2015年度」カテゴリーアーカイブ

ビジネス 行動情報解析ビジネスの可能性 水口ひとみ株式会社UBIC部長代理ほか

日時 2015年10月28日(水)18:30~20:30
場所:東洋大学白山キャンパス5号館1階5101教室
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:株式会社UBIC コーポレートコミュニケーション部 部長代理 水口ひとみ氏
株式会社UBIC MEDICAL 営業部 営業マネージャー 江後大樹氏

講演資料はこちらにあります。

水口氏と江後氏は講演資料に基づいて概略次の通り講演した。

 

  • UBICは、2003年8月にCEOの守本正宏氏によって設立され、米国訴訟支援事業を中心にビジネスを展開してきた。人工知能技術を、その間に蓄積したノウハウと独自技術により発展させ、未来予測に優れるビッグデータ解析技術を開発した。適応分野を拡大することで独自の社会貢献を目指している。
  • 拠点は日本の他、米国、韓国、台湾とグローバルである。米国では、2013年にナスダックに上場している。2014年には、ワシントンD.C.のディスカバリ企業であるTechLaw Solutionsを完全子会社化し、2015年にサンフランシスコのディスカバリ企業であるEvDを完全子会社化している。外国籍比率が70%とグローバルな環境となっている。
  • 米国での訴訟では、原告と被告ともに自ら保有する膨大な資料(eメールや電子文書など)の中から必要な証拠を見つけだし、裁判所に提出するディスカバリという手続きがある。そのためには、テキストを効率よく解析する技術が必要である。
  • 証拠は、自分たちで提出しないといけないのが米国独特のルールである。大量の電子メール、電子書類の中から証拠となるものを探さなくてはいけないため、米国のリーガル産業は、ハイテク産業であると言ってもよい。法律事務所から委託されたITベンダーが膨大な資料から証拠となるものを探し、抽出した資料を弁護士がチェックし、証拠かどうか最終判断をするという仕組みである。
  • 人工知能を利用した国際訴訟支援では、膨大な量の対象データから一部をサンプルとして取り出し、弁護士にこれが証拠になるか、ならないかを判断してもらう。この弁護士による仕訳の教師データを人工知能が学習して、残りの膨大な資料を、弁護士の判断基準に合わせて、人の4000倍の速さで重要度順に並び替える。弁護士本人の判断基準で選択するので、弁護士も納得できる抽出となる。検索キーワードではなく、文脈の違いで検索できることが特徴である。
  • 上記のようなディスカバリの他に、日本の法執行機関への導入事例もある。捜査資料等を外部機関が預かることはできないので、ツールとして販売している。
  • 国際訴訟支援に加えて、企業の第三者委員会の調査案件に利用していただいた事例や、人工知能を活用したメール監査ツールの企業への導入など、1400件以上の実績がある。年初のNHKスペシャル「NEXT WORLD」第1回では人工知能の企業としてIBMやグーグルなどと並んで、日本企業として1社だけ紹介された。
  • UBICが特化しているのは、自由に記載されたテキストデータの解析である。キーワードや概念検索ではなく、人の暗黙知や感覚、嗜好を学ぶことで、大量のデータの中から見つけ出したいデータを探し、優先順位をつける。人工知能を利用するメリットは、少量の学習から大量のデータを判断できることにある。また、判断の継続性・精度の維持、人間の行動や判断の特徴を捉える、専門家の業務をサポート、一般ユーザの感覚を学ぶといったメリットがある。
  • 新領域での取り組みに乗り出している。病院内における「転倒・転落防止システム」がその一例である。電子カルテのテキストデータは病院にたくさんあるが、忙しい医師がデータの解析をするのは困難であり、時間を要すれば患者に向き合う時間が減ってしまう。従来は入院患者の転倒リスクに対して、アセスメントやセンサーといったもので対応してきたが、転倒リスクをタイムリーに把握し、患者・医療スタッフに負担感が少ない技術が必要とされている。
  • NTT東日本関東病院との共同研究では、電子カルテ100名分16749件から、安全管理のエキスパートである医療安全管理室勤務の看護師に、転倒の予兆となる意識障害の症状がある患者のデータ17件(7名分)を選んでもらった。その他のデータとして、上記の7名以外のデータから1000件をランダム抽出し、この1017件を教師データとして学習させた。これを元に、すべての電子カルテを0~10000点でスコア付けすることができ、優先順位をはっきりさせることができた。スコアの高い約1000件に注意力の低下や意識障害などの症状がみられ、効果が検証された。
  • マーケティング分野では、デジタルキュレーションサービスを試みている。これは、「あなただけの人工知能」をコンセプトにしたサービスとなっている。一般に、本を買ったり、レストランに行く際にはレビューを参考にすることが多い。Amazonでは、購買履歴から「あなたが買った本を買った人は、ほかにこんな本も買っている」といったリコメンドをしてくれるが、このような既存技術・サービスでは、細かい個人の好みを反映できていなかった。定量的な情報を用いたありきたりなおススメにより、ユーザがサービスに飽きてしまうこともある。
  • 人工知能によるユーザの好みを理解した提案は、まったく違うアプローチをとっている。評価点数や購買・行動パターンではなく、多数の人が意思を持って書き込んだコメント群を人工知能で分析することで、その人の好みにあった商品・サービスをリコメンドできる。例えば、自分のよく知っている九州のホテルで教師データをつくる。この教師データで、海外のすべてのホテルサイトのレビューを分析すると、私の判断基準で好みのホテルを見つけてくれる。自分では気がつかなかったけれども好きであろうもの、驚きを含んでいるが自分の好みから外れていないものを抽出するといったことができる。
  • ビジネス支援の領域でも人工知能を搭載したソフトウエアの提供を開始した。電話によるコミュニケーションが主流であった以前の職場環境であれば、部下が電話で話しているのがなんとなく聞こえてきて、その内容から「トラブルになりそう」、「ビジネスチャンスになりそう」ということがわかった。現在は、電子メールやSNSでのやり取りになっているので、自分の部下が取引先などとどんなやり取りしているかわかりにくい。
  • 管理・監督者の暗黙知から教師データを作成すれば、チームメンバーの電子メール・電子文書の中からビジネスチャンスやビジネスリスクにつながる情報を検知し、お知らせしてくれるようになる。例えば、マーケティング部門の担当者が、コールセンターの顧客対応履歴データの中から、「商品開発のヒント」や「クレーム」といった予兆を検知できるように支援する。
  • 経済産業省から2015年7月の子どもデーに出展のお誘いをいただき、人工知能を子供が体験できる「人工知能がおすすめ!あなたがきっと好きな本」をブース出展した。好きな本を選ぶと、人工知能がその子の好みにあった本を提示してくれる。7月29、30日の2日間で会場に2180名の参加があり、気づきの多いイベントになった。
  • 医療にフォーカスして、専門子会社「UBIC MEDICAL」を2015年4月に設立している。NTT東日本関東病院との共同研究プロジェクトやAMEDの公募事業などを進めており、今後は、治験情報の解析支援サービス、薬剤監視サービス、メンタルケア支援データ解析サービスといった事業にも拡げていきたい。AMEDの公募事業では、慶応大学やアドバンスト・メディア、システムフレンド、セムコ・テクノ、ソフトバンク、日本マイクロソフトといった企業との共同で、精神疾患患者における重症度の客観的評価を行えないかという研究を行い、4年かけて製品化の予定である。
  • エムスリー株式会社との協業で、医薬品の販売で副作用調査を実施することも発表している。途上国でも、副作用調査が必要になってきており、実際の副作用と疑わしいものを判断して、厚労省に報告できるように支援するものである。
  • トヨタテクニカルディべロップメント(TTDC)と、特許出願のための調査業務の負担を軽減する知財評価ツールを共同開発した。こちらは、年内に発表予定である(2015年10月29日提供開始)。また、デバッグのサービスを提供するハーツユナイテッドグループと協業を開始している。スーパーデバッカーと言われるような人は、プログラムを眺めているだけで、バグを発見する。この暗黙知を人工知能に学習させ、IoT時代のニーズに応える。最近は、サイバーセキュリティの面からも、開発したプログラムに穴がないかをきちんと確認したいというニーズがある。

