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ビジネス 自動走行バスの現状と今後 大澤定夫氏(SBドライブ株式会社)

日時:10月24日火曜日18時30分から20時30分
場所:エムワイ貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
司会:山田 肇(ICPF理事長)
講師:大澤定夫(SBドライブ株式会社) 

大澤氏の講演資料はこちらにあります

大澤氏は冒頭、次のように講演した。

  • SBドライブは通信・IoTのソフトバンク、ビッグデータのYahoo! Japanと自動運転技術の先進モビリティの3社が出資して2016年に設立された自動運転ベンチャである。バス型の自動運転モビリティを目指す、交通事業者向けにBtoB事業を展開をポイントとして、自動運転の時代の運行管理を支えるICTサービスの用意を目指している。
  • バス型自動運転には、ドライバー不足、バス会社の7割が赤字、廃止路線の増加、買い物弱者が増加といった公共交通の課題解決に貢献できる可能性がある。将来的には先進国で少子高齢化が進行するため、日本の自動運転バスが海外でも活躍するビジネスチャンスがある。
  • 経済産業省の平成28年度スマートモビリティシステム研究開発・実証事業専用道路での走行を試みたが、SBドライブはその先を行く他車も走行する一般道で特定ルートを定時運行するモビリティを2018年度後半に実現することを目指している。
  • 実際の交通状況とニーズを軸に考えるため、現時点で4地域と協定を締結している。地方都市モデルとして福岡県北九州市、中山間地域モデルとして鳥取県八頭町、観光地モデルとして長野県白馬村、地方都市で地域の自動車メーカーも巻き込んだ静岡県浜松市である。また、内閣府を始めとする国家プロジェクトに参画し経験を蓄積中である。
  • 将来的には交通事業者に対するBtoBビジネスとして、サービスと車両をパッケージで提供予定である。バスによる公共交通で課題である運転手の人件費が、より低額の運行管理システム運用費に置き換えられれば、ビジネスとして認知されるだろう。これがSBドライブのビジネスチャンスである。
  • 自動運転技術は認知→判断→制御の三要素が連なって成り立っている。認知に関わるセンサ類や判断に関わるGPUなどは価格の低下が著しい。3Dマップ・GPSなど複数の組み合わせで 自己位置推定を行うことが可能になり、AIを活用した障害物認知等の信頼性が大幅に向上している。
  • 2017年3月の沖縄・南城市での実証実験はレベル2.5ぐらいで実施した。アクセルとステアリングを自動化し、海外沿いの交差点のない一般道を片道1㎞走行した。運行管理システムの動作検証、ロボットによる社内アナウンス、バス停への4cm程度の近接停車(正着制御技術)、障害物回避を実証した。交通事業者を中心にモニター-調査を実施したが、乗車前には不安との回答が大半を占めた。しかし、説明と乗車後は安心が大半を占める結果となった。

ICPF事務局注記:レベル2は部分自動運転、レベル3は条件付自動運転、レベル4は高度自動運転で、レベル3まではシステムが要請すればドライバーが対応しなければならない。

  • 6月から7月にかけて石垣島で実証実験をした。新石垣空港~離島ターミナル(片道16km)で最高速度40㎞、アクセルとステアリングを自動化したレベル2.5ぐらいである。交差点での信号待ちなど、南城市に比べて本格的な実験となった。街路樹がある道路ではGPSが検知しにくく自動走行制御がむずかしいなどの課題も発見された。
  • 7月には芝公園で、フランスNAVYA製のARMAを用いて1周150mをレベル3で走行する一般公開試乗会を実施した。ARMAは世界25カ国で10万人が乗車した世界で最も走行実績のある自動運転バスである。

講演後、次のような質疑があった。

自動走行バスの技術等に関する質疑

質問(Q): GPSが街路樹に邪魔されるという話があったが、準天頂衛星で改善されるのか? 今はトンネル内を走行できないのか?
回答(A):改善されるだろう。トンネルなどGPSを検出できない場所では縁石や白線を検出して走行する方法などがある。
Q:道路に電磁誘導のラインを敷設する方式と比べてSBドライブの自律走行方式は有利なのか?
A:走行距離が長ければ電磁誘導のラインを敷設するインフラ協調型は不利になる。しかし、自律走行といってもトンネルなどでは周囲から誘導する可能性もあり、一部分はインフラ協調方式となるだろう。
Q:NAVYAのARMAがレベル4で走行している国はあるのか?
A:スイスの観光地で走行している。

