2012年7月27日、東京都千代田区大手町にある東洋大学大手町サテライトで、第1回目となるワークショップ「企業コードの活用について」を開催しました。
当日は、20名の参加者にお集まりいただき、2つの講演に加え、参加者全員での大変熱のこもったディスカッションが行われました。
はじめに、新妻継良氏(日立製作所)から「企業コードの民間分野におけるユースケースと欧州等先進国における海外事例のご紹介」の講演をいただきました。
- 日立グループでは、グループ内での取引先コード統一を既に行っており、取引状況全体の把握や取引の効率化、取引先企業情報維持管理コストの低減等の効果があった。
- 2011年に、諸外国の企業コード導入状況について詳細な調査を行った。欧州では、企業コードは行政手続だけでなく企業間取引にも利用され、企業活動の基本的業務全般で企業コードが活用されている。
- 企業コードによって企業情報の集約が容易になり、より鮮度の高い企業情報サービス等、新規ビジネス創出にもつながる。
- 個人事業主や中小企業向けには企業マイページを通じたプッシュ型サービス提供等のメリットが期待できる。
続いて、東京工科大学の手塚悟教授から「企業コードにおける基本構想(案)の概要」の講演をいただきました。
手塚 悟氏(東京工科大学教授)の講演資料はこちらにあります。
- これまでは、公共団体別に企業情報を管理していたため、自治体間で企業情報をやりとりするにも都度番号変換が必要だった。統一コードの導入により、こうした状況を改善できる。
- 企業コードは国税庁が付番する法人番号と、分野別事業所番号で構成する。分野によって事業所の概念が異なるため、事業所番号を共通化することは困難(業法改正等が必要になる)。
- 法人番号は基本2情報とともに公表され、民間活用の制限もない。オープンデータの基盤としても重要。
- 社会保障の手続等では企業コードと従業員のマイナンバーとの連携が必要になるが、マイナンバーの取り扱いは更に検討が必要。
講演終了後、講師も含め参加者全員で、企業コードに関する活発な討論、意見交換が行われました。
- プライバシーの問題がない企業コードこそ電子行政において最初に取り組むべき課題だったのではないか。なぜ、eJapan計画以来10年たった今ごろ企業コードを議論しているのか。
- 今までの電子行政とは、既存の組織・業務はそのままに、単に電子化を図ることに過ぎなかった。その限界が明らかになり、業務横断的に利用する企業コードにやっと脚光があたったのではないか。
- 今までの電子行政とは、既存の組織・業務はそのままに、単に電子化を図ることに過ぎなかった。その限界が明らかになり、業務横断的に利用する企業コードにやっと脚光があたったのではないか。
- 企業コードを利用することで最も利益を得る省庁はどこか。国税庁か。その省庁が推進役とならないでIT室に委ねて、果たして企業コードは本当に実現できるのか。推進役として政府CIOを設置すべきではないか。
- 企業の側にはどのような利益があるのか。それが明確化されないと押し付けられたという印象だけが残り、活用する方向に進まないのではないか。
- 企業コードはプライバシー問題がないというが、個人事業主を対象にすると住所等が公開される問題が起きる。個人事業主は自分の意思で企業コードに参加するか選択できるようにすべきだ。
- 府省から市町村、広域事業連合など官の組織にも企業コードを付与する必要がある。実際にそのようにする計画はあるのか。官側はその必要性を理解しているのか。
討論によって、企業コードは未だ基本構想段階であること、電子行政推進のために早期に実現すべき事項であること、推進役を定める必要があることなどが、参加者に共通の認識となりました。