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電子行政研究会セミナー「マイナンバーの活用はどんな未来を拓くか」 大串博志内閣府大臣政務官ほか

2012312日、東京都千代田区麹町にある「ラポール麹町」で、年度第2回目となる電子行政研究会公開セミナー「マイナンバーの活用はどんな未来を拓くか」を開催しました。
当日は、約100名の参加者にお集まりいただき、大変熱のこもった講演とパネルディスカッションが行われました。 

はじめに、内閣府の大串政務官から基調講演をいただきました。

大串博志氏 (内閣府大臣政務官)の講演資料はこちらにあります。

番号制度は、新しい社会保障の在り方を実現するため、現政権で絶対に導入したい。日本では個人の情報が得にくく、生活困窮や生活保障のニーズに関する情報が極めて少ない。財源が限られる中で社会保障を効率的に届けるために、番号制度は重要である。
利用範囲について、スウェーデンのように幅広い形にすることも考えたが、当初は社会保障・税・防災分野での利用とした。今後、通常国会に提出した法案の成立を急ぐとともに、2013年に特別法案を提出し、医療分野への拡張について考える。さらに2018年を目途に利用範囲の見直しを検討する条項を盛り込んでいる。
地方公共団体との関係について、医療、介護、福祉など市町村が実施団体になるものが多く、どのようなインタフェースで進めていくかが重要な課題。さらに突っ込んだ意見交換を行い、ガイドライン等も一緒に作っていく必要がある。
社会保障や民間での利用範囲の拡大が課題だが、セキュリティとのバランスになる。セキュリティの懸念を払しょくし、実体面での手当が進むほど、利用範囲も広がる。できるだけ、使い勝手がよく便利だと思っていただけるものにしていきたい。 

続いて、国際公共政策研究センターの足立祥代氏より、「自治体はマイナンバーをどう活用するか」と題した講演をいただきました。 

足立祥代氏 (国際公共政策研究センター 主任研究員)の講演資料はこちらにあります。

「番号」は単なるツールであり、どのような制度で活用するかが重要。普及のためには、利便性を日々の暮らしの中で実感できることが必要。行政の窓口である基礎自治体での番号の有効活用が鍵になる。
現在、市民の実態把握が難しくなっている。例えば無保険者等が行政で把握できず、簡単に制度の谷間に落ち込んでしまう状況がある。また、自治体の住民向け支援メニューが複雑化し、各制度で異なる番号で管理しているため、それらの連携がしにくくなっている。
マイナンバーは、各制度の連携の起点(アンカーポイント)になり、これらの課題解決につながる。自治体でマイナンバーを活用することにより、サービス対象となる市民の正確な状況把握、職権事務処理によるサービス、ライフイベントに沿ったお知らせ型行政、災害時の適切で迅速な支援提供、生活支援サービスや住所変更のワンストップ化、国を含めた行政機関間でのサービス調整等が期待できる。また、行政情報の見える化が進み、制度の評価や見直し、市民の積極的な参画にもつながると期待している。
今の行政サービスは、人生を点で支えるものが多い。マイナンバーの導入によって、どんなライフステージでも市民を見失わず、切れ目なく支えることが可能になる。 

続いて、富士通総研の榎並利博氏より、「マイナンバーの先に見える未来」と題した講演をいただきました。

榎並利博氏 (株式会社富士通総研 主席研究員)の講演資料はこちらにあります。

番号の民間利用には様々な論点がある。例えば、民間と言っても概念が広く、純粋に利益を追求する企業だけでなく、医療、福祉など公共的な役割を担う企業も多い。また、利用目的もさまざまな目的が考えられ、その範囲をどこまで広げるか、利用を義務化するのか本人の選択に任せるのかなどの論点もある。これらについて一つひとつ議論しながら決めていけばよい。
外国の番号利用は各国の歴史や文化によって異なり、米国や韓国ではそれぞれの必要性や利便性から特に制限なく民間でも番号を利用している。スウェーデンでは公的機関が民間企業に個人情報を提供することまでしている。日本人は慎重に利用するというマインドを持っており、番号の民間利用について日本人なりの文脈で考えていくべきだろう。
民間利用は2018年の見直しでの焦点になるが、何に使うかきちんと決めながら進めることになるだろう。国民の財産・生命を守るための民間事業での利用の他、消費者が利便性を享受するためのマイナンバー利用も想定される。目的によっては本人の選択に任せるという方法もあるだろう。
国民の健康や生命を守るためには、医療介護分野で統一的な番号による情報の連携が必要。災害時の被災患者支援でも、マイナンバーを民間が利用できれば迅速な対応に役立つ。
スマートシティの基盤としてもマイナンバーを活用できる。スマートメーターやSNS、環境情報、店舗情報と重ねて活用することにより、省エネだけでなく、地域の活性化や新しい価値創造が可能になる。 