講演後、以下の事項について質疑があった。

個人情報保護と利用規約
Q(質問):子供たちがデジタル教科書を使うと、同じ教室の中でも、ひとりひとりの進捗ごとの授業が可能となる。それに加えて、図書館で子供が何の本を借りているかがわかれば、もっと個人の嗜好にあった教育が提供できるはずだ。しかし、図書館には自由を守るという原則がある。思想の管理にもつながる恐れがあるセンシティブな個人情報(閲覧記録)を利用することは抵抗がある。UBICの事業では、個人情報の取り扱いはどうなっているのか?
回答(A):UBICがマーケティング分野の事業を行う際には、パートナーとして、ECサイトなど個人情報を取得する事業者と組むことになる。その事業者が提供するサービスを利用する段階で、個人情報の利用に関する許諾をもらうことになる。
Q:利用規約は長くて細かいので通常は読まない。消費者に明らかに不利な内容があれば、それは利用規約として認められないというように民法改正しようという動きもある。
A:ECサイトの場合は、購入することが前提で利用者はサイトにアクセスしているので、基本は「おすすめされたい人たち」となり、あまり問題にならないのではないかと感じる。公共のデータを利用する場合には、個人情報の取り扱いの問題がでてくると思われる。
コメント(C):利用規約自体をAIにかければ、おもしろい結果がでるのではないか?

