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行政 マイポータルとトラストフレームワーク 楠正憲内閣官房政府CIO補佐官ほか

日時:10月3日金曜日 18時30分から20時30分まで
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:楠正憲氏(内閣官房 政府CIO補佐官)
満塩尚史氏(経済産業省CIO補佐官)
日時:10月3日(金曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)

楠氏の講演資料はこちらにあります満塩氏の講演資料はこちらにあります。

楠氏は次の通り講演した。

  • 共通番号の利用対象範囲は、法律で、社会保障と税、災害の分野に限られている。これらの分野では、新規データは正確に紐づけることができるだろう。しかし、既存の社会保障や税のデータには番号が紐付いていないので、たとえば消えた年金のような、矛盾した過去のデータの修復には個人番号は役立たない。データがきれいになるには時間がかかる。
  • マイナンバー等分科会では、マイポータル・マイガバメントを議論しており、使われるサービスを目指している。個人番号カードの普及を強化し、投資に見合う効果を出す必要がある。中間とりまとめでは、カードの一枚化、民間利用、マイガバメント、スマホ・タブレット対応、高齢者への配慮などをうたっている。利用頻度が低いと使ってくれないので、如何に利用を促進するかが課題である。
  • 利便性の高い住民向けのサービスを開発する必要があり、たとえば、引っ越しワンストップでは民間連携が必須になる。マイナンバー制度の情報提供ネットワークシステムでは民間との接続について考えられていないが、日本郵便のデジタル郵便サービスなども提案されている。国が提供するマイポータルで全てのニーズを満たすのは無理。自治体の参加、連携が必要で、先進自治体の成功を横展開するのがよいと考えている。国が大きなマイポータルを丸抱えしてもうまくいかない。誰かが決めることで先に進める領域、たとえばデータ標準やAPIの提供形態などを国が決めて、自治体や民間の力も借りながら、総合的なサービスへと育て上げていくのが現実的ではないか。
  • 個人向けのサービスについては、誰が手続するかを考え直すべきだ。窓口の大事な役割は、申請を受理するだけではなく住民に制度を説明すること。本人による申請を前提としてしまうと、申請の頻度が低く手続きを習熟するメリットの小さい個人からの電子申請は伸びない。例えば出生届は個人ではなくて、病院がやればよいかもしれない。不動産屋がサービスの一環で、転居届を提出すればよいかもしれない。当事者による完全セルフサービスよりも、人が介在するほうが、成功確率が上がるだろう。
  • 法人番号はプライバシー問題もなく、オープンなので、個人番号よりも先に利用が進むだろう。法人版のワンストップはニーズがある。源泉徴収票と給与支払報告書の提出など、日常的に利用し普及していくだろう。

満塩氏は次の通り講演した。

  • トラストフレームワークの検討としては、官民連携と民民連携が含まれる。官民連携は、マイナンバー制度と民間の連携を視野に入れて経済産業省で検討している。マイナンバーの利用はホワイトリスト方式であり、行政は名寄せで使うが、民間側は名寄せで使ってはならない。民間に名寄せに利用されることなく、マイナンバーの官民連携を進めるために、トラストフレームワークが必要になる。IT戦略でもIT利活用の推進として明記され、経済産業省と総務省で担当している。
  • アイデンティティ連携トラストフレームワークは利活用と安心流通のバランスを実現するものだ。アイデンティティは属性情報の集合体であって、パスワードは属性情報には含まれない。パスワードを渡すというのは誤解である。
  • 信頼できるIDプロバイダーが、必要な属性情報だけを、信頼できるリライングパーティに提供する仕組みが、アイデンティティ連携トラストフレームワークである。現在もID連携はできるが、参加企業の信頼性確認は個別に整備しなければいけない。ここを国が支援するべきである。
  • トラストフレームワークを用いれば、海外からの来訪者からに宗教を配慮して食事を提供するなどの個別サービスを実現する、災害時に個別に避難誘導するといったことが可能になる。そのIDを持つものが実在していることが、このようなサービス提供のそもそもの前提であるが、第三者が本人確認した属性情報を使えば、ネット上で実在性を確認できるようになる。非競争領域の、公共データ(属性データ)を連携すれば実在性を確認できる。
  • 保険会社や銀行との連携、財務資産情報の活用でライフプランサービスを提供といった民間サービスが、マイポータル・マイガバメントと連携することで生まれてくると考えられる。マイナンバーを直接は使わない、したがって民間は名寄せできない、マイガバメントトラストフレームワークも提案している。

