関連セミナー「欧州アクセシビリティ法が拓く未来」 L.ロヴァーシ国連障害者権利委員会元委員

日時:2024年2月28日(水)午後1時~3時
場所:参議院議員会館102会議室
主催:日本障害フォーラム(JDF)
協力:障害学会
講師:ラースロー・ロヴァーシ国連障害者権利委員会元委員
記録者:内田 斉(ICPF監事)

講演の主な内容は次のとおりである。

  • EU域内で、1億100万人が何らかの障害を持っている。45歳~65歳の人々の27%近い人が障害を持っている。アクセシビリティの問題は社会の中で非常に大きな意味を持っている。
  • EUで障害戦略ができたのは2010年。そこから10年間でバリアフリーなヨーロッパをつくるため、障壁の除去に向けて取り組んできた。EUがさらに大きな単一市場をつくっていくため、オーディオビジュアルメディアサービス、ユニバーサルサービス、イーコマースに関してはEU指令ができた。策定に当たっては、アメリカの法律を参考にした。
  • 欧州アクセシビリティ法は2019年にEU指令として作成された。欧州アクセシビリティ法の目的はEUの加盟諸国でアクセシビリティ上の障壁を除去して、国際的な市場における製品やサービスが統一的な機能を持てるようにすることである。この法律の狙いは、ヨーロッパの顧客に対してサービスや商品を提供する企業が、ヨーロッパの法律に基づいた規格を遵守し、企業と顧客、双方が利益を得るようにすることである。新しいイノベーションによって商業のチャンスが広がるだけでなくEUに住んでいるあらゆる人がアクセシブルに商品やサービスを使うことで社会的に包摂されるようにする。
  • 欧州アクセシビリティ法は、欧州でビジネスを行う企業、加盟諸国がそれぞれの国の中で法制度を通じて実現することになっている。欧州でビジネスを行う者はこの法に従う必要があり、その最終的なデッドラインは2025年6月である。つまり、来年の夏には欧州アクセシビリティ法が求める共通のアクセシビリティ要件について、EU加盟諸国は確実に法律を施行するようになり、またそこでビジネスを行う者は、その法規制に従って商品やサービスをアクセシブルなものとし、利用する各人がどのように使うのか、トラブルがあったときにどこが責任を持つかについても明確にする必要がある。
  • 国連は「人権の促進と保護に関する新しいデジタル技術の展望」という注目すべきレポートをまとめた。このレポートでは、新技術とは、今まであった実空間、仮想空間、生物学的空間の境界を超えて新しく作られるものだと指摘している。こうした新技術が、今後、リハビリテーションや教育、ソーシャルサービス、介護においてどのように使われるかについても注意が必要である。
  • 今後、技術を使った解決方法がますます重要になる。そこで必要になるのは、創造性と市場、社会的価値(障害者のために、障害者とともにそして障害者自身が取り組むこと)、そして適切な法律である。これらの認識に基づく、新たなアクセシビリティ法が必要になっている。その法律をどう作っていくかということになるが、まずアクセシビリティの課題についてのリサーチが重要である。
  • 未来のアクセシビリティ法を進めていくうえで、3つの重要な技術分野がある。1つ目は、装着できるデバイス(ウエアラブルデバイス)の日常的な活用。2つ目は、安全な侵襲型機器。体につける機器で、データを伴う侵襲型機器。3つ目は、AIとロボティックス、ロボット工学。これらは日々の生活で、ヘルスケアだけでなくあらゆる面で、障害者の生活の質を向上させていく。
  • EUの法律だけでブレイクスルーを起こすことはできない。国際的な協力が必要である。高齢化社会とアクセシビリティにおいて、日本は、良い例を示すことができる。日本の技術とイノベーションが障害のある人たちにとってアクセシブルな形になることを期待している。