政治 自由民主党の情報通信政策 平井たくや自由民主党衆議院議員

日時:8月20日(木曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
千代田区九段北4丁目2番25号
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:平井たくや(衆議院議員、自由民主党IT戦略特命委員会委員長)

平井氏の講演資料はこちらにあります。

平井氏は要約次の通り講演した。

  • かつて情報通信(IT)政策の優先順位は低かった。自由民主党が野党時代にIT戦略特命委員会が組織化され、数次にわたり提言を続けてきた。今では、ありとあらゆることがITに関係するようになり、IT政策の重要度は増している。
  • 今まで各府省が実証実験を重ねてきたが、とりあえずやって、やりっ放しだった。これを反省し、実際に社会で利用され、社会をよくしていくことを目標にIT政策を集大成して、2015年版の「デジタル・ニッポン」を発表した。次の臨時国会では、官民データ利活用促進基本法を議員立法で出す予定である。個人情報保護法の中に利活用を書きこんでいるが、むしろ、利活用を主としてその際に個人情報の保護に努めることを求める法律が必要だと考えたからだ。
  • 世界で一番きっちりと本人確認できる国、訪日観光客も「短期移民」として扱い本人確認によって旅行を楽しむ国を目指すツールとしてマイナンバーを扱っている。マイナンバーは成長戦略の一環であり、デジタル社会のプラットフォームである。
  • 参加者が多くないと価値が高まらないため、マイナンバーカードの普及が必要になる。勤務先による一括申請ができるようにした。また、主な用途は公的個人認証である。公的にきちんと本人確認できることで、将来の民間利用にもつながっていく。たとえば、高校生に身分証明書の代わりにカードを与えれば、コンサート会場での本人確認に利用できる。
  • 住基カードは自治事務だったが、マイナンバーは法定受託事務となる。マイナンバーは特定個人情報である。国が関与して、自治体のセキュリティを高める施策を展開していくことができる。
  • サイバーセキュリティ関係は、「サイバーセキュリティ」から「パブリックセーフティ」に視野を拡大したのが、最大のポイントである。「セキュリティなくして成長なし」と考え、生体認証や画像解析の研究開発ベンチャーの支援。人材育成のための税制支援、政府機関のサイバーセキュリティ対策の抜本的強化などを実施する。また、IoT(モノのインターネット)の強靭性で日本ブランドを示そうとしている。
  • IoTは、国主導のドイツと巨大企業主導の米国が先行している。IoTビジネスにはレイヤー構造があり、日本企業もどのレイヤーで稼ぐか戦略を立てる必要がある。日本はプラットフォームレイヤーで影が薄いのが問題である。ただ、重要インフラのIoTでは日本が最先端となる可能性がある

講演後、次のような論点について質疑応答があった。

IoTの普及について

Q(質問):重要インフラのIoTについて政策的にどうアプローチするのか?
A(回答):日本の公共インフラはしっかりしているが、一方で、災害が多い。インフラから取得した情報と、天気予報などを情報連携すれば精度があがる。
Q:IoTの一部(たとえばスマートメータ)で、日本主導の国際規格を使おうという動きがある。これが、グローバル化の阻害にならないか?
A:日本だけで成り立つ時代ではないため、海外企業と一緒にやるという分野を決めた方が良い。ガラパゴス化するのがわかっていて、そこに突き進むのが良いのかどうか、みなさんに聞きたいところである。

マイナンバーについて

Q:普及のためには義務化が必要であり、また、ユーザビリティを上げるのがよい。モバイルIDの検討はしているのか?
A:カードの申請とJPKI(公的個人認証)の申請は、違う法律で立て付けられている。それを前提としたうえで、SIMカードにJPKIを搭載するモバイルIDは検討している。エストニアもスタートしたときは強制でなかった。今も、強制しているけど罰則はない。最終的に便利だから普及した。そのように、マイナンバーを使うと便利ということが国民に浸透する必要がある。
Q:新経済連盟事務局だが、法人向けマイナポータルの今後の見通しについて聞きたい?
A:法人情報の活用基盤は、まずは経済産業省から始める。今は各省バラバラに管理されている法人情報を統合することで価値が生まれるはずだ。民間の事業モデルはまだみえてないが、帝国データバンクは法人向けポータルに乗っかることでさらにビジネスを広げられると言っている。官民データ利活用促進基本法は、対面原則を打ち破る可能性がある。新経済連盟の主張が実現するのだから、法人ポータルなど細かなことよりも、もっとそこにドライブをかけてほしい。
Q:マイナンバーカードを持つと運転免許証が不要となるといった仕組みが必要ではないか?
A:すぐに、運転免許証をなくすわけではない。エストニアの場合は運転免許証とマイナンバーが紐付いているので、免許不携帯で罪を問われることはない。将来は、その方向に進みたい。日本は免許証のコピーが世界一出回っている。それはやめた方が良い。
Q:私は全盲だが、ネットによって生活がだいぶ便利になった。その際には、アクセシビリティが重要である。情報アクセシビティ法など、アクセシビリティとセキュリティの両立を考えていただきたいが?
A:マイナンバー制度では、アクセシビリティに丁寧に対応したい。
C(コメント):政府機関と自治体のすべてのウェブサイトでアクセシビリティを改善しても、予算は170億円ですむと試算できている。
A:ぜひ、特命委員会に具体的に提案してほしい。

マイナンバーの民間利活用について

Q:複数の名前(例:ハンドルネーム)をもっている人がネットを活性化させいる。本人確認に価値はあるのか?
A:ここでいう本人確認は、権利の確認である。東日本大震災のようなときに、被災者の本人確認をどうするか。親が死んだとき、子供は行政手続きが大変である。どうしたら、ワンストップ化できるか。このように際にマイナンバーを利用して本人確認し、国民の権利が最大限行使できるようにするのが、目的である。
Q:学校の成績のデータ管理の統合、クラウド化は検討しているのか? 今は金庫で保存されているため、災害があると消えてしまう。
A:現状、そこまで想定されていない。どこまでデジタル化するのか、今後考えていきたい。