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セミナーシリーズ第3回「デジタル手続き法で企業運営は変わるか」 木村康宏freee株式会社執行役員

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)
日時:5月17日金曜日18時30分から20時30分
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
講師:木村康宏(freee株式会社 執行役員社会インフラ企画部長)
司会:山田 肇(ICPF)
定員:40名

木村氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、木村氏は概略次の通り講演した。

  • 日本の労働生産性は先進7か国中最下位である。特に中小企業はバックオフィス業務の生産性が低い。しかし、行政への手続きなどバックオフィス業務の7割は自動化できる。中小企業にデジタル変革をもたらすという目標でfreee株式会社は設立された。
  • 電子政府は「不便」という次元を超えて「国際的な競争劣位」を産んでいる。民間サービスは使い勝手を最大限重視しているが、電子政府は使いにくい。電子政府の「コンシューマライゼーション」が必要である。システムが使いにくいために、使えるべき制度が使えないというのは、単に利便の問題を超えて、人権問題でもある。
  • 年末調整は従業員が必要事項をスマホ入力すれば、後は自動計算して電子申告までできるようになっている。所要時間は1/5に削減された。しかし、官からは住民税の通知書が紙で届き、納付書を持って銀行窓口に並ぶ状況である。従業員が転居すれば同じような手続きをいくつもの役所に行う必要がある。会社設立も雛形を使って定款が作成でき、士業が電子定款の作成を代行するサービスもある。しかし、官の側から「定款のインデントを直せ」といった趣味の領域の指示まで来る。電子だけでは完結しない。
  • 電子行政では関連する手続きをすべてポータル経由で一括してできるようにしなければならない。また、途中で紙が入ることなくデジタル完結する必要がある。デジタル手続法によって、そんな「あるべき姿」を実現する要素が整う。
  • さらに、API公開で民間側が使い勝手の良いサービスを提供できるようになる。freeeはクラウド会計サービスのAPIを公開しているが、それを利用していろいろな会社がそれぞれにアプリを提供している。なかには政治資金収支報告書の自動作成アプリまである。官がAPIを公開すれば同じようになるだろう。
  • 中途半端な電子化ではUX(User eXperience)は向上しない。創業では定款認証の際に公証人に(TV電話は可とされたとはいえ)面接する手順・手数料が残った。印鑑届書も残存した。面接は反社会的勢力による創業を排除するためだが、士業が代理で面接できるという抜け道が残っている。創業に伴って銀行口座を開設する際にも反社会的勢力でないことを確認するという重複もある。印鑑は勝手に代理として押印することが問題になっている。この状況で紙手続きを義務として残すことは疑問である。
  • さらに先を展望して「紙手続きをそのまま残すのはタブー」と言いたい。一気呵成のデジタル化が必要で、そのためには電子証明書の普及促進、電子を利用する者へのインセンティブ付与、原則を電子とすること(電子を特例扱いにして、届出・申請が必要なのが現在のやり方)、受益者負担の発想を捨てることなどが必要である。電子申請システムの利用に受益者負担で費用を徴収するという方式では、利用者が少なければ費用が上がり、ますます利用者を減らす悪循環が起きる。
  • デジタルデバイドの是正という課題が常に指摘される。しかし、高齢者・中小企業でもスマホを使いこなすケースは多いし、離島の人が紙での手続きのために本土に出かけるというのは、逆に「アナログデバイド」ではないか。
  • 将来を展望すれば、手続き・届出自体を無くするのが重要である。官がすでに保有しているデータを組み合わせれば新たな手続きは不要となるというケースもある。ワンストップ化の先で、手続きで止まることのない「ノンストップ化」に進むべきだ。

講演の後、以下のテーマについて質疑があった。

個人情報保護の課題について
Q(質問):今日の説明の中に個人情報保護のことが一度も出てこなかった。しかし、これが電子化を阻む最大の壁ではないか?
A(回答):システムは個人情報をきちんと管理しているという点を、個別のプレーヤーが、日々の営業活動の中で丁寧に訴えることがまず必要である。また、タンス預金よりも銀行預金のほうが安全なのは、コストを掛けて管理されていること、それが銀行法で規制されていること等が背景にあるが、個人情報もスタンドアローンで保管するよりもクラウドで保管するほうが安全と理解してもらうためには、先程の個別のプレーヤーの日々の取り組みに加えて、個人情報の保管に関する法律(個人情報保護法や個別の業法)で規制するのがよいし、現にそうされている。さらに、これら、個別のプレーヤーのレベルと、社会的ルールのレベルの二つのレベルで、継続的に取り組んでいくことで、社会的理解を醸成してく必要がある。お金を銀行に預ける預金・貯金行為も、社会的理解を得て広まるのに時間がかかった。情報を預けることも同じこと。今日の説明では、この点は自明と思っていたので省略した。
Q:地方公共団体にはシステムをインターネットに接続しないという問題があるが、どう考えるか?また、行政組織間の情報連携を阻むものはなにか?
A:自治体においては、個人情報保護が本質的でない形で必要以上に求められていることが影響していると考えている。また、行政間のシステム・情報連携には、事前に本人同意を求めるしかないが、それ自体は丁寧に実施すれば無理なことではないと思う
C(コメント):行政は個別の施策ごとに情報を収集し、収集した情報の利用範囲をその施策内に留める傾向がある。最初から利用範囲を広くするといった対応も必要になる。
C:システムはセキュアに設計し、システム間はセキュアに接続するようにできれば、ネットワーク自体はインターネットで構わない。これを進めれば、エストニアのX-roadと同様にシステム間の連携が当たり前になっていくだろう。

