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行政 地方自治体における業務の標準化・効率化 増田直樹総務省地域情報政策室長ほか

日時:3月10日(火曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学大手町サテライト
千代田区大手町2-2-1新大手町ビル1階
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:増田直樹(総務省自治行政局地域情報政策室長)
松下邦彦(株式会社TKC地方公共団体事業部行政システム研究センター部長)

増田氏の資料はこちらにあります
松下氏の資料はこちらにあります

増田氏は資料を用いて、概略、次のように講演した。

  • 新藤前総務大臣が行政のIT化に大変熱心で、骨太の方針・日本再興戦略・世界最先端IT国家創造宣言に電子行政の推進が盛り込まれた。その流れで、地方自治体における業務の標準化・効率化に関する研究会を開催した。報告書は、先進自治体での取り組みを参考に課題解決策を提示するものである。
  • 総合窓口の先進事例には、粕屋町、三鷹市、甲府市、北九州市などがある。業務フローを標準化することで、事務の効率化や住民サービスの向上が図られるようになった。人口に関わらず、導入可能であり、共通番号の導入により各自治体でさらなる検討が進むように期待している。
  • 総務自治センターの先進事例として、横浜市、静岡県、大阪府を紹介する。平成20年頃でセンターの新設はひと段落ついたようだが、都道府県31団体、政令指定都市5団体などに導入されている。大規模自治体にはスケールメリットがあり、将来的には中小自治体での共同運用の可能性もある。
  • 自治体クラウド等の先進事例として、神奈川県システム組合、埼玉県町村会、秋田県町村会、京都を紹介する。業務の標準化・効率化を進めていくため、カスタマイズはできるだけ抑制するのが肝要である。自治体クラウドは、特に中小自治体での導入が進んでいくと期待している。また、分散して進んでいる各地のクラウドが統合されて、より大きなクラウドになるのが、将来的な方向である。

松下氏は資料を用いて、概略、次のように講演した。

  • 研究会の報告書には、ITベンダーの役割への言及がある。ベンダーは行政の遂行に必須の存在であると、書き込まれたことに大きな意義がある。
  • 自治体には、基幹系サービス・各種事業・共通基盤・庁内情報系サービス・住民向けサービスと、多くの情報システムが存在し、これに応えるために、20前後のベンダーがビジネスを営んでいる。市場規模は5700億円といわれている。
  • 市町村の人口規模ごとに情報システムに対する要求は異なる。できる限り安くというのが最大の条件でカスタマイズを求めない中小自治体から、オーダーメード型を好む30万人以上の大規模自治体までが存在する。
  • ベンダーはオーダーメード型に対応する一方で、パッケージ型のシステムを提供している。ひとつの自治体には多数のシステムがあり、異なるベンダーが納めているものもあることから、システム間での情報連携にはカスタマイズがどうしても必要になる。一方で、帳票・データ形式などの標準化によって、カスタマイズは削減できる。
  • 施行規則などがシステム化を前提にして提示されるようになれば、ベンダーが読み解く手間が省けるようになる。将来的に期待したい。
  • 国が自治体システムを一元的に提供することは可能か。韓国では実現しているが、競争が減ることは進歩を阻害する恐れがある。

二つの講演後、活発に質疑応答が実施された。

総合窓口と総務事務センターについて
C(コメント):総務事務センターについて、千葉市は取り組み中である。千葉市は人口97万人で、市役所と区役所の二階建て構造だが、区でも単独の市の規模がある。この区役所分について、総務事務センターを構築中である。
Q(質問):導入による業務の時間削減効果だが、民間は業務行動を記録しているが、自治体はしていない。時間が短縮されても、他の業務に時間がとられるだけだ。時間の計測が自治体でも必要であると考え、千葉市は千葉大学と共同研究している。総務省で時間の使い方の研究をしているのか?
AM(回答、増田):大きな自治体は一つの課に二・三人の総務担当がいるので、総務事務センターをいれると当該委託分の業務量削減ができる。小さなところは一つの課に0.5人というように一人以下であって、削減がむずかしく、それが中小自治体で総務事務センターが進まない理由になっているのではないか。自治体EAのころには、事務量を具体的に測っていた。例えばそのような測定を改めて実施することもあるのではないか。
Q:同じ業務について、総合窓口なり、総務事務センターを持っているところと、同様の規模で持っていないところを比較してみてはどうか?
AM:仰るとおり。ちなみに自治体クラウドの業務量削減という点では、神奈川、北海道でなど調査される予定と聞いている。
C:人口規模5万~10万であれば標準化できるが、大規模自治体だと業務が多様化して標準化が困難。今までどおりカスタマイズになってしまう。規模別で標準化への考え方は異なるのではないか。
Q:総合窓口について、大阪では、市民が便利になったかどうかを指標化している。そちらのほうがより重要ではないか?
AM:総合窓口における住民の満足度は非常に重要な考慮すべきポイントである。今日、資料に記載していないが、それぞれの事例で満足度の調査が実施されているが、いずれも高い評価を得たと伺っている。
Q:ベンダーの役割が変わってきているのではないか? 最近は役所に非正規職員が増えて、ベンダーは運用を実質的に任されている。クラウド以上に行政コストを削減したいのであれば、ベンダーが行政サービスを提供するところまでもっていくのがよい。富士ゼロックスは戸籍システムで大きなシェアを持っており、ナレッジがベンダーに蓄積されている。
AM:総務事務センター(内部事務等)について研究会で話題になったのは、全部を外部委託するのは問題ではないかという点。実際に、各事例でも最終権限は自治体の職員に権限を留保したうえで、システムを導入している。しかし、一方に、職員のスキルが育たないのではという指摘もあった。
Q:確定申告会場にいくと、ITベンダーからの派遣職員が多い。申告期間は一か月なので、そうしないと仕事が回らない。ここでもベンダーにナレッジが蓄積されている。一方で、機微な個人情報が漏れる心配もあるが?
AM:本日の総務事務センターの事例は、あくまで内部事務であり、職員の事前同意を得るというのが前提になっている。

