというのは合理的であるが、飛び交うデータ量を考慮した低い料額設定の要望もある。サービス内容や収益性に照らして、電波利用料の料額が高すぎるとM2Mの普及を阻害する。無線局免許の新たなカテゴリーとしてM2Mデバイスを規定しなければ、抜本的な解決はないだろう。

電波・健康 新しい電波利用:モバイルヘルスケアの可能性 村上享司ドコモ・ヘルスケア株式会社副社長

日時:12月5日(金曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館5103教室
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:村上享司氏(ドコモ・ヘルスケア株式会社代表取締役副社長)

村上氏の講演資料はこちらにあります。
山田氏の総括質問資料はこちらにあります。 

冒頭、講演資料を用いて村上氏は次のように講演した。

  • 日本では総人口は減少し高齢化が加速している。同時に生活習慣病の患者数が増加するなど、国民の健康に関する問題は深刻だが、課題先進国と捉えることもできる。国は次世代ヘルスケア産業を創出し、2020年までに10兆円市場をつくることを目標としている。
  • 世界のICTプレイヤの間でモバイルヘルスケアについて競争が激化している。Apple、Google、MSがこの分野に取り組み始めている。これらの企業がプラットフォーム役を果たすことで、アプリレベルの個々のプレイヤが事業を実現しやすくなるという意味では機会が生まれている。
  • モバイルヘルスケアを支える無線技術には、スマホのNFC/BLEを中心に、3GやWiFiがある。当社はオムロンと共同して立ち上げた会社であるので、彼らの持つ体重計などのデバイスをNFC/BLEでスマホにローカルにつなぎ、3G/LTEによって、インターネット経由でクラウドにデータが上がる仕組みを取っている。
  • ウェアラブルの活動量計など24時間データを収集する製品(メガネ型、リストバンド型、その他)は乱立ぎみであるが、国内ウェアラブル端末市場は倍々ゲームで成長し2020年には600万台に達すると予測されている。
  • 移動通信産業は、アプリあるいはプラットフォームレイヤーに収益の源泉がシフトしつつあり、ドコモも土管屋だけでは立ち行かなくなる。ドコモは「スマートライフのパートナー」を標榜し、利用者の生活をモバイル中心で行ってもらう、モバイル生活圏を構築することを考えている。その中で、ヘルスケアは重点分野であり、出資・提携・協業を進めることで、お客様の「ウェルエネス」をトータルにサポートする。
  • ドコモが2/3.オムロンヘルスケアが1/3を出資して、ドコモ・ヘルスケアが設立された。会社立ち上げ時に「からだと社会をつなぐ」という企業ビジョンを掲げ、これを体現したいと考えている。元々2社それぞれ健康に関わる事業を行っていたので、その経験が蓄積されており、新会社にもそれが引き継がれている。新会社では、①デバイス開発、②わたしムーヴ(WM)を中心としたデータ収集・分析・予測の高度化、③利用者向けのアプリ・サービスの拡充、④アライアンス企業の拡大を進め、ライフスタイルの提案につなげていく。WMのアプリは8ジャンル25があるが、ほとんど無料でご利用頂ける。
  • <カラダのキモチ>は2013年6月1日に提供を開始した、女性の体に特化したアプリで、月額300円である。本サービスは、その日の体調にあった音楽で目覚め、体温を10秒で測定し簡単に記録し、女性のリズムに合わせ、その日の洋服のコーディネートやその日の体調にあったカラダが喜ぶ食事メニューを教えてくれ、生理周期や基礎体温を管理し不調があれば病院へ行くようアドバイスされ、早期受診でお見舞金が出るといった機能が含まれている。11月末時点で、累計約55万契約だが、もっと伸ばしていくつもりだ。
  • <からだの時計>は2013年12月18日に提供開始し、月額300円。ムーヴバンドは7,400円で販売している。本サービスは、体内時計(食べる、歩く、寝る)を整え、理想的な生活リズムの導くというのがサービスのコンセプトである。ムーヴバンドで、睡眠時間、移動距離、睡眠時間などが計測され、おすすめの食事時間などを教えてくれる。時間や目的にあったエクセサイズなどを教えてくれる。病気の人を治療するアプリではなく、健康上の大きな問題はないという状態から、さらに質の高い生活(健康)を目指すものである。11月末時点で、累計約90万契約。
  • <こどもと社会を繋ぐプロジェクト>として、予防接種スケジューラ(無料:いつ予防接種したかを記録し、次の接種時期を管理)がある。育ログ(無料:育児記録を中心に、熱をだした、嘔吐したなどの子供の状況を記録し、医師とのコミュニケーションを支援)もある。両サービスで約50万人がご利用頂いている。
  • <WM従業員健康管理サービス>は、社員の健康を向上させ、健康経営につなげるものである。ドコモグループ内で全国歩数対抗戦を実施した。この先、企業向けのサービスに育てたい。