ICPF事務局脚注:スイス・ヴァレー州シオン市で自動走行バスのサービスが提供されている。

自動走行バスが発揮する価値などに関する質疑

Q:レベル2では効果がないのではないか?
A:レベル1の自動ブレーキなどがすでに自動車に装備されるようになってきた。それだけでも事故低減の効果は出ている。レベル2でも公共交通に貢献する部分はあるが、目標はドライバーが不要になるレベル4である。
Q:南城市での実証実験で乗車後も不安を感じたという回答者が出たのはなぜか?
A:回答者は主にバス事業を営む交通事業者であった。彼らの中には自分の運転と比較して不安を感じた人もいた。石垣島では一般人を乗せたが、拍手が出るくらいに好評だった。
Q:バス運用者の態勢に影響は出るか?
A:始業前点検など運用者がすべき作業は変わらない。ただ、自動走行バスの部品の消耗度などは自動測定できるので予防保全に移っていくだろう。
Q:過疎地のほうが対向車も少なく信号もない。最初のターゲットなのか?
A:その通りだが、都会での運用も目標にしている。

自動走行バスに関わる規制緩和などに関する質疑

Q:講演中の動画では、バスの運行が集中管理センタで管理されているようになっていた。集中管理センタに人が付いているのでは人件費は削減できないのではないか?
A:国は安全最優先で集中管理センタに人が付くのを求めている。道路交通法はジュネーブ条約に沿った法律であり、車の操縦は人が行わなければならない。操縦する人が必ずしも車の中にいる必要はないと警察庁は解釈して、集中管理センタ方式をガイドラインで定めている。
Q:今後、レギュラトリーサンドボックスで実証実験をする予定という話が出たが、サンドボックス内では集中管理センタ方式を外すのか?
A:安全最優先なので集中管理センタ方式である。ただ、今までは集中管理センタの監視者にも2種免許を求めていたが、これがサンドボックス特区内で緩和されるとありがたい。実車を運転するスキルが不要となれば、それだけでも経費削減に役立つだろう。

次いで大澤氏は規制等に関係する事項として次の五点を指摘するスピーチを行った。

  • 地方の自動運転に関するバス購入費の助成金、運用費に対する助成金が必要になる。2012年のEV向け充電スタンドの助成金規模およそ1000億円が求められる。
  • 信号情報を車両が取得できる環境を早急に整えて欲しい。
  • 実証実験としては専用道路、優先道路でない混在交通での推進が求められる。
  • 自動運転車に対するいたずら、迷惑行為に対する罰則強化などの法整備が必要になる。
  • 各省庁に跨る各種申請に関するワンストップ窓口の設置を求める。

助成金については、補助に頼るのではなくビジネスとして自立できる必要があるという意見、ユニバーサルサービス基金を創設して都会の利用者が負担する制度がよいという意見が会場から出た。
信号機との協調については、信号色の検出などは自動車業界全体として取り組むべきという意見と、青赤黄色で情報を伝えるのではなくデジタルで交通を制御する方向に自動車業界全体として取り組むべきという意見が出た。
申請窓口のワンストップ化については、電子申請全般の課題として解決すべきという意見が出た。

行政 客観的な根拠に基づく政策形成 宮部勝弘内閣官房行政改革推進本部事務局企画官ほか

日時:9月28日木曜日18時30分から20時30分
場所:エムワイ貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
司会:山田 肇(ICPF理事長)
講師
宮部勝弘(内閣官房行政改革推進本部事務局企画官)
上瀬 剛(NTTデータ経営研究所パートナー)

宮部勝弘氏の講演資料はこちらにあります。

上瀬 剛氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、司会(山田氏)が次のようにあいさつした。

行政策は必要性と有用性と効率性で評価されるべきである。特に有用性と効率性は数値で評価するのが適切な項目である。根拠に基づく政策形成(EBPM)は、施策の事前評価・事後評価で活用されるようになるだろう 

宮部氏から次のような講演があった。

  • EBPMに明確な定義はない。政府としても手探りの状態である。一方でイギリス、アメリカを中心に取り組みが進展している。Evidenceとは何か、これは単にDataではない。「政策がアウトカムへ影響を及ぼした因果関係」といった定義も存在している。
  • わが国では、「官民データ活用推進基本法」によって「データ活用により得られた情報を根拠にして行政は行われる」と規定された。また、統計改革推進会議で「欧米ではEvidence Baseなのに日本はEpisode Base(業界の声、担当者の印象など)で施策が実施されてきた」との指摘があった。
  • 山本行革担当大臣が統計改革を宣言し、大阪学院大学の三輪教授を大臣補佐官に任命した。それが、一連の動きのきっかけである。その後、統計改革推進会議が設置され、EBPMとともにデータの整備を促すことになった。一例がGDP統計での「サービス部門統計」の充実である。
  • 統計改革推進会議は、官房長官を議長に、行革大臣、経済財政大臣、総務大臣、財務大臣、経産大臣、日銀総裁(日銀は統計データの作成者というだけでなく、ヘビーユーザーでもある)有識者9人で構成された。
  • 体制を作り、各府省の理解も得つつ徐々に浸透させる方針が三輪補佐官から説明し、了承された。その結果、各省にEBPM推進の責任者を置く、統計の改善(問題を解決する、統計が使われているかを確認する)と、政策の改善を図るEBPMサイクルを確立するなどが提言された。
  • 各省のEBPM推進統括官が集まるEBPM推進委員会が設置された。ここで、統計等データの提供についてガイドラインを策定する。研究者からの多くの要望・苦情(データの提供が遅いなど)が寄せられてきたことも背景としている。公益性、機密保護を維持しつつ、提供を容易にする方向である。
  • EBPMの推進や統計の改善のために、どういう人材を確保・育成するかは現在検討中である。年度末を目処に検討を進める。職員には基本的なリテラシーは身につけてもらう(データ分析までできる必要はないが)。
  • 3本の矢による先行取り組みとして、秋の行政レビューはEBPMの発想でも実施することにした。事業をいくつかピックアップし、レビューを模擬セッションで試行したところ、事業の必要性と目的の明確化、手段の合理性(実施内容の妥当性、予算執行の効率性)、事業の有効性について、必ずしも良い説明ばかりではなかった。そもそも被説明変数がはっきりしないと因果関係もはっきりしないが、必ずしも被説明変数を明確にしないまま施策の立案が行われ、比較も確認もできない、といった問題がある。
  • EBPMの定着までには、試行錯誤で510年かかるだろうが、徐々に進めていきたい。

