特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム(ICPF)主催
IEEE TMC Japan Chapter協賛
概要:
ICPFでは、この春「情報通信の競争力を考える」と題するセミナーシリーズをIEEE TMC Japan Chapterの協賛を得て開催してきました。講師の方々は「日本の情報通信は研究開発の段階からガラパゴス化している」「インフラよりもアプリケーションが重要で、ユニークなアプリケーションを提案するベンチャー企業が生まれてこないことが課題」「標準化活動は個々の企業が利益を求めて進めるものであって、オールジャパン体制など虚構」といったきびしい指摘をされています。
このセミナーを通じて「国策研究開発」のあり方に徐々に焦点が当てられてきました。そこでこのテーマについて集中的に議論するため、「情報通信の競争力:国策研究開発の意義」と題してシンポジウムを開催いたしました。
登壇者
モデレータ:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
パネリスト(あいうえお順):
有本建男氏(独立行政法人 科学技術振興機構社会技術研究開発センター長)
科学技術基本計画に沿って国策研究開発を進めてきた立場から
池田信夫氏(上武大学教授)
技術ナショナリズムを批判する立場から
小川克彦氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)
情報大航海プロジェクトを推進してきた立場から
竹田義行氏(NTTドコモ研究開発副本部長)
移動通信分野の研究開発・標準化の重要性について
松本徹三氏(ソフトバンクモバイル副社長)
技術自前主義こそ競争力をそぐと主張する立場から
まとめ:
モデレータ及び各パネリストがそれぞれ資料に基づいて発表した後、パネル討論が行われた。必ずしも意見が一致したわけではないが、以下の各点については多くのパネリストから共通する意見が繰り返し表明された。
・ 科学技術基本計画がスタートして15年が経つが、情報通信分野では大きな成功を収めた国家プロジェクトは少ない。この分野では企業が研究開発の主体で、政府のR&D投資が占める割合は1割程度に過ぎないため、国家プロジェクトの影響度は小さい。
・ 情報通信分野では、政府がテーマを特定して進める国家プロジェクトは止め、政府のR&’D投資は基礎研究や一度途絶えると復活できない研究(ミリ波など)に留めるべきだ。
・ この選別には目利きが必要だが、目利きは研究コミュニティが育てるものである。そもそも基礎研究から実用化まで、研究フェーズごとに目利きの適任者は異なるのだが、今までは同じ研究者(大学教員)に継続的に依頼したり、学界の権威に依存したりしてきた。目利きの選任法を改める必要がある。
・ 企業における研究開発への目利きは、それが直接企業の盛衰に影響するため、自然と真剣に行われてきた傾向にある。ただし、一部には過去の栄光にすがっているだけの無能な経営者が残っており、彼らは速やかに退場すべきである。
・ 国家プロジェクトで企業に補助金を出してもうまく働かない恐れが強い。自社でのR&D投資にはリスクを伴うが、政府から資金が出るならそれだけリスクは減る。リスクの低いプロジェクトに有能な研究者を割り付けるはずもないので、大きな成果は期待できない。
・ 企業のやる気を引き出すにはR&D助成よりも制度・税制改革が重要である。著作権法を改正してネットビジネスを発展させるといった制度改革や、研究開発優遇税制・研究者雇用助成税制など、政府は企業が研究開発に取り組むような「環境整備」に力を入れるべきである。
・ 情報通信分野では、権威者の影響力が強すぎるせいか大学の学部・学科のリニューアルが進んでいない。新領域・融合領域の教育を施す学部・学科を作り、新しい知識を持った人材を企業に送り込むようにすべきである。また同時に研究開発だけでなく、市場洞察力、マネジメント力、交渉力を備えた次世代人材を戦略的に育成すべきである。
シンポジウムの様子は9月25日25時よりスカパー/262ch シアター・テレビジョンで放映され、その後、10月にリピート放送される。また無料ネットテレビ「ピラニアTV」で9月末に公開される。
文責:山田肇
講演資料:
講演映像
[前半] http://www.nicovideo.jp/watch/1303271546
[後半] http://www.nicovideo.jp/watch/1303271747
スケジュール:
月日:8月26日木曜日
場所:全国町村会館 ホールB
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-35
有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町駅」3番出口徒歩1分
13:00 開場
13:30 モデレータによる問題提起
13:40 各パネリストからの意見表明
14:30 討論
16:00 終了
参加費: 3000円(ICPF会員は無料で参加できます)
なお本シンポジウムの模様はシアター・テレビジョンのご協力により後日スカパー!で放映されるとともに、ピラニアTV(無料ネットテレビ)よりご覧いただけます。