その後、以下のような質疑応答があった。

Q(質問):引っ越しのワンストップサービスなどでは、民間企業に情報が提供されるが、そのために、本人の同意が必要になるのか?
A(回答):同意は必要であるが、どのようにいつ同意を得るかは、ユーザ視点で考える必要がある。いずれにしろ、官民連携は同意取得が前提となる。
Q:先進的なモデルを横展開するというのに賛成だが、先進的なモデルは、いつから取り組むか? どのように横展開するのか? 国の役割を早めに明確化する必要があるのではないか?
A:国の取り組みを待つ必要は無い。国は、先進自治体の取り組みを紹介していく。たとえば、千葉市のオープンデータのレポーティングでセールスフォースを採用したといった事例も出てきている。自治体をまたがっての共同利用で、割り勘効果が出るようにしていきたい。
Q:トラストフレームワークでは、登録の段階で、マイナンバーの有効性を確認する必要があるのか?
A:マイナンバーをもらう必要は無い。マイナンバーとも紐付かない。しかし、その結果、リライングパーティの間では同一人物の特定ができないようになる。
Q:マイナンバーは、DVなどの事情によって変更はできるのか?
A:マイナンバーの変更は可能だが、夫婦間の秘匿は難しい。マイナンバーは悪用されないよう利用や閲覧を制限しているし、DV被害者は別の制度でも保護している。
Q:マイナンバーによって、どのような効果が生まれるのか?
A:住民の負担軽減、行政の事務処理負担やミスの低減など。試算では効果の方が大きいと出るが、業務改革次第であって、これが課題である。マイナンバーの利用範囲拡大で、本来のメリットを出していきたいと考えている。番号を入れただけでは何もよくならないが、業務改革、自治体のシステム刷新、情報連携ありきの制度整備ができることで、効果が生まれると考えている。
A:現状は効率的な社会システムができていないのが問題で、連携ができるようになることで変化が生まれるのを期待している。番号があること前提に新たな仕組みを構築する、たとえば、収入を把握すれば、無理ない奨学金返済額が決められる。どうやってこのタイミングで業務改革しようか、と考える自治体が増えてきたことを歓迎する。
Q:税務関係でのマイナンバー利用が先行するのだろうか?
A:所得捕捉は付番だけでは難しい。付番だけで大きな効果が生まれることはない。
Q:扶養関係の捕捉でマイナンバーを活用したいと考えている。自治体事務の効率化を進めるにも、自治体間連携が必要になるが、マイポータルの中でどのように行われるのか、自治体にいつ情報提供があるのか? 一方で、住民側のメリットは出のように高めるのか?
A:住民のメリットを示すのは難しく、模索段階である。もともと、バックオフィス連携が目的だったが、民主党政権時代に、住民からみたメリットを出すために、プッシュ型、ワンストップといった行政サービスを打ち出した経緯がある。実際には、マイガバメントはまだ議論の初期段階だ。行政サービスなので息の長いシステムが必要になる。年金や生命保険のような長期間のデータ維持は大変な仕事である。まずは、これに利用するのが適切である。
Q:マイナンバー制度では業務改革が重要になる。業務改革が無いままマイナンバーがスタートすると、国民ががっかりする。どうやって推進するのか?
A:現在は各省庁で優先順位を付けて必死にやっている。一度に進めるのは難しい。政府全体での優先順位付けが必要と考えている。

ビジネス シェアエコノミー:サービス展開への挑戦 重松大輔株式会社スペースマーケットCEOほか

シェアエコノミー(共有型経済)は20世紀にはなかったビジネス形態ですが、ネットを活用することで実現に至りました。日本経済新聞に連載記事が掲載されるなど社会的な関心は高まりつつありますが、わが国に根付かせるには、制度(法律・規制・慣習等)の壁を突破しなければなりません。本セミナーシリーズでは、制度問題を中心に据えて、シェアエコノミーについて広範に議論していきます。
第1回にはAirbnbの田邉泰之氏とスペースマーケットの重松大輔氏をお招きし、空いている時間や場所に関する情報をネットで提供し、人々の活用を促すサービスの展開についてお話を伺いました。

日時:9月29日(月曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師
田邉泰之氏(Airbnb日本カントリーマネージャー)
重松大輔氏(スペースマーケット代表取締役・CEO)

田邉氏の講演資料はこちらにあります

講演要旨(田邊氏)