次に上瀬氏が講演した。

  • 主要国では官民をあげてデータ活用の環境整備を進めている。政策形成へのデータ活用における世界的潮流として注目されるのがEBPMEvidence Based Policy Making)である。EBPMは、エビデンスを活用し、効果的・効率的な政策運営を目指すものである。政策の運営に必要なデータの適正な処理・活用方法やデータマネジメントを実施するためのノウハウ、環境整備が求められる。
  • 財源が限られているなかでEBPMの重要性は高まっている。いかにデータを行政に取り込めるか。許認可や価格設定に活用可能性がある。行政データをデータプラットフォームに取り込み、そこに正しいノウハウを充て国民に公開する。
  • Evidence」の定義だが、明確な定義はないが、「バイアスのない方法により得たデータをバイアスのない方法で分析して得られた結果」と正樹氏らが提案している。
  • 通常EBPMで根拠として活用されるのはランダム化比較実験の結果である。他に準実験も重視される。それ出来なければ多様なリアルデータも対象とし、ICTにより分析を洗練させることで、実験を越えた知見を目指すことになる。しかし、リアルデータ比較では実際の政策効果を評価するのはかなり難しく、バイアス、ノイズの影響をいかにミスリードしないようにできるかが重要になる。
  • 米国ははるかに進んでいる。データを集め利用する環境が整備されている。個人でもクレジットの信用スコアを簡単に知ることが出来るなど、良くも悪くもデータがプラットフォームとして整備されている。一方で個人情報保護などに問題もある。英国ではWhat Works Centreによる政策レビューが行われ、執行部隊とは別に客観的に評価するシステムが整っている。日本ではデータは十分に活用されていないし、データの公開も限られている。個人情報保護の難しさ、省庁間連携のなさ、縦割り行政などが影響している。WWCでは、評価の信憑性をレイティングしている。これは日本でも導入したいものだ。評価部隊が切磋琢磨する仕組みになるからだ。
  • 米国では、莫大なデータを共有し、活用できる仕組みがある。オバマ政権後半に特に強化された。成果をだせばメリットを還元し、うまくいかなければ次の施策に繋げるという形で各省の施策を競争させている。失敗したら怒られるだけでは職員のモチベーションを保てずうまくいかない。アメとムチのバランスが重要である。
  • 労働省が失業給付期間の最小化のためにEBPMを活用した事例がある。再就職支援プログラムとの連携で失業を押さえるとともに、失業給付期間の最小化にも効果がでた。
  • ニューヨーク市では犯罪防止への取り組みが行われている。全てがEBPMによる効果ではない(ジュリアーノ市長の過激な政策等のミックス効果)が、犯罪は目に見えて減少した。2:8の法則でやるべきことを順序づけ、最大の問題を特定し、高いパフォーマンスが得られるポイントに力を集中して解決するという手順が根付いてきている。
  • 英国では、既存のデータをまずはチェックする足りなければデータを集めるデータをクレンジングする施策を評価するその結果で次の施策を実施するというサイクルを動かしている。データには、時には心理学、行動経済学的観点も含まれる。
  • EBPMの有望領域として「人口減少」関連施策を提言したい。政策効果が上がる可能性が高い。EBPMの推進にはデータ連携基盤を如何に作るかが最大の課題である。そのほか、政府がEBPMをきちんと位置づけ、EBPMへの理解を促進する必要がある。