大規模自治体と中小自治体の相違について
Q:大きな自治体の方が、財政が豊かである。一方、提供する必要がある住民サービスの多くは規模に関係しない。小さな自治体は、貧しい中で住民サービスを提供する必要がある。そこに、標準化と効率化のニーズがあるのではないか?
AM:仰るとおり。クラウドの発想の原点である。オールインワンのパッケージを中小自治体は利用する。一方で、30万人規模以上の大きな自治体にとっては、対応するパッケージがほとんどないため、自らがシステムを作っているケースもある。今後は、大規模自治体と、周辺自治体と共同利用するといった考え方もある。
AM:小さい自治体は、パッケージに自治体の側が業務を合わせる。一方、大きいところはパッケージをカスタマイズする必要がでる。大きなところは情報処理の専門職もいる。ある政令市にお伺いすると、7割パッケージ、3割カスタマイズといった姿になっているとのことだった。
Q:人口20万人以下であれば、一つのベンダーに統一するなど、思い切ったこともしても良いのではないか? ベンダーロックインは悪いという話もあるが、住民サービスの向上という実態がでるのであれば認められるのではないか?
AM:ある県の場合、今は三つぐらいのグループがあるが、県単位でまとまるのが良いのではないか。また、県をこえた事例も出ている。将来的にはもっと効率化を進めるために、技術革新をベンダーで競うようになるのがよい。今後は、クラウド化した後の次の更新時におけるベンダー間の競争環境の確保が重要な課題になってくると考えられる。
MS(回答、松下):良いベンダーロックインはパートナーシップ。小さな自治体だと専任職員が少ない。そのなかで効率よくするためには、オールインワンパッケージを導入した方がよい。ただし、ベンダー切り替えはできるようにしておかなくてはならないが。
C:行政事業レビューで、ある省の国家機密にかかわるシステムについて、外部評価委員が一般競争入札よりも随意契約にすべきと主張したことがある。ベンダーロックインも、悪と決めつけるのではなく、一つ一つよいか悪いかを考えるべきだ。

将来的な拡大について
Q:総務省の公会計システムが共同利用の道筋をつけるのではないか?
AM:例えば、共通番号制度では、国が中間サーバーのソフトウェアを作り、自治体みんなで使うことになったと聞いている。
MS:公会計システムは、保守年限は3か年という調達条件であり、本格導入するための試験のような位置づけにすぎない。まだ、しばらく時間がかかるだろう。
Q:施行規則などを数式で書くことについて、数式は横書きで。法律は縦書きである。まず、そういうところを変えるべきではないか?
MS:これは数式だけでなく、施行規則が現場の運用に落ちていないことが問題である。施行規則を作る段階から、現場担当者やベンダーが参加することが有効である。
Q:法令にIDをふっていただけないか? 自治体の側も、条例・ガイドラインに法令IDを付けて繋げておけば、更新の必要性がすぐにわかる。神奈川県の自治体が自らのウェブサイトを調査したら、半分ぐらい期限切れの情報だったという話もある。IDでコンテンツ管理すべきではないか? 法律にも、省令にもすでに番号がついているというが、電子化されていないし、IDにしてもらえれば、法令から条例までをツリー構造でコンテンツ管理できるではないか?
AM:以前に法律案を作る仕事をしたことからも、必要性は理解できる。
Q:同一の業務について、システムを一つにするより、ベンダー間で競争させ、同一の業務に関するシステムは二つ存在あるというようにしたほうが、BCPの観点で有益ではないか?
AM:国会議員の先生から何時も言及されるのは、全国二か所の中間サーバーの事例である。基幹系でも、まずは県レベルでまとまってもらってシステムの共同利用の実施を検討すべき。その状況を全国規模で眺めれば、競争が維持されていることになる。
Q:今回の報告書は、現実的だし、正しいことを主張していると思う。なぜ12年をたたないとこういうものがでてこないのか考え直す必要がある。昭和時代からの慣性が強すぎる。自治体も団塊世代が退職すると急激に職員数が減少し、外部委託しないとまわらなくなっている。研究会の報告書をどう推進するのか?
AM:例えば、自治体クラウドは、平成22年頃から本格的に始まったものであり、自治体の取り組みだけでなく、ベンダー側からのクラウドサービスの提供が必要であり、官民連携が欠かせない。今後の報告書の推進については、地方公共団体に策定をお願いしている情報化推進計画等に標準化の施策も必ず入れていただきたいと考えている。今後、進捗状況をフォローアップしていく。自治体における標準化に関する推進団体があった方がいいのではとも、有識者から言われている。

