概要
新聞・放送・インターネットなど各種メディアの集中度について、経年的にわが国のデータを収集し、評価を進めてきました。この間、メディア集中に関する国際プロジェクトでも同様の研究が進み、世界各国で評価データが揃いつつあります。そこで、新聞・放送・インターネットといった個別分野での評価から一歩踏み出し、総合評価指標を考えるために、わいわいがやがやと議論する、共催セミナーを開催します。
レポート
この日のセミナーは、ICPFと情報通信学会メディア集中に関する研究会の共催で行われた。情報通信学会内のメディア集中に関する研究会は、International Media Concentrationとして、世界中のメディアの集中に関する調査・研究を行う国際プロジェクトの日本担当チームとして研究を続けている。各国の各種メディアに関する評価結果が揃い始めた段階であるが、独占禁止法の運用で用いられているHHIを指標とすることの是非について議論するために、今回の研究会を開催した。
報告1:浅利光昭(メディア開発綜研)
最初の報告は、International Media Concentrationチームのメンバー、メディア開発綜研の浅利光昭氏からで、『わが国メディアの集中度評価(概要)』として、国内事情についての発表があった。レポートの一部はInternational Media Concentration のサイト(http://internationalmedia.pbworks.com/)で閲覧できる。
報告2:鬼木甫(大阪大学名誉教授)
続いては、鬼木甫氏より、『経済理論における効用関数指標の『公理論的導出』方法について』と題して、メディアの集中度をはかる上で、どのような指標が最適かについての報告があった。HHIを用いず新たな効用関数指標を開発できる、として指標の例がいくつか提案された。
特に、シェア順に企業を並べ、その順位とシュアの積の平方根を加算していく指標は、効用関数指標として適切である、との提案があった。
総合討論:
最後は、セミナーに参加した方々を交え、メディア集中の問題について指標や地域メディアの実態といった観点からディスカッションが行われた。
HHIには、100台なら競争的で1000以上なら独占的と見なせるといった直感的な特徴があるが、鬼木提案の新指標にはそのような直感性が欠けている、との指摘があった。International Media Concentrationの研究がHHIに偏りすぎるのは、必ずしも言論の多様性を評価したことにはならないという問題があるため、日本から新指標を提案する可能性もあるのでは、という意見も出た。
浅利氏の発表については、地域性を考慮せず全国レベルで比較しても実態をつかんだことにはならないのではないか、という意見が多く出た。
わが国の場合、県域新聞や県域テレビが存在し、かつそれら県域メディアがその県で強い影響力を持っているという実態がある。それが反映されないで指標を示しても誤解されるだけだ、他国と比較しても意味が出ないかもしれない、というような意見が多かった。
<プログラム>
2009年9月16日(水) 14:00~16:00
1 わが国メディアの集中度評価(概要)
浅利光昭(メディア開発綜研)
2 経済理論における効用関数指標の『公理論的導出』方法について
鬼木甫(大阪大学名誉教授)
3 総合討論
<会場>
東洋大学大手町サテライト(新大手町ビル1階)
・JR線「東京駅」より徒歩5分
・東京メトロ東西線「大手町駅」B3出口より徒歩1分
・東京メトロ半蔵門線、東京メトロ丸の内線「大手町駅」A5出口より徒歩2分
・都営地下鉄三田線、東京メトロ千代田線「大手町駅」より徒歩5分
※詳しくは こちらをご覧ください。
<会場費・資料代>
無料