二つの講演の後、次のような話題について質疑が行われた。

現状の取り組みに関わる質疑

質問(Q):政策評価の対象としては何が有効なのか?
宮部回答(AM):まだ手探りでやっているのだが、行政の様々な意思決定に活用できそうだと感じている。これまで各国でEBPMが発展してきた分野の代表格は、労働・教育・医療。これらはデータを多く取れ、予算規模も大きかった。それがEBPMを発展させた要因になっていると思う。
上瀬回答(AK):政策上のプライオリティがあり、かつデータが取りやすいところから始めるしかない。費用、容易度、データクオリティ、インパクト等などを考えて試行錯誤することになるだろう。逆に、国策としてやらざるを得ないオリンピック整備などに適用しても効果は見込めないのでEBPMの対象とするのは不適当である。
コメント(C): JR東日本はEBPMを推進してきた。Suicaで旅客データを収集し、それをベースに新路線の開拓など様々な事業を進めて、ビジネスを成功させた。
AM:正にそう思う。民間は切迫感があり活用の意識がある。政府のデータを公開すると、民間マーケティングなどにも活用が考えられる。
Q:人材育成の必要性はよく分かるが、それをどの範囲にどのように行うか方針はあるのか?
AM:今進めているところで確定的なものはない。現在は使う側、作る側の育成の検討を進めている。基本的なリテラシーについては役人も国民も必要があると思う。IT教育については文科省も進めている。
QEBPM推進統括官はどのくらいの役職の人物を想定しているのか?
AM:上位の審議官クラスの役職者を想定している。
CCIOの時には各省官房長が指定されたが、忙しすぎて、結局民間のCIO補佐官に丸投げされている。そのようなことにならないようにしてほしい。
Q:講演の中にDataEvidenceではないという発言が出てきたが、それは本当に正しいのか?役所のdataについては、そもそも電子化されていないという問題がある。
AM:「データ=エビデンスではない」というのは「因果関係を示せないものはエビデンスではない」という意味である。紙のデータなどでも、有用なものは電子化を進める方針。最近は申請の電子化などでデータの入力から電子化が進められている。一方で電子申請を可能にしたが、利用が進まないものもある。ともかく、大企業に紙で届け出させるとかというのは止めさせたいと思う。 

将来像に関する質疑

QAIを活用するのはいいが、AIで答えが出てもロジックモデル自体、あるいはロジックモデルの善し悪しが分からない。そのようなものを使っていいかという問題がある。うまくいっているうちはよいが、いずれ問題になるのではないか?
AKAIを何に対して使うか、どこまで使うかというのは議論の余地はあると思う。
AM:説明責任があるので、その施策を採用する際のAIのロジックが不明であれば、役人が改めて考えることになると思う。
QEBPMを自治体に展開するつもりはないか?
AM:政府もこれからなので自治体に進めるようには言いづらいが、オープンデータについては法律上自治体も進めるように規定されている。直接何かをするように、というわけではないが、将来的には自治体にも広まっていくだろう。国が持っているデータを自治体に活用してもらい、自治体が持っているデータを加えて、さらに様々な分野で活用出来るようになるのではないか。
Q:自治体への展開に際し、ありがちなのはデータのフォーマットがバラバラになったり、ツールの二重投資になったりの懸念があると思う。展開にあたっては、中央省庁が音頭をとってフォーマットやツールを決めた方がいいと思うが、検討範囲に入っているか?
AM:内閣官房の方では標準化や定義について話をしているので、そこで議論になっているかもしれない。データ整備先行になるのか、活用マインドから始まるのか。マインド自体が足りていないという部分もある。データをどう繋ぐかという点については総務省の方で検討を進めている。
Q:政府の中でEBPMにトライアルしているが、データを出せば民間が勝手にやってくれることも十分考えられる。どこまでオープン化を展望しているのか?
AM:長期的には、民間開放が進んでいくと考えている。ガイドラインにより情報を出せるようにしたいと思う。アメリカでは、統計のサンプルファイルも多く提供されており、日本でもそのようなものを整備して増やせば、活用が進むと思う。特に地方でのデータ整備の推進も上げられているので整備は進められていくと思う。
Q:民にデータが行く場合には、そのとたんにデータ提供の価格が上がって、それがボトルネックになることが考えられる。そのようなことにならないようにしてほしいのだが?
AM:普通は特定の企業だけに出すということにはならないので安心して欲しい。 

最後に司会が次のようにまとめセミナーは終了した。

行政職員がデータを用いようと思うのが第一歩。その先でデータを説明できるようになる。そこまでいけば、アメリカや英国のようにデータに基づいて政策決定できるきっかけになる。

ビジネス 情報通信技術を活用した新しい農業 角張 徹農林水産省課長補佐

日時:7月25日火曜日18時30分から20時30分
場所:エムワイ貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
司会:山田 肇(ICPF理事長)
講師:角張 徹農林水産省大臣官房政策課技術政策室課長補佐 

