メディア 検索エンジンとメディア集中

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)
共催:情報通信学会メディア集中に関する研究会

先ごろ、Yahoo! JAPANが、自社が提供する検索サービスにグーグルの検索エンジンと検索連動型広告配信システムを採用することを発表しました。これが実現すると検索エンジンの市場におけるグーグルの市場シェアが著しく大きくなるため、メディア集中を危惧する意見が表明される一方で、公正取引委員会はこの業務提携のスキームは直ちに独占禁止法上の問題とはならないとの判断を示しました。
検索エンジンの市場に対して、マスメディアの集中排除と類似する規制を行う必要はあるのでしょうか。それともそれぞれの会社が進めるビジネスの一環としての業務提携であるとして容認すべきなのでしょうか。
ICPFでは情報通信学会メディア集中に関する研究会と協力して「検索エンジンとメディア集中」についてシンポジウムを開催することにしました。シンポジウムでは、インターネット市場での消費者による選択の自由を主張してアメリカで活動しているNetCompetition.orgのChairmanであるScott Cleland氏にもご講演いただき、議論を深めていくことにしています。

プログラム:

1. 意見表明(13時15分~13時55分)
わが国のIT政策と検索エンジン問題:田辺雄史氏(経済産業省商務情報局情報処理振興課長補佐)
インターネットがマスメディアに与える影響:千田利史氏(ワンズ・コンサルティング代表)
2. 特別講演(13時55分~14時45分、通訳付き)
FTCにおける検索エンジン市場の業務提携に対する判断:Scott Cleland氏(President, PrecursorR LLC, Chairman, NetCompetition.org)
3. 休憩(14時45分~14時55分)
4. パネル討論(14時55分~16時10分)
モデレータ:山田肇氏(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
パネリスト:千田利史氏、Cleland氏、林紘一郎氏(情報セキュリティ大学院大学学長)、小柳建彦氏(日本経済新聞社編集委員)、池田信夫氏(上武大学教授)
5. まとめとメディア集中に関する研究会について(16時10分~16時20分)
中村清氏(早稲田大学教授)

講演資料

・田辺雄史氏 『わが国のIT政策と検索エンジン
・千田利史氏 『インターネットがマスメディアに与える影響
・Scott Cleland氏 『“Japan: Powered by Google?”
・山田肇氏 『検索エンジン市場の集中
・林紘一郎氏 『Googleを糾弾する前に

議事録

わが国のIT政策と検索エンジン問題:田辺雄史氏

情報大公開プロジェクトについて、当時、議論が生煮えの段階で日の丸検索エンジンを作るとの認識が広まった。しかしGoogleの後追いをすべきでなく、日本としていかにイノベーションをおこしていくか、という視点でプロジェクトを起こした。
成果として、携帯電話のGPSデータを利用し次の行動を予測して提供するサービスや画像検索を取り入れたサービス等について研究開発を進めてきた。他方で、文科省はサイバー空間上の情報の定量的な評価や情報爆発時代の情報検索基盤を進めている。制度の面では、今年の1月から著作権法の改正が行われ、検索エンジンのためのテキストデータの複製は違法でないという改正がなされた。個人情報をいかに二次利用、三次利用し、新しいサービスを行うに繋げていくかは詰み残された課題である。
政府のIT戦略は今年の6月に新たに発表。国民主権の観点から電子政府を進め、ITの徹底的活用により地域を活性化し、新市場を創出する等。産業の高次化の基盤としてクラウドは位置づけられている。
個人情報の保護だが、例えば、医療現場のレセプト情報 。これらの医療情報について個人の二次利用の許諾が無くとも、どの様な匿名化を行えば安全に二次利用出来るのか、どの様な仕組みだと社会に役立つのか、について国民的なコンセンサスを得るのが課題である。プライバシーに配慮したデータの理活用のための仕組みや、著作権法の関係ではテキストデータやそれ以外の、写真に人が写り込んだときの問題等、まだ法的に整理が出来ていないところがあるので、今後議論すべき点は多い。

Q:改正著作権を施行し、具体的にビジネスは起きているのか。
A:結論から言えば、そこはよくわからない。この改正によって、検索のためのテキストデータのコピーが行えるようになったので、日本でサービスが起こっても良いはず、そこは期待している。他方で画像や他のメディアの検索利用のためのコピーは対処手当されていないので、テキストだけでやるのか、という事はあるかも知れず、もう一歩進んだ法整備をして行かなくてはならないだろう。
Q:情報大航海プロジェクトの成果がどのように活用されているのか、実態の把握が必要ではないか。
A:情報大航海での成果をふまえ、DoCoMoのように、より高度なサービスを提供している事例はある。ただ、その時の議論は、最終的には個人情報をどの様に扱い、事業者間をまたがる場合はどのような利活用の仕方があるうのか、というところに至っている。やはり新サービス提供のためには個人情報を使いたいよねというニーズに対して、現時点では答えは出せていない。