休憩後、情報通信政策フォーラム理事長の山田肇東洋大学教授の司会により、講演者(足立氏・榎並氏)の他、内閣官房参事官の阿部知明氏・奈良俊哉氏、東京大学大学院の須藤修教授、高井崇志衆議院議員によるパネルディスカッションを行いました。パネルディスカッションでは、須藤教授のショートプレゼンテーションの後、会場も含めた活発な意見交換が行われました。

(司会)山田 肇氏
(パネリスト)足立祥代氏、阿部知明氏、榎並利博氏、須藤 修氏、高井崇志氏、奈良俊哉

山田氏の講演資料はこちらにあります。

須藤氏の講演資料はこちらにあります。

【自治体での番号活用について】

  • 自治体では今後、データベースを軸にした業務、プッシュ型サービス、総合窓口への転換、さらにクラウドの共同利用が進む。法案成立後、こうした動きを全国的に進めることになる。
  • マイナンバー活用は、防災の分野から始めるのが良い。自治体がクラウドと番号を利用して、災害に強いバーチャル自治体を作る。
  • 災害時に個人情報をどのように読みだすかについては国民的な議論が必要。災害時の安心安全と情報セキュリティがトレードオフの関係になる。戸籍情報も連携できれば、被災者の親族関係を確認し、適切な遺産相続や資産管理が実現できる。
  • 番号を使って自治体連携を進め、自治能力を高める意識が必要。様々な施策は必ずしも、全員が賛成するとは限らないため、首長の役割が重要。
  • 政府と自治体との連携は極めて大事。情報連携のための技術標準を自治体へ早めに情報提供し、システム改修を進められるようにしたい。
  • 法案で想定している期日に間に合わせるには、20131月には設計開発にとりかかる必要がある。今国会の会期内に法案を成立させなくてはならない。

【番号制度における官民連携と期待効果について】

  • IT担当室では、もともと社会保障・税に限らない情報連携のしくみとして国民ID制度を検討してきた。5年後を目途とした見直しでは、社会保障・税を超えた連携を前向きに検討するものと考えている。現在、IT戦略本部 電子行政に関するタスクフォースでも検討中。
  • 普及のためには、日々の暮らしで番号が使われることが重要。医療・介護の分野での利用が鍵になる。また、番号を使うことが自分のメリットになるしくみが必要。医療費還付の案内等、メリットを国民に明確に説明できるサービスを設計する必要がある。
  • スマートシティはバイオマスなど、地域にエネルギー産業と雇用を生み出す。先を見据えたしくみを検討すべき。
  • 番号を活用していかに効率的な電子政府を作るか、またそれが経済波及効果を持つかを検討している。法人番号は、企業コードとして事業所まで把握し、それを活用して、企業の行政手続の簡素化につなげられないか検討している。
  • マイポータルの画面提供業務は、民間に開放することもひとつの選択肢。またウェブベースでなく、スマートフォンのアプリ等で、クラウドベースのより使いやすい設計ができるのではないか。

【マイナンバーの活用を進めるために】

  • 政府でも将来的な民間活用を期待している。どのような使い方があるのか、民間から関係各省にアイディアを出してほしい。
  • 民間利用の範囲は、ポジティブリスト方式でなく、ネガティブリスト方式にすることも検討すべき。
  • まず医療情報をどうするかの議論が必要。国民的議論を進めてほしい。
  • 米国では、行政機関が保有する個人の情報を外部提供し、官民が協力して公共的役割を担う「Government2.0」の考え方が進んでいる。そのためには、守るべき情報、匿名化して活用する情報、新しい公共の在り方等について番号制度をからめて議論する必要がある。

最後に、高井崇志衆議院議員にセミナーの総括をしていただきました。

マイナンバー法案は別表で利用範囲を定めているが、別表は逐次改訂するものである。個人情報の議論を尽くした上で利用範囲を見直していく。他国に比べ、日本は2周遅れの状況だが、逆転のチャンスである。官民挙げての一大プロジェクトであり、民間の知恵を活用して進めていきたい。

電子行政研究会セミナー「電子行政の構築と政府CIOの設置」 和田隆志内閣府大臣政務官ほか

20101214日、94名を集めて、電子行政研究会の第1回セミナーが開催された。熱気にあふれた会場で「電子行政の構築と政府CIOの設置」について多くの発表が行われた。

