行政 法人インフォメーション 満塩尚史経済産業省CIO補佐官

日時:1122日(火曜日) 午後630分~830
場所:東洋大学白山キャンパス5号館2階 5203教室
東京都文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:満塩尚史(経済産業省CIO補佐官)

満塩氏の講演資料はこちらにあります。

満塩氏は冒頭、以下のように講演した。

  • 経済産業省は法人に関係する情報の発信に注力し、各利用者のニーズに応じた法人向けポータルは民間側(APIの利用者側)に作ってもらうという発想で、「法人インフォメーション」の構築を進めている。
  • 「法人番号」は公開される。誰もが利用「できる」し「しなければならない」情報である。法人番号に、行政効率化・利便性向上・公平公正な社会を実現する社会基盤であり、公開情報であるために、新たな価値の創出が期待される。
  • 法人番号は、昨年度から付与が開始され、登記に基づく団体(企業・NPOなど)、登記のない組織(マンション組合など)に加えて、国の機関、自治体にも付けた。重要なポイントは、同一のルール上にあらゆる組織体が乗ったことである。登記と連動し、今後は登記される組織には全て番号が振られ、文書で通知される。登記毎であって、事業所毎ではないことには注意が必要である。
  • 国税庁は、登記事務を扱う法務省からのデータを利用して、「法人番号公表サイト」を構築している。そこでは、名称・所在地・法人番号を全公開し、データはデイリーでアップデートされ、差分情報を取ることも出来る。「法人番号公表サイト」から発信している主な情報は3種類だが、詳細なデータを読み解くと、より多くの種類の情報を入手できる。また、商号の外字等のデータクリーニングも済んでいる。
  • 民間がこれを利用できるようにAPIを公開している。一部、最初にネットワーク経由で申請が必要な場合もある。データは当然、機械可読で公開されている。
  • 「法人番号」には三つの価値がある。「わかる:番号からいろいろな情報を得る事が出来る。」「つながる:法人番号をベースに他のDBとリンクできる。」「ひろがる:新しいビジネスを生み出す。」である。取引先の管理について、同一企業内なのに部署毎に管理IDがあったのを、法人番号で名寄せすることもできるようになる。これは、コーポレートガバナンスの観点から重要で、一部の企業ではすでに活用例があるが、それは社会全体に広がっていく。
  • 法人番号からいろいろな事が分かる。たとえば、日本で一番多い企業名は「(株)アシスト」で、法人名では「八幡神社」が多い。これらのことが、簡単なプログラムを書くことで把握できる。「3月末に登記官による閉鎖が多い」などもわかるので、いずれは経済指標にすることできるかもしれない。
  • 「法人インフォメーション」を進めている大きなポイントは、官庁が保有する情報を、法人番号を鍵として公開していくためだ。そのためには、半角スペースや(株)の位置によるクリーニングに手間をかけずに、法人番号で法人情報を名寄せし、機械可読にする必要がある。結果として、行政の発信する「法人情報の標準化」を進めているわけだ。それを進めて、「法人インフォメーション」から法人の調達実績、免許許認可、処分勧告、補助金、表彰など、ネガティブな情報だけでなく、ポジティブな情報も提供する。GUIよりはデータ集めに注力している。GUIの作成は複数の民間におまかせしたい。
  • 1月から「法人インフォメーション」という名称で試行開始。経済産業省情報だけでなく全省庁の法人情報を発信できるよう各省庁にも呼びかけている。取引予定のある中小企業に対する信用調査、企業存在の証明、信頼の評価、新規開拓、適格性調査、取引先、競合他社の調査などに使ってほしい。
  • クローリングによる情報収集ができないかなどは今後の課題である。他にも課題はある。搭載データの拡充。例えば、間接補助金受託企業(省庁として把握していても、電子データとして保存されていない)。「data.go.jp」との連携。法人番号と登録情報のリンケージを進め、一度登録したら他の所で再度情報を登録しなくても済むようにしたい。そのためには、提出書類等に法人番号を併記させることが重要。既にある情報に法人番号を後付けで付与するのは限界があり、併記させるようにしないとデータが貯まらない。法人基本情報の拡充(読み方、英語表記など)
  • 「法人インフォメーション」のデータの特徴は、一つ目は機械可読可能で二次利用容易であること(RDFデータモデルで構造化されていること、CSVPDFデータとしても提供できること)、二つ目は語彙基盤をIPA基盤(IMI)と連携して活用していることなどである。
  • 法人情報を取り扱うシステムの構造には、「データを提供する層」と「利用しやすくする層」がある。後者は民間に任せたい。企業独自の付加価値の追加、ビジネス化に進んでほしい。経済産業省が整備するデータ提供レイヤとGUIレイヤ(利用しやすくする層)が連携して動くことで有機的な価値が生まれる。官がGUIに中途半端に手を出すと余り良い結果は生まれないからだ。 