教育 佐賀県武雄市の挑戦と成果 樋渡啓祐前佐賀県武雄市長

日時:2月17日(火曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学大手町サテライト
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:樋渡啓祐(樋渡社中(株)CEO、前佐賀県武雄市長)

冒頭、樋渡氏は次のように講演した。

  • 総務省絆プロジェクトにて、山内東小学校と武内小学校にiPadを236台、先行的に配布したことが、武雄市の教育改革の始まりであった。同時に、全教員に対して、ICTスキルアップの時間を設けることで、抵抗感をなくしていった。
  • 全面導入にあたっては、市内の全小中学校の校長から、タブレットを教育に活用したいといった声が上がった。今年度4月に小学校、来年度4月に中学校へ、タブレットを全児童生徒に配布するに至る。
  • 中学校では、「キーボードがないタブレットでいいのか?」といった声があったが、「まずは導入すること」を第一条件とし、来年度の一斉導入に踏み切った。また、導入にあたっては、保護者向けの説明会を実施するなど、タブレットを用いた教育への誤解や偏見を与えないようにした。小学校に導入した端末は、見た目がかわいい黄色のカバーを付ける工夫をした。
  • 教育改革の一つが武雄式反転授業『スマイル学習』である。家庭でタブレットを使った予習を行い、学校で発展・まとめをグループ学習で行う形式の学習方法である。予習には、動画を用いているため、繰り返し見られることがポイントである。保護者も一緒に見られるため、家庭内の積極的なコミュニケーションにも繋がる。教員は、予習の成果が見える(予習問題の正解不正解が一目でわかる)ので、児童がどれくらい理解しているのかを、勘で探らなくてよいというメリットがある。教員の予想と児童の理解の実態は異なることが、実際に導入してわかってきた。
  • 武雄市が、スマイル学習に取り組む目的は、①児童生徒がより意欲的に授業に望む。②授業者が学習者の実態をより正確に把握して授業に臨む。③授業では「協働的な問題解決能力」を育成する。である。
  • アンケートをよく行うことも、武雄市の特徴である。「授業がよくわかったか?」や、「授業は楽しかったか?」といったように、児童に学習の感想を聞いて、改善につなげている。
  • 動画等のコンテンツは、学校が企業に依頼をして作成している。教員がコンテンツ案を作成し、企業に提出する。それを基に企業が作成し、教員が確認・修正案を提出する。さらに、企業は修正を行い、教員が確認・修正を行っていき…といったフローで完成させる。はじめは、ひとつの制作に約4ヶ月を要したが、現在では、もう少し早く行えるようになっている。
  • 山内西小学校の1年生に、プログラミング教育を先行的に導入した。米国オバマ大統領が、プログラマが足りないと発言したことがきっかけである。日本でもプログラマーを大量に育成しなければならないと考え、武雄市が動いた。小学校1年生からプログラミング学習を導入するのは、小学校1年生が言葉の構造を学ぶ時期だからである。この時期にプログラミングを行うことで、論理的な思考力を養うことができる。また、これからの社会を考えたとき、例えばスマートフォンが普及して新たなコミュニケーションツールが登場した際に、プログラマが必要となる。こういったことから、早い段階から「飯が食える魅力的なツール」として、プログラミング教育を実施することにした。
  • 黒板とチョークを用いた授業は一斉詰め込み型であり、明治5年に学制が発布されて始まったと言われている。それまでは、寺子屋で、習熟度別の教育が行われていた。一斉学習を行うようになったのは、均一な大人を育成するためであり、明治時代以来、教育のスタイルは全く変わっていない。一斉学習は社会に対応できなくなってきている。今は、個に応じた教育が必要である。そのために、塾という民間の力を借りて、官民の区分けをなくした教育を行っていこうと考えたのが、官民一体型学校である。
  • 武雄市は、「はなまる学習会」という民間企業と協力していく。学習指導要領を沿って、教員が指導し、塾講師が助言する形態をとる。教科書と、はなまる学習会の教材を用いる。“はなまる”ならではの学習方法として、朗読等のモジュール授業を朝の15分で行うようにしている。
  • 異学年混合で行う青空教室というプログラムもある。これは、問題解決力を養い、人間力を鍛えるためのプログラムである。写真と同じ場所や物を探すピクチャリーディング等を行っている。これもまた、小学生全員に配布したタブレットを活用している。
  • 音楽や体育といった実技科目で英語を実施することを考えている。例えば、音楽でジョン・レノンのイマジンを扱うといった具合である。
  • 武雄市が目指すのは、世界一行きたい学校である。早く月曜日にならないかなと思えるような、学校に行くのが楽しみになるような教育をしていきたい。現在では、学力テストの成績も向上している。このような数値を用いた検証も行っていきたい。

