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共催講演会「デジタルニッポン2020~コロナ時代のデジタル田園都市国家構想~」 平井卓也衆議院議員

共催:一般社団法人データ流通推進協議会(DTA)、一般社団法人官民データ活用共通プラッフォーム協議会(DPC)、特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム(ICPF)
月日:2020年7月1日(水曜日)

4月より連続開催したオンラインイベント「データ活用と連携でコロナと戦う」の議論と提言が、自由民主党デジタル社会推進特別委員会の提言書「デジタルニッポン2020~コロナ時代のデジタル田園都市国家構想~」に反映されました。この提言書について、平井卓也委員長による講演会を以下のように開催します。どうぞ、皆様ご参加ください。

ZOOM会議として開催されたセミナーには、12時20分時点で226名が参加し、その後も増えていった。

冒頭、平井卓也衆議院議員は次のように語った。

  • 新型感染症の蔓延で起きた事態は「デジタル敗戦」と言わざるを得ない。デジタル推進を訴えてきた者として、心の中に潜みデジタル化に躊躇する「内なる力」に負けてきた現状に悔しい思いをしている。今こそ抜本的に変革しなければダメだ。IT基本法を改正し「デジタル推進の憲法:デジタル推進法」を制定して推進する。

その上で、デジタルニッポン2020について説明した。主要点は次の通りである。

  • 都市に集まるから感染症が広まる。逆都市化、田園都市を改めて構築する必要がある。そこで、デジタル田園都市国家構想という言い方をした。
  • これからは経済だけでなく、生活や幸福についてKPIを設定する必要がある。生活や幸福を重視した政策が必要である。
  • デジタル推進ではセキュリティは避けて通れない。トポロジーとセキュリティを抜本的に見直す必要がある。
  • 教育はオンラインとオフラインのハイブリッド型になる。オンラインは補助的という時代は終わった。ここでも内なる敵と戦い、思い切って進める勇気が必要である。学生はデジタルネイティブなのだから、教員もデジタルネイティブに変わるべきである。
  • 医療分野でオンライン相談が普及している。患者の立場ではオンライン診療と境目はない。それを診療報酬制度の壁として思考停止してしまうのは、患者の立場ではおかしい。健康のための情報は自らが保有できるように、PHR等も進めるべきである。教育や医療は後に戻すべきではない。

講演後、DPC奥井氏・ICPF山田氏がコメントした。山田氏が表示したコメントはこちらで閲覧できます。

その後、参加者を交えて、アクセシビリティ、マイナンバー、国際標準化などについて議論が行われた。

共催オンラインイベント 『データ活用と連携でコロナと戦う』

共催:データ流通推進フォーラム(DTA)、情報通信政策フォーラム(ICPF)
プログラム:
第1回4月27日 COVID-19と戦うデジタル社会の政策 平井たくや(自由民主党)
第2回4月28日 COVID-19とパーソナルデータ 鈴木正朝(JILIS/新潟大学)他
第3回5月1日 COVID-19後のインターネットの行方 村井純(慶應義塾大学/DTA)他
第4回5月8日 医療データと公益 藤田卓仙(WEF)他
第5回5月11日 COVID-19対策で変わる行政手続き 山田肇(東洋大学/ICPF)他
第6回5月12日 マイナンバー活用とCOVID-19 板倉陽一郎(JILIS/DTA)他
第7回5月14日 医療データと公益 Part2 藤田卓仙(WEF)他
第8回5月15日 自治体におけるデータ活用と今後 平井則輔(東京都)他
第9回5月18日 AIホスピタルでコロナと戦う 中村祐輔(SIP AIH)
第10回5月19日 COVID-19対策と今後の国際連携 原山優子(理研)他
第10回5月19日 COVIDでオンライン化が進む不動産業界 巻口成憲(不動産テック協会/リーウェイズ株式会社)他
第11回5月21日 COVID-19で変わる教育 ⽯⼾奈々⼦(慶應義塾⼤学/町教育協会)他
第12回5月22日 政策提言とりまとめ 奥井規晶(DPC)
第13回5月29日 医療と公益 Part3 鈴木正朝(JILIS/新潟大学)他