人工知能技術について
Q:グーグルで名前を検索したら、全く関係のないものと関連付けられていた。グーグルに文句をいうと、「機械がアルゴリズムでやっているので、なぜかわからない」と回答されるという話があった。こういうことはあり得るのか?
A:なぜ人工知能がそういう判断をしたか理由を説明するのは難しいと言われている。電通国際情報サービスとの共同開発では、例えば、スターウォーズが好きというデータを教師データにすると、クロサワの映画がリコメンドされる。クロサワに興味がなくても、映画を見てもらえれば「クロサワの映画もいいね」ということになる。「なぜクロサワ?」に対して、例えば「ジョージ・ルーカスがクロサワをリスペクトしていたから」という理由があれば、リコメンドされた人もとっつきやすいといえる。
C:クロサワを見なかったら、教師データに「見なかった」というデータを入れて再計算すればいいのではないか。
C:人間の判断の多くは間違えであると言われている。クロサワを選ばなかったことが間違いということも多いはずである。
A:人工知能で解析しても、最終的には人が選ぶ。国際訴訟であれば、弁護士を支援するものである。ホーキング博士のような著名人の一部から「人工知能が人間を超える」という脅威論がでているが、当社の人工知能は、人間の判断基準を学んで支援するというのがコンセプトである。
Q:ニッサンがハンドルのない車をだした。人間がどう危険を回避しているかの知見を利用していると思うが。自動運転の中で、自分がブレーキを踏むか踏まないかの判断ができるのか?
A:どこまでの精度が求められるかということになるが、これは活用分野によるところもある。リーガルやメディカルは精度を求められる。一方、マーケティングは100%の正解を求めるよりも、個々人の嗜好に合うかどうかといったことだ。
C:米国では、自動運転のリスクは保険でやればいいという話しもあるが。
Q:医療分野の事例であった転倒リスクでは、人工知能の解析結果を最終的に医師が判断するのか?
A:その通りである。患者にどんなケアをするのか、どこに人員を配置するのかといったことは、現場の人間、医師や看護師の判断になる。あくまでも補助である。解決したいという思いがある医療従事者がUBICと組んでくれている。そもそもリスクが高い環境なので、それをどう軽減するかという中での、UBICの支援となっている。現場が受け入れていただけるものを優先的に取り組んでいる。