ついで、司会の山田氏が次のようにコメントした。

  • 小学校の教室の画像をグーグル検索すると、日本・韓国などを除き、児童が向き合って、あるいは車座になって学習している様子が出てくる。机といすを整然と並べ、教員の話を静かに聞く、一斉学習は主流ではない。樋渡氏は講演の中で授業風景の写真を数多く見せてくれたが、どれも児童が向き合って、あるいは車座になっていた。そういう意味で、武雄市では世界基準の教育が実施されていることがわかった。

その後、以下に要約する質疑応答があった。

実践されている教育プログラムについて
Q(質問):英語のみのプログラミング教材もあるが、使用する予定はあるか?
A(回答):英語で書かれた教材を用いることは、良いことだと思う。英語とプログラミング教育との組み合わせはありうる。
Q:スマイル学習を、算数と理科にした理由は?社会でも、例えば、北海道の生活を児童に見せるといったことが扱えると考えられるが?
A:国語では音読で使うといったように、科目ではなく、教育内容によって扱うことが可能であろう。算数と理科にしたのは、教育内容がスマイル学習に最も適していると考えたからである。最初は抵抗があったが、検証し、確認しながら徐々に拡げていく考え方を取っている。
Q:武雄市のICTコンテンツは障害者向けの、アクセシビリティに配慮しているのか?
A:ハンディキャップを持った児童へのデジタル教育の親和性の高さは感じているので、これから進められると思う。

教員の反応などについて
Q:教員に必要なICTスキルはどのように身に付けさせればよいか?
A:民の役割と期待する。特に、30~40代の現職教員のケアをすることが大事である。
Q:導入の際、教員の負担と負担感はどのように配慮したのか?
A:負担と負担感は分けて考えている。例えば、報告書類を削減したりして、負担は削減している。教員の負担感は、児童が喜ぶ・理解する反応を見ていくうちに解消していく。教員は、子供たちの成長を心から願っているからだ。

コンテンツの扱いなどについて
Q:各国は、プラットフォームを重視している。教員が実施する教育内容を全部まとめて公開することで、他の教員も戸惑わずに導入することができると考えられるが?
A:武雄市では、教材を全て公開する予定である。これは、公教育の使命であると考えている。クラウド環境で、自由自在に修正していければよい。日本人は格付けを好むので、食べログのように教材に格付けを行うことも考えている。
Q:学校図書のデジタル化についてどう考えているか?
A:学校図書のデジタル化は、図鑑などを除けば、進まないと考えている。

政治行政について
Q:県知事が代わったことで、教育のICT化がスローダウンするのではないかという危惧があるが?
A:武雄市は、私の後継者が市長になっているし、先進的な成果を上げていけば、支持は得られるだろう。
Q:市長を務める上で、工夫されたことは?
A:大事なことは、ファンを増やすことである。ひとりでも多くのファンを増やしていくことで、彼らが「市長の言う通りやろう」と背中を押してくれる。
Q:オープンデータの扱いについて。エストニアのタリンでは、電子政府の導入で、コスト削減をしている。今後、日本でも同様に導入していくことは考えられるか?
A:日本とエストニアとでは人口数が違う。日本では、一斉ではなく、同時多発的にできるところからやっていくことが重要であると考えている。武雄市だけではパワーが足りないと感じるので、オープンデータの取組に関しては、千葉市や福岡市といった田の起訴自治体と共に行ってきた。参加したい自治体がどんどん増えていけばよい。

教育 教育の情報化:各国の動向 上松恵理子武蔵野学院大学准教授

日時:2月4日(水曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館5103教室
文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:上松恵理子(武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授、日本デジタル教科書学会顧問)