デジタル完結の推進について
Q:一気呵成のデジタル化というがどこから手を付けるべきか?
A:電子証明書の普及が本丸である。しかし、それには時間がかかるので、まずは受益者負担の考え方を放棄するということから進めてはどうか。
Q:一気呵成のデジタル化といっても、官側のやる気が問題になる。どこから進めようとしているのか?
A:中小企業経営にとって社会保険と創業は重要と考え、そこから進めるように主張している。創業は手間・対象数的には大きくないが、創業をデジタルで完結させることで、創業フェーズが終わっても手続きをデジタルでやる習慣が出来る。デジタルネイティブな法人が増えることに意義がある。
C:飲食店は開廃業が多い。飲食店を開業する際には、税務署に開業届を出すのに加えて、食品衛生について保健所に、防火について消防署に届けて検査を受ける必要がある。このような具体的な事例を取り上げて攻めるのもよいのではないか。
Q:創業にはビジネスプランの構築という長い準備段階がある。それを考えれば、印鑑届で少々時間を要しても問題はないという意見にどう反論するのか?
A:物理的な時間だけが問題なのではない。創業者がもっとも繁忙な時期に各種手続きに同じ情報の入力が求められたり、印鑑届を求められたり、意義が不明確な手数料を徴収されたりするのは、心理的な負担になる。そこを改善すれば、だれでも簡単に創業できるようになる。
C:創業はその人にとって一生に数回だが、士業にとっては毎日の業務である。士業は手続きを負担に感じないだろうが、一般の人は負担に感じるということを理解すべきだ。
Q:freeeの確定申告を利用しているが、一部の金融機関は口座データ連携に対応していない。どう突破するか?
A:最近のWeb事業者はAPI連携に当たり前のように取り組んでいるが、伝統的なサービス事業者は、銀行を含めてAPI公開に消極的である。これを突破する必要がある。
Q:既にあるデータを利用するというのは大切である。統計調査の場合、すでに官に提出した情報を再記入するように求めるのは調査対象側の協力意思を削ぐ。この問題をどう考えるか?
A:民間サービスではKPIをトラッキングできるように最初からシステムを設計する。統計は広い意味で政府のKPIとも言える。電子政府も統計調査が自動的にできるように、必要な情報がトラッキングできるように設計する必要がある。

公開シンポジウム デジタル社会における楽しい働き方 杉山知之デジタルハリウッド大学・大学院学長ほか

主催:デジタルハリウッド大学・freee株式会社
共催:情報通信政策フォーラム(ICPF 

登壇者:
小林史明(衆議院議員/IT戦略特命委員会事務局次長)
佐々木大輔(freee株式会社代表取締役)
杉山知之(デジタルハリウッド大学・大学院学長)
山田肇(情報通信政策フォーラム理事長) ※モデレータ

開催日時:2017427日(木)19:00-21:00(受付開始18:30
開催場所:デジタルハリウッド大学大学院
101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ アカデミア3

以下の記録は作成した山田肇が責任を負います。

登壇者を含め総計97名と会場は満席となった。冒頭、佐々木大輔freee株式会社代表取締役が次のような講演を行った。

  • 日本の生産性は諸外国に比べて低いが特に中小企業の生産性は大きな課題である。freeeは中小企業の起業・運営・成長をサポートする。
  • 注目したのはバックオフィス業務であり、これを効率化することによって楽しく働く環境が整備される。バックオフィスを含め全部をクラウド化することで効率が上がる。
  • freee自体も小さな企業であるが「カルチャーに投資する」「1:1でとことん話し込む」「チームでミッションステートメントをつくる」などを掲げて、freeeの開発したバックオフィスシステムを活用して経営してきた。おかげで3年連続して働きがいのある会社ランキングに入賞できた。
  • freeeが目指すのはクラウド完結型社会である。行政など会社の外とのやりとりがクラウドで完結できないボトルネックである。 