  • Airbnbは2008年創業で、2014年5月に日本法人を立ち上げた。
  • サンフランシスコで初めてAirbnbを利用した際の、自身の体験を通してAirbnbのサービスを紹介する。物件の詳細情報や評判(利用者による口コミ)、保有者(ホスト)との事前のコミュニケーションで、宿泊する場所を決める。ホストは地元の人でしかわからない、ガイドブックには掲載されていない情報を教えてくれ、このおもてなしがゲストの方に非常に喜ばれる。ローカルな家に泊まると、地元の人と同じような生活が体験でき、そこの文化や生活についてより深く知ることができる。
  • Airbnbがグローバルのプラットフォームであること、そしてソーシャルの力を使っていることで安全性を確保している。ゲストの評判やSNSの登録利用状況などを確認して、ホストは泊めてよいか判断ができる。場合によっては宿泊をお断りできる。ホストからの支払いはAirbnbが一時預かり、宿泊開始日から24時間後にホストに渡される。その間に宿泊をキャンセルも可能である。宿泊後はホストとゲストがレビューを書く。知らないところに泊まるのは不安だと思われるかも知れないが、SNSがあるから個人が自分のブランドを確立でき、利用者の人となりが確認できるのでこのシステムが成り立っている。また、いろんな国でAirbnbを使おうと思うと、どの国で利用してもホストにいいコメントを書いてほしいという思いが働くので、部屋を大事使おうという気持ちになる。それでも、万が一備品破損等が起きたら、日本では8千万円を上限にAirbnbが補償する仕組みがある。
  •  Airbnbは地域への経済効果がある。ブラジルワールドカップの際、第三者が調査したところ、外国からの観客の20%がAirbnbで泊まったという結果がでた。このように、宿泊ニーズが高くなるイベントなどの時だけ宿泊を提供することもできる。パリなどで提供している物件は70%がホテル密集地以外であり、2年前の試算では郊外に240億円の経済効果があった。宿泊費は直接地元の住民に支払われ、その収入をローンや生活費に使う。また、Airbnb利用者には長期滞在者が多く、使われるお金も多いという結果もある。
  • Airbnbのユーザーは、現地の文化をより深く理解したいと思っている方が多いため、訪日するゲストには、東京-京都-大阪の、いわゆるゴールデンルート以外のところにも行ってもらい、より深く日本の文化を学んでいただきながら広範囲への経済効果を実現できればと思う。今後、Airbnbのみならず、シェアリングエコノミーのビジネスが発展できるような法整備の必要がある。

講演要旨(重松氏)

  • スペースマーケットは世界中のあらゆるスペースを貸し出すことを目標に、今年の4月にサービスを開始した。前職のフォトクリエイトで、場所(Venue)の価値に気づいて、このビジネスを立ち上げた。オーナーからの成果報酬(20~50%)と保険サービスが収益源である。
  • Airbnbはすばらしいが、宿泊型は規制のために日本ではやりにくい。宿泊なしなら現在の法律の範囲でいける。平日に結婚式場に行くとガラッとしており、非常にもったいない。そこで、結婚式場という法人と、結婚式場でイベントを開きたい法人を結ぶBtoBとして、この事業を始めた。
  • 現在約800のスペースを貸し出している。映画館、古民家、お化け屋敷、銭湯、ベンチャー企業のスペース、帆船など。スペース在庫・顧客やりとり履歴・予約受付・売上など、スペース収益化の一元管理を、貸主に代わって実行する。借主は、いくつかの物件情報を見て、オンライン予約する。このほか、新しい切り口のスペース活用を企画提案するなど、アイデア出しのところからの手伝い(コンシェルジュサービス)も行っている。
  • スペースマーケットが生み出した価値は、場の新しい価値とコンテンツの新しい価値である。会議室で会議するのは普通だが、水族館の会議は新しいし、新しい発想も生まれるだろう。増上寺もスペースマーケットで貸し出している。最近はお寺で何かやりたいという引き合いが多い。映画館で大手情報会社がキックオフをやったり、伊豆大島でシェアオフィスをやったり。鎌倉の古民家で経営会議をしたり。
  • 大型アライアンスも組んでいる。ビーナスフォート、東急グループの会議室、ブルーノート東京、スタジオアルタ、白川村の重要指定文化財、日南市の物件、朝日新聞社のホール。大手不動産会社、ケータリング運営会社、研修運営会社、ウエディング事業者など様々アライアンスを組んでいる。
  • 日本中のハコモノ行政の残骸を宝にすべきだ。公立学校も、毎年400から500が廃校になっている。過疎地では、住民が数人しかいない島を丸ごと貸しきりたいという話もある。スペースマーケットは地域活性化にも貢献できる。

講演後の質疑の概要は次のとおり。

信用の付与について
Q(質問):田辺氏はゲストの信用とホストの信用ついて言及したが、重松氏はどのように考えているか?
AS(回答、重松氏):スペースマーケットは法人間の賃貸借であり、両者が法人であることで一定の信用力は担保されていると認識している。登記簿謄本をチェックするとか、一筆かかせるとかして、怪しい借主は断ることもある。貸すサイドもプライド高いところが多い。支払いは前金制であり、回収リスクはない。保険にも加入してもらっている。