オンラインイベントには、毎回200名以上が参加した。

新型コロナウィルスの感染拡大対策と収束後の経済復興に向けて、データ活用の視点から、課題や今後の取り組みについて各分野の専門家を交え議論した。

第5回の議論は「いますべきこと」「Afterコロナで変わること」「持続的にすべきこと」の三区分で提言としてまとめられた

全13回の議論に基づき提言として自由民主党デジタル社会推進特別委員会はに提出したところ、それらが反映されて、「デジタル・ニッポン2020 コロナ時代のデジタル田園都市構想」として集約された。委員会は、これを自由民主党政務調査会に6月11日に提出した。

デジタル・ニッポン2020 コロナ時代のデジタル田園都市構想」はこちらにあります。

『データ活用と連携でコロナと戦う』第5回 行政手続き 山田肇ICPF理事長ほか

山田肇(東洋大学・情報通信政策フォーラム)、小木曽稔(新経済連盟)、大泰司章(PPAP総研)の三氏が講演した。

山田氏は、行政への届出は「所定の形式の所定のデータを、国民から行政に渡す行為」であり、行政からの通知等は「所定の形式の所定のデータを、行政から国民に渡す行為」であると考えるべきと主張した。この考えに立てば、行政が届出等の様式を定めなくてもよく、これら情報流通のインタフェースを行政だけが提供する必要もなくなる。民間に委ねれば、一部は自動入力も使って国民が入力しやすい画面でデータを作り行政に渡す届出代行サービスが生まれるし、行政からの通知等を理解しやすく国民に提供するサービスが生まれる。

小木曽氏は、行政への届出に民間が費やす労働は総計で年71.2万人の労働に相当するとの計算値を示し、電子行政を推進すべきと主張した。そして、アナログ原則10兄弟は対面・面前原則、書面での作成・備置・提出・交付・通知の原則、押印原則、印紙での支払原則、様式原則、出頭原則、現場・店頭での専門家の常駐・配置要請の原則、人手による目視での調査・点検・検査の原則、原本原則、 現金原則であるとして廃止を求めた。

大泰司氏はパスワード付きのZIPファイルを送るPPAPや、印刷して捺印を求めるPHSといった「なんちゃって」電子化を止めるべきと主張した。その上で、電子申請・電子契約に置き換えていくにあたっては、民間のクラウドサービス・第三者のクラウドサービスを活用するという方向に動くべきとの考えを表明した。

セミナー「デジタルトランスフォーメーションを目指す政策」 平井卓也 前IT担当大臣

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)
日時:2月18日火曜日午後6時30分から8時
場所:都市センターホール 606会議室
住所:〒102-0093 千代田区平河町2丁目4−1
講師:平井卓也(前IT担当大臣、自由民主党衆議院議員)
司会:山田 肇(ICPF) 