角張氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、角張氏は概要次の通り講演した。

  • スマート農業に取り組む背景には担い手の減少や高齢化の進行等により労働力不足が深刻になっていることがある。果菜類や果実の収穫のように人手に頼る作業・選果のように多くの人手を要する作業・果樹の剪定やトラクターの操作など熟練を要する作業などの省力化や負担軽減が大きな課題である。
  • ICT、ロボット技術を活用し得、超省力・高品質生産を実現する新たな農業がスマート農業である。超省力・高品質生産を実現、作物の能力を最大限に発揮、きつい作業・危険な作業から解放、誰もが取り組みやすい農業を実現、消費者・実需者に安心と信頼を提供の五本柱で進めている。
  • 超省力・高品質生産を実現の分野では、GPS自動走行システム等の導入による農業機械の夜間走行・複数走行・自動走行等で作業能力の限界を打破する技術の開発を進めている。作物の能力を最大限に発揮の分野では、センシング技術や過去のデータに基づくきめ細やかな栽培や営農者の有益な知見との融合等により、農林水産物のポテンシャルを最大限に引き出し、多収・高品質生産を実現することが目標である。
  • きつい作業、危険な作業から解放の分野では、収穫物の積み下ろしなどの重労働をアシストスーツで軽労化するほか、除草ロボットなどにより作業を自動化しようとしている。誰もが取り組みやすい農業を実現の分野では、農業機械のアシスト装置により経験の浅いオペレーターでも高精度の作業が可能とり、また、ノウハウをデータ化することで若者等が農業に続々とトライするようになるというのが目標となっている。消費者・実需者に安心と信頼を提供の分野では、クラウドシステムにより、生産の詳しい情報を実需者や消費者にダイレクトにつなげ、安心と信頼を届けようとしている。
  • スマート農業の推進に向けた具体的施策では、単に技術を開発して終わるのではなく、新技術を普及させるための支援や環境づくりなどを推進している。施策は、①将来像や優先に取り組むべき課題の特定、②新たな技術の開発、現地実証、③新技術の普及、導入支援、④先進技術が導入できる環境づくりの四つのステップで構成されている。たとえば、ロボットやICTなどの技術開発企業とともに実際に開発技術のユーザーとなる農林漁業者にも参画してもらい、導入コスト等の明確な開発目標の下、効率的な技術開発及び現場実装を実施している。
  • 農機の自動走行については、「未来投資に向けた官民対話」で安倍総理大臣から「農業に最先端技術を導入します。2018年までに、ほ場内での農機の自動走行システムを市販化し、2020年までに遠隔監視で無人システムを実現できるよう、制度整備等を行ってまいります。」と発言いただいた。
  • スマート農業ではAI(人工知能)やIoTの活用をうたっているが、その先で農業におけるSociety5.0を実現しようとしている。データを駆使した戦略的な生産、生産・流通・販売の連携・効率化などが目標である。AIを活用した施設野菜収穫ロボット技術の開発、AIを活用した画像診断等により病害虫被害を最小化する技術などを開発している。
  • 様々な農業ICTサービスが生まれているものの、相互間連携がなく、データやサービスは個々で完結していることに加え、行政や研究機関等の公的データはバラバラに存在している状況にある。このため、農業ICTによりデータを駆使して生産性の向上や経営の改善に挑戦できる環境を生み出すため、農業データ連携基盤の構築がスタートしている。連携基盤は本年中に構築される。様々なデータを統合・分析できるようになり、収量や品質の向上が可能になると期待している。また、土壌、市況や気象等の公的データや、民間企業の様々な有償データ等を整備・提供することで、データを活用した新たなサービスの提供や農家の戦略的な経営判断が実現するだろう。
  • 農林水産省では、スマート農業の普及に向けてスマート農業フォーラムを開催し、また、北海道では北海道スマート農業フェアが開催され、営農者中心に約5000人が来場した。

講演の後、以下のような課題について議論が行われた。

スマート農業の効果について

Q(質問):スマート農業で省力化されるのは結構だが、苦労して作物を育てる喜びがなくなるのではないか。
A(回答):新規営農者は技術アドバイスが得られず苦労している。消費者に人気の有機農業だと、ますます苦労は多い。熟練の営農者の知識ノウハウを知的財産として新規営農者に伝えていく。
Q:ロボットが導入されて農業を効率化すると就農者が減少するという発想はないか。効率が3倍になれば農業人口は1/3で住むのではないか。
A:収穫作業などの単純労働はパートや海外からの実習生が担っている現状にあり、高齢化等によって労働力の確保が年々難しくなっている。単純労働をロボット化することを目指している。経営者としての農業者が成功するのがスマート農業の目標である。
Q:熟練技術を見える化して普及させた場合、同じようなトマトばかりにならないのか。
A:地域産品として市場に供給するためには地域でまとまった収量が必要である。産地ごとに知識ノウハウを共有して地域産品を育てるのであって、全国で同じようなトマトを出荷するわけではない。
Q:圃場における作物の生育に関する詳細な情報などは一種の個人情報ではないのか。
A:リモートセンシングは自らの圃場を管理するために用いるのが原則である。なお、収穫期には地域で協力するというような取り組みが存在するので、例えば、農協のリーダシップの下で、地域内で情報共有の合意を取って活用する取り組みなどにも活用されるのではと考えている。
Q:ICT活用の先兵として、植物工場をどう評価するか。
A:人工光・養液栽培・密閉型の植物工場は広まりつつある。しかし、一年間を通して需要を確保し続けるのは課題も残っている。植物工場で利用されている技術も取り入れ、次世代型施設園芸という植物工場一歩手前の技術を開発している。