次に、杉山知之デジタルハリウッド大学・大学院学長が講演した。

  • あるとき、21世紀になったらどのように仕事をするか考えた。結論は、力がある人はフリーランスになりプロジェクトベースで離合集散するハリウッドの姿だった。それがデジタルハリウッド大学(DHU)設立に結びついた。
  • デジタルハリウッドスタジオという事業を行っている。好きなことを、好きな時間に、好きな場所で、自分らしく働くをテーマとして掲げて女性の活躍を応援している。次世代主婦・ママデザイナー1万人育成が目標で、主婦・ママ専用スタジオを設立してきた。
  • スタジオはハイブリッド・ラーニングで進めている。オンライン講座を自分のペースで勉強したうえで、スタジオに集まり深掘りする。流行り言葉で言えば反転学習である。
  • 受講生の7割以上が学んだ成果を仕事に結びつけている。スタジオ出身の女性たちが組織した米子コンテンツ工場は女性の力で地域を活性化しようとしている。「一人ではできなくても、みんなだとできる気がする。」と彼女たちは言う。ハイブリッド・ラーニングで顔を合わせてきた成果である。卒業生ネットワークは重要である。 

その後、山田肇ICPF理事長をモデレータとしてパネル討論が実施された。小林史明自由民主党衆議院議員が以下のように口火を切った。

  • 20世紀は大量生産が中心の社会だったが、人口減少、グローバル化、IT化により、第二創業期に入っている。しかし、その成功モデルが作られていない。
  • ITを導入して働き方を変えていくときの課題の一つが人材評価である。

これに対して佐々木氏は次のように発言した。

  • 売上金額を並べれば評価が決まった時代は終わった。今日も社員人事評価について徹底的に議論してきた。定性的な評価が重要な時代と認識しており、話し合いの徹底が重要と考えている。 

また、小林氏は杉山氏の講演について次のように質問した。

  • 人生100年時代が来て80年の人生にもう20年が加わった。社会人から高齢者までモチベーションアップの場が必要になっている。大学はどのような役割を担うのか。

杉山氏は次のように回答した。

  • 現在の社会状況と高校までの教育がずれている。普通の大学は教養を学び、その後、専門科目を学ぶ。DHUは逆にしている。専門科目を深掘りしようとすると学生が教養不足に気付くので、後から補うのがよい。また、複雑な世の中に対応できるようにDHUは社会人教育からスタートした。

以後、多様なテーマで意見が交わされたが、発言者名は省略し概要を紹介する。

シニアへの教育機会の提供について

  • 起業家の年齢構成を中小企業白書で見ると60歳以上が32.4%を占めていることに気付く。シニアへの教育機会の提供は重要である。
  • 若者が今から大学で学習しても社会に出るのは早くても2020、第一線になるのは2030年である。即効性のあるのは社会人学生への教育である。
  • シニアが起業した小企業はfreeeのような企業にとって重要な顧客である。彼らはいろいろなことを勉強し、また、経理の数値をよくしようと実践を重ねている。タブレット、アプリを誰もが使える時代になりシニア層へのハードルが下がってきた。
  • 思いついきたときに学習できることが大事であり、MOOC(無料オンライン講座)も広まっている。しかし、オンライン学習には著作権の問題がある。
  • 著作権法の改正は政治の宿題である。行政手続も同様にデジタルを前提に変革する必要がある。官民データ基本法が議員立法された理由はここにある。

行政の電子化について

  • 起業するときは23種類の書類が必要という話があった。公証役場は本人の出頭を求めている。出頭すると本人確認にマイナンバーカードの提出を求める。それなら、最初から電子手続できるのに改善が進んでいない。
  • 印鑑主義と対面原則は課題である。印鑑を3Dプリンターに作られたらどうするのか聞くと誰も答えられない。全社員にマイナンバーカードを作ってもらいたいし、社員証にマイナンバーカードを使ってほしい。マイナンバーカードを普及させることは行政の電子化に役立つ。
  • 税金の納付・還付には多数の書類を使っている。マイナンバーカードの広範な活用は重要なステップである。個人の確定申告は電子的にできるが、法人ではまだ実現していない。これは国家的損失である。
  • これからはマイナンバーカードによる手続きを義務化しなければならないかもしれない。地方は圧倒的にデジタル化されてないが、これを突破するようにIT企業は地方の市場を取りに行ってほしい。
  • 印鑑証明書は紙に精緻に陰影を表現しているため3Dプリンターがあれば複製は誰でもできる。マイナンバーカードよりも印鑑証明書の方が危ない。

「柔軟な働き方」の必要性について

  • 働き方改革では残業時間を規制するが、どこかでルールをつくる必要があり、制限のなかで工夫していくのがよい。
  • 労働人口は減少し2050年には労働人口が5000万人を下回る。そのころには人の取り合いになるのだから、柔軟で働きがいのある環境を実現しておかなければならない。地方だけでなく東京もそうなっていく。
  • 個人事業主・中小企業だけでなく、副業もクラウド会計システムがあれば便利だ。副業を認めることは重要であり多様な人材の獲得にもつながる。
  • MITは教員に週4日間の労働を課している。他の1日は他のことをしても良い。企業の役員している人も多いが、これはアカデミアとビジネス双方にメリットがある。
  • 副業には法的なリスクも存在する。たとえば、だれが保険を負担するか。厚生労働省としてガイドラインを作る方向だが、デフォルトを副業可にして、禁止もできるようにするのがよい。