冒頭、平井衆議院議員は次のように講演した。

  • デジタル化には今あるものを単にデジタル化するデジタル化(Digitization)と、ビジネスモデルを根本から変えてしまうデジタル化(Digitalization)がある。
  • 今までは二つが混在していたが、これからは本当に役立つ後者のデジタル化を進める必要がある。そうしなければ、幸せな日本にはならない。
  • 快進撃を続けるNetflixは2000年ごろには全米2位のレンタルビデオ屋に過ぎなかった。一方、わが国のメディア経営者はDigitalizationを甘く見ていた。それで世界に後れを取った。
  • 0やスマートシティが謳われているが、市民の期待は集まっていない。哲学がないからだ。1979年の施政方針演説で大平正芳首相は「緑と自然に包まれ、安らぎに満ち、郷土愛とみずみずしい人間関係が脈打つ地域生活圏が全国的に展開され、大都市、地方都市、農山漁村のそれぞれの地域の自主性と個性を生かしつつ、均衡のとれた多彩な国土を形成しなければならない」と『田園都市国家構想』を発表した。これを聞けばワクワクする。地域の自主性を重んずる新しい地域主義の下で、人間中心にそれぞれの文化圏を構築していくべきだ。
  • 令和の時代は、人口減少が続き、人口の半数が50歳以上で安定する時代である。人間中心の『田園都市国家』を、インターネットを前提として構築していく必要がある。この時代には成長よりも成熟が重要になるが、一方でディスラプティブなデジタルイノベーションを加速させ、成熟社会の真の豊かさを実現しなければならない。
  • デンマークは①デザイン指向で使いやすいサービス、②デジタル前提の法制度、③社会基盤としてのBase registry(公共機関が運用する信頼のおける情報源)の整備を掲げている。デジタル前提で、それにそぐわない法律案は「デジタル法制局」に撥ねつけられるようになっている。
  • 同様にデジタル前提の社会を形成するために立法活動に力を入れてきた。2000年のIT基本法(閣法)は、いわばデジタル社会の憲法であるが、セキュリティなどへの意識が欠如していた。そこで、2014年にサイバーセキュリティ基本法(議員立法)を制定した。2016年には、同じく議員立法で、官民データ活用推進基本法を制定した。2019年にはIT担当大臣としてデジタル手続き法(閣法)を制定した。今、「デジタル推進法」の議員立法を用意している。IT基本法はじめ8本の法律を改正するものだが、昨年の国会には提出できなかったので、今国会での提出を目指している。
  • 昨年、「デジタルガバメント実行計画」を閣議決定した。各府省の新規システム開発の際には、利用者のニーズから出発する、エンドツーエンドで考える、全ての関係者に気を配る、サービスはシンプルにするなど、実行計画が掲げる原則があるにもかかわらず、業務改革ができていない。
  • 今まで日本国民は戸籍と住民票で管理されてきた。しかし、本籍地登録の第一位は皇居、二位は大阪城、三位は甲子園球場と、現実とは無関係である。氏名の「ふりがな」は公証されないので、都合に合わせて何とでも変えられる。このように、わが国はIDのない国だった。これからはIDのある日本にしなければならない。マイナンバーは特定個人情報であり容易に利用できないので、マイナンバーカードの公的個人認証を広く社会で使いたい。9月から消費税対策でマイキーが利用されるが、一度、マイキー利用の基盤を作れば、児童手当や生活保護などの支給にも利用でき、行政コストは削減される。
  • 提供者視点による一般的な利用者像へのサービスを、個々人のQOLを向上させる個々の利用者視点のサービスに変える必要がある。若宮正子さんは「老いてこそデジタル」という書籍を上梓したが、利用者視点のサービスができれば、ますます「老いてこそデジタル」という社会になる。行政サービスへの評価軸も変えたい。
  • 社会全体でデジタルリテラシーの向上が大切である。デジタルを道具として使うためのサポートが必要なので、総務省施策として小学校区に一人ずつデジタル活用支援員を配置する方向だ。
  • なぜ、日本でデジタルプラットフォーマーが生まれてこなかったのだろうか。そんな気概がなかったからだ。ようやく、トヨタ、全日空などが動き出したので期待したい。一方で、ディスラプティブなイノベーションを生み出すスタートアップ企業を育てたいと、スタートアップエコシステム拠点形成事業を始めた。IT担当大臣だった時に、週に2回、3回とピッチ(役職を問わず、民間も含めて関係者が集まり自由に議論する仕組み)を開いてきた成果である。今後に期待したい。

講演後、次のような質疑があった。

デジタル法制について
Q(質問):マイキーよりもマイナンバーを利用するのが正しいのではないか。
A(回答):それはその通りだが、政治的な妥協でマイナンバーを特定個人情報とした以上、簡単には利用できない。もちろん、個人情報保護法の改正も視野に入れているし、将来はマイナンバーをオープンナンバーにすべきだ。
Q:既存ビジネスの抵抗を破る必要があるのではないか。
A:その通りである。シェリングエコノミーも進んでいない。何とか進めないといけないが、既存業者との軋轢もあり、最後は国民がどちらを支持するかによる、と考えている。国民の理解を醸成する努力が必要である。
Q:「デジタル推進法」は何を目指しているのか。
A:目指す社会の姿を基本理念として書き込む。その上で、関連8法を改正するのが、「デジタル推進法」である。
Q:どんな人々と協力してデジタル法制を整備していくつもりか。
A:心ある政治家、心ある官僚が協力してくれる。如何によい社会をつくるかを社会に伝えて、国民から支持をいただき立法していきたい。

アクセシビリティについて
Q:障害を持った人々もいるので、アクセシビリティを忘れないで欲しい。
A:「デジタル推進法」では、IT基本法を改正して、そこにアクセシビリティを盛り込む検討をしている。アクセシビリティの必要性は理解しており、有権者を集めた集会で話をするときには、会話の見える化アプリ「UDトーク」を使って発言を文字化して表示するようにしている。
Q:アクセシビリティの不備によって公的手続きができないのが問題ではないか。
A:その通り。改善の必要がある。豪雪地帯で冬に投票所に出向くのは無理だ。それよりも、マイナンバーカードが普及すれば、アクセシビリティにも配慮したネット投票への道が開け、高齢者も安心して投票できるようになる。「老いてこそデジタル」はそんな意味である。