新しい応用の可能性
Q:著作権コンテンツ、過去のテレビや映画のコンテンツの評価方法として使えないのか?
A:映画の脚本などのテキストがあれば利用できる。過去に視聴率が高かったドラマを判断基準として抽出してくるということは可能であろう。
Q:医療分野への進出の課題は?
A:医療分野はコンサバティブな人が多く、病院で教師データを作るのはなかなか難しい。厚労省も国立病院のデータを集めようとしているが、病院ごとにメーカーが違って、データが活用しやすい形式で集められていない。活用しやすいようにモディファイすることが、患者さんのためになる。
C:日本でこういう技術が開発されたのはよいことと思う。日本では消費者の立場にたった議論ができていないため、ITリテラシーのない人が便利だからと、自分の情報をどんどんと入力してしまい、気づいたら、消せなくなっているということもある。ITリテラシーのない人は、歯止めがわからない。人工知能の解析で、サーバーポリス的に、ここからは危ないよと教えてくれれば、安心して利用できるのではないか。
C:僕はネットを積極的に利用すべきと思っているが、過剰に依存するのはよくない。現在の子供向けのインターネットフィルターが機械的なブロッキングが行われている。教育者の教師データで、子供たちとっても苦にならないものができそうである。
Q:人工知能の提供方法は、エンジンをライセンス的に提供しているのか?
A:アプリケーションにして販売するものもあれば、協業の場合には、協業先のシステムに組み込んだりする。リーガルの場合は、膨大なデータ量なのでクラウドサービスを提供し、ホスティング料やコンサルティング料でお金をいただいている。製品として購入してもらい、トレーニング料・コンサル料をいただくケースもある。eメール監査はクライアントのID数での価格となっており、一律の料金体系ではない。
Q:データ分析の機能を売るには相手の暗黙知が重要で、UBICにこれが蓄積されていく。暗黙知を横展開、ほかのドメインに持っていくということはしているのか?
A:メール監査ソフトウエアには、ナレッジベースを搭載している。海外公務員への賄賂、カルテルなどの場合、このような事案は急に起きるのではなく、その前段階がある。心理学、犯罪学などの行動科学の面からもモデリングする。このナレッジベースにより、カルテルの経験のない会社でも、まずはUBICのソフトウエアで解析することが可能で、そのあとに人工知能が再学習すればよい。
Q:こういう分野の技術者を大学で育てる場合、機密情報である企業の実データを大学で使うことはできないので、人材育成できないのではないか?
A:人工知能の研究者は、アカデミックでも育てられる。人工知能には冬の時代があり、研究者は、今は引く手あまたである。ただし、特定のビジネスドメインに提供される技術の研究は大学では難しいのでここは企業がやらないといけない。UBICの研究開発陣は、哲学出身のCTOをはじめ、素粒子物理の元研究者、4か国語を話す計算言語学者など多様な人材がいる。
C:大学では、人工知能を利用しようとする先生方は多い。銀行での異常行動から認知症患者を検知できる、児童相談所に児童虐待のデータが紙でたくさんあるが、これをデータして分析しようという話もでてきている。
Q:大学の先生がUBICと共同でやりたいといえば、筋がよければ一緒にやってもらえるのか?
A:まずは、UBICの技術が役に立つのかを無償で実験するProof of Conceptという段階がある。ここで芽があるとわかれば、有償の運用フェーズとなっていく。PoCなら人工知能の実験は、パソコン1台でできる。
Q:学習塾では、アルバイトの大学生が教えていることが多いが、教える人が少なくなっており、AIによる学習アドバイスが注目されてきている。できない問題を入力すると次にやるべき問題用紙がでてくるといった個別化対応は結構進んでいる。長く教えている先生で、教え方もうまくて、子供気持ちもわかる先生の知見をAIにすれば、これが先生になるのではないか?
A:教育分野はご相談が多く、個別化対応が得意な当社の人工知能には可能性がある。人工知能によって、弱い部分をアドバイスできるようなものになると思われる。

教育 大阪市が進める塾代助成事業 笠井康孝大阪市こども育成事業担当課長

日時:9月15日(火曜日) 午後3時~5時
場所:東洋大学大手町サテライト(新大手町ビル1階)
東京都千代田区大手町2-2-1
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:笠井康孝(大阪市こども育成事業担当課長)
コメンテータ:高井たかし(維新の党衆議院議員)

笠井氏の講演資料はこちらにあります

冒頭、笠井氏は講演資料に基づき、要約次の通り講演した。

  • 大阪市では、生産年齢人口、市内総生産、市税収入が中期的に減少を続けている。このような状況から脱却するために、施策の中心を「現役世代への重点投資」に大きく舵を切った。塾代助成事業も、この施策転換の中で生まれたものである。
  • 塾代助成事業は、こどもたちに学校外教育を受ける機会を均等に提供し、助成対象者の拡大により中間所得階層の可処分所得を増やすため、学習塾や、文化・スポーツ教室を含めた学校外教育にかかる経費を、月額1万円を上限に助成する事業である。
  • 前例のない取り組みであったため、平成24年9月から、西成区で低所得世帯を対象に試行実施した。その後、全区に拡大した。平成27年10月からは、家庭の扶養人数ごとに所得制限限度額を設けて、市内在住の中学生の約半数が助成対象となるように拡大する。
  • 本年6月上旬に、中学生がいる世帯に、DM送付し、7月17日に申請の受付を一旦締め切った。約20,000件の申請を受け付けて、現在審査中である。利用率は右肩上がりで伸びており、平成26年度は、助成対象者のおよそ4割が利用している。
  • 教育バウチャーの目的は、競争の原理と選択の自由の導入によって、教育の質の向上を図り、教育格差と所得格差の解消を図ることである。大阪市の塾代助成事業は学校外教育バウチャーの一形態である。学校外教育サービスを現物で提供するために、確実に中学生に投資できることが特徴であり、メリットである。また、生徒や保護者が学習塾等を選択するので、市場原理、競争原理の導入によって、良質なサービスが提供されることが期待できる。
  • 全区に拡大した時から、中学生にはICチップを内蔵したカードを配付、参画事業者にはカードリーダーを無償で貸与することで、ネットワークを介して、本人確認や助成実績の管理等を行うシステムにしている。請求も、ネットワーク上で行う。参画事業者の事務的な負担が軽減して、利便性が向上した。
  • 参画事業者の登録要件も緩和した。当初は、個人法人問わず、過去3年の実績がある事業者としていた。次の段階で、法人については経営実績を問わず、個人については実績を1年に短縮した。現在は、法人個人共、実績を問わないで、NPO、民間団体も登録可能としている。
  • 平成26年12月に、アンケート調査を実施し、利用した中学生と保護者から高評価を得た。また、全国学力・学習状況調査結果の要因分析に関する調査研究が、文部科学省のサイトで公表されている。学校外教育支出が多いこどもほど、成績が高い結果が出ている。学習塾で学習する習慣をつければ成績は上がると思われる。