人工知能やロボットでの労働の代替について

  • 会計計算など月に一回人手で入力していたのが自動化されると、数字を見るようになる。目の前の作業から解放され、好奇心をもって数字を見て、自動的にクリエイティブになっていく。
  • 現在のAIは人間の脳のように万能型でない。アルファGoは囲碁に特化している。人工知能は特定業務では人間よりもパフォーマンスを発揮するが、AIに委ねて余裕の生まれた人間には、取り組める領域が拡大する。
  • 人口減少を機会としてとらえている。センサーやロボットなどは日本の強みである。もう一回、日本にチャンスが回ってきた。産業革命は人力からの解放であり、第四次産業革命は単純な情報処理からの解放である。チームをマネジメントするのは人間の仕事として残る。
  • 失業率が下がっていることによって雇用保険に余裕がでてきている。これをリカレント教育に使い、社会人を再教育してロボット時代に備えることが重要である。

会場から、若手は現場をみているが決定権は上の世代にあるというように、世代間のアンバランスが問題ではないかという質問があった。パネリストは次のように回答した。

  • 人は自分の意見が尊重される環境で働きたいと考えている。これが経営側のプレッシャーとならないような職場であれば人はやめていく。人材の流動化を起こしていく必要がある。
  • 一つに依存することによって交渉力が落ちる。依存から脱却は独立ではなく、「より多くへの依存」ではないか。
  • 全世界でみると人口の半分は30歳以下である。「Don’t believe over 30.」を掲げて自分たちで市場をつくっていけば良い。

わが国で労働生産性上げるというが、営業の生産性が低いのではないかという質問も出た。今までの慣行の改革についてパネリストは次のように意見を表明した。

  • 営業の仕事の問題点は、20%しか営業してない、残りの80%は移動に使っているということだ。ビデオ会議を使っての営業などを進める必要がある。
  • 経営が最終的に人工知能におきかわるかは、Noだと思う。経営は人工知能にはできない。経営はいろんな変数がありどれを重視するかでゴールが変わる。経営には感情・理念が大事になってくる。
  • 政府の役割はデジタル社会では小さくなっていく。地域らしいビジネスが重要で構造改革特区はそのためにあり、サンドボックスという提案がある。一つだけ規制緩和するのではなく、何でもやっていい特区をサンドボックスとして指定し挑戦するのがよい。
  • 世界とどう戦うかは世界基準で考えるべきである。

最後に、パネリストはそれぞれ次のようにまとめの発言を行った。

佐々木氏:労働の生産性はモチベーションによって変わる。事務作業を減らして楽しい仕事をできるようにfreeeの事業を進めていきたい。
小林氏:デジタルの社会を楽しい社会にしていきたい。マイナンバーカードで行政のデジタル化を進めていく。努力が見える化される、場所と時間にとらわれない、そんな社会が実現するようにしていきたい。
杉山氏:デジタルファーストにするために、やり残していることはたくさんある。一つずつ壁を壊していく必要がある。 

最後に山田氏が全体を次のようにまとめた。

デジタル化が進み、一人ひとりがそれぞれの価値観に応じて働き方を選択できる未来が展望できた。楽しい働き方は夢ではないが、そのためには、多くの規制改革や生涯教育の充実が求められる。クラウド完結型社会の実現のために取り組むべき課題が今日のシンポジウムで見えてきた。

知的財産 特許調査から始まる特許の有効活用 鷲尾裕之氏(特許戦略コンサルタント)

日時:11月9日(水曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス6号館6302教室
東京都文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:鷲尾裕之(特許戦略コンサルタント)