法律等の制度との関係について
Q:2名とも法律について言及しているが、制度問題をどう考えているか?
AT(回答、田辺氏):今の法律には、Airbnbのようなサービスは該当しないと認識している。貸し方によって様々ですので、今の段階では、ホストの方に事前に確認をお願いしている。
AS:いきなりCtoCでは、規制ですぐつぶされると思った。既に商慣習として確立しているBtoBから始めたが、これからは、つぶされない程度に、CtoCもやりたい。
Q:Airbnbは、旅館業法との兼ね合いについて官庁との間で見解を確認しているのか? また、個々の宿泊場所で周辺住民とコンセンサスができていない状態もあるように思う。Airbnbはホストに法律順守することを求めているが、それだけではすまないと思う。
AT:今が決していい状態とは認識していない。はっきりしていない状態である。クリアにすべく動いている。周辺とのコンセンサスについては24時間対応しているが、問い合わせがたくさんあるわけではない。いずれにしろ、できるだけ早く解決したいと思っている。
C(コメント):法律が古臭いという考え方もある。日本生まれの検索サービスがなかったのは著作権法で許されなかったからだが、同じように、このケースも、法律が古いのではないかと考える余地がある。
Q:マスコミは法令違反と報道するだろうが、対抗するために、ロビーイング活動をしているのか? 海外でもロビーイングもやって、前に進んだと認識している。日本でも行うべきだ。
AT:このビジネスを通じてローカルの人が恩恵を受けられるようにという想いで色々な活動をしている。海外旅行者が東京、大阪、京都だけで帰ってしまうのはもったいないので、いろんなローカルカルチャーを知っていただきたい。Airbnb利用者には発信力があるので、海外で日本の良さを知らせてほしい。このような観点から議員と接触すると、議員も出身地のすばらしさを訴えたりされる。
Q:金髪の人が住宅に出入りするだけでびっくりするが?
AT:政府は訪日外国人を1000万人から2000万人とする目標を掲げているが、2000万人の目標に達した時の海外の方への対応の準備を、すこしでもAirbnbでお手伝いできればと思う。
Q:提供する物件は戸建てか集合住宅か? 集合住宅だと安全面の問題もある。Airbnbから管理組合に対しアドバイスすることはあるか。
AT:家一軒丸々借りるタイプ、部屋一つだけ貸すタイプ、ホストと宿泊者が共有するタイプの三種類がある。ホストが責任を持って自分の貸される環境を把握し、法律を守って弊社サービスを活用いただくようにお願いをしている。
Q:Airbnbの仕組みを理解し、活用するためには、英語の規約しか掲載していないのは問題ではないか?
AT:法務部門のチェックが完了したので、当社の規約は間もなく日本語化される。

地域振興について
Q:両者のビジネスで外部からの訪問者を増やし、地域を振興するということについて、どう考えるか?
AS:地方には豊かな資源と、無駄な建物と、古民家がいっぱいある。みんな何とかしたいと思っているので、その一つのソリューションになると考えている。新しいビジネスツーリズムというジャンルができるのではないか? 都会での研修を古民家で行えば、お金も落ち、地域の活性化にもつながる。
AT:プライベートの時間も使って、Airbnbのサービスでお役に立てないか模索している。隠岐の島にも、高野山にも伺って色々お話をさせていただいた。魚沼にも伺ったが、コシヒカリで有名でありながら、実は限界集落もあることを知った。Airbnbとして、体験型宿泊という形式で、微力ながらも地域振興に貢献ができないかと模索している。
Q:たとえば、小諸市は消滅に限りなく。空きスペースはいっぱいあり、そっくり使ってもらいたい。スペースマーケットが小諸市長にプレゼンするというような可能性はあるのか?
AS:よろこんで、小諸にも行きたい。
Q:国内で最も施設を余らせているのが公共である。どの程度公共に営業をかけているか?
Q:学校は緊急時の避難場所になることも多く、廃校だから取り壊しという選択肢は少なく、メンテナンスコストだけ自治体にのしかかる。なぜ、自治体はスペースマーケットのビジネスモデルに乗らないのか?
AS:自治体は横並びで、前例はないの?という質問ばかりで辟易している。自治体向営業はストップしていたが、白川村は先方から要請がきた。日南市も、日本一アライアンスが組みやすい自治体と銘打って、前例を作るとがんばっている。まずは、これらと協力していく。