基調講演: 目指すべき電子行政の姿について
和田隆志氏 (内閣府大臣政務官) 

和田氏の講演資料はこちらにあります。

講演: 抜本的な電子行政の革新
安延 申氏 (経済同友会電子政府推進部会) 

安延氏の講演資料はこちらにあります。

講演: 電子行政を実現する情報システムのあり方について
須藤 修氏 (東京大学) 

須藤氏の講演資料はこちらにあります。

講演: 電子行政を実現する制度のあり方について
山田 肇氏 (東洋大学)

山田氏の講演資料はこちらにあります。

講演: 政府CIO設置のための法改正試案
上瀬 剛氏 (株式会社NTTデータ経営研究所) 

上瀬氏の講演資料はこちらにあります。

案内: 電子行政研究会の活動について
内田 斉氏 (アライド・ブレインズ株式会社) 

内田氏の講演資料はこちらにあります。

最後に、高井崇志氏 (民主党衆議院議員)より以下の通り、セミナーをまとめる発言があった。 

「民主党情報通信議員連盟では電子行政に関連して、二つの取り組みを進めている。第一は、電子行政推進法の議員立法化である。電子政府ではなく電子行政となっているのは、政府と地方公共団体の両方で電子化に歩みを進めるべきと考えたからである。間もなく骨子ができるが、その内容についてこの電子行政研究会で検討し、法案化を助けていただきたい。第二は、政府が用意しているICT利活用促進一括化法についてである。法案が出て来次第、意見を提起していきたい。情報通信議員連盟としての意見は、民主党政務調査会に提案し法律化を目指すことになる。この政調との連携体制も整ってきた。」

セミナーシリーズ 第1回「デジタルファースト法の成立を目指して」 木原誠二自由民主党衆議院議員

日時:3月29日金曜日17時30分から18時45分
場所:衆議院第1議員会館第6会議室
〒100-0014 東京都千代田区永田町2丁目2-1
講師:木原誠二自由民主党衆議院議員
司会:山田 肇(ICPF) 

木原議員は内閣官房作成のデジタル手続き法案概要を配布し、次のように講演した。

  • 自由民主党政務調査会副会長を務める財務省出身の議員で、主にIT、金融、中小企業政策に取り組んでいる。IT分野ではGAFAへのヒアリングを実施している。公平・透明な市場環境を作り、その中に日本発のプラットフォーマーが誕生するため、自由な米国とGDPRで規制する欧州の中間に立ち位置を求め、Society5.0を構築していきたい。
  • 政府提出のデジタル手続き法案(閣法)の前に議員立法案(議法)があった。超党派の「デジタルソサエティ推進議員連盟」が準備した議法案を踏まえ、一部を閣法として提出した。議法では社会全体のデジタル化を目指していたが、閣法は政府の行政手続きに限られ、その点で100点満点ではない。閣法が成立したら、すぐに議法を提案したいと考えている。
  • 2002年の行政オンライン化法との違いは次の通り。どの手続きをオンライン化するについて省庁の裁量ではなく、内閣が「情報システム整備計画」として決めるようにした点。オンライン化が原則だが、利用数が少ないなど効果が薄いものは無理なオンライン化しないとした点。添付書類や印鑑証明書は郵送せよといった、「なんちゃってオンライン化」は許さないとしている点。
  • デジタル手続き法案のポイントは、デジタル・ファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ。これが政府によるすべての行政手続きに対する原則となる。
  • 具体的な内容ではマイナンバーとマイナンバーカードの利用が重要である。通知カードは廃止する、在外邦人もマイナンバーを利用する、健康保険証の代わりにマイナンバーカードを使用する、などの変化が起きる。マイナンバーカード普及の施策が、消費税増税に関連してオリンピック終了時から実施されるプレミアムポイント制度である。マイナンバーカードの公的個人認証サービスを利用して自治体ポイントや日本ポイントが付与できるようになり、将来的には児童手当なども銀行振込ではなく、ポイントとして付与できることで、政府の新たな政策プラットホームとしたい。
  • デジタル手続き法案の課題は地方に対する取組みが弱い点。憲法に地方自治の本旨が規定されており、義務化は難しい。のちに提出する議法で対応していきたい。そのほか、民間手続きのデジタル化、スマホ本体に電子認証サービスを利用したデジタルでの本人確認などもできていない。