次に、高井氏より次のようなコメントがあった。

  • 教育バウチャーは、ICTを使った教育に活用していけるのではないだろうか。インターネット回線、タブレットを用いた教育を行う際、教育バウチャーが活用されるのではないだろうかということで、期待をしている。
  • 維新の党はバウチャーに熱心で、補助金をバウチャーに変更するように予算の組み替えを提案したことがある。今後も、バウチャーの実施に向けて取り組んでいきたい。
  • 文部科学省で、今年度と来年度で実施しようとしているのは、プログラミング教育とセキュリティ教育で、小中高校で行う予定である。デジタル教科書については、今年の6月に閣議決定した成長戦略に記載がある。デジタル教科書は、法改正しないと実証研究すらできない。教科書検定は4年サイクル、学習指導要領は10年サイクルと、施策の転換の速度は遅い。少なくとも、次の学習指導要領改定までには、デジタル教科書をなんとかしてでもやらなければならないと考えている。世界各国がどんどんデジタル化している中で、遅れるわけにはいかない。

次いで、次のような事項について活発に質疑応答が実施された。

塾代助成制度について:
質問(Q):制度に対する反対勢力はいるのか? 文部科学省の取り組みが遅れているのは問題ではないのか?
笠井回答(AK):塾代助成事業を実施した当初には、公教育の否定ではないか、クラブ活動の否定ではないかといった意見があった。一方で、効果を定量的に示すべき、1万円では少なすぎるのではないか、といった支持する立場からの意見もあった。
高井回答(AT):文部科学省は、バウチャーは自治体それぞれが取り組むべきと考えているようだ。一方、10年単位の学習指導要領改正などはペースが遅すぎる。質問者に同感である。ICT導入に向けてもっと機敏に動くべきである。
Q:そもそも、義務教育では学力や学習意識の向上は実現できないのだろうか?
AK:このように学校外教育に多額の予算を投入するのであれば、義務教育に投資すべきといった意見もある。ただ、中学3年生になれば、約7割の生徒が学習塾に通っているのが実態である。低所得世帯のこどもたちにも機会を提供することが事業の目的の一つである。
Q:塾を学校に呼び、課外に授業するといった仕組みは考えなかったのか?
AK:教育バウチャーによって競争を導入すること、民間に委ねるべきは委ねることを進めてきた。同時に、西成区では中学校と区役所の一室で、課外に学習塾講師が指導する『西成学び塾』を実施しており、さらに平成27年度からは他の行政区でも実施するなど、東京都内の一部の特別区で実施しているのと同様の取り組みも実施している。
Q:低所得者と教育の格差は正の関係があると思う。低所得者に対してバウチャーを用いることで、教育レベルが上がったという効果分析は、やるべきであると思う。実際やっているのか?
AK:助成を受けている生徒の個人情報を学校の教員に提供して、経年比較での成績調査を行うことが正確であると認識はしている。しかし、低所得世帯であるという機微な個人情報を中学校に提供してもよいのか、中学校の教職員の負担が大きくならないか、という懸念があり、アンケート調査のみ行っているのが現状である。それ以外に効果を検証する方策がないか検討はしているが、よい策はない。
Q:助成制度を利用した生徒からはどんな感想はあるのか?
AK:テレビ局が生徒にインタビューを行ったところ、今までは家庭が貧しくて学習塾に通うことができなかったが、助成を受けて通うことができるようになったという声があった。今まで通うことできなかった生徒が通うことができるようになったのが、大きな効果の一つである。
Q:ICカードによる管理に用いる電算システムの開発と運用について、随意契約の罠から抜け出せるのか?
AK:試行実施の際は、公募型プロポーザル方式、全区展開にあたっては総合評価一般入札という形式で、今の事業者に決定をした。最初から随意契約というわけでない。