その他、ビジネスについて
Q:Airbnbの稼働率はどのくらいか? また、国内の4000件の地域分布を知りたい。
AT:稼働率は場所によって違うが、東京では8割は埋まっている。東京に2000件で、その他は大阪、京都が多い。仙台、沖縄は検索数が多いので、提供物件数を増やしていきたいと思う。
Q:スペースマーケットのサイトには物件の写真が提供されているが、撮りに行っているのか? また、すべてをネットで営業しているのか、それとも足を使っての営業もあるのか?
AS:貸主は法人であり、自社の物件については相応に写真を持っている。それがない法人は、有料で写真を撮りに行く。大きいところを借りる場合には、下見も発生する。大規模な法人には、訪問営業して成約させることもある。学生のインターンにも頑張ってもらっている。
Q:Airbnbで海外の物件に泊まる場合、英語でコミュニケーションが必要になる。日本人のゲストにとってハードルが高いのではないか? これはホストになる場合も同じ。SNSとして、Facebookを使うことが利用上マストなのか?
AT:やりとりはチャット形式になっているので、かしこまった文章能力は必要ない。簡単な文章での対応が可能である。ただ、日本人の利用者特有のニーズもあるとAirbnbの本社にも伝えている。来年はさらに日本のお客様にもっと使いやすいように改善できるように頑張る。
Q:人種・宗教等で、こんな人には泊まってほしくないという要望は叶えられるのか?
AT:サイト自体には機能はないが、自分の物件紹介には何でも記載できるので、ゲストは女性限定等と表示する方もいる。個人ベースでゲストを受ける、受けないを判断できる。

教育 荒川区は、なぜ小中学生にタブレットを配布するのか? 西川太一郎荒川区長

日時:7月31日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:榎並利博氏(富士通総研 経済研究所主席研究員)
講師:西川太一郎氏(荒川区長)
コメンテーター:上松恵理子氏(武蔵野学院大学 准教授)
*荒川区教育委員会の駒崎彰一氏と菅原千保子氏に、現場で実施している内容について、質疑応答時にお答えいただいた。

<西川氏の講演内容>
タブレットPCの導入は、当初、一昨年にスタートできるよう準備を進めていたが、教育委員会の申し出により時期が遅れた。それは、学校現場のベテランの先生方に、研修が必要であったためである。しかし、今はベテランの先生方はこれまでの経験を生かしタブレットPCの効果的な活用を始めている。
荒川区は、小中学生は12,000名と小規模である。このことが、導入の際には逆のスケールメリットがあったと考えられる。
まずは、電子黒板を導入するところから始めた。先生方にはデジタル教育の技術に慣れてもらい基礎的な学びでこれらのツールを用いて実りのある教育を行えるよう、校長先生たちにお願いした。当初、授業で電子黒板を扱うことが嫌だと思った先生は多く、効果があると思った先生は30%しかいなかった。しかし、電子黒板にあわせデジタル教科書のネットワーク配信を導入して一年が経った頃、効果的に分かりやすい指導ができたと答えた先生が96%になった。
タブレットPCの導入は「一番のり効果」を狙った。「一番のり効果」は、予算の縮減をもたらした。端末は、リースで5年間契約であり、当初総額40億円を超える見積もりであったものが10億近く縮減することができた。
タブレットPC導入前に、学校図書館の充実に着手した。柳田邦男氏(ノンフィクション作家)、永井伸和氏(学生時代の仲間で、鳥取・島根で書店を経営している)らの指導のもと、蔵書数は、文部科学省の学校図書標準、東京都の学校平均蔵書数を軽く超えている。西川氏自身、子どもの頃、本はいくらでも読んでいいと家族に言われていた。そういった経験から、「読みたい本を読めない子どもをゼロにしたい。」という思いがあった。教育への思いの原点である。
また、各学校に非常勤職員として学校司書を雇用した。また、大規模校には補助員も置くようにしたのである。
一方で、「学校パワーアップ事業」として校長の予算裁量権を拡大した。区内の全ての小中学校校長に、それぞれ年間180万円を、校長の裁量で自由に使っていい予算として設定している。全国でこのような予算を組む自治体は他にはない。用途としては、伝統文化を教えるために、琴や三味線、お茶の御手前、御師匠様を招聘して授業を行うといったことなど様々な使い方が広がっている。
また、荒川区は豊かな家庭ばかりではない。議会では、タブレットPCに何億円ものお金を使うなら、「貧しい子どもに文房具を配れないのか?」、「学校給食を全て無償化できないのか?」といった意見があった。豊かな家庭もあるが、23区中24番目と過去に言われたこともある。それほど貧しく、特徴のない区であった。
しかし、今、荒川区は、財政力も23区中上位で、全国でも上位に位置している。
国立社会保障・人口問題研究所の社会保障応用分析研究部長 阿部 彩 氏はこう言っていた。「教育は投資である。この投資は、必ず戻ってくる投資である。今ある格差を公費でならして、貧しい家の少年少女は、機会均等で読みたい本が読めるようになる。」
福沢諭吉が明治4年に、岩倉使節団等での経験を踏まえ、学問のすすめを著した。これは、教育の格差はあってはならない。どんな村であっても、文字が読めない人がいてはいけない、学校へ行けない人があってはいけない…という思いを込めたものである。
結果的に、人を育てることの情熱、貧富の差があってはいけないという思いが、タブレットPC導入を決定した。