農業データ連携基盤について

Q:農業データ連携というが、他省のデータも連携すべきではないか。
A:その通り。気象データなど多様からのデータも併せて提供していく必要があり、政府全体としての取り組みである。
Q:農業データ連携基盤の利用に資格はあるのか。もしないとすれば、海外に流出しないか。
A:ルールを策定中であり、ルールにあった人は参加できる。多くのデータから知恵をくみ取って、農業生産のアドバイスをする事業者なども利用できるようになるだろう。一方で、主要な情報は知的財産化して海外に流出しないように努める。

スマート農業の普及について

Q:スマート農業には大きな可能性があるが、若い人にこれを紹介して営農者を増やす努力が求められるのではないか。
A:その通り。農業高校、農業大学校などでもスマート農業を紹介している。また、すでに教科書にも採用されている。若い人が経営感覚を磨き、新技術を抵抗なく受け入れるようになることが目標である。
Q:スマート農業への関心に地域差はあるか。
A:農業が主要産業である北海道の関心は高い。一方、中山間地からは「そんなに大きな機械は入れられない」といった話が来る。そのため、中山間地で利用できる除草ロボットや低コスト化に向けた研究開発なども実施している。

農林水産行政全体との関係について

Q:食料自給率との関係は。
A:農林水産省は食料・農業・農村基本計画を定め、自給率を高めようとしている。その中に担い手への集中などのグランドデザインが書かれており、スマート農業はこの文脈の中に位置づけられている。
Q:林業や水産業での取り組みは。
A:林業では林業機械の自動化、育林・下草刈りの支援技術などが開発されている。水産業でも養殖場の網の自動清掃などの技術が開発中である。また、林業でも水産業でもアシストスーツの役割に期待がある。

シンポジウム アクセシビリティ法は社会をいかにして・どのように変えてきたか―諸外国の事例を中心に ジェームズ・サーストン氏(G3ict)ほか

主催
特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム(ICPF
共催・協力
日本障害フォーラム(JDF
特定非営利活動法人ウェブアクセシビリティ推進協会(JWAC
ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC
後援
公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会(JSRPD
協賛企業
イデア・フロント株式会社
株式会社インフォアクシア
株式会社ミツエーリンクス 

月日:626日月曜日
場所:エムワイ貸会議室 四谷三丁目(四谷三丁目駅前)会議室A
情報保障:手話通訳、要約筆記、ボランティアによる逐次通訳 

プログラム
200分 主催者挨拶:山田肇(ICPF理事長)
210分 ジェームズ・サーストン(G3ict
講演「アクセシビリティ法をめぐる世界の動向」
250分 石川准(国連障害者権利委員会委員)
講演「国連障害者権利委員会は何を求めているのか」
310分 休憩
320分 パネル討論
三宅 隆(日本盲人会連合 情報部長)
小出真一郎(全日本ろうあ連盟 理事)
新谷友良(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事長)
渡井秀匡(東京都盲ろう者支援センター)
430分 閉会 

サーストン氏の講演資料はこちらにあります
石川氏の講演資料はこちらにあります
小出氏の講演資料はこちらにあります
新谷氏の講演資料はこちらにあります
渡井氏の講演資料はこちらにあります

