お昼休みセミナー「障害者差別解消法の改正」 小林淳内閣府参事官

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)
協賛:ウェブアクセシビリティ推進協会(JWAC)
開催日時:2024年1月24日水曜日正午から1時間
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:小林 淳・内閣府障害者施策担当参事官
司会:山田 肇ICPF理事長

小林氏の講演資料はこちらにあります
小林氏の講演ビデオはこちらにあります

障害者差別解消法が改正され、2024年4月1日に施行される。小林氏は同法第5条、第8条を中心に要点をそれぞれ説明した。

  • 法の目的は、障害のある人の活動や社会への参加を制限している様々な障壁(バリア)を取り除くことで、障害のある人もない人も分けへだてなく活動できる「共生社会」を実現することである。
  • そのために、不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供を求めている。法は日常生活及び社会生活に係る分野を広く対象として、障害者も障害者手帳を持っている人に限らない。一方、事業者は営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行うものを指す。このように障害者差別解消法の対象範囲は広い。
  • 第8条第1項は「事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」と定めている。小林氏は、「障害を理由として」と「障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより」について、それぞれ詳細に説明した(講演ビデオを参照ください)。
  • 同様に改正後の第8条第2項は「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めている。「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合」「その実施に伴う負担が過重でないとき」「当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮」について詳しく説明した。
  • 障害者から障壁の除去について申し出があった際には、建設的対話をすることで問題を解決していくのが望ましい。
  • 法は第5条で「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。」と定めている。環境の整備は、不特定多数の方を対象に整備しておく事前的改善措置であり、施設のバリアフリー化を図る、社員が利用する対応マニュアルを整備し研修を実施する、アクセシビリティを担保したウェブサイト等を作成しておくなどが、「環境の整備」の例である。
  • 施行日に向けて、各府省は「事業者向け対応指針の改定」を進めている。また、国・地方公共団体における相談体制の整備等をお願いしている。改正法の施行に向け、引き続き周知広報等に取り組んでいきたい。

講演終了後、次のような質疑があった。

質問(Q):ウェブサイトのアクセシビリティ対応は環境の整備に位置づけられ、努力義務が課せられている。義務化できないのか。
回答(A):現行では努力義務として可能な範囲で努力をしていただきたいと思う。義務化については事業者の負担等も勘案しながら検討されるべき事項かと思う。
Q:米国では、視覚障害者はミサイル防衛網のレーダ監視員にはなれないというように、合理的な配慮をしなくてもよい範囲を狭めて解釈している。今日の説明は、それに比較すると、障害者に不利、事業者には寛容になってはいないか。
A:お話しいただいた内容を前提にするとすれば、確かに、米国よりもわが国の方がもう少し広めに解釈しているように思う。

また、セミナー中に要望が二点表明された。

  • 国・地方公共団体における相談体制の整備を歓迎する。そのうえで、どのような相談があったかについて統計データを発表していただきたい。それによって、障害者がどのような分野に障壁があると捉えているかが明らかになる。
  • 今回の改正は、当然、事業者に負担を求めるものである。一方で、障害者にとっても、障壁を除去するために建設的対話に参加するなどの負担が生まれる。共生社会を実現するために、事業者と障害者共に負担が増すという点について周知いただきたい。