インターネットがマスメディアに与える影響:千田利史氏

インターネットがマスメディアに与える影響という大きなテーマを頂いたが、私は電通時代が長かったので、その方面からのお話をしたい。
日本の広告費の最新の数字を示す。ランキングとすると、TVの広告費が1兆7千億ほどでマスメディアとしては一位。インターネットはそれに続く7千億。新聞広告を日本においては初めて上回った。この統計をどうやってとるかだが、新聞・TV・ラジオなどはこれまでの関係の中で数字が出せるが、インターネットはかなりやっかい。大変な数があり、その上、新聞ではここまでが広告でここまでが記事という線引きできるが、インターネットでは広告主が自分でホームページを持っている場合、それは全て広告費なのか、等の問題もある。捕捉の正確さという意味では議論の余地がある。しかし総体的には、プロモーションメディアというジャンルを加え6兆円弱の規模があり、マスメディアでは、テレビはなんとか持ちこたえてはいるなかでネットだけが 伸びているのが現状である。
Googleが提供するネット上の広告の仕組みに、アドワーズとアドセンスがある。アドワーズは広告主向けで、簡単に広告できる仕組み、アドセンスはWebパブリッシャーへ向けての仕組み。これらが、少しずつ広がっている状況である。
これらの手法は、行動ターゲティングとリターゲティング、リマーケティングに対するインパクトが大きい。例えばAmazonでインターネットに関する本を買うと、またAmazonに行けば、この本はどうかと薦められる。cookieを使い、過去の検索履歴に即して関連情報が出てくる、ということにはなじんでいると思う。今はもっと進んでおり、Amazonで靴の広告を見たとすると、他のサイトで靴の広告が出てくる。
行動ターゲティングというのは、Yahoo!ならYahoo!で完結するやり方。リターゲティングは一度あるサイトで検索した行為は他のサイトで検索しても追いかけてくる。技術的には出来る。広告の産業からすると必要とされる情報が的確に届き、しかも成果報酬で支払えばよい。広告主サイドからは歓迎する人も多い。日本でも関連する議論があまりないまま市民権を得始めている。ロボットがやっているので個人情報を侵害しない、といわれている。もちろんオプトイン・オプトアウトという考え方も出来ているが、意外にオプトアウトのやり方が難しいとか、悩ましいところに来ている。

Q:広告主として、どこが多くの広告費を支払っているのかというランキングはあるのか。
A:もちろんある。電通発表はメディア別の媒体別。日経は上場企業の広告主のランキングを発表している。広告会社には内部資料ではあるが、クライアントリスト もある。そのような大手はみなネットに広告を出している。サントリーやトヨタ等は手の込んだサイトを持っている。「自社メディアに誘導する」という言葉があるのだが、そこの費用は広告費といえるのか、等の議論もあったが、そのあたりはこなれてきた。