以下の記録は山田肇が作成したものであり文責を負う。

冒頭、サーストン氏が次のように講演した。

  • G3ictは国際連合の支援で活動している組織であり、障害者権利条約(CRPD)に関わる活動も実施する小さい組織である。障害者権利条約の要件に対応した情報通信技術(ICT)の促進をミッションとして、グローバルに取り組んでいる。
  • 今日の世界はどの程度アクセシブルなのか? 障害者権利条約進捗報告を100か国以上について分析した。その国の主要言語によるスリーンリーダーが市場に提供されている国は57%、公用語による音声認識がパソコンで可能な国が55%、視覚障害者向け公共図書館・電子書籍サービスが32%、アクセシブルな政府ウェブサイトは45%、テレビの音声ガイドは17%というように満足のいく結果ではない。
  • 良い知らせもある。障害当事者は世界に10億人もおり、家族・友人を加えると 35億人に達する。米国では人口の19%が障害を持っているが、65歳以上では50%に増加するなど、高齢化によってアクセシビリティの重要性が増している。市場規模も拡大している。オリンピック、ワールドカップ、企業マーケティング、メディアによってこの問題への注目度は増している。技術は進歩し、急速な製品サイクルを通じてICTアクセシビリティのイノベーションは加速し、これをモバイル業界が推進している。 今日の支援技術は明日の主流技術になる。
  • デジタルインクルージョンの推進力として公共政策が重要である。ウェブを通じた情報の受発信、基本的人権、教育、雇用、金融サービスと多様な側面での公共政策が期待される。政策活動は米国とEUのみでなく、ラテンアメリカにも押し寄せている。
  • 公共政策のうち調達政策が重要で、アクセシビリティに配慮した製品サービスの購入を公共調達で義務付ける必要がある。アメリカではGDP1015%が公共調達であり、政府は技術の大口顧客(技術市場の25%が連邦政府の購入)である。公共調達政策はアクセシビリティの推進に効果が高い。
  • 公共調達におけるアクセシビリティ配慮はまだ33%の国でしか実施されていない。米国にはリハビリテーション法508条があり、EUETSI EN 301 549に基づく公共調達について指令を出している。すべての公共団体は、国民、市民、公務員が利用するすべての製品、サービスの公共調達に必須の要件としてアクセシビリティを含めなければならない。
  • 欧州にはアクセシビリティ法制定の動きがある。EUにおいて、多くの製品、サービスに障害者がよりアクセスできるようにするための法律である。法的拘束力はありEU加盟国は適用義務を負う。コンピュータ、オペレーティングシステム、ATM、発券機、スマートホン、デジタルテレビサービス、電話通信サービス、銀行サービス、電子書籍、電子商取引などカバーする範囲は広い。
  • カナダは、障害のあるカナダ人法(案)を用意している。この法律はすべての企業に適用される。カナダ王立銀行、モントリオール銀行などの銀行、カナダ航空、Via Railなどの州間旅客サービス、Rogers and Bellなど電気通信事業者、すべての連邦政府の雇用者が対象である。雇用、建物、公共空間へのアクセス、情報通信など範囲は広い。2018年春までに、議会で法案を上程する用意を政府は行っている。
  • オーストラリアは新基準としてAS EN 301 549: 2016ICT製品、サービスの公共調達に適したアクセシビリティ要件」を公表した。欧州規格EN 301 549の本文をそのまま採用している。基準の採択以降、財務省は連邦調達規則を更新し基準への遵守を求めた。
  • 最後に、①市民社会を取り込む、②アクセシビリティ技術の市場を支援する、③政策は実施する、④障害者への意識を向上する、⑤世界中の良い事例を活用する、⑥国全体だけでなく地方の政策も考える、⑦公共調達政策を採用する、を強調したい。

次に石川氏が講演した。

  • 国際連合の障害者権利委員会は障害者権利条約の実施状況を点検し、各国に勧告を出している。今期はカナダに勧告したが、カナダは障害のあるカナダ人法の制定を進めており、期待が高いので強い勧告を出した。
  • 具体的には、現状の法制度、政策を条約の完全実施の観点から再検証するよう求めている。物理的、交通、情報コミュニケーションをアクセシビリティ基準でモニタリングする。「easy to read」に配慮した情報提供に努める。テレビの音声ガイドを充実させる。英語とフランス語が公用語なので、フランス語におけるアクセシビリティ対応の強化、すべての教員に手話とアクセシビリティの研修、選挙公報におけるアクセシビリティの確保などである。
  • マラケシュ条約をカナダは昨年6月に批准し、それで20か国が批准したため発効した。それ以外のマラケシュ条約を批准していない国には批准を求める勧告を出した。
  • 日本に関する私見を申し述べる。我が国の障害者施策では情報通信のアクセシビリティは弱点である。それは、根拠となる個別法が無いためである。それに代わって、みんなの公共サイト運用ガイドラインがどの程度効果を持つか、障害者政策委員会は注目している。放送のアクセシビリティに関する指針も同様であり、2017年度末までに字幕付与可能な番組には100%付けるように求めている。
  • 電子書籍のアクセシビリティは空白地帯だが、紙の書籍に比べてユニバーサルデザイン化は容易なはずである。しかし政策が無い。諸外国のアクセシビリティ政策のおかげで、Kindleの日本語版がアクセシブルになっているという状況である。映画では字幕は付与されているが上映館の判断で字幕がOFFになっている。AR技術を使って必要な人だけに見えるようにすることが可能である。これらについて、諸外国の情勢を学び、前に進めるのが重要である。

パネル討論ではまず三宅氏が講演した。

  • 日本盲人会連合で声が最も多いのは放送に関するアクセシビリティである。視覚障害者の9割近くがテレビを視聴しているが、緊急放送、速報がテロップ表示されても音声ガイドが出ない。チャイムの合図で緊急のお知らせがあることはわかるが、表示内容が把握できない。また、テレビ受像機では限られた機種だけ音声ガイドが使え、機能も限られている。
  • 情報技術の進歩で様々なことができるようになった。しかし、技術の進歩で、今までできていたことができなくなった。コンビニのセルフレジはアクセシブルでないため難しくなった。宅配ボックス、宅配ロッカーでも同様。ICTを活用し、スマホから操作もできるよう改善してほしい。
  • 選挙公報は視覚障害者が利用できない。音声版、拡大版、PDFがあるが、これらは選挙管理委員会の責任ではなく、二次利用的に発行されたものでしかない。