鷲尾氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、鷲尾氏は次のように講演した。

  • リケンテクノスで技術開発、分析、知的財産の仕事をして独立した。分析研究をやっていたことが、侵害行為とは何か、どう立証するかといった知的財産業務に役立った。
  • 特許とは、「特許権」である。特許庁に出願し、特許要件というハードルをクリアしたものに権利が与えられる。そして、権利付与は原則特許庁が行う。一方、特許侵害の判断を行うのは裁判所である。特許権は発明に対して与えられるが、発明とは「技術的思想」である。特許明細書を読むというのは、技術的思想を読み取ることであり、それが、たとえば特許侵害の基準にもなる。「特許請求の範囲」に書かれているものは技術的思想である。一方、「実施例」は技術そのものである。
  • 特許審査の対象は発明であって、過去の発明と技術的思想が同一か、進歩性があるかなどが、対比される。一方、侵害を争うときには、第三者の製品、つまり現物が技術的思想の範囲(特許発明の技術的範囲)に入るかどうかが争われる。
  • パイオニア発明が出来れば事業は安泰か? 答えはNOである。後発他社は「あの発明があるから、この分野は参入できない」と思う必要はない。パイオニア発明があっても、特許要件を満たせば特許は取れる。後発他社は、先行特許と互いに侵害し合っている状態を作り出すことでその分野に入っていく。パイオニア発明をした企業は、後発他社の参入を防ぐために、最初の出願から一年半以内に改良特許を大量に出願すべきである。
  • リケンテクノスはポリ塩化ビニル樹脂コンパウンドのトップ企業で安泰なビジネスをしていたので、その頃は特許化しようという思想がなかった。その後、新素材が出て、その分野に入ろうとしたら、そこは特許重視の世界だった。そこで、技術陣と知的財産部が協力して特許化を進めていった。技術屋が特許の重要性を理解して、知的財産部を道具として使った。「知財力ランキング」で評価されたのはここである。技術屋は継続して事業として利益を作るシステムを作らなければならない。技術屋は知的財産部を使うようにするべきだし、知的財産部は技術屋の技術を理解しなければならない。
  • 特許調査とは特許地図を書くことである。その技術分野において自社の立ち位置がどこにあるか。他社の特許はどこにあるのか。他社製品も調べなければならない。自社の強み・弱みを知り、いつでも訴訟に対応出来るように準備しておくのが特許調査である。そして、侵害の事実を証明できる証拠を得るのが分析という仕事である。
  • 熱可塑性プラスチックは、分子量に分布がある、特定の長さの分子を見ても構造の分布がある、混合物である。プラスチック市場で中間加工メーカーは異なるプラスチックを溶融混練して、組成して販売する。それを成形加工メーカーが買って成形し(溶かす、流す、固める)、完成品メーカーが買って組み立てる。
  • プラスチックは、レシピが同じでも作り方次第で異なるものが出来上がる。成形条件で性能が変わってしまう。しかし、日本では製造方法の権利化は、米国の裁判におけるディスカバリのような制度がないので、侵害を争うのが難しい。そこでレシピを出願するのだが、レシピが同じでも違うものができるということは頭が痛い。何を権利化するかよく考えなければ無駄になる。自社が権利化し、他社を侵害する権利範囲は何か。それを検討する必要がある。
  • 特許調査では漏れがあってはいけない。キーワードでの絞り込みは困難で、それでも電気、通信分野と比較すれば関連特許は少ないので、いざとなったら力業に頼る。全部読むわけだ。技術者と同等の知識を持つ知的財産部員が調べて、技術者にプレゼンするのがよい。製品の現在の流れ、将来の市場の方向性を考えて、奥の深い出願をする。拒絶理由が来たら、狭いが有効な権利を取る。特許調査では、権利の安定性・行使の容易性を評価する必要がある。
  • 特許付与された権利の6割は無効化されている。私見だが、実際には、9割くらいには無効理由があると思っている。権利侵害の証明の難しい特許権も無視される。そのような情報も他社との交渉で役に立つので、特許調査で押さえておく必要がある。

講演後、次のような質疑があった。

企業経営の観点から
質問(Q):相手と交渉するために大量に特許を取ってしまう状況に陥ることもあるだろう。特許調査は力業といっていたが、実際どれくらい読むのか?
回答(A):2~3,000件は読む。これは中間加工だけの話。合成のも合わせれば15,000くらい読む。
Q:調査の時に1人で読んでいると属人的になると思うが、その知識をどのように共有していたのか?
A:PPTに定期的にまとめて、参加自由で月1でプレゼンして共有していた。研究所の月次報告会でも、月次報告書を予習しておいて出願案件、サンプル検討停止、回避設計などの議論をした。
Q:そうすると技術者も効率的に協力してくれるのか?
A:難しいケースも少しはあるので効果の向上を意図して、各部署の若手で、やる気ありそうな人を特許担当にしてもらってまず彼等に話していった。
コメント(C):キヤノンでも月1で会議をしている、とセミナーで話があった。キヤノンにしろ、リケンテクノスにしろ、特許に強い企業はそういうことをきっちりやっている、という印象がある。
Q:リケンテクノスの売上規模だと、知的財産活動にかけられるお金には限界があると思う。ほとんど弁理士と維持費に消える。それでも知的財産にお金をかけようとするのであれば、会社の将来像を考えてやる必要があると思うが、それについて経営陣とはどういう関係を築いていたのか?
A:当時の経営陣は柱であるポリ塩化ビニル樹脂の世界は、自社が国内トップメーカーとしてノウハウの世界を作って特許の世界とは一線を画していたため、知的財産のことを深くは知らない人が多かった。しかし、専門の知的財産部に最終的には任せる経営の懐の深さとそれを支える知的財産部長の能力はあった。最近は、知的財産の価値を知るスーパー技術者が経営陣に入ってきた。弁理士に頼めば権利は取りやすいが1件20万円掛かるので、重要なものだけは頼んで、後は知的財産部員で書いて経費削減をしていた。
C:リケンテクノスみたいに知的財産活動について良い評価を受けても、経営者から「お金がかかりすぎないか?」と言われてしまう。日本全体の意識を高めないといけない。