講演資料はこちらにあります。

冒頭、上松氏は資料を用いて次の通り講演した。

  • オーストラリアのクイーンズランド州では、例えば、教育学者ブルームの分類に沿って「シンフォニー・モデル」を使い、ICT教育を行っている。ICTを授業で使わなければならないと明記されているシラバスで、指導内容も詳細に記載されている。
  • 「The Learning Place」というシステムがあり、そこには非常に多くの教材が掲載されている。生徒が予めその教材にアクセスし、事前に理解した上で、翌日の授業でその内容について学ぶといった反転授業の形も取り入れられている。反転授業は、昨今、日本でも話題になってきているが、既にここでは10年以上前から実施されている。
  • また、「One Portal」というシステムは、成績評価やグラフ化処理が容易で、教員の手間も省けるものである。
  • 学習者の全記録が蓄積されている「One School」は、大学側が閲覧可能であるため、日本のように、受験時に高校の教員が調査書を作成するといった大変な作業を教員がするということがない。
  • さらに、小学校1年生からすべての児童にメールアドレス、アカウントが付与されている。そして自分のアカウントで各システムにログインするしくみになっている。
  • デジタル教材が「多すぎて困る」のが教員の「悩み」である。教材は国が財政を負担して作成している。クイーンズランド州では、優秀な教員50名をeラーニングセンターのあるC2Cに引き抜き、彼らにそれぞれ約3名ずつ、アニメータやプログラミングの専門人材を付けて精度の高いデジタル教材を開発作成している。この例からみても、教材開発にかける人的支援がとても大きい。紙の教科書を使用していたときは、国定ではない、教員が適当に選んだ教材を使用しても良かった。また、学校に教科書を置き、それを各学年で使いまわしも可だった。しかし、デジタル教材になると品質の良い教材使った児童と良くない教材を使った児童の差異が進んでしまうという教育に対する危機意識から、すべて国が作ることになったという。
  • 少なくとも年間4-5百万豪ドルの予算かけられ、それは2012年から毎年、クィーンズランド州が費用負担している。21世紀スキルを実現する教育を実施するために、デジタル教材開発はあくまでその一環である。この予算は、人件費プラス諸費用が、オーストラリアのナショナルカリキュラム(新しい全国学習指導要領)のためにかけられている。
  • BYOD(Bring Your Own Device)の地域では、一人で3台持ってきている児童生徒もいる。学校用と家庭用のパソコンを2台持ち、使い分ける生徒もいる。訪問した学校では、13年以上前から、学校の廊下にインターネットに常時接続できるパソコンを設置されていた。その後、コンピュータ室を設置するといった過程を経て、一人一台を持たせることは問題なく大丈夫だといった判断から、BYODになっていった。日本でも、BYODになるには、そういった準備期間を要すると考えられる。
  • ICT支援員は、専門の会社から高度な資格を有した優秀な人員が派遣される。支援員同士の横の繋がりもある。また、すべてのタスク処理をネット上で報告しなければならないため、教員だけでなく国や自治体も支援員の活動を把握している。教員は支援員に声をかけなくても、トラブルと解決法を見ることができ対応できるため効率がよい。学校によっては、10年来の支援員もいる。日本のように、非常勤で雇い、支援員の任期が不安定ではなく、教員へのアドバイス等を長年実施しているため、長期間の教員とのやりとりによる信頼関係ができている。教員にもパソコンが得意、不得意な先生がいる。そのため、教員研修はスキル別、教科別、興味別に行っている。
  • 小学生から企業家教育を行うことで、将来どのように生活していけばよいかを考えさせる機会を与えている。株やクレジットカードについて、また政党の特色や欠点など、日本では小学生に教えることはタブーだと思われがちな内容も、今の時代を理解する教育、生きるための教育として積極的に取り入れている。
  • エストニアのタリンでは、プログラミング教育は小学校1年生から行われている。導入年を1年生にした場合と2年生にした場合とでは将来的にまったく異なるスキルがつくといわれていて、導入するなら早い方がよいという。特に、早期から行うことで、あらゆる、考え方が論理的になるからであるという。また、なぜ、コンピュータが動くのか仕組みを理解できるので、プログラミング教育を早期から行った国と行わない国とでは、ロボットなどの最新コンピュータも出てくる中で、国の行く末が変わっていくかもしれないだろう。
  • スウェーデンやデンマークは、紙の教科書は無料である。デジタル教材に関しては、フリーと有料を比較して、大差がなければフリーのものを使う。しかし有料で良いものがあれば、教員が管理職に交渉して購入することもある。児童生徒は教科書ももちろんのことデジタル教材やアプリ、給食や教育に関わるものはすべて無料である。
  • 韓国でも、金銭的な支援を要する家庭には、端末やネットワーク代の補助を国が行っている。韓国では、地方自治体に来た予算が、教育予算としてではなく橋や道路に変わってしまうことがないように、自治体のよっては3分の1もの予算を教育費用として死守している。諸外国から日本が参考にすべき点は、こういった教育に対する国の金銭的支援制度である。これらを先進国と比較すると、日本は教育費の割合が少ないため、ICT機器の導入についてもかなりの遅れをとっている。また、ネット上で自治体、校長、教員の役割や横のつながりを強固にすべきである。