講演後、以下の質疑があった。

政府内での法人番号の利用について
質問(Q):政府の中では法人番号は使わないのか。国の会計システムでの取引先の指定などには組み込まれていないのか。
回答(A):推進はしているが、会計システムにはまだ入ってはいないと思う。経済産業省では法人番号を入れて促進しているが、義務ではないので他省への拡大はまだ十分でない。周囲から各自にメリットがある旨をいって欲しい。
Q:政府内の重複投資を法人番号で調べることも出来る。政府の中でもっと使えばいいのではないか。
A:もちろん政府内利用も想定している。他方、「法人インフォメーション」としては、各省が公開するオープンデータをどう取り込んでいくか、それによって利便性を示し、法人番号利用の機運を高めるのも課題である。
Q:政府の中で工程表を作り、法人番号の併記率を上げようとしているが、かなり難しいのか。
A:結局のところ、現在の「様式」がガッチリ固まっているのが悩ましいところ。特に紙ベースの様式ではスペースに余裕がないものもあるのでどうやれば入れられるのかという問題に加え、法律の改正が必要なケースもある。まずは法改正が必要ないところから進めている。
Q:経済産業省で近々電子入札を統一すると聞いているが、そこに法人番号を入れるようにするのか。
A:電子入札システムは、法人番号を登録している入札参加資格と連携しているので、連携している。入口から繋げている。
Q:開札までは電子なのに、契約以降は紙なのはどうかと思う。そこの電子化も進めて欲しい。
A:入札と契約は別。企業の方でも「紙の方がいい」というところもあり、電子契約まではいっていないのが現状。ただ、議論はしている。
Q:入札資格の確認はデータで見た方が早い。法人番号入れて、入札資格を確認できるようにするといい。
A:入札参加資格システムと電子入札システムが連携している。
Q:逆オークションも可能になる。
A:それを実現するには、全ての入札を電子化する必要がある。
Q:自治体等の調達情報と資格情報は別々に管理されているのか。
A:中央官庁の資格情報は、総務省が統一資格で管理している。そのデータはAPIで取得できる。地方自治体は、別の資格管理である。
コメント(C):入札・契約・支払いで分断されているのを統一したほうがいい。
Q:特許出願では企業に個別番号振っているはずだが。
A:その通り。ただし、過去情報の個別番号を法人番号に入れ替えるためには、最低、個別番号と法人番号間のマッピングDBは作っておかないといけない。過去情報を修正するのは大変なのでマップデータを作るのは大事である。 

自治体への拡大について
Q:中央でこの状態では地方自治体はまだまだでは。
A:その通り。
C:地方自治体はほぼ条例で決まっているので、全て変えないといけない。
A:改正が必要か、それとも、解釈でいけるのか。それぞれ事情が違う。
Q:入札資格を各自治体が参照できるようにする、という話があったと思うが。
AAPI公開しているので参照するのは難しくはないが、自治体側がそれでOKというかは別問題。
C:千葉県では県単位でそのような仕組みを作って、各市町村に申請しなくて済むようにしている。
C:全国統一がよい。そうしないと、他自治体での処分情報が共有されていないので、他の自治体で入札参加できてしまう、といった問題も起きる。
A:その観点からも自治体版「法人インフォメーション」が必要だと思う。1月スタートする「法人インフォメーション」をオープンソースで進めていて、標準的な技術しか使わないのは、将来的に地方自治体や他の行政機関に拡充していくことも想定しているため。 

