開催日時:2024年9月30日月曜日 午後7時から1時間程度
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:伊東大輔 株式会社アドダイス代表取締役CEO
司会:山田 肇・ICPF理事長
伊東氏の講演資料(抜粋)はこちらにあります。
伊東氏の講演ビデオ(一部)はこちらにあります。
冒頭、伊東氏は次のように講演した。
- インターネットとAIの可能性に感動と衝撃を受け、アドダイスを起業した。アドはAdventure(冒険)で、Diceはカエサルの「賽(Dice)は投げられた」から取った。
- アドダイスは、いちいち命令しなくても自ら再学習していく自律型AIをSaaSとして提供する会社である。SoLoMon Technology(ソロモン・テクノロジー)として特許も取得している。
- 深刻な病気ほど早期発見に越したことはない。手遅れになる前にAIで発見する「予兆」を捉えるシステムを開発してきた。もちろん健康管理に利用できるが、同じ発想は設備管理にも適用できる。
- コロナ禍において、心拍数や血中酸素濃度等をスマートウォッチで測定し、そこから重症度をスコア化し、重症度スコアに基づいて医師の判断を助けるAIソリューションを東京大学、広島大学等と一緒に構築した。それを発展させ、「こころ」と「身体」の健康を見守るヘルスケアAI(ResQ AI)を展開している。
- AIでドライバーの眠気を予測する眠気スコアの実証実験を、観光バス大手のヤサカ観光バスなどと実施した。
- 高齢者のフレイル対策、メンタルヘルス対策として、バイタルデータやAIスコアをを家族・かかりつけ医・地域の支援者につなげてサポート取り組みを行った。
- ボリビア人口が都市に集中し、残りの人々は数百キロ間も離れた町村に点在しており、これら過疎地域の人々が適切な医療を受けられないことが大きな課題となっている。。妊婦の状態をスマートウォッチで測定することで、妊婦の死亡率を低減するプロジェクトも進められている。
- 名古屋市において、こころに障害のある人たちのよりよい就労をサポートする取り組みも実施している
- 観光庁採択事業である「医療的知見を活かしたアドベンチャーツーリズムの推進」にも参加した。「こころを可視化するAI」により、ツアー参加者のストレスが軽減したことを、医学的見地から実証できた。
- 精神疾患を理由とする休職・退職は増え続けている。身体だけでなく心の健康もケアしてこそ、「健康経営」と言える。この分野でヘルスケアAI(ResQ AI)を展開していきたい。
- 種々のIoTセンサの情報を収集集約するためのデータフォーマットとしてIEC 63430が国際標準化された。これを活用すれば多様な情報を効率よくヘルスケアAI(ResQ AI)に提供できるので、IEC 63430の普及にも同志と共に努めている。
講演後、以下の質疑があった。
質問(Q):大手観光バス会社に雇用されているドライバーであれば、実証実験への参加は拒めないだろう。それでは、測定された個々のドライバーのデータも含めて実証実験の知見が他の事業者でも利用されていくということについて、ドライバーにきちんと説明しているか。
回答(A):きちんと事前説明し、同意を得て、実証実験に参加してもらっている。
Q:運行記録を組み合わせれば、どこを走行中に眠気が増すかであるとか、車線変更や車間距離がおかしくなるとかもわかるはずだ。運行記録との連結も行っているのか。
A:将来構想として、運行記録との連結も想定している。
Q:日常的に眠気を催すことが多いドライバーは解雇するといった利用方法は倫理的ではないと思うが、どのように考えるか。
A:アドダイスが開発中の眠気スコアは、ドライバーの安全を守る上でとても役立つツールだと考える。しかし、その本来の役割は「事故や危険を未然に防ぐためのサポート」として活用されるべき。スコア(AIの解析結果に基づいて)ドライバーを解雇するのではなく、まずは眠気をうまく管理できるようなサポートを提供し、健康的な働き方や十分な休息を取れるようにすることが大切と考える。
A:一方で、高齢ドライバーが増えている背景には深刻な人材不足の問題がある。そのような意味でも、解雇と結び付けるのではなく改善のチャンスを提供することが、企業にとっても良いバランスの取れたアプローチだと考える。
Q:実際に眠気を催していることと、眠気スコアが高くなることには、きちんと相関があるのか。
A:眠気スコアと実際の眠気には相関があるが、その強さには個人差があることは避けられない。そこで、より個々の状況に適した判断を行うために、個別の調整や複数の指標を組み合わせることで、信頼性をさらに高めていきたい。
Q:アドベンチャーツーリズムでツアー参加者のストレスが軽減するという話は興味深い。しかし、ツアーに参加するというのがむずかしい人もいる。日常生活の中で、職場でも学校でも、ストレスを軽減するための行動を促すためにヘルスケアAI(ResQ AI)は利用できるのではないか。
A:その通り。緑の多い道を散歩すればストレスが低減する、きれいな花を数秒見ればストレスが低減する、軽い運動やヨガも効果があるといった、多くのエビデンスが存在する。日常的に心のストレスがわかれば、それをもとにストレスを軽減するための行動を促すことができる。