小出氏は次のように講演した。

  • 東日本大震災ではろう者の犠牲者比率が健常者の2倍になった。情報受発信に問題があったからだ。国会内も手話での中継はできていない。全日本ろうあ連盟では手話言語法、手話言語条例の制定を求め、広がりを見せている。
  • 日本の法律では情報アクセシビリティについて規定が無い。これが壁の一つになっている。国土交通省で先日バリアフリーガイドラインを改正したが、要望は出したがすべてが反映されたわけではない。
  • 手話通訳者の問題もある。手話通訳者の人数が少ないが依頼は増えている。遠隔での手話通訳も進めているが、行政には理解不足がある。
  • アクセシビリティについて社会での理解が進み、解決してほしい、このために情報アクセシビリティフォーラムを秋葉原で2013年、15年に実施した。国会議員なども集まり、法改正を働きかけている。また、全日本ろうあ連盟は情報アクセシビリティ法のガイドラインを作っている。

新谷氏が講演した。

  • 全日本難聴者・中途失聴者団体連合として話をする。WHO調査では36千万人が聴覚障害で、人口の5%に達する。18千万人は高齢者で、高齢者の聴覚障害は騒音が問題である。「Make Listening Safe」を掲げて活動しているが、聞こえの環境改善は国として取り組む問題である。
  • テレビ字幕には問題がある。字幕付与のできる番組にはすべて字幕を付けるという施策が、今年が最終年度を迎える。しかし、これは「字幕付与」できる番組に限られている。時間的に無理なら対応しないということになっているが、災害時はどうするのか? 国会中継には字幕付与可能のはずで技術的問題ではない。BSCS、インターネット動画にも指針がない。
  • 日本映画610のうち81に字幕がついた。制作段階では日本映画を作れば必ず字幕を付けて準備しておくというように取り組む必要がある。米国では教育用DVDへの字幕が突破口になった。学校用のDVDに字幕が無いものには、納入を認めないとした。このような政策にも効果がある。
  • 電話リレーサービスが障害者基本計画に明記されなかったのは残念である。民間業者がチャレンジしてきたが、通信事業者を巻き込んだものが無く事業撤退を繰り返している。今では厚生労働省が予算を付けてパイロット事業的に支援している。総務省は民間通信事業者の「みえる電話」を推奨しているが、1000人くらいしか普及していない。。事業者のサーバに音声情報、文字情報をいったん保存しなければならないが、個人情報保護の観点から事前同意が必要ということになっているそうだ。

渡井氏が最後に講演した。

  • 東京都盲ろう者支援センタは日本で初めての盲ろう者向けリハビリ施設である。盲ろう者は見え方、聞こえ方がひとによって様々で、少し見える人から全く見えない人、少し聴こえる人から全く聴こえない人の4つのタイプがある。
  • 盲ろう者はコミュニケーションと移動と情報の3つの困難を抱えている。特に全く見えない・聴こえない盲ろう者はテレビなどが見られず情報は全く入らない。以前ある研究所が字幕放送やデータ放送を点字に変換するシステムを開発して、盲ろう者の多くが期待を寄せていたが5、6年程前に立ち消えになってしまった。実用化には多大な費用が掛かるということで、それ以降、開発が進んでいない。
  • 盲ろう者は法的に位置づけされていないため、視覚障害者や聴覚障害者の制度を使っている現状がある。しかし、まったく見えない、全く聞こえない盲ろう者の場合、情報をアクセスするための設備を整えるためには視覚障害者の補助だけでは足りない。情報弱者である盲ろう者であるほど十分な支援受けられない現状がある。
  • 聴覚障害から盲ろう者になった人は、見えていた間は手話言語で生活しており、音を聞いている訳ではない。ところが点字の場合は音をそのまま点字にする形が基本なので、ろうから目が見えなくなった盲ろう者には全部かなで書かれた文章は理解がむずかしい。点字訓練のプログラムの工夫や、点字の利用が難しい盲ろう者への情報の伝え方を考える必要がある。
  • ホームページでは画像情報が読み取れない状況が増えている。テキストベースで読み取れるよう改善してほしい。字幕情報、データ放送もテキストベースで配信されれば、点字に変換できる。アクセシビリティの改善も求めていきたい。

以上の講演についてサーストン氏、石川氏から、情報アクセシビリティを推進する強力なリーダシップが必要であり総務省の力に期待する、アクセシビリティの充実は国の政策に依存するといったコメントがあった。

会場の日本盲人会連合関係者から、アクセシビリティの質をどのように担保するかという質問があった。サーストン氏は、技術基準を定めそれに適合しているかで判断するのがよいと回答した。

最後に司会の山田氏が次のようにまとめた。わが国でアクセシビリティ法の制定を求めていく、きっかけとなるシンポジウムとなった。関係組織と協力して今後も訴えを続けていきたい。