セミナー「欧州アクセシビリティ法と日本への教訓」 山田肇東洋大学名誉教授

主催:ウェブアクセシビリティ推進協会(JWAC)
協賛:情報通信政策フォーラム(ICPF)

9月7日12時30分から開催されたオンライン無料セミナーで山田氏は概略次のように講演した。

山田氏の講演資料はこちらにあります

  • 障害者権利条約を受けて、欧州ではICT公共調達でのアクセシビリティ規制(2014年)、公共機関サイトのアクセシビリティ規制(2016年)と規制を強化してきた。その集大成が、欧州アクセシビリティ法(EAA)の制定(2019年)である。
  • コンピュータとOS、ATM・発券機・チェックイン機、スマートフォン、デジタルテレビ、電話サービスと電話機、視聴覚メディアなど、欧州アクセシビリティ法が対象とする製品・サービスの範囲は広い。
  • 欧州医薬品庁は医薬品情報の電子的提供原則を2020年に改定した。医薬品に添付される製品情報を電子的に提供するように求めるものであって、その基準は公共機関サイトのアクセシビリティ規制と同一である。欧州アクセシビリティ法の範囲を超えて、アクセシビリティ対応が強い社会的要請となっている欧州の現状が、医薬品情報提供規制から窺える。
  • わが国は2014年に障害者権利条約を批准し、前後して、障害者基本法、障害差別解消法などを条約の水準で整備してきた。みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年)を総務省が発出し、2019年にはデジタル共生社会実現会議報告書が公表された。しかし、その歩みは遅く、アクセシビリティを無視した製品・サービスが横行している。
  • 自由民主党の総裁選挙で、各候補は経済社会のデジタル化を掲げている。だれが当選しても、デジタル化は強力に進められるだろう。デジタル化の推進には、欧州のように、アクセシビリティ対応が不可欠である。
  • 欧州アクセシビリティ法の制定時に欧州委員会が発効した文書には、障害者等の公共交通・教育・労働市場へのアクセス可能性を拡大するとの説明がある。労働市場へのアクセスが拡大されれば、労働し納税する障害者も増える。欧州のアクセシビリティ規制には、経済政策の側面もあることが読み取れる。同じ考え方をわが国も採用するのがよい。