引き続き、山田氏が資料を用いて総括質問を行った。

Q(質問):医療情報等のデータヘルスでの活用は企業の健康経営につながるが、全国歩数対抗戦の先にデータヘルスで活用する考えはあるか? 米国での調査では、企業が負担する社員の医療費はコスト全体の1/4でしかなく、生産性が落ちるなどの方が大きなコストだそうだ。
A(回答):健康経営はますます重要になりつつあり、データヘルスが追い風で、当社もビジネスとして立ち上げていきたい。当社だけではうまくいかないので、NTTデータやオムロンヘルスケア、ベネフィットワンといった実績のあるプレイヤと組みながら、進めていきたい。しかし課題もある。赤字経営の保険者向けに提供しようにも、財政的に余裕がない。また、インセンティブがないと被保険者に浸透しない。
Q:独居高齢者の生活を支援する、自立生活支援のサービス化に参入する可能性はあるか?
A:すぐに対応できる課題ではないが、いずれはこのようなサービスの一翼になりたい。プレイヤが複雑に絡みあっているので、だれが音頭をとるのか、だれがお金をだすのか、そのあたりが一番難しい。
Q:モバイルヘルスケアを医療行為としての患者の管理などに利用するビジネス化の可能性は?
A:ドコモ・ヘルスケアはまだ小さい会社であるが、究極の本丸は病気の人を治療すること。今は、知見を蓄積しなくてはいけないし、参入障壁が高く、ビジネスリスクもある。診療報酬の対象になれば必ずビジネスになるとは思う。米国はこのような取組みが非常に速いので、いい取り組みがでてくれば、日本での実施の追い風になると思う。
Q:3Gで直接データを飛ばすデバイスは、通信費も電波利用料も高くなる。これについて、どう考えるか?
A:M2Mとして開花させるためには、政策的・戦略的な思い切った料金設定が必要である。スマホとは全くデータ量も違うので、その辺を考慮してもらいたい。

その後、参加者から多くの質問があり、活発な議論が行われた。

提供中のサービスについて
Q:説明のあったアプリはドコモの携帯加入者のみか、それ以外も利用できるアプリなのか?
A:今はドコモと契約している人しか利用できない。しかし、ドコモのシェアは半分を切っており、今後はキャリアフリーにしていくことを狙っている。これは、ヘルスケアだけでなく、dビデオなどを含めドコモ全体の戦略である。
Q:デバイスはオムロン限定なのか? 制約にならないか?
A:現在は、オムロンの機器だけであるが、よいデバイスがあればオープン化していきたい。固執はしていらず、時間的な問題のみである。
Q:からだの時計が90万加入で、ムーヴバンドの販売は2万というのはなぜか?
A:ムーヴバンドはいらないという人もおり、アプリだけでも利用できるようになっている。自分の持っている機器のデータを手で入れるという利用者もいる。
Q:食事のアドバイスなどのあと、利用者が実際にその食事をしたかということまではわかるのか? アプリ利用者は効果があったかとわかるのか?
A:やったかどうかは、スマホに入力してもらう仕組みになっている。効果を実感しているかまではわからないので、検証するには別の方法を考えなくてはいけない。
C(コメント):アクティブユーザであり続けるということが、効果を感じている、満足しているということを示すのではないか。
Q:アクティブユーザはどれくらいいるのか?
A:具体的な数字は言いにくいが、ドコモが提供している他のアプリの利用率と大体同じである。解約をおさえて、利用率はもっと上げたいと思っている。
Q:からだの時計契約者の年齢分布はどうか? 高齢者と若い人ではサービスが異なると思うが。
A:年齢層はまんべんなくという感じ。ドコモの顧客全体、老若男女に使っていただけるサービスを重視して開発しているので、意図した通りである。