<上松氏のコメント>
一時の流行ではなく、哲学を持ってタブレットPCの導入を決定されていると感じた。世界の導入事例を見ても、日本は先進国に比べると、とても遅れている現状がある。端末を配ることで先生が喜んで使えば教育現場が変わる。その時代に応じたスキルや能力が必要になってきているので、学習者である児童生徒にとって、よいスパイラルになるのではないかと期待している。
韓国では、2000年から端末だけではなく通信費も貧困家庭に配っている。親の年収に沿って恵まれない子どもには通信費を配するという取り組みは、韓国の教育科学技術部やKERISなどのHPに記載されている。

<西川氏の補足>
授業では効果的なところはどこなのかを考えて使っている状況である。子どもたちのリテラシーを育てて行こうという取り組みも進めている。小学校1・2年生は蔵書から学ぶ。3年生からはローマ字を学ぶため、電子百科事典やこども向けのポータルサイトでインターネットを利用することを想定している。中学生になった時点で、フィルタリングなしで扱うことができるように、カリキュラムを準備している。子どもたちが学習ツールとして適切に、主体的に使えるよう準備をしている。いわゆる21世紀型スキルを身に着けることが目標である。PISA調査の協調型問題解決能力に照準を合わせていきたい。最終的なイメージは試行錯誤中である。日本の学習指導要領に合わせたものを考えていきたい。

<駒崎氏コメント>
授業では、ずっとタブレットPCを使うのではなく、効果的な場面で使っている状況である。
また、子どもたちのリテラシーを育てて行こうという取り組みも進めている。特に調べ学習では、小学校1・2年生は学校図書館の蔵書から調べる。3年生からはローマ字を学ぶため、電子百科事典やこども向けのポータルサイトでインターネットを利用することを想定している。中学生になった時点で、主体的かつ適切にネット検索ができるように、段階的なカリキュラムを準備している。つまり、子どもたちが学習ツールとして適切に、主体的に使えるよう準備をしている。
最終的には、いわゆる「21世紀型スキル」を身に付けさせることが目標である。PISA2015年調査の「協調型問題解決能力」に照準を合わせていきたい。試行錯誤しながら取組を進めている。日本の学習指導要領に合わせた取組を進めていきたい。

<上松氏のコメント>
日本中でタブレット端末を配る状況になると、教員研修があちこちで行われるようになるだろう。北欧では、子どもたちが自分で考えて使うことができるような指導を行うための、教員研修を行っている。教員研修は、一斉に教師が指導を受けるというものではなく、内容は、ディスカッションや、提案といったものである。教員研修自体もそういった形態であるため、普段の授業においても先生が統制するやり方ではなく、子どもたちが自分たちで考える。デジタルの特性を活かすことが大事だと考える。

<質疑応答>
Q(質問):学校現場では校長の理解があったとされているが、どのようにご理解いただいたのか?
A(回答):段階的な導入を進めた。まずは、電子黒板から始め、指導者用デジタル教科書を導入したことで、教員がわかりやすい授業をできるようになった。このことは、校長が一番わかっている。また、タブレットPC導入には、まったく抵抗がなかった。段階的に導入することで順調に進むことが見えてきた。
Q:荒川区報ジュニア版の区民や保護者の反応はどうなのか?
A:そもそもタブレットPCのために作った印刷物ではなく、以前から2ヶ月に一度発行している。このように、子ども向けに広報誌を出しているところは全国どこにもない。発行には年間600万円かかっている。はじめは、こどもが道端に捨てていったりしたケースもあったが、家庭に持ち帰る子どもから情報を得たおじいちゃんおばあちゃんが、今では圧倒的な読者となり、孫と共通の話題を話せると言われている。
Q:研修について。今までは、先生の役割は知識の伝達が主だった。ICTが入ることで、ファシリテーターの役割も出てくるのではないだろうか?
A:最終的には、教員がファシリテートを行う姿になる。現在、教員研修では、機器の使い方に関する内容を全く行っておらず、先生方には、こういった授業ができるというイメージを徹底的に見せている。機器の使い方は、常駐しているICT支援員に質問するよう伝えている。ICT支援員の任期は一年間である。機器の使い方は、とにかく使ってみて、わからないことを支援員に聞くよう勧めている。
それと共に、21世紀型育成スキルの研修も実施する予定である。一方的に教え込むのではなく、プロジェクト型で先生方が意見を出し合いながらまとめていく形態で、来週初めて実施する予定だ。今後、タブレットPCが子供たちの学習ツールになったとき、教員の役割は、ファシリテートになるだろう。
Q: アメリカではiPadの事例が多い。荒川区では、富士通製を導入するようだが、その背景は?
A:結果として、Windowsタブレットになった。最終的な決め手は、コンピュータ室をなくす想定であるためである。キーボードを取り付けられるようにすることで、情報活用能力の育成を目指す。