講演の後、以下の事項について質疑討論が行われた。

デジタル化教育と投資回収
Q(質問):クイーンズランド州では、50人の教員に対して各3名のスタッフを付けているが、費用負担はどうなっているのか?
A(回答):教材開発費用は州が負担している。国が豊かだからではなく、「投資する」という考え方で教育にお金をかける。将来、国を支えていく人たちに、教育を受けさせたいという気持ちが強い。
Q:人材育成は投資とのことだが、投資回収プランはあるのか?
A.:デジタル教材を作成するC2Cのスタッフやメディア、ゲーム関係に就職する。投資回収といった視点でICTが苦手な仲間を指導する「メンター」と呼ばれる生徒にインタビューをしたところ、米国のGoogleに就職したいという回答があった。グローバル化した世界では、自国だけに教育投資を還元するシステムにはならないだろう。
Q:BYODについて。端末を買うことのできない低所得層の家庭が多い学校には一斉配布するという話だが、学校によって受けられる教育の差はあるのか?
A:国策で、ICT教育を行わなければならないとされている国は、低所得層の多い地域の学校については、BYODにできないため、学校側がまとめて購入している。国がICT教育をカリキュラムで義務付けている場合は、どのカリキュラムでどの動画を見せるかといったマスト項目が決まっていることが多いので、ICT機器は使わなければならない。所持端末数に関しては地域差がある。例えばスウェーデンの比較的富裕層の多い地域の子どもたちの中には、1人3台くらい所持しているため、自分の端末を全部学校に持って来る生徒児童もいる。
Q:教材は、OSに依存しないのか? BYODに対応できるのか?
A:BYODを推進する国では、OSに依存せず、どの機種でも使えるように、カリキュラムの標準化進み、それに従い教材が作成されている。
Q:諸外国では、デジタル端末に対する仕様上の要求はあるのか?
A:型にはまった要求がほとんどない国が多く、教師が仕様に関わりなく自由に使うことのできる国も多い。日本からみると要求がほとんどない国もあり自由度が高く驚くかもしれない。そこにこだわるのではなく教育の内容が重視される。

プログラミング教育
Q:プログラミング教育導入が、小学校1年生で導入した児童と2年生導入した児童とでは違うというのはどういうことか?
A:プログラミング教育は、コードを黙々と書かせる授業形態ではない。色々な教育ソフトを使い、論理的な思考を身につけることができるものである。こういった授業を通して、コンピュータの仕組みを理解するようになるだけでなく、全ての考え方や発想を論理だて創造したり理解したりすることに繋がる。早期教育の利点を活かした例は他にもある。オーストラリアでは、外国語を使って算数などの授業を行うプログラムがある。日本の中学校では、英語の授業で英語を教えるが、他の教科において、英語を使って勉強することはほとんどない。そういった外国語バイリンガルプログラムを行う背景には、早期に他国語で学習することが、脳の発達によいという研究からであると、インタビューを行った際に言われた。
Q:見たら感じる差、試験結果から見える差はあるのか?
A:見たら感じる差は、まずはキーボードタッチ等の操作。また、成績データを見ても違いが出ている。小学校低学年は脳がどんどん発達する段階であるため、色々なことをあらかじめ小学生くらいにやらせておくのがよいといわれている。音感なども、大人になってからはもう手遅れだといわれている。
Q:プログラミングはどれくらいの時間をかけるのが理想的か?
A:義務化されている国は、最低週1時間行っている。理想は、週2時間といわれている。

デジタル化の負の側面
Q:小学生の段階からメールアドレスを持たせることで、いじめ等のネガティブなことは起きているのか?
A:クイーンズランド州では各教室に、「ネットいじめは許しません!」というような張り紙がぺたぺたと貼ってあった。オーストラリアでは、個々の児童に与えられるIDによって、誰の発言なのかわかるようになっていることを子どもたちも認識していて、ネットでいじめをすると足がつくというのはわかっているのでやらない。