他社との提携について
Q:アライアンス企業と個人情報を交換するのか? 個人情報はどこがもっているのか?
A:利用者個々に同意を取るなどして、アライアンス企業と提携していくことは可能である。
Q:見舞金と電話相談・検診予約の機能は、医療機関や保険会社と連携しているのか?
A:顧客にはドコモから補償サービスという形に見せているが、東京海上火災とドコモの間で保険契約を結んでいる。電話相談と検診予約も専門会社に委託している。クレジットカードでもこのようなサービスがあるが、それと同じである。
Q:ドコモ本体も同様の事業を行っているが、どうすみ分けているのか?
A:まずは本体も当社もいろいろとやってみようというところ。バラバラでもいいし、当面は非効率だとは思えない。

将来の発展について
Q:病院と連携し、診察カードや電子処方箋につなげているということはあるのか?
A:当社としては今のところない。オールNTTでビジネスできると思うが、グループの中での役割分担になる。
Q:iPhone向けのアプリは少ないが?
A:いろいろな経緯があるが、iOS対応は出遅れている。これから充実させていく。
Q:データを蓄積している途中というが、将来はターゲットを特化した形にしていくのか?
A:ドコモショップを主たる販路にしているので、ターゲットを選ぶのではなく、みんなに勧められるものがよいと考えている。
Q:センサーとスマホの組み合わせは今度どうなるのか?
A:スマホをハブにしてセンサーの情報を中継する方式と直収型があるが、もともとの経緯からはスマホ形式が多い。手元でいつでもデータが見たいということであればスマホ型がいいと思うし、データを頻繁にみないということであれば直収型でもいいと思う。
Q:高齢者だと設定がいらない直収型だと簡単ではないか?
A:シニア層はそもそもスマホを持っていない、なじみが無い人は難しい。利用者のリテラシーに応じて、サービスを提供するしかない。
Q:気温と血圧との関連というように、ヘルスケアに直接関係しないたくさんのデバイスの情報も利用するという使い方もできるのではないか?
A:将来は、そういう方向もあるだろう。
Q:収集したデータの活用法を考えているか?
A:ユーザにアドバイスを返すというのが、ひとつの使い方。第三者への活用は、今後のB2B事業で検討する。たとえば、予防接種スケジューラのデータは、ワクチンメーカが関心あるようだ。データの第三者販売のビジネスは始まろうというところである。
Q:健康増進によって「未病」を実現するのが理想だと思うが、ビジネスが成り立つ可能性はあるか?
A:私も知りたい。定説では難しいと言われている。エンドユーザがお金を払ってまで利用する意味合いがどこにあるのかということにつきる。病気になれば、病院に行ってしまい、それが保険で賄われてしまう。ただ、女性は少し違うと感じている。妊娠・出産、育児、女性特有の期などにビジネスチャンスがより多くありそうだ。

ビジネス シェアエコノミー:求められる制度改革 マイク・オーギル氏(Airbnbアジア太平洋公共政策局長)ほか

日時:11月27日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師
マイク・オーギル氏(Airbnbアジア太平洋公共政策局長)
山田肇氏(東洋大学経済学部教授)
福田峰之氏(自由民主党衆議院議員、同党IT戦略特命委員会事務局長)