講演の後、以下の点について質疑が行われた。

地方公共団体への義務化について
Q(質問):議法が成立しても地方自治の本旨が災いして義務化できないのではないか。
A(回答):自治体が積極的に取り組みようにインセンティブを設けようとしている。また、標準化や共通化を進め、小さな自治体を中心に、自治体クラウドを活用して共通のシステムが活用できるなどの対策を考えている。
Q:地方自治の本旨がありながらもマイナンバーは全国で導入されたが。
A:国がすべてを指図したわけではなく、マイナンバーを利用する情報システムは各自治体が構築している。その上で、自治体間あるいは政府との情報連携の共通プラットフォームを国が提供している。日本ポイントも、自治体ポイントの共通プラットフォームとして構築されるだろう。

マイナンバーの普及について
Q:健康保険組合の多くは民間だから強制できないという問題がある。政府は指導力を発揮すべきではないか。
A:その通り。まずは利用を促進する施策を実施し、また、API公開など付加価値が生まれる仕組みも提供していく。
Q:マイナンバーは本人の認証に用いられる。一方企業発行の電子文書の真正性を担保するトラストサービスが実施されていない。世界市場での競争力にも影響するのではないか。
A:理解している。政府はトラストサービスは中期的・長期的課題と言っているが、一刻も早く取り組むべきと考えている。
Q:そもそもデジタル化と言っているのに、マイナンバーカードという物理的なものを普及しようというのか。
A:本人確認に免許証、パスポート、健康保険証など物理的なものを利用しているという社会の現状がある。何枚もカードを持たなければいけないという点は、マイナンバーに集約していきたい。
Q:国民が手続きする際にはデジタルでも、官庁の中でプリントアウトして処理するのでは無意味だ。
A:PDF化すればデジタル化できたと考えるといったリテラシーの低さが官僚にはあるが、指摘の通り、すべてデジタルで完結する方向に進めなければいけない。そのために、公文書管理は全て電子化する取組みをスタートさせている。
山田:すべてをデジタル化しないと、視覚に障害のある官僚は仕事ができない。障害者を包摂する政府を作るためにも、行政内部のデジタル化を進めてほしい。

アクセシビリティについて
Q:視覚障害者は代理人に書類作成を依頼せざるを得ない。そこでプライバシーが漏れる。デジタル化を進めて自ら手続きできるようにしてほしいが、一方で利用できないシステムでは困る。きちんと対応して欲しい。
A:利用できるようにするために、デジタル活用共生社会創生会議で具体的な施策を検討している。
山田:上記会議に関わってきたが、政府システム調達の際にアクセシビリティに対応することについて、今までよりも強い義務を課する方向になっている。
Q:聴覚障害者はモノが見える。それゆえアクセシビリティに問題があると気づいてくれないことがあり、配慮が不足する場合もある。この点もしっかり対応して欲しい。
A:重要な指摘であり、きちんと対応していく。

基本的な事項について
Q:そもそもなぜ法律は縦書きなのか。
A:法律をデータベース化する、英文で提供するなど、新しいサービスを進めていく中で縦書き問題も解決していきたい。
Q:デジタル手続き法の中に、戸籍や住民票の附票を150年間保存するというのがあって驚いた。土地の所有権をたどるためだろうが、むしろ、土地登記の手数料を無料にするなどの対策のほうが費用対効果は高いのではないか。
A:登記や印鑑を用いた手続きなど、もはや時代遅れかもしれない手続きが残っている。政治は一気には前に進めないが、今後、できる限り広く理解を得て、時代にあったものにしていきたい。

健康・医療・介護へのICT活用と国際標準化活動 山田 肇高齢社会対応標準化国内委員会委員長

日時:222日金曜日1830分から2030
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室B
講師:山田 肇(ICPF理事長、高齢社会対応標準化国内委員会委員長) 