今後の方向について:
Q:教育以外、生活保護や医療の分野で、個々にICカードが発行されるのは非効率である。プラットフォームをどこかの団体が担うことで、一枚のカードにして、効率化することができるのではないだろうか?
AT:バウチャーそのものが、政府全体では教育以外では検討されていないのが実態である。マイナンバーが始まるので、敢えて別のシステムをつくる必要はないし、そのように提言していきたいと考えている。
Q:ICTを用いた学校外教育は助成対象外だが、全国展開を考えたら、対象とすべきではないか?
山田コメント:ICTを用いると利用の記録が残り、本当に学習したことが後からわかる。それゆえ、助成対象とするべきである。全国では小中学生は1,000万人いる。彼らすべてに1万円のタブレットを配布すると1000億円かかる。タブレットがない家庭だけに、教育バウチャーのしくみで助成金を渡し、タブレットを選んでもらうのがよい。ブロードバンド環境のない家庭は、バウチャーで通信事業者を選択できるようにすればよい。

政治 自由民主党の情報通信政策 平井たくや自由民主党衆議院議員

日時:8月20日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
千代田区九段北4丁目2番25号
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:平井たくや(衆議院議員、自由民主党IT戦略特命委員会委員長)

平井氏の講演資料はこちらにあります。

平井氏は要約次の通り講演した。

  • かつて情報通信(IT)政策の優先順位は低かった。自由民主党が野党時代にIT戦略特命委員会が組織化され、数次にわたり提言を続けてきた。今では、ありとあらゆることがITに関係するようになり、IT政策の重要度は増している。
  • 今まで各府省が実証実験を重ねてきたが、とりあえずやって、やりっ放しだった。これを反省し、実際に社会で利用され、社会をよくしていくことを目標にIT政策を集大成して、2015年版の「デジタル・ニッポン」を発表した。次の臨時国会では、官民データ利活用促進基本法を議員立法で出す予定である。個人情報保護法の中に利活用を書きこんでいるが、むしろ、利活用を主としてその際に個人情報の保護に努めることを求める法律が必要だと考えたからだ。
  • 世界で一番きっちりと本人確認できる国、訪日観光客も「短期移民」として扱い本人確認によって旅行を楽しむ国を目指すツールとしてマイナンバーを扱っている。マイナンバーは成長戦略の一環であり、デジタル社会のプラットフォームである。
  • 参加者が多くないと価値が高まらないため、マイナンバーカードの普及が必要になる。勤務先による一括申請ができるようにした。また、主な用途は公的個人認証である。公的にきちんと本人確認できることで、将来の民間利用にもつながっていく。たとえば、高校生に身分証明書の代わりにカードを与えれば、コンサート会場での本人確認に利用できる。
  • 住基カードは自治事務だったが、マイナンバーは法定受託事務となる。マイナンバーは特定個人情報である。国が関与して、自治体のセキュリティを高める施策を展開していくことができる。
  • サイバーセキュリティ関係は、「サイバーセキュリティ」から「パブリックセーフティ」に視野を拡大したのが、最大のポイントである。「セキュリティなくして成長なし」と考え、生体認証や画像解析の研究開発ベンチャーの支援。人材育成のための税制支援、政府機関のサイバーセキュリティ対策の抜本的強化などを実施する。また、IoT(モノのインターネット)の強靭性で日本ブランドを示そうとしている。
  • IoTは、国主導のドイツと巨大企業主導の米国が先行している。IoTビジネスにはレイヤー構造があり、日本企業もどのレイヤーで稼ぐか戦略を立てる必要がある。日本はプラットフォームレイヤーで影が薄いのが問題である。ただ、重要インフラのIoTでは日本が最先端となる可能性がある

講演後、次のような論点について質疑応答があった。

IoTの普及について

Q(質問):重要インフラのIoTについて政策的にどうアプローチするのか?
A(回答):日本の公共インフラはしっかりしているが、一方で、災害が多い。インフラから取得した情報と、天気予報などを情報連携すれば精度があがる。
Q:IoTの一部(たとえばスマートメータ)で、日本主導の国際規格を使おうという動きがある。これが、グローバル化の阻害にならないか?
A:日本だけで成り立つ時代ではないため、海外企業と一緒にやるという分野を決めた方が良い。ガラパゴス化するのがわかっていて、そこに突き進むのが良いのかどうか、みなさんに聞きたいところである。