オーギル氏の講演資料はこちらにあります
山田肇氏の講演資料はこちらにあります

冒頭、オーギル氏が資料を用いて次のように説明した。

  • Airbnbは世界の人々(ゲスト)が泊まりたいところを探すことができ、あるいは、自宅を貸したいという人(ホスト)が登録できるプラットフォームである。基本的には、宿泊業者向けの仕様ではなく個人による利用を想定している。
  • ホームシェアリングのメリットは下記の通り。
    • ホストは、副収入を得、家賃の支払い、養育費などに使える。
    • 地域経済の活性化に役立つ。ホストの多くがホテル密集地域の外に所在しているので、ゲストがホテルに止まったら訪問しなかったであろう地域で消費活動を行う。
    • ホテルに滞在する旅行者と比べ、1箇所に長く滞在し、多くを支出する傾向がある。
    • 大規模なイベントの際に宿泊先を柔軟に供給を確保でき、イベント後には供給を抑えられる。ブラジルで行われたワールドカップでは、観客の宿泊先を政府が準備できなかったため、Airbnbが支援し、結果として、旅行者の20%がAirbnbの物件に宿泊した。ブラジルオリンピックについても協力予定。
  • Airbnbには190カ国、34,000都市、800,000件の住宅リスティングがある。これは、800,000のホストそれぞれに適用される190カ国34,000都市の様々な法律規則に対応する必要があるということ。プラットフォームは取り締まり側の立場ではないので、ホストとゲストが効率的につながれるように取り組んでいる。
  • 各国における法律がどのようなものかを理解した上で、ホームシェアリングができるように当局に働きかける活動を行っている。日本では、法律をどのように解釈するかによるが、ホストはAirbnbを使った活動が規制される恐れがある。
  • 旅館業法は短期の賃貸借を規制し、これは、公衆衛生上、滞在場所の清潔さを担保する目的である。しかし、無償であれば、一般家庭に寝泊まりすることは規制されない。また、具体的にどの段階で宿泊業者として旅館業法の規制対象になるかも明確ではない。
  • これらのような細かい点に目を向けるよりも、重要なのはどのような公共政策を推進するかである。世界の事例を紹介する。
    • オーストラリアのクイーンズランド州。休暇や定年退職後の住居が多いが、滞在期間・料金などをはじめ、自分の物件の短期賃借については規制がない。ところが、住宅地の物件がパーティーハウスとして使用され、近隣住民から苦情がでた。州はパーティーハウス法を定め、パーティーハウスの活動を規制する方針を示した。すべてを禁止して経済的な機会をすべて失うのではなく、問題に焦点を当てて立法化を図った賢い対策である。
    • アムステルダムは、その都市に住む人々がその物件に居住し続けられる可能性を高めることも視野に入れ、2014年上期に法律を制定した。ホテルへの用途変更なしに、自宅を同時に4人までなら貸し出すことを許可し、5人以上になるとホテル業とした。
    • フランスでは、法律改正が行われ、自分の主たる住居については、許可無く賃借することが可能になった。別荘・別宅の賃借については、住宅供給量の少ないパリなどの都市部と、別荘が多いリゾート部のニーズの違いに配慮し、各都市の判断とした。
    • 英国のピクルス大臣は、「1970年代に作られた法律を、現代のライフスタイルに合わせる時期が来た」と述べている。最近も、国としてシェアエコノミー分野をリードしていくというメッセージも発している。
    • 各国での動向における共通した考え方は、自分の主要住居を賃借するのは自由であるべきということと、地域のニーズにあわせる柔軟性を優先するべきということだ。
    • 友人や親戚を家に泊めるのには規制がかからず、ホテル・旅館業は規制が伴うが、ホームシェアはこの二極の間にある。日本においても議論が盛り上がることを期待する。

次に、山田氏がシェアエコノミーと制度改革について、資料を用いて説明した。

  • 空き施設・空き時間・少額資金といった余剰資源を社会全体として有効利用し経済効率を上げるのがシェアエコノミー。しかし、過去二回のセミナーでも見てきたが、シェアエコノミーは規制の壁にぶつかる。安倍改革は地方創生を進めようとしているが、地域創生にシェアエコノミーは活用可能である。しかし、制度の壁が阻害する。
  • 自動車の同乗には道路運送法、お遍路さんに自宅の空き部屋を賃借するには旅館業法施行令、景勝地の古民家を企業の経営会議に貸し出すために増改築するには建築基準法、造り酒屋巡りの旅を購買型クラウドファンディングで募集すると旅行業法が阻害する。信用金庫が、新興企業向けに投資型クラウドファンディングの出資者を募集するには、金融商品取引法に基づく日本証券業協会の自主規制が阻害する。
  • 様々な緩和策は取られつつある。国家戦略特区において、旅館業法の適用除外が承認されているが、外国人旅行客に限定され、さらには、7〜10日以上の滞在に限ると限定的であり、理解に苦しむ。
  • 新しい時代に対応した、新しい制度を実現するように、政治家の指導力に期待する。