資料に基づいて講演が行われ、その後、質疑があった。
講演資料はこちらからダウンロードできます。

健康・医療・介護について
Q(質問):平均寿命と健康寿命のギャップが10年くらいあるが、有病でもかなり元気で終末期はかなり短い。となると、健康寿命の定義自体が違うのではないか。
A(回答):これはWHOで議論されている(注:WHOでは平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間と定義している)。死の判断は簡単にできるが、健康か不健康かの判断はルールを決めることになる。有病でも元気であれば医療期にあり健康寿命が尽きている人ではない。
Q:社会活動ができる高齢者は、有病でも健康寿命としたほうがよいとのではないか。
A:それはその通り。
Q:健康期・医療期などのグラフの横軸のスケールは、実際にはどれくらいになるのか。
A:私の記載したグラフには年齢は入っていないが、秋山先生のグラフはエビデンスから作図されている。男性だと73-75歳くらいから介助が必要になり、87歳から90歳ぐらいで死亡というのが平均的である。縦軸は健康寿命ではなくADLIADLではあるが、年齢がある程度読める。しかし、この調査は、少し前のデータなので、社会の在り方との間にタイムラグがある。夫に追従的な女性は、夫の死後、急に衰えるというのが秋山先生の調査結果だが、今は、そのような傾向は薄れているかもしれない。
Q:メーカー勤務で高齢者見守りSLも開発しているが、特許などの問題もあり、なかなか国際標準化活動に入るのはハードルが高い。IECでは特許の話などもでるのか。
AISOIECITUも同じルールで、特許を持っている企業は、国際標準化されそうなときは2つの方針の中から選ぶ。ひとつは、無料で使ってください、もうひとつは、お金は徴収するが、誰でも使えるという方法がある。ほとんどの企業は、後者を選ぶ。標準を作成しているときは、特許がある人は手を挙げてくださいと言うことがルールとなっている。
Q:骨折したときに、どのようにすれば治りがいいかといったこともBD分析で導きだせないのか。
A:大学院にきていた聖マリアンナの方が、50名の大腿骨骨折患者で半年間のQALYを調査して、リハビリの効果を出した。医療経済の分野ではよく行われている。

ICTの活用について
Q:親が介護施設に入居待ちである。在宅にしたくても、事業者もヘルパーが雇用できない。ICTが利用できれば健康な人の生活モデルを見える化でき、コミュニティの活動に役立つのではないのか。
AAALは、人手を減らしケアすることを可能にする。介護者との社会的交流でも、テキストベースの対話等が検討されている。インテリジェントアパートのようなものは、日本では、セコムが既にサービス化している。ただ、サービス価格により富裕層向けである。公共サービスとして、提供価格を下げて提供するには、国際標準化活動が必要である。
Q88歳の父をショートサービスに預け、大腿骨骨折で入院している母に会ってきた。父はスマホが使えない。介護する側を楽にするようなサービスについての動きはどうか。
A:音声認識・音声合成を利用してメッセージをメディア変換する技術がドコモで商品(みえる電話)になっている。これについても、国際標準をめざそうという動きが起きつつある。 

ICT活用政策の推進について
C(コメント):ファーウェイの時のように危機感をあおると、政府、官僚は動く。マイナンバーの利用を厳しく制限していても、GAFAが行っていることを見れば、個人情報はどんどん収集されている。それを訴えて、マイナンバーの利用に向かわせるのがよい。
QSDG’sの中にQOLといった概念をリンクさせて進めていった方がいいのではないか。費用対効果があるという方向は難しい。
A:まさにSDG’sに含まれるものである。健康はSDG項目のひとつになっている(注:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する)。途上国では死亡率が高いので、より健康的に長く生活してもらうようにと考えられている。ISOの活動では、SDG’sについてはあまり触れていないので、戦略的に触れていくことが必要というのはご指摘の通りだと思う。
Q:企業経営者は、SDG’sなどには敏感なので、話が進みやすい。
AGoogleSDG’sに貢献するためにフィンランドにデータセンタを作った。欧米の大企業は企業戦略としてこのあたりを非常に理解している。
Q:ECISOの国内委員会は経済産業省だが、厚生労働省は入っているのか。
A:経済産業省がやっているが、確かに、厚生労働省が関係するテーマである。経済産業省から厚生労働省に話をして、会議に出てもらったり、情報提供したり、指導をもらったりして、厚生労働省と協力して対応している。
Q:メーカーは入っているのか。
A:残念ながら、メーカーはあまり関心を示していない。唯一、関心があるのがPT63168で、自社のサービス・製品に直結するので、住宅メーカーが業界として委員を出している。
QQOLのグラフのどれに自分が当てはまるかを知ることはできるのか。
A:秋山先生の調査では、大企業の管理職は早く死ぬなど、具体的な人物像が明らかになっている。世田谷区の調査でも、はとバスに乗って苺狩りに行くことは健康に影響はないが、自分で苺園を探して、友人と計画を練るというような人は健康だというようなことが明らかになっている。東京都の稲城市は介護ボランティア制度があり、高齢者が高齢者に支援を行う。介護施設では朝が忙しいので、高齢者の介護ボランティアが配膳を手伝うとスタンプをもらえて、介護保険料が減額される制度を行った。これにより、介護ボランティアに参加した人の方が、その後の要介護度に大きな影響があった。お茶を飲みながら折り紙を折る、入居者とマージャンするなども対象となる。