政治 統一地方選挙におけるネット選挙運動を振り返る

日時:6月2日(火曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館4階 5401教室
文京区白山5-28-20
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:
草間剛横浜市議会議員
音喜多駿都議会議員
田代光輝慶應義塾大学政策・メディア研究科特任准教授

配布資料はこちらにあります。草間氏音喜多氏田代氏

最初に、草間剛横浜市議会議員が概略次の通り講演した。

  • 横浜で政治へのネットの利活用を推進し、マニフェスト大賞優秀賞などを受賞してきた。インターネット番組「日の出TV」を四年間、毎日配信してきた。衆議院議員なども出演するが、視聴者数は少ない。毎日ミニ集会をやっているようなものだ。
  • 超党派で地方議員を集めた「湘南カフェ」というインターネット番組も実施している。こちらは、オフラインでの対話集会に結び付き、それを元にして「湘南地域の日地帯が連携した観光バスの運行」といった政策提案に発展していった。
  • 老朽化しつつある公共プールの更新といった政策的なテーマについて、データで紹介するオープンデータサイトも構築して、政治活動を実施している。
  • 統一地方選挙でもネットをさまざまに活用したが、どれも大きなビュー数は得られなかった。統一地方選挙は、自由民主党の後援会組織(平均年齢65歳以上)による地上戦が「主」で、学生ボランティアが支えるネット選挙活動は「従」だった。

次に、音喜多駿都議会議員が次のような内容について講演した。

  • 日本を元気にする会は、政策決定に国民の声を活かすことが最も大切だと考え、ネットを通じてそれを実現するように努力している政党である。Vote Japanというサイトで法案に対する賛否を問い、3:2だったら、3名の議員は賛成に、2名は反対に投じるといった仕組みを実践している。
  • 統一地方選では、聴覚障害を持つ斉藤りえ候補(北区)を応援した。つくづく、日本の選挙は音が中心と感じた。公職選挙法の規定によって地方選ではチラシでは配れないため、聴覚障害があるとハードルが高い。音を使わない選挙を展開せざるを得なかった。ネット選挙は、障害者の参政権を担保するうえで重要と認識しており、選挙公報のウェブ掲載の迅速化を求めたい。
  • ネット選挙運動の成功例に、いとう陽平候補(新宿区)がある。徹底したインターネットの活用で、たとえば全候補者のまとめサイトを自分で作成し、閲覧者を誘導した。4月には月間6万PVを達成した。
  • ネットを通じて有益な情報を発信していた候補者は当選している。ネットで票を稼いだのではなく、きちんとした政治活動をしている政治家は情報をたくさん持っているので、良質なアウトプットができたと評価している。
  • ゴールデンウィークに北欧を中心に視察した。スイスではランツゲマインデ(屋外集会による直接民主制)を見学した。エストニアではネット投票を見て、国民の政府によせる信頼の高さを実感した。フィンランドには国民発案サイトがある。ネットが普及した結果、直接的民主制を一部取り入れることが可能になった。

最後に、田代光輝慶應義塾大学特任准教授がおよそ次のように講演した。

  • ネットはプル型メディアである。票を増やすためには、握手・辻立ちといった地上戦が必要である。一方、関心をもってネットで候補者のサイトを訪れる有権者の支持を継続させるのがネットである。
  • オバマ大統領の強さはネットであるといわれている。しかし、オバマ選対にボランティアとして参加した海野先生の経験によれば、戸別訪問である。ネットを上手に利用して選挙に勝ったというわけではない。
  • 日本の国政選挙、地方選挙におけるネット選挙運動を分析したところ、接戦では決め手になることがわかってきた。投票日には候補者の検索数が増えるが、これは、意中の候補者について最終的に調べてから投票しようという人がいるためである。検索結果が候補者の悪口ばかりだと、そのような人は投票所に行かない。その結果、5パーセント程度の票が動いて当落が変わってしまう。
  • 悪口がネットに出るのはやむを得ない。今でも怪文書は飛び交っている。それを超える量の正しい情報、よい情報をあらかじめ発信しておくことが最大の対抗策である。
  • マスメディアは大衆向けであった。これに対して、ネットは大衆を分断して、小衆を産みだす。小衆は、同じ考え方の人だけの集まりであり、同調しあうと異質のものを排除し始める。これが、サイバーカスケード(Republic.com)であり、社会は分断される。選挙でネットを活用する際には、同時にサイバーカスケードの危険性を認識しておくべきだ。

三氏の講演の後、次のようなテーマで討論があった。

障害者の参政権について

  • 斉藤りえ候補の選挙運動で規制されたように、今は障害者の被選挙権行使には制限がある。議会へのパソコンの持ち込みが許されないなど、障害者には活動しにくい状況があり、改善が必要である。
  • 視覚障害者には代理投票制度があるが、誰に投票したのか、周りにわかってしまう。障害者が選挙権を行使するためには、ネット選挙は有益である。

サイバーカスケードについて

  • 狂信的な社会運動がサイバーカスケードとして表に現れ、それが議員に影響するという事態が一部で起きている。ネットによる情報の偏りと、それが原因となった社会の分断には注意が必要である。
  • 北欧の政治家は、例えばあるイシューについて世論が偏っても、正しくないと考えた時には説得しようとする。それが政治家の仕事であると考えているし、社会もそんな役割に期待している。サイバーカスケードに左右されない姿勢を政治家は持つべきである。
  • ごみ処理場の建設のように地元の反対を超えて、政治家は苦渋の決断をしなければならない場合がある。直接民主制といっても、参加者の範囲(対象地域)を決めないと、結果は社会を不幸にする恐れがある。スイスでは五万人規模がよいといわれている。
  • 日本は100%間接民主制だが、一部に直接民主制を取り入れるとともに、政治家がファシリテータとして活動するといった形態に期待したい。

ネットを利用した政治活動について

  • オープンデータサイトのような場合、選挙期間に閲覧数が伸びなくても、関心を持った有権者は日常的に訪問してくる。政治活動としては有益である。
  • 地元の有権者の関心と合わせた形でオープンデータを提供するといった、政治家の工夫が必要である。そうすれば、政治活動として役立つし、また、悪口に負けない正しい情報を積み上げるのにも有効である。
  • 90分の討論を動画配信しても、視聴者数は伸びない。単に名前を売るだけなら数十秒で充分であり、動画配信はまだ重視されていない。スマートフォンユーザーが閲覧の中心で、通信量制限を考えると、1分半が限界である。スマートフォンユーザーが通勤時に閲覧するという可能性もあり、字幕の付与は絶対に必要である。
  • そもそも、有権者は見かけた候補者に投票する傾向がある。当落の大半は後援会の強さで決まるが、Facebook友達には、拡散の効果があり、新しい層を取り組むことができる。

 

大阪都構想について

  • 大阪都構想は、マスコミ発のアジェンダ設定であり、テレビ選挙の典型であった。
  • 橋下市長の「スパム電話」が悪影響を与えたという評価が出ている。先の佐賀県知事選ではスパム電話が当落の原因になっている。プッシュ型メディアは不愉快、と有権者が感じる場合がある。
  • ネットからは好きな情報を有権者が引き出しに行ける。段々にネットが政治に与える影響は強くなるだろう。