この後、福田氏より以下のコメントがあった。

  • シェアエコノミーができるのはITが発展し、情報の共有と展開できることで成立するビジネスモデルと理解している。自民党のどのチャンネルでこういった話をしていくかが重要。
  • 自民党には長い歴史のある部門会議があるが、そこで話すと既存事業者がいままで話し合いをして積み上げてきたものがあるので、なかなか話が進まないだろう。そういった経緯のない自民党のIT戦略特命委員会だと整理しやすいはず。
  • また、シェアエコノミーの拡大は、国が想定していなかった。既存の事業とシェアエコノミーがWin-Win関係を構築することを目的に議論に入ることが極めて重要。
  • 例えば、外国人旅行者行きたいと思う田園風景が残る地域にはホテルや旅館がない。そうした地域でシェアエコノミーによって古民家が貸し出されれば、近所の旅館やホテルの負担とならず、観光地としての存在感が上がれば、さらに旅行者を呼びこむことができる。賃借行為をするなら、地域により多くの人を集めるというポイントから入ることが重要。
  • 賃借以外にも、クラウドファンディング分野においても、大手の投資会社、証券会社にとってクラウドファンディングの対象となる少額の投資はビジネス対象とならないことが多い。投資者の保護という視点を行政はあげがち。これは、投資はリスクを伴うことを前提としているが、銀行と同じ感覚でいる人が多いためだ。投資額が少額になるほど一般人による投資が増えるため、文句が出る可能性が高い。
  • 日本が新しいビジネスをつくるためには、「自己責任」という文化を育てなければならない。若い世代の感覚は変わってきており,新しいビジネスをうむための土壌ができてきている。ワークシェアという概念も浸透してきているが、シェアする人同士をつなぐプラットフォームが必要。それをつくっていきたい。
  • 日本特有の話だが、部屋を貸したら物が盗まれた場合、盗んだ相手が悪くても裁判沙汰にしたくないという。だから安全性などを重んじるルール作りをしてきた歴史がある。大掛かりには変えられないので、5年後、10年後のそれぞれの時点で最適なバランスと考えていく必要がある。
  • シェアエコノミーを推進する際に、納税の観点も欠かせない。税収が入るのであれば、財務省が味方になりこれは強力だ。

その後、活発な議論が行われたが、要旨は次の通り。

制度改革への動き

  • 自らの都市でのシェアエコノミーの台頭が政策担当者に認識されつつある。サンフランシスコやアムステルダム、英国では、すでにシェアエコノミーのプラットフォームの使用頻度が高く、認知度が高くなり、政治的に対応を取ることが喫緊の課題だった。都市に国においても、最初は厳しい対応を求めることが多かったが、認識が高まってきて柔軟に変わった。今後は、問題が起こる前に法整備をしてしまおうという動きになり、このようなトレンドがさらに高まる。自らの資産、家、車を共有するために、どのような法制度・枠組みが作られるべきかという考え方が必要である。
  • 米国ポートランドでは三カ月前に法律改正し、自宅をホームシェアできるようになった。一番大きなハードルはホテル税の徴収で、Airbnbが代行者としてゲストからホテル税を直接徴収し、収められるようにし政府が課題意識を持つ点について、民間からもさまざまなアイディアを出すのがよい。
  • 改革のための政策提言は、政権与党の担当政策部会に持ち込むと、最も動きが早く効果的である。関係のない政治家に働きかけても無駄である。シェアエコノミーに関わる企業を束ねて団体として行動するべきだ。個別企業がばらばらに政治や役所にアプローチしても、アプローチされた側が困る。
  • 選挙区の住民が声を上げることが効果的と思われる。大切な一票を握っている個人の声が重要になる。
  • 法律が変わるまでやらないということをしていたから、日本はIT業界で遅れてしまった。グレーゾーンであるならやればいい。そのうち法律は変わる。決着が付けられるまで待っていたら、外資にすべて持って行かれてしまう。黒を押し切るのは良くないが、グレーならまずやってみてみるべき。政治家も後押しできる。

経済へのインパクト

  • 経済へのインパクトはないのか? ホテルに滞在しなくなったり、車の購入をしなくなる。安く泊まれる宿泊施設があれば、既存の業者の価格にも影響がある。デフレの推進につながるのではないか。
  • 単純に置換えられたら経済は縮小する。たとえば自動車メーカーは、これまでは売るだけだったのが、これからはITを使い、乗車中にレストランを予約すれば付随料金を課すなど知恵を使う必要がある。シェアエコノミーは、空いているもの、いままで使っていないかったところなど、東京の外の経済活性化のビジネスモデルとして可能性がある。当初からそういう計算をした上で進めるべき。
  • ホームシェアリングは観光業にネガティブな結果がでたことはない。シドニーではAirbnbに登録されている住居の75%は、ホテル密集地の外にある。Airbnbの使用率も高いが、同時にホテルの稼働率・宿泊料金が上がっている。2012年〜2013年の1年間に生み出された経済効果は215,000,000ドルあったといわれている。それからさらに1年経過しているのでおそらく数字は2倍以上になっているだろう。
  • 従来の業界と共存していかなければならないが、大手ホテルのマリオットの例を挙げると経営者はAirbnbのファンであり、かつマリオットの競合ではないと明言している。セグメントが違うからだ。
  • 四国のお遍路さんは88箇所まわるが、殆どの人が自動車で回る。これは正しくないが、歩こうとすると、1日30キロを1週間連続して歩く体力が必要になる。過疎地のため多くある空き部屋にお遍路さんが泊まれるようになれば、その地域が復活するかもしれない。