法人番号の利用促進策について
Q:会社名・所在地など他の情報とともに法人番号を併記させるのではなく、法人番号だけ入れれば他の情報は自動的に挿入されるようにすれば済むのではないか。
A:名称等をアイデンティティの確認に使っているところも多く、まずは併記で進めていきたい。
Q:中小企業のような社員が少ないところでは、書類を作る度に同じ事何度も書かされることが負担になっているが。
A:その通りだと思う。重複入力の負担はなくしていきたいと考えている。
Q:法人番号のフォーマットに予備空間があるが、そこは何に使うのか。
A:現時点では特に予定はない。
Q:「法人インフォメーション」の価値が高まると、検索で出てこないような中小・個人事業主のビジネスは厳しくなる。個人事業主をDBに一括で載せるとよいのでは。
A:個人事業主でも載せて欲しい人と載せて欲しくない人がいる。現在の法人番号公表サイトは、個人事業者は、法人番号の指定の届出制の対象ではないので、そのあたりは調整が必要。
C:どの段階で番号がもらえるのかというのがポイントだと思う。
A:ヨーロッパでは、インボイスの発行が必要になるときに登録をお願いしているようだ。
QPDFで出力できるとあったが、それに電子署名はつくのか。
A:つかない。電子署名の話を出すと専門的な議論が必要になってくる。
Q:登記証明などの発行はお金がかかるので、その代替になるようであれば使われるようになるのでは。
A:登記証明の使い方による。単に登記証明を存在証明のためだけに求めていた場合、法人番号公表サイトや「法人インフォメーション」を確認したい会計担当者が検索すれば良い。ただし、例えば会計担当者が100社分を検索することは難しいので、PDFで見ていく方が簡単だと思う。PDFの信用性については、電子署名がない場合は、一般的なPDFの信頼性しかない。また、サーバ上で、PDFに電子署名した場合、電子署名法上との電子署名との乖離もある。
Q:企業の会計管理者でも大阪事業所と東京事業所でどういう取引しているとか知らないことも普通にある。
A:大手企業グループでは独自の法人番号管理を入れていて、役に立ったとのこと。それを法人番号に置き換えるだけでいい。そもそもグループ内で同じ法人番号管理を導入するのが一番大変だったが、法人番号であれば導入しやすい。
Q:国際展開は考えているか。
A:オープンコーポレートも法人番号を取り込んでいる。将来的にはオープンコートレートを経由して、海外の別のDBにつながっていく可能性がある。あとはデータ英訳(言語)の問題がある。法人情報に英語情報とかふりがな(一斉翻訳できない)のが問題である。法人番号体系自体は国際規格に準拠している。
Q:「法人インフォメーション」のAPIを使った民間の利用希望はあるのか。
A:あるし、こちらからもアプローチしている。 

法人ポータルについて
Q:法人ポータルは作らないのか。
A:利用者本位に考えた場合、単純にポータルという名称で「1箇所で全てを見られる」ことが重要なのではなく、「重複入力排除」のためのデータ統一が重要だと考えている。ポータル化(1箇所で全てを見られる)よりTell at once(重複入力排除)を重視したい。
Q分散型を想定していると。
A:そう。そのための標準プロトコルを作る。見せる方は民間に期待したい。
C:「ポータル」という名称を避けたのはそのためか。
A:そう。データ提供層と使い勝手を決める表現層は分けるべき。混ぜるとデータ提供層が特定の表現層の構造に引っ張られ、多くのニーズに応える事が困難になる。