特許の権利化について
Q:年30万件くらいの審査請求を、2,000人の審査官で見ているので、見落としてそのまま特許になってしまったものもあるのでは?
A:そう思う。私もセミナー等では、拒絶理由通知に対しては面接に行くのがいいといっている。特許庁の調査は外注で行ったり、過去のものを列挙して拒絶される場合もある。手が回らなくて、権利化されることもあると思う。
Q:化学特許は特許期間20年の満期まで特許を維持するパターンが多いのか?
A:そう。途中で放棄してくれたらラッキー。まずないが。
C:移動通信の世界は10年くらいで技術が入れ代わっていくので、どんどん権利放棄している。特許の維持費が高くつくからだ。
A:プラスチックはなかなか新しい技術は出てこないので、たまに新しい素材とかが出てくると、こぞって権利化する。
Q:特許審査の際に、キーワードで読んで、審査官が「これは有効ではない」という場合がある。たとえば、無線機の技術は誰が書いても同じようにキーワードが並ぶので、そこだけ見てはじかれてしまう。
A:そういうときは、対比表を作る。審査対象となる特許出願と既存特許の構成要素を並べ、何が違うのか説明できるかが大事。審査官が読むということを考えて書いている。ただ、そこを読み取れない審査官もいるので、そういう時は面接にいって、その内容を補正書や意見書に落とし込む。そこまでやらないとダメな場合もある。
Q:読み取り方を考えるように、特許請求の範囲も織り込んで考えているということか?
A:そう。よく分かっている技術者は複数の特許に分割可能な、深みのある、将来を見越した明細書を書いてくれる。同じ権利範囲を取るにしても、審査官が納得しないようであれば、どんどん分割して、別の審査官に見てもらうようにする。分割できるようにするためには元の明細書をいかに深く書いておけるかが大事。狭い権利範囲であっても他社が実施しなくてはいけない「嫌がられる」権利をとることが肝心。

特許侵害訴訟とパテントトロールについて
Q:日本で製造方法の特許侵害立証が難しいというのは調べようがないからであって、アメリカには裁判におけるディスカバリ制度があるから有効な権利となる、という理解でよいか?
A:日本では特許権者が侵害行為を立証しなければならないハードルが高い。他社の工場に入って調べることは出来ないから。
Q:リケンテクノスは無効審判をしたことはあるのか?
A:ある。しかし、特許侵害訴訟はない。
Q:化学業界で少ないのか?
A:プラスチックの世界ではあまり聞かない。お手紙(警告書)は行き来しているようだが。
Q:会社によってはお手紙を見ないみないところもある。そのような企業は知的財産をどうとらえているのか?
A:私見だが、様々な技術分野に有効な権利を持つ企業は強気でいられる。ただし、総じて化学企業はおとなしいと感じる。もっと、ガンガン訴訟をやった方が、国際競争力向上の観点ではよいと思う。
Q:相手が製品を全く作らないとすると、侵害をいわれるだけで対抗できないのではないか?
A:そういう状況だと、理論はともかく事実上は確かにそうなる。
Q:製品を作らないところが特許を取ると非常に強い権利になってしまう、という理解でいいか?
A:それで正しい。それを防ぐ法律はあるが、機能しているとは考えにくい。
Q:通信の世界では、他社の特許を買い取って権利侵害を訴える企業(自分では作らない(パテントトロール)がいて問題になっているが、化学の世界でもそういうのはいるか。特許を取っておいて、全く別のことをしている企業はあるのか? 私の会社では、自社の主力分野(たとえば業務用無線)よりも他分野(移動通信)の特許を取った方が利益が出る。そのような考え方はないか。
A:特に聞いたことはない。ただ、リケンテクノスではオールリケンでどう特許を取るかを考えていた。

行政 個人情報の活用:マイナンバーの利用拡大に向けて 榎並利博株式会社富士通総研主席研究員

日時:5月26日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5103教室(5号館1階)
東京都文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:榎並利博(株式会社富士通総研主席研究員、ICPF理事)