マイナンバーについて

Q:普及のためには義務化が必要であり、また、ユーザビリティを上げるのがよい。モバイルIDの検討はしているのか?
A:カードの申請とJPKI(公的個人認証)の申請は、違う法律で立て付けられている。それを前提としたうえで、SIMカードにJPKIを搭載するモバイルIDは検討している。エストニアもスタートしたときは強制でなかった。今も、強制しているけど罰則はない。最終的に便利だから普及した。そのように、マイナンバーを使うと便利ということが国民に浸透する必要がある。
Q:新経済連盟事務局だが、法人向けマイナポータルの今後の見通しについて聞きたい?
A:法人情報の活用基盤は、まずは経済産業省から始める。今は各省バラバラに管理されている法人情報を統合することで価値が生まれるはずだ。民間の事業モデルはまだみえてないが、帝国データバンクは法人向けポータルに乗っかることでさらにビジネスを広げられると言っている。官民データ利活用促進基本法は、対面原則を打ち破る可能性がある。新経済連盟の主張が実現するのだから、法人ポータルなど細かなことよりも、もっとそこにドライブをかけてほしい。
Q:マイナンバーカードを持つと運転免許証が不要となるといった仕組みが必要ではないか?
A:すぐに、運転免許証をなくすわけではない。エストニアの場合は運転免許証とマイナンバーが紐付いているので、免許不携帯で罪を問われることはない。将来は、その方向に進みたい。日本は免許証のコピーが世界一出回っている。それはやめた方が良い。
Q:私は全盲だが、ネットによって生活がだいぶ便利になった。その際には、アクセシビリティが重要である。情報アクセシビティ法など、アクセシビリティとセキュリティの両立を考えていただきたいが?
A:マイナンバー制度では、アクセシビリティに丁寧に対応したい。
C(コメント):政府機関と自治体のすべてのウェブサイトでアクセシビリティを改善しても、予算は170億円ですむと試算できている。
A:ぜひ、特命委員会に具体的に提案してほしい。

マイナンバーの民間利活用について

Q:複数の名前(例:ハンドルネーム)をもっている人がネットを活性化させいる。本人確認に価値はあるのか?
A:ここでいう本人確認は、権利の確認である。東日本大震災のようなときに、被災者の本人確認をどうするか。親が死んだとき、子供は行政手続きが大変である。どうしたら、ワンストップ化できるか。このように際にマイナンバーを利用して本人確認し、国民の権利が最大限行使できるようにするのが、目的である。
Q:学校の成績のデータ管理の統合、クラウド化は検討しているのか? 今は金庫で保存されているため、災害があると消えてしまう。
A:現状、そこまで想定されていない。どこまでデジタル化するのか、今後考えていきたい。

行政 ビッグデータ時代の先進広域情報連携 野中誠氏(CEO, CROSSFLO SYSTEMS)

日時:7月24日(金曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館2階 5203教室
文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:野中誠(M.D., Ph.D./ President & CEO, CROSSFLO SYSTEMS)

野中氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、野中氏は概略次のように講演した。

  • 1990年の初めころ、ITを医療分野に導入するにあたって三つの問題が認識されていた。一つは、CPUの性能が低く画像のレンダリング速度が遅すぎたこと。二つは、ストレージの容量が不足したこと。最後が、送信帯域が狭く、いわゆるブロードバンドが存在していなかったことであった。こうした問題は比較的容易に開発対応がなされたが、最後まで課題として残ったのが、異なるデータシステム間で自由なデータ共有や連携を行う技術の開発であった。これがない限りは大規模でのデータ連携が難しい。例えば電子カルテを見ると、一医療組織内での情報連携だけで医療ミスを防ぐ方法が作れる。地域全体の医療機関で情報連携を行うと、さらに大きな効果が期待でき、基礎と臨床の研究に生かすことができる。しかし、一方で、医療に関係する情報の保有者は医療機関だけでなく、薬局や健康保険組合に分散している。
  • 2001年の9.11テロを契機に、米国で国家レベルの大規模な情報連携が必要とされた。そこで生み出されたのが、国家データ交換モデルNational Information Exchange Model,(NIEM)であった。データベースの連携には、データベース相互をすべて繋がなければならなかった。たとえば、28のデータベースを連携するためには、378回の相互接続が必要となるNIEMはデータベースを常にデータモデル(中間フォーマット)に連携させることで、28のデータベースなら28回の接続で相互接続を完成させ、連携の時間と費用とを劇的に低減させた。
  • クロスフローメディカルが提供するシステムは、データ交換モデル(IEM)とCanonical Data Exchange(CDX)の組合せを特徴としている。情報連携相手の多数のデータベースに保存された数多の情報を、あたかも自らのデータが分散配置されているかのようにして使うことが出来ること、接続するデータベース数に制限がないこと、ハードウエアやOSの仕様にとらわれないこと、等の特徴がある。それにも増して重要なのは、データの所有者・管理者が連携設定の詳細をすべて管理できることである。データベース内で、共有が必要と判断した情報だけを選択的に共有させることができる。
  • モンタナ州では疾病監視システムに導入した。4つの救急病院の電子カルテを情報連携し、監視が必要な疾患の発生を自動的に捉えたり、一定の罹患者数でアラートを出させたり、マップ上で疾病の拡散度合いを調べたりできる。
  • 日本では平成26年に、総務省プロジェクトとして、神奈川県の2病院で新薬開発のための治験での情報処理システムについて実証実験を行った。実証を行った病院からは高評価を受けた。現在、理化学研究所と複数の大学の臨床・研究患者情報共有システムの実証実験を進めている。
  • 病院と中央省庁、地方自治体、薬局、大学・研究機関、臨床検査機関に加えて、患者自身や、保険会社、健康ビジネスなども連携の枠組みに入れるべきではないか。それにより、創薬や新規診断法、新サービスモデルが生み出される。