わが国への示唆
Q:日本の遅れをずいぶんと感じたが、どのようにしたら追いつけるのだろうか?
A:先進国だけについて講演したのでそういう遅れを感じるかもしれないが、日本の子どもたちの方が、家ではゲーム、スマートフォンでソーシャルゲーム等を上手く使いこなしている例も少なくない。ゲーム機やスマートフォンの普及率をみても、日本の学校でICT機器を有効的に取り入れたら、すぐに使いこなせるようになるだろう。
Q:作文でWordを使う際、スペルミスは自動補正する機能がある。これを悪いと思うのか?良いと思うのか? 日本は漢字を書いて覚えなければならないが、最近は、文字を入力したらわかる。こういったことはどこまでICTで行うべきか?
A:インターネットで検索さえすれば正しいスペルも語句の意味も出てくるので、とにかくICT教育を行うことを優先し、全部のスペルを覚える必要性はないと考えている教師や国もある。スペルを覚えるよりも、どこのサイトで何を検索すればいいのかを知ることが大切であるという考え方である。また、教員がみるよりも、Wordの方がアンダーラインでミスが表示されるため、見落としがないという教師もいた。デジタル端末でいつでもどこでも学習できる時代になった場合、家庭で学習できることは学校では行わないといった考えの学校もある。せっかく子どもたちが集まっているのだから、グループワークを実施すべきであるという考えからである。その方が一人で勉強したよりも知識の定着率が高いというデータもある。もちろん、個の学習をしっかりさせた上で、恊働学習、アクティブラーニングを実施しないとグループワークは成立しない。ちなみに、デンマークのある小学校を訪問した際、学校で知識を学ぶ時代ではないと言われた。
Q:BYODでデジタルを使わないといけないというデンマークのような全国一斉の決まりにすることは、国民を縛るということになるが、国民に納得してもらうために、どのような論理展開をしたのか?
A:どんな社会人に育てるかという教育が、北欧の教育現場では基本となっている。例えば、今は、パソコンを使わないと就職活動ができない時代である。このような社会的背景から、小学校では何をしたらよいのだろうか?ということを遡って、どんどん今の時代に必要なことを学習内容に取り入れるのである。大人たちがやっていること、問題が起きていることについて、時代に対応する術を教え込んで行く必要性があるだろう。カリキュラムを作るときにも、ただ知識を学ぶ詰め込み型や何を習得するかという古典的なスキルの育成を目標とするものではなく、このネット社会に生きるために何がどう必要なのかを考えてカリキュラムを作り、新教科を作ることが先進国では行われている。日本は教科のしばりがあるが、目標に応じて、教科もカリキュラムも変えていくこともこれからは必要だろう。例えば、北欧では、学習指導要領を少なくする方向にあり、教員による裁量を大きくしている。
Q:日本の小中学校が複合的な科目に切り替えるとなったら、教員は対応できるのか?
A:日本の教員は、教科別に採用される。今現在、情報科の科目では採用が少ない。情報の授業も先進国に比べ少ないので、生活科や総合学習の中でもっと長時間対応しないと厳しいかもしれない。日本の教育は、この科目でこれを教えなければならないといった考えだが、逆に、何を教えなければならないか、それをどの教科でやっていくべきかという逆算で考えていくべきである。その発想からすると合科という選択肢も出てくる。
Q:21世紀を生きる子どもたちに必要な教育が何かについて、各国で共通理解があるのか?
A:どこの先進国に行っても、21世紀スキルに対応した教育が行われ、日本の教育現場よりも、理解と実践が多いと感じる。例えば、Microsoft等の会社が、21世紀スキルをつけるための無料提供等を行っている例もある。日本は大学でさえ、「社会で実際に使うことのできる能力」を教育していないとの批判を受けている。大学においてはもちろん、それが全てではないが、少しでも社会に出て役立つものも学んで行くべきという考え方もある。学校教育の役割を見直さないと、企業の側にも支障がでてしまい、国も成り立っていかないのではないかという危機感が、比較的規模の大きくない国にはある。
Q:教育改革は、何をどうしたら少しでも変わると考えられるか?
A:まずは教師教育を変えなければならないだろう。これまでは教員教育も一斉教育が多かった。しかし、教師教育においても、興味別、能力別、教科別といったグループワークを、少人数で行う必要がある。また、国のカリキュラム編成も時代に沿って変えるべきであるので、小中連携、高大の連携がひとつのチャンスではないだろうか。デジタル教科書を入れても成績が上がらなかったという見方があるが、それは、従来型の知識注入型テストでやっているからである。21世紀型スキルを測るPISAのようなテストを行えば、結果も変わるだろう。アダプティブテストのように、回答時間や正解度によって、次に出てくる問題が変わる形式のテストをナショナルテストとして実施している国もある。しかし、他国を真似るのではなく、日本がどういった人材を育成したいか。また、日本の企業がどのような人材を求めるのかを遡って考え変えていくことが大切である。
Q:なぜ、他の国は変われたのか?
A:日本は、学校導入する際、反対勢力があってなかなか厳しいという状況があったと聞いている。しかし使わなければリテラシーは高くならない。これはネットいじめがあったからもあるだろう。各国、トップの人たちが、先の先まで考えた制度を、お金をかけて作っている。お金のかけ方が日本とは全然違うし、国の危機意識も違う。

電波 M2Mをめぐる各国の動向 木賊智昭マルチメディア振興センター副主席研究員

 

日時:1月16日(金曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館5103教室
文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:木賊智昭氏(マルチメディア振興センター 副主席研究員)