<西川氏のコメント>
全国に普及することについて。単一自治体に補助金はいらない。
自治体に補助するよりも、各メーカーに対して開発支援をし、端末の単価を下げる努力をお願いしている。
首長に教育現場からの理念を教えてくれたのは、校長という存在。校長を無視しては、絶対にできない。校長の現場の経営を踏まえ、体得されている思いを聞く首長がいなければ、タブレットPC導入は、実現できなかっただろう。区長と教育現場が意思を通じ合っている区は、他にはないと思う。タブレットPC導入は、校長と教育委員会をターゲットにしないとうまくいかないだろう。

Q:例えば、佐賀県武雄市では、算数と理科に教科を絞り、いわゆる反転学習を行っている。予習で動画を観て、確認テストをタブレットPCにて実施するといった使い方である。荒川区ではどのように使っているのか?
A:基礎基本はしっかり教え込むものとして、従来の「読み・書き・計算」は重要。
教育委員会からは、タブレットPCの使い方の指示は出していない。教師や子どもたちの発想を大切にしている。
例えば、中学校の数学では、先生がコンパスで作図をしている様子をタブレットで録画し、生徒たちに配信する。何度も再生が可能であるため、生徒は自分のペースで反復学習を行うことが可能になる。また、体育の長距離走において、ストップウォッチで記録を行っていたが、ICT支援員と協力して数値を入力することで、一周ごとのラップタイムがわかるようになった。
これらは全て、教員の授業力にかかっている。ベテラン教員は経験値があるので、いろいろな授業のデザインをもっている。タブレットを介して、教員同士のコミュニケーションも広がっている。
また、学習に課題のある児童、いわゆる発達障害がある子が、集中して取り組むことができるといった結果もある。タブレットPCにカメラ機能が付いているので、実技教科での活用が広がっている。動きを伴うものは比較して見ることができる。
Q:聾学校の生徒は、質問するときにうまく伝えることができない。英語を日本語、日本語を英語にするアプリをベースに、京都の情報通信機構にて、日本語から日本語に変換してくれるアプリを作成してもらったことがある。これは、預けた財布を返してくださいと言えず、2時間歩いて帰った人がいたことが発端である。この技術は、伝えるというツールとして、おじいちゃんおばあちゃんにも使えるのではないか。
A:ご提案をまっすぐ受け止めていきたい。荒川区は、東京ではじめて手話を独立した言語としての法整備を、国に求めた唯一の自治体である。本件は、福祉・障がい者のための政策課長に伝えたい。荒川区では、コミュニケーションボードを作っている。災害時のあらゆる場面を想定した、折り返し20ページくらいのものである。指でさせば、トイレはどこですか?お水は?といったことを聞くことができる。主な目的は、障害を持つ方のために作ったものであり、特許を取るようすすめられたりもしたが、これは、どこでもだれでも使ってもらうことが大事なのではないかと考えている。
Q:トラブルが起きたとき、ICT支援員が対応されていると思うが、彼らがいないと円滑に進められないのではないか?また、支援員の育成はどのように行っているのか?
A:ICT支援員は、いなくてもおそらくできると考える。
また、トラブルは間違いなくある。学校環境は、一斉アクセスするタイミングが多々あり、数台は止まってしまうことがある。すべてICT支援員が解決しているのではなく、教員は、常に授業の副案を用意している。支援員がいればある程度のトラブル解決はできる。今、支援員にお願いしているのは、トラブルシューティングをまとめることである。支援員には、授業支援に強い人間と、機器対処に強い人間の二種類に分類できる。教員とのコミュニケーションを図りながら対応を進めていく。
また、子どもたちの端末が繋がらないときは、再起動で解決できることが多いため、モジュールリセットボタンをつくってもらった。こういった工夫を行っている。

<上松氏のコメント>
フューチャースクールの例を学校で取り入れたら、日本ほど支援員を置いているところはないと言われるだろう。そういう状況は、教員のスキルがとても低いか、システムが壊れやすいか、といった理由しか考えられない。韓国では支援員は教員資格を有しており、各学校に一名いる。教員である支援員が研究授業や時間割のコーディネートを行っている。現場の課題として、教員免許がない支援員の必要性を重要視する例は世界的には稀である。それよりも、これは普段の授業で普通に使えるようなもので良いので、教員のICTスキルをつけるべきである。
また、二つの課題がある。ひとつは、これまでの知識注入型の授業であればよいが、タブレットを導入することで、授業時間1コマ45分や50分では足りなくなるだろうということ。もうひとつは、教科の枠を越えた授業が必ず出てくるだろうということである。これは、一教員の立場ではどうにもし難いことである。