安全の確保

  • Airbnbはシステム全体が「信頼」を核としており、この信頼の担保が重要な課題である。150人ほどの担当者がいつも目を光らせ、悪い動きがないか監視している。また、2方向のレビューシステム(ゲストがホストを評価し、ホストもゲストを評価する)が存在する。悪評が立てば、その人は追放され、安全が担保される。ゲストから入金されたお金を預かり、ゲストがチェックインした24時間後にホストに振り込むことにしている。宿泊場所がない、汚いなどの問題がある場合は、ホストに支払われない。
  • サイバーエージェントクラウドファンディングによると、クラウドファンディングで集めた資金を持ち逃げするよりも、オレオレ詐欺のほうが効率が良いため、犯罪者が紛れ込みにくいそうだ。

電波 新しい電波利用:公共安全無線システムの革新 Marcel Verdonk(Motorola Solutions, Senior Director)

日時:11月6日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:Marcel Verdonk(Motorola Solutions, Senior Director of Strategy Asia Pacfic & Middle East)

冒頭、Verdonk氏は資料を用いて次のように説明した。資料はこちらにあります

  • モトローラ・ソリューションズは1928年9月創業。85年の歴史を持ち、日本における事業展開も50年を迎える。政府官公庁及び企業向けミッションクリティカル無線通信事業をグローバルに展開。警察、消防、軍などのパブリックセーフティ(以下PS)向け無線ソリューション事業をビジネスの中核としている。
  • いつでも使用でき、セキュリティが高い無線通信システムがPS機関として必要。過去は情報源である市民からの緊急電話連絡をパブリックセーフティの指揮通信室で受け、現場担当官へ無線によるグループ通信にて指示伝達する一方通行のコミュニケーションが中心。指揮通信室から現場担当官への連絡は、各国独自の無線規格によるアナログ・デジタル無線機、ダイレクトモード・トランキングモードで運用され、その他無線LANやブルートゥースも活用されている。
  • 9.11米国テロ発生における対応の教訓として、大型ファイルの送受信やビデオによる情報収集及び伝達の要求が高まり、マルチメディア機器とコラボレーションした情報伝達を実現すべく、PS向け無線ブロードバンド通信システムとしてPS LTEが誕生。PS LTE実現には2種類の構築方法があり、インフラも自前で構築する「プライベートPS LTE」システムと民間商用LTE網を活用した「PS Grade LTE」システムがある。また、これら両方のシステムを連携させたハイブリッドモデルも構築可能である。
  • 「PS Grade LTE」の一番のメリットはインフラ構築コストの低減。国土が広大な場合、インフラ構築コストに巨額の費用がかかる。また周波数がPS LTEに容易に割り当てられない場合も、民間商用LTE網の活用で低コスト、早期構築が可能となる。「PS Grade LTE」は、民間商用システムを活用するため、緊急時の優先接続アプリケーションの導入や瞬時に接続するためのPTTボタン(プッシュ・ツー・トーク、業務用無線の直接通信・ダイレクトモードのこと)、及び様々な通信機器との相互運用性の実現が必要となる。
  • PS LTEの構築要件は、広い通信カバレッジ、端末間同志(End to End)のセキュリティ通信、災害に強いインフラの構築、十分なUp Linkトラフィックの確保、過酷な環境でも使用可能な堅牢なハード端末などである。
  • PS LTEの導入が加速している。ブラジルでは陸軍がサッカーワールドカップ及びオリンピック開催に向けにPS LTEを導入。また韓国もフェリー沈没事故を契機に「プライベートPS LTE」構築を決定した。「プライベートPS LTE」システムは、イスラエル・シンガポール・ブラジル(陸軍)・韓国で、PS Grade LTEシステムは、西欧諸国・オーストラリア・ニュージーランドで、ハイブリッドモデルは米国・アジア諸国で採用されている。
  • 近年、日本では地震、台風による洪水や土砂災害、そして火山の爆発など大規模な自然災害が起こっている。またオリンピックも控えている。政府が次世代緊急無線通信システムとしてPS LTEの必要性を認識するならば、全国的エリアの構築と周波数割り当てを鑑み、NTTドコモ、AU及びソフトバンク等の携帯電話キャリアのLTEネットワークを活用した「PS Grade LTE」システムの導入を検討すべきと考える。これにより早期導入も視野に入れられる。