榎並氏の講演資料はこちらにあります。

冒頭、榎並氏は講演資料を用いて概略次のように講演した。

  • メインフレームの時代には、法律に基づいてシステムを設計、プログラムを開発していた。インターネットの時代になって、ITを効果的に活用するため、従来の法律や制度を見直す、あるいは、新たな法律や制度を作るという考え方が生まれた。これからはIoTの時代であって、あらゆる場面ですでにITが存在することを前提に、従来の考え方から離れて、法律や制度を根本から創り直す必要がある。マイナンバーの利用拡大もこのような発想で進めるべきである。
  • 医療分野では、被保険者番号と被保険者証(カード)が用いられているが、統一的番号がなく、本人特定のカードが無いことによる不都合が起きている。国民にとって理想的な医療制度を構築するために、マイナンバーによるデータの管理、マイナンバーによる傷病歴などの把握、在宅医療と介護・福祉、災害対策などの情報共有、マイナンバーカードによる本人確認を行うべきだ。
  • 厚生労働省の研究会は、患者の病気や身体的特徴など非常に機微な情報を扱うこと、個人を特定した医療情報の蓄積および分析は健康な社会の実現という社会全体の利益になることの二点を挙げて、医療等IDの特殊性を説明している。しかし、患者の生命に関わる重大な情報を扱うこと(情報の取り違え、情報入手の遅延等が致命的になるケースがあること)、患者をケアするため、患者を取り巻く多くの関係者(医師・看護師・薬剤師・介護事業者・自治体など)が利用すること、大規模災害のときには、プライバシーよりも人命を尊重した情報の取り扱いが要求されることの三点は触れていない。この言及されなかった部分をカバーしようとすると、医療にもマイナンバーを用いるのが不可避となる。
  • 医療でマイナンバーを用いる際には、医療の事情に特化した利用と保護のあり方に配慮する必要がある。それらをカバーするように、マイナンバー法とは別に医療マイナンバー法を特別立法するのがよい。医療マイナンバーシステムは、情報セキュリティの3要素(Confidentiality、Integrity、Availability)を考慮して設計しなければならない。多職種による利用と認証およびデータ量を考慮すると、医療マイナンバーに特化したネットワークシステムを整備するのがよい。
  • マイナンバーを戸籍に用いる方向にある。住民には、戸籍謄抄本の添付が不要になる、相続権の確認が簡単になるといったメリットがある。行政にも、内部事務の効率化と正確性の確保、戸籍システムのコスト低減といったメリットがあり、戸籍をクラウド化して法務省に戸籍事務を移管するまで進めば自治体事務が軽減される。
  • 問題は文字コードである。外字(誤字)の姓を使い続けたいという住民の希望に合わせて、システムから外して紙で管理している「改製不適合戸籍」もわずかだが存在している。漢字のデジタル化を法制化し、戸籍統一文字への縮退・統一を実現すればよい。
  • そもそも戸籍は必要なのか。本籍が差別の根源であるなら、なおさら不要なのではないか。韓国の家族関係登録制度のように全面的に改革するのも一案である。
  • 日本再興戦略において、不動産についてマイナンバーの言及が全く無い。自治体は、固定資産へのスムーズな課税ができない。住民登録外の納税義務者(不在地主)の死亡通知が自治体に来ないため、「死亡者課税」が把握できないという制度的な欠陥がある。土地の所有者が不明であると、森林・耕作地の整理(農林業の復活)も進まない。
  • 人々が相続登記しないのは、手続きが煩雑で大きな費用を負担する必要があるのに加えて、法律上の義務ではない任意行為であるなど、相続人にとってメリットがないからである。それに加えて所有権が強すぎ、第三者が勝手に処分することができない。
  • 日本人は不動産の所有に強いこだわりがあるが、この所有権問題を解決しなければ、不動産へのマイナンバー付番できない。土地は公共物であり「利用が所有に優先」する原則を徹底し、不動産登記法を改正して登記のあり方を抜本的に改革すべきである。不動産登記簿に所有者のマイナンバーを登録することを義務付け、法務局が責任を持って管理する、所有者の住所変更・死亡などについては、法務局がマイナンバーを使って定期的にチェックし、死亡については相続登記を促すといった方向に動きだすべきである。
  • IoT環境(ITが社会に浸透している前提)で、私たちの理想的な国家(政府・自治体)を構築しようとするならば、憲法が規定する自由権と社会権の関係も考え直さなければならない時期である。

講演後、以下のテーマで質疑が行われた。

医療関係について
Q(質問):医療に関する情報がセンシティブであるという意識は根強い。医療情報に特化した利用と保護は具体的にはどのようになるのか?
A(回答):職種ごとにアクセスコントロールを行うことや、たとえば、精神科への受診履歴は医師であっても全部は見られないようにするなどが必要。医療等IDがマイナンバーでなければ、それだけで安全になるわけではない。
C(コメント):医師の守秘義務など、現状はしっかりできていない。医療情報の管理と保護はもっとしっかりすべきというのはその通りである。
C:東大の在宅医療・介護連携のケースでは、多職種が一人の患者について情報共有しているが、関係者個々にアクセスコントロールができるシステムを構築している。こういうものを全国にどのように展開するかが課題である。
A:実際の現場では、メールや電話などで情報共有している。現在のほうが危なっかしい運用である。