<西川氏のコメント>
首長の決断だけでは、うまくいかない。先進事例等を充分に把握した事務局職員(指導主事)がいない自治体では、なかなかうまくいかないと考える。

行政 特定個人情報保護委員会の活動 手塚悟東京工科大学教授

日時:7月24日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:手塚悟(東京工科大学教授)

特定個人情報保護委員会初代委員に任命された手塚氏は資料を用いて講演した。

講演資料はこちらにあります

講演の後、次のようなテーマについて討論が行われた。

情報連携基盤の構造について
Q(質問):情報連携基盤はなぜ、複雑な構造をしているのか?
A(回答):2008年3月6日の最高裁判決を守ることが「必須要件」となって、今の構造になっている。センターにすべての情報を一括して保存する仕組みでは、最高裁判決の条件を守るのがむずかしいため、業務ごとに分割して保存し、機関別符号を介して相互に連携させる、セクトラル方式を採用した。
Q:他国も同様か?
A:エストニアやベルギーのシステムも概念的には同じ構造であり、世界的にこのようなシステムを整備するのが、共通番号を利活用する電子行政での主流の姿である。
Q:中間サーバが全国2か所というのは、分散管理の概念と矛盾するのではないか?
A:中間サーバは物理的には全国に2か所のパターンと各自治体が独自に設置するパターンがある。全国2か所のパターンは、クラウド型で情報は保存されるので分散管理であり、問題はない。
Q:生活保護の受給で、複数自治体から同時に受給するという不正が起きた。今の情報連携基盤では、照会先が特定できるときにだけ照会できるようだが、全国の自治体に一斉に照会する機能も必要ではないか?
A:詳細について回答できないので、後日確認したい。
Q:情報連携基盤がよく考えられた仕組みであることは分かったが、一般国民には分かりにくい。そこが問題ではないか?
A:個人番号制度は、システムだけですべての安全を確保するのではなく、運用や制度を含めて安全を確保する考え方である。また、この制度は、運用者だけでなく、利用者である国民も含めて皆で育てていくものである。これについて、いっそうの広報が必要だと自覚している。パーソナルデータ検討会の結果に基づき、個人情報保護法が改正される方向である。その際には、特定個人情報保護委員会が個人情報保護委員会へ改組される方向で、個人情報保護コミッショナー相当の役職ができる想定である。それに備えるためにも、国民の理解を醸成しておく必要がある。

特定個人情報保護評価について
Q:特定個人情報保護評価の結果を「公表」させるというが、各組織(自治体)はじめての経験で公表できるほどのレベルに達するのか? 何を目的に公表させるのか?
A:特定個人情報保護評価は事前評価であって、結果を保証するものではない。そのような評価結果を公表すれば、今の時代、組織(自治体)間の比較を勝手に実施する人も出るだろう。そのような比較によって、組織(自治体)側の意識が高まっていくと考えている。
Q:プライバシーマーク(JIS15001:個人情報保護マネジメントシステム ― 要求事項)を元に特定個人情報保護評価を実施することについてどのように考えるか?
A:自治体の取り組みで、これはひとつの形になるだろう。しかし、JIS15001は日本独自のもので対応するISOがない。世界との協調、特に欧州との個人情報保護のレベル合わせが必要な特定個人情報保護評価において有効か、どう結びつけるべきか、実践を通じて考えていくことになるだろう。

マイナンバーの民間での活用について
Q:民間はいつまでに準備するのか?
A:現状の利活用範囲でも、民間は健康保険組合等に関して個人番号利用事務を実施し、また税分野では個人番号関係事務を実施する。だから、民間は無関係というわけではなく、本格的に動き出す2017年1月までには対応を済ませていてほしい。
Q:今後、マイナンバーはどこまで民間で活用するようになるのか?
A:それは、特定個人情報保護委員会委員としては回答できない。国民が利便を理解して、どこまで許容するかにかかっている。そのようにして法律で認められた範囲内での利活用が問題なく実施されるように指導・助言・勧告・命令するのが、特定個人情報保護委員会の役割である。
C(コメント):番号制度の民間利用については、いくつかのレベルがある。番号そのものの利用、個人番号カードの利用、公的個人認証の利用。公的個人認証に使いたいというのがもっとも多数の意見で、これについては、個人番号そのものとは異なるオープンなIDを希望者に発行して使えるようにしようなどといった案が出ている。