講演後、以下のような質疑があった。

PS LTEとダイレクトモード、既存のシステムとの共存
Q(質問):PS LTEでコアネットワークを使用すると、大規模自然災害でコアネットワークが故障すると使用できなくなる。既存の警察・消防無線のように、トランシーバ的なダイレクトモードがあるほうがよいという意見についてどう考えるか?
A(回答):既存の警察・消防ナローバンド無線でも、実は、コアネットワークのインフラを利用しているので、インフラが故障するリスクは同じである。また、ナローバンドの音声通信では端末間でのダイレクトモードができるが、LTEでもVo LTEでダイレクトモードが可能である。
Q:欧州でテトラシステムとPS LTE両システムを活用するという場合、テトラシステムをカプセリング化してLTEネットワークに接続できるようにするのか、又は1台の端末でテトラネットワークとLTEネットワークが使用できる形になっているのか?
A:両方のネットワークを、1台で活用できる端末で運用したいというのが、世界的な要望トレンドである。現在、テトラネットワークとPS LTEの両方を1台の端末で利用できる製品はないと思うが、近い将来どこかのメーカーが開発してくると考えている。現在は、テトラの端末よりPTTでPS LTEの端末に接続して利用することが可能となっている。その逆ももちろん可能。

日本におけるPS Grade LTEの可能性
Q:日本に対して、すぐにLTEに割り当てる周波数がないので通信事業者のネットワークを利用してPS LTEを構築するとういう提案があったが、日本にはNTTドコモ、KDDI(AU)、ソフトバンクの3社がある。その3社とまとめて契約して、どこかがダウンしてもどこかが運用可能であれば利用できるということは可能か?
A:オーストラリアでは現在テレストラ社1社だが、アメリカではベライゾン、T-Mobile含め複数社のネットワークを利用している。日本ではLTEネットワークを所有する通信事業者3社とPS LTEコアネットワークを組むことに技術的問題はない。自然災害時に運用できるよう、複数社と相互運用性をもたせることが最適と思う。
Q:オーストラリアにはテレストラ1社ではなく、ボーダフォンなど複数のLTEネットワーク事業者があるが、何故テレストラ1社と構築しようとしているのか?
A:オーストラリアの場合はテレストラのみがPS LTEに興味を持ったので、テレストラとPS LTE構築を進めている。また、テレストラのネットワークは容量が大きく、PS LTEをシステム化しても問題ない点もあげられる。
Q:日本の携帯電話通信事業者3社と相互運用性を持たせた場合、セキュリティに問題は起こらないか? 3社とPS LTEと構築する場合、通信事業者毎の独立したPS LTEを構築したほうが良いか。それとも相互運用性を持たせたほうが良いか?
A:可能性としてはどちらも検討すべき。日本では現在PS LTE専用の周波数が割り当てられていないので、1社、2社、又は3社すべての選択肢の中で良い選択をするべきと思う。
Q:オーストラリアでは山火事、日本では地震や噴火など災害に違いがあるが、同じようにPS LTEを構築できるのか?
A:様々な自然災害の可能性や予測によって、その災害が起こりうるエリアに堅牢なインフラを構築し、標高の高い位置にインフラを持ちあげてエリアを大きくカバーすることや、容量を大きくしておくなど検討すべきと思う。もちろんその前に、通信事業者とともに、災害が起こりうる場所を調査することが必要になる。
Q:将来的に予想される都市型テロの備えとして、また災害の備えとして、地下鉄やトンネル内でのカバレッジについて、より中まで届くようにしたほうが良いと思うが、そのような場所まで独自のPS LTEネットワークを構築するのか、商用のLTEネットワークを活用するのか?
A:地下鉄やトンネル内をエリアにしたほうが良いという意見には完全に同意する。各国の状況や都市の状況によって異なってくると思うが、また省庁の構築要件次第だが、カバレッジ、予算とコスト、設計を検討して、商用ネットワークがそのようなエリアもカバーしているのであれば活用することを検討すべきと思う。
Q:携帯電話の帯域は既に不足していて、第5世代で1000倍のトラフィックを賄うための動きがでてきている状況で、どのようにプライベートPS LTEを構築したらよいか?
A:可能性はある。長期間での検討が必要だが、国の周波数の割り当てテーブルがあると思うので、それを再検討することで変化が起きるはずである。技術の進化によって周波数の空きがでてくるのではないか。各国で状況は異なる。
Q:オーストラリアで商用ネットワーク上にPS LTEコアを構築している話があったが、誰が商用ネットワーク上のPS LTEのコアを運用・保守を行なっているか?
A:オーストラリアの場合はモトローラが運用保守を行っている。これは非常に珍しいケースで、これまでオーストラリアの無線システムをモトローラが運用してきた経緯があり、モトローラでPS LTEコアの保守管理を行っている。PS LTEを構築した後は、構築した客が主導権を握って運用保守を独自に行うやり方があるし、通信事業者とモトローラとで共同運用・保守する方法もある。その場合には、客が運用保守について介入できるというような条項を付ける。客がどれだけのコントロールしたいのか、どういうやり方が良いと思っているのか、また、どれだけテクニカルなことを理解しているかで、形態は異なってくる。