戸籍関係について
Q:戸籍法第27条2項では、戸籍に関する届出には運転免許証などの本人確認が必要と書かれている。マイナンバーカードがあれば1枚で済むし、ネットで手続きもできる。マイナンバー利用にすぐに移行すべきではないか?
A:法務省は、戸籍もマイナンバーで管理すると言っている。スムーズに実施するには、使用漢字の問題をクリアにしなければならない。
Q:プライバシーに関して、自分の氏名はカタカナで表記すればたくさんの人があてはまるが、漢字にすると特殊な漢字なのでたった一人であり、個人が特定されてしまう。マイナンバーを使うことにして、名前は変更可能な制度にしてもいいのではないか? キラキラネームをつけられたような場合、その名前が重荷になる。名前の変更は、現在は手続きが大変である。
A:そうであると、自分の存在が番号だということになってしまう。番号に乗りすぎないことも必要ではないか。親は、子供の名前に願いを込めている。
Q: 戸籍へのマイナンバー附番は実際にはどうするのか?
A:戸籍に番号を振るには、住民票からたどっていくしかない。
Q:戸籍へマイナンバーを附番しても、古い戸籍は画像データであり、死亡者はマイナンバーがないので、相続の手続きは簡単にはならないのではないか?
A:すぐには便利にはならない。20年後、30年後を見据えて行うべきである。米国では、相続の際には、探偵を雇うという。日本も、戸籍に頼った相続人特定を考え直してもいいのではないかと思う。
Q:戸籍の外字の問題をすっきりさせるというのは賛成である。JISにない漢字を変えるのは嫌だという人はいるのか?
A:30万戸籍の中に58戸籍の改製不適合戸籍がある。法務省で統一文字にすると提案し他際に、国会でたたかれて、そのままになった。国会議員の感覚から変えてもらわないといけない。
Q:100年くらい経てばなくなるのではないか?
A:ワタナベなどは、姓なのでなくならない。子供が姓をJISの文字に変えたら、親が乗り込んできたということも実際にあったと聞く。
C:「いや」か「いやじゃないか」と聞けば、「いや」と言われてしまう。自分の親の名前も明らかに誤字であるが、絶対に変えたくないと言っている。
Q:戸籍クラウドをつくり、自治体から法務省に事務作業を移すとしても、法務省側で事務をする人が増えるだけではないのか?
A:問い合わせや郵送といった作業はなくなるので、トータルでは人は増やさないで済むのではないか。
Q:住基ネットの最高裁の判決で、自治体レベルだからOKで、国レベルで情報を一元化するのではNGというものであった。戸籍クラウドは、情報の一元管理にあたらないのか? 公共の利益で押し通せるものであるのか?
C:税務署もマイナンバーで情報を一元化するので同じではないのか?
C:住基ネットでは、①扱う情報の内容がたいしたことがない、②利用目的が法定、③罰則規定があるということでOKになった。マイナンバーは、扱う情報の内容がもっとセンシティブなので罰則も厳しくなった。戸籍もセンシティブな内容であるので、難しい部分はある。
A:法務省と個人情報保護委員会の協同管理という形はとれないかと思っている。また、「個人情報の一元管理」という言葉の解釈だが、すべての個人情報を一元管理するのが違憲という意味であれば、戸籍だけに限定すれば問題ないという解釈も成り立つ。
Q:戸籍のコンビニ交付が実施されているが、戸籍クラウドがあれば紙がいらないのか?
A:精査していないが、行政手続きでの添付書類はいらなくなる。
Q:民間、例えば、銀行も戸籍クラウドにアクセスできる仕組みになるのか?
A:(民間なので)直接ではなく、ワンクッションおいた形でアクセスできるといい。
C:銀行が、相続の手続きに戸籍を求めるのに法的根拠はないのではないのか。銀行が自己防衛のために求めているだけだ。

不動産関係について
Q:所有者不明の不動産に対する死亡者課税とは、死亡している人に請求するということか?
A:死亡者に請求書を送付すれば、家族が受け取る。実際には相続人である家族が支払う。ただし、登記簿上の名義はそのままである。家族とも連絡がとれなければ、支払われないことになる。実際には、売却しても価値のない土地だから放置されているので、課税額はたいしたことはない。
Q:不動産の登記がきちんと行われていない問題は、海外ではどうか?
A:米国では、自治体レベルで土地の所有者情報がインターネット公開されている。購入価格などもわかる。
Q:登記が義務化されているのか?
A:義務化されているのかはわからないが、登記(登録)していないと不利益になるため、きちんとされることになる。日本ほど所有権が強くないため。
Q:長年放置された口座の残高は銀行に入る。土地も同じ仕組みでできないのか?
A:民法では、土地も所有者が不明であれば国庫に入ることになっているが、実際には難しい。
C:物権と所有権の違いである。銀行口座の残高は、債権になるので、土地(物権)と扱いが異なる。
C:不動産を相続する場合、戸籍をさかのぼり相続人を探し、全員の同意で相続ができる。これは非常に大変な作業である。だからこそ、不動産と戸籍の両方でマイナンバーを利用するのが改革になる。