木賊氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、木賊氏は資料を用いて次のように説明した。

  • M2MとはITシステムと遠隔センサー/機器/装置/設備等が直接通信することで相互に情報交換するための技術/仕組みの総称である。遠隔でのデータ収集/監視/制御に活用することで、業務プロセスの効率化、サービスの高度化、新たなサービスの創出など、これまでは難しかったビジネスの変革や公共インフラの革新が可能になると期待される。
  • 通信キャリアにとって国内の携帯通信加入者の増加の頭打ちと加入者の成長の鈍化が懸念される中、M2Mが新たな通信サービス市場を牽引することが期待されている。
  • M2Mには、輸送分野(輸送管理、車両メンテナンスなど)、エネルギー分野(スマートメータリング、利用ピーク時対応など)、医療管理分野(遠隔での患者監視、医療資産の調査・管理など)からスマートシティまで多様な応用分野がある。
  • M2Mはデバイス、ネットワーク、プラットフォーム、アプリケーションを統合して提供される。アプリケーションやインテグレーションの収益性が高い一方、ネットワーク自体の収益性は低く、収益全体の10%前後を占めるに過ぎないとの調査もある。
  • このため、欧米の通信キャリアは、通信インフラを越えて、他社との提携や自社ブランドの構築によるM2Mソリューションの提供を志向している。多くの場合は他社との提携だが、買収等を通じて自営でソリューションを提供することもある。
  • 米国では、顧客のアプリケーション開発を支援し、独自にデバイスを認証するサービスを提供するなど、顧客ニーズに迅速に対応している。M2M専担部署を設置、組織面での強化を実施し、コンサルティング、アフタサービスを包摂している。
  • M2Mは、共通化、オープン化に今後より一層の競合が予想される。

講演後、質疑が行われた。議論の要旨は次の通り。

通信キャリアのM2Mビジネス
Q(質問):M2Mで飛び交うデータに課金しても大きな収益にはならない。通信キャリアは儲からないので、どういうビジネスをしようというのか?
A(回答):付加価値が勝負である。顧客への窓口となり、コンサルティング・インテグレーションで利益を上げる。すべて自前では無理なので、買収という形で外部の知恵と経験を取り込んでいる。
Q:日本のキャリアはまだそこまで行っていないのか?
A:新領域事業として立ち上げ始めたところである。M2Mに注目はしているが、本格的に取り組むという点では、まだこれからである。
C(コメント):M2Mで飛び交うデータの収益だけを考えるということが、日本のキャリアの対応を遅らせているのは事実である。

M2Mビジネスの各要素
Q:個別のM2Mではなく、多くのM2Mに共通なものとしてプラットフォームを提供するといった動きはあるか?
A:標準化の動きはあるが、共通のプラットフォームの提供には至っていない。
Q:サービスごとに品質(サービスレベル)がまちまちなのに、共通化・オープン化に進めるのか?
A:サービスレベルを共通化しようというものではなく、M2Mで取得したデータを共同利用しようというものである。
Q:標準化の主要プレイヤーは誰か?
A:プラットフォームではOneM2Mなどあるが、標準化を目指すフォーラムが乱立している。まだ、どれが主流になるかわからない。

M2Mと規制
Q:M2Mで多くのデバイスをばら撒いたが、2G(第二世代移動通信システム)の廃止でデバイスを交換しなければならなくなった、というような事態は起きないのか?
A:AT&Tやベライゾンはまもなく2Gを廃止する。しかし、その際、デバイスについて面倒を見るとは言っていない。デバイス交換については、ユーザー自身による対応をサポートする別のニッチビジネスが生まれている。M2Mシステムは10年、20年サービスが提供されるということが前提であり、特に欧州のスマートメータのように政府政策や法制化を通じて普及した場合には、今後、交換の責任も課題になるだろう。一方で、SIMを遠隔から書き換えるeSIMも開発されている。通信キャリア一社に10年、20年と依存し続けなくてもよくなる可能性も出てきている。
Q:M2Mが進むことで、世の中に不安が生まれるといったことはないのか。たとえばプライバシー?
A:デバイスが勝手に収集したデータが流出すると深刻なプライバシー問題が起きる。まだ、M2Mに固有の規制はないし、不要な規制はM2Mの発展を阻害する恐れもあるが、野放図にデータが活用できるというのは不適切である。データの管理策が、M2Mサービスにとって差別化因子となる可能性もある。
Q:共通化・オープン化でデータの流出の危険が増すのではないか?
A:再利用によって安全が損なわれていく恐れがある。責任の所在は、今後の重要規制課題である。
Q:M2Mデバイスへの電波利用料も問題ではないのか?
A:M2Mデバイスも、3GやLTEで通信している。その点では、スマートフォンと同じ電波利用料を課すというのは合理的であるが、飛び交うデータ量を考慮した低い料額設定の要望もある。サービス内容や収益性に照らして、電波利用料の料額が高すぎるとM2Mの普及を阻害する。無線局免許の新たなカテゴリーとしてM2Mデバイスを規定しなければ、抜本的な解決はないだろう。