PS LTEが提供するアプリについて
Q:3GPPを国防で使用する危険性を教えてほしい。公開された技術情報を用いて作ったネットワークだと、悪意を持った国や人が情報を盗み出すことがあるのではないか?
A: PS LTEはセキュリティを高くすることができる。セキュリティレイヤーも勿論あるし、デバイスで小さいスロットを設けて暗号化することもできる。非常に高いセキュリティで、侵入者を阻止することができる。既に世界で、国防にLTEを導入している。また、この10年間くらい前から、商用のLTEシステムを、セキュリティを高めて軍隊などで運用している。また、例えばアプリケーションレイヤーでセキュリティをかけることもできる。
Q:PS LTEに音声、ビデオ、テキストなど様々なアプリケーションをのせるのか?
A:その通り。災害被災者を救急車で搬送する際、被災者の状態をビデオで撮り、病院に送ることで、あらかじめ病院手術室で救急医療の準備をすることが可能となる。
Q:講演に出てきたプレディクティブポリーシングとシチューエショナルインテリジェンスについて詳しく教えてほしい。
A:プレディクティブポリーシングは、指揮通信室に入ってくる様々なデータからパターンを読み取り、事前に設定したあるトリガーをで、決めた行動を起こすこと。ある地域で無線のトラフィックが多くなったら事件又は事故が起きたということで、他の地区にいる警察官をそちらに向かわせる。夜8時に交通事故が多く起こる場所が判明したら、その時間にパトカーを巡回させるなどで、注意を促したり、事故に備えたりすることが可能となる。シチューエショナルインテリジェンスは、パトカーが街を巡回し、犯罪多発地域に入ろうとしている場合に、危険地域に近づいていることを知らせる警告音やメッセージをだすなど、GPSとの連動で自動的に警告を出すアプリケーション等が実例。犯罪者が近くに潜伏している可能性がある地域であれば、それを教え、指揮通信室から応援を向かわせることもできる。
Q:PS LTEとして、アイフォーン端末やアンドロイド端末がある、3GPPの周波数を使用することの有用性についてはどのように考えられているか? 200MHz帯域でLTEを行おうとするところもあれば、欧州のように400MHz 帯域で行おうとしている地域もある。
A:3GPPにすればコスト効率が高まる。各国独自の規格にしてしまうと、購入する省庁のコストが高くなる。インフラもそうだが、3GPPのようなワールドワイドな規格になると、多くのベンダーが3GPPに準拠した端末を供給することが可能となるので、客も選択することが可能となる。
3GPPで商用ネットワークを活用する際、災害現場に救助に行かれる職員は非常に堅牢で、瞬間に接続できる緊急PTTボタンを装備した端末が必要となるが、災害現場には行かない後方部隊はアンドロイド端末やアイフォーン端末で接続して通信することが可能である。

PS LTEビジネスについて
Q:過去日本では独自仕様の携帯端末などで普及に失敗した教訓があるが、日本がインフラを輸出する観点から見たときに2017年に3GPPで標準化完了された後、導入を検討したほうがよいか、今から始めるほうがよいか?
A:今から始めるべき。各省庁はシステムを使用する立場で、ベンダーとしてはそれらの省庁に対してシステムやソリューションを開発していくが、業界にとっては標準化していくことが一番のメリットであると思っている。
Q:モトローラ以外にベンダーはあるか?
A:PS LTEはアメリカから始まったということもあり、アメリカには数多くの競合ベンダーがいるし、欧州でも複数のソリューションを提供するベンダーが存在する。