講演後、以下の各項について質疑があった。

技術の標準化について
Q(質問):IEM(中間フォーマット)は米国で標準化されているか?
A(回答):国家が推進したNIEMは標準化され、連邦政府と地方自治体が情報連携をする場合にはNIEMの使用が義務付けられている。一方、日本では標準化モデル自体が存在しない。
Q:データベース相互でデータフォーマットが違う場合はどうするのか?
A:それを連携するのがIEMである。「氏名」と「氏」「名」というように、データベースごとに異なるデータ形式が用いられている際に、IEMで加工して適切なフォーマットに変換してCDXに連携させる。
Q:医療機関の持つ、例えば、レントゲン写真まで連携共有できるのか?
A:今はレントゲン写真もデジタル化されているので、デジタルデータの連携は容易である。

個人情報の保護について
Q:日本でなぜ医療のビッグデータが進まないか? 個人情報が漏れることへの強い懸念か?
A:漏れたらどうするかについてだが、例えば、母子手帳を落としたらどうするか。母子手帳は渡してしまっているので、政府に責任はないことになっている。一方、医療システムを連携させると、漏れた時に政府の責任を問われる恐れがある。それを政府は警戒している。PHR(Personal Health Record)というように、データを個人が管理するように仕向けているのは、責任は政府ではなく、患者自身にあるというためである。CDXを使用するとこの点での対策が容易に設定できる。漏れてはならない条件設定でのデータ連携時には個人情報はデータシステム間で連携をしない、という選択をした設定が可能である。
Q:モンタナ州で新型感染症が起こった際、匿名で情報を集めてアラートを鳴らす。その後、特効薬が見つかった場合、患者への連絡が必要になるが、これは匿名ではできないが、どうするのか?
A:個々の病院は患者情報を実名で管理しているので、元の情報管理者である個々の病院が、患者に対応する。
Q:過去の医療歴を引き出すのにも、患者の同意が必要になるのではないか?
A:その通り。事前の包括同意などを用いるのが適切である。

広域情報連携の普及について
Q:医療機関は医療費を多く稼ぎたいと考えているのか?
A:医療機関は、医療費を多く稼ぐことよりも、効率を上げることに理解がある。医師は患者を治すことを使命としているからだ。たとえば、紹介状というものがあるが、今は紹介状があっても再検査が当たり前だが、電子化すれば、手間を省け、効率化できる。
C(コメント):電子カルテを各医療機関に100万円ずつで導入したとしても、国民医療費全体の節減効果を考えれば、費用対効果は確保できる。

クロスフローメディカルのビジネスについて
Q:個人情報保護など、各国法・ガイドラインなどに対応した現地化を考えているのか?
A:可能である。クライアントからオーダーを受ければ、どのようにも対応する。
Q:ライバルはいるのか?
A:米国ではベンチャー企業が存在するほか、MicrosoftやIBMも参入しているが、作業効率と導入手続の速度と容易さの点でCDXが遥かに優れている。
Q:この技術は破壊的技術ではないか? 医療情報だけでなく、あらゆる分野で活用可能で、大学で入学試験の成績や日常の成績が就職先の決定に与える影響なども分析できるようになる。個人の情報が集約されることに問題はないのか?
A:悪意のある人物にわたったらどうするか、考えなければならない課題である。一方で、CDXでは、医療の際には医療関連のことしか表示しないで、たとえば、犯罪情報などは表示しないようにコントロールできる。情報連携をすると個人情報が集約化されると考えずに、個人情報を集約化して対応することが必要な条件の時だけにその手段を許可する、という技術をCDXとIEMの組合せで確保し提供できる。