検索エンジン市場の業務提携への懸念:Scott Cleland氏

米Yahoo!とGoogleの検索エンジン統合については、米国において8ヶ月ほど調査され、Noとなった。シャーマン反トラスト法に違法する判断された。アメリカで一番大きな広告協会、広告主などが一緒になり強い反対意見を唱えた。それは「広告宣伝を殺してしまう」からだ。日本は、この事例からメッセージを読み取り、Yahoo!とGoogle提携のインパクトについて理解する必要がある。
広告の手法をアウトソーシングすると、広告における競争が日本で終わってしまう。90%以上をGoogleが牛耳ると言うことになる。Yahooが依存すると言うことになる。その結果、日本のオンラインにおける競争力が下がる。中抜が起き、仲介者、ブローカーを排除される。
パートナーシップ前には日本には競争があった。Yahoo! JAPANが一つの標準を作っており、Googleは挑戦者だった。よりよいサービスを提供するというインセンティブをもって、競争していた。独占的なパートナーシップになると切磋琢磨しなくなる。利益のためにコストを下げ、価格を上げ利益を最大限大きくする。パートナーシップには選択肢がない。日本が車の製造の主要部分をアメリカに依存し、日本は塗装色を決めるだけ、というようなものだ。
Yahoo! JAPANがどう変わるかというと、単なるGoogleのリセラーになり、付加価値が減ってしまう。価値のある重要なインプットを広告に提供しなくなる。Yahoo! JAPANはGoogleの為に仕事をすることになる。
私が心配することは、数ヶ月後、或いは一年後、上手くいっていないと気付いたときには手遅れということである。競争していくためにイノベーションがのために必要なときに、開発をやめてしまえば休暇を過ごしてしまったのだから、もはやGoogleに追いつけない、となっているかもしれない。Yahoo! JAPANはGoogleを必要としている。GoogleはYahoo!の収益の100%を握っている。
面白いことに、Googleは他社をコントロールするために買収が必要とは考えていない。技術を与えれば全ての情報は手にはいると考えている。去年、CEOエリックシュミットはフォブースでこういうことを言っている。「Merge with out merging」「合併せずに、統合できる」。
Googleは、統合すれば支配できると考えている、より小さな会社と大きな会社が統合すれば大きい方がコントロール、支配すると言っている。
殆ど全ての広告主、全ての出版会社をGoogleが押さえてしまっている。どのセグメントを見てもYahoo!が勝てない。日本のユーザーへのサービス提供がYahoo!として唯一勝っている点。これがいま、リスクを抱えている。
GoogleはYahoo! JAPANにとって素晴らしいパートナーと言えない。Googleは独占者。Googleはいろいろな約束をしてパートナーシップを結ぶが、後に彼らが依存するようになると、パートナーとして提供すべき支援量を減らしてしまう。2005年にGoogleはAOLを必要としていた。全ての売り上げの1/6をしめた。現在、AOLの売り上げはとても小さくなり、Googleとしては価値が低くなり財務報告にも出していない。契約を更新するときAOLは不利な条件をのむことになった。マイスペースも同様。
革新は日本の企業にと追ってとても大切。日本の検索・広告宣伝から、Googleの独占状態を持つ状態になると、日本のハングリー精神を持っていた会社が競い合っていた状況が無くなってしまう。
米国では、100を超える関係組織が徹底的に議論をした。選択肢を持つことが重要だと理解していた。それによって議論を尽くした。日本でも、どの様な判断にするにしても、議論を尽くした上で判断することが重要である。
Googleの戦略には大きく三つある。一つ目はサーチ、検索。Googleは全ての情報を持っている。かれらはトレンドが見える。最初に見ることが出来る。Googleトレンズというサービスを見たことがあるかも知れないが、皆さんが見ているのは全体の1%以下にすぎない。二つ目はビデオ。Googleはグローバルな支配的な位置につけている。三つ目は地図である。これはロケーション情報を得ると言うことになる。全ての検索の半分くらいには位置情報が含まれている。Googleがベストの検索、ベストのビデオ、ベストの地図、を提示すれば、誰も競合できず、唯一Googleだけが無償のサービスを提供しつつ、収益化することが出来る。
Googleは独占力を使って、多くの日本の業界に参入し、排除するだろう。時間の問題である。だからこそ、日本の業界が多くの情報を得て、提供が何を意味するのか理解することが重要である。Googleは判っている。彼らのデータセンターを使えば、どの様なサービスにも入っていける。彼らは人が見える。彼らは人が非効率と考えている。それを置き換えようと考えている。人の力に依存している業界(ローカルアドバタイズメント、旅行、ホテル、マンション等々、ビデオ、本、新聞)は、Googleは脅威と考えるべきだろう。どの会社、業種と比べても、これ以上早く動く企業は他にはいない。Googleが参入するとその業界のスピードが速まる。そしてGoogleはそこで無償でサービスを提供する。有償でビジネスをしている企業には競合することが出来ない。

パネル討論

モデレータ:山田肇氏
パネリスト:千田利史氏、Cleland氏、林紘一郎氏、小柳建彦氏、池田信夫氏

林紘一郎氏:
今日は議論を盛り上げるために、Googleを守る側にまわろうかと。Googleとつきあうとろくな事を無いよ、ということだが、それはその会社の株主が決めればいい。これは私自身にバイアスがある。NTTにいたもので、どうして20年も30年も分割した方がいいだの何だのと、口出しするのだろうか。株主総会で決めればよいことだ。中抜についても、いかに非効率な会社が多いかに悩んできた日本にとって、これほど良いことは無いのではないか。学者としては関連市場をどう考えているのかが良くわからない。検索結果の表示、検索エンジンそのもの、検索連動広告、Googleの影響範囲はこの辺りだろうと考える。だがYouTubeなど色々とおっしゃるので、関連市場をどう捉えているのかが伝わらない。牧野二郎さんと、検索行為と結果の表示の行為をアンバンドルしてはどうかという検討したこともある。どうも「群盲、像を撫でる」ようだ。Google含め誰にも判っていないのではないか。その中でこの規律が絶対だと、どの程度自信を持って言えるのか懐疑的。

池田信夫氏:
林さんと似た感想。Googleを批判されるモチベーションが判らない。マイクロソフトの時はわかるが、Googleは当時のMSほどの悪評はない。日本語には「黒船」という言葉があり、これがこないと日本は変わらない。今回の合併が黒船ならばきて欲しい。GoogleがGoogleEditionでオープンな電子出版をしようとするのは大歓迎だ。
Cleland氏:株主が決定できるという点に異論はないが、独占でなければ、という点が必要。競争が阻害され、独占してしまうと言うことになると、そして独占が色々なものをコントロールできるようになると話は別。市場を定義することは難しい。収益化する部分は関連市場といえる。Googleは独占の力を不公正に、他の分野に行使しようとしている。私はアナリストとしてGoogleの反トラスト的な視点でずっと見てきた。200ページのホワイトペーパーもある。私はGoogleの競合会社、Googleの様な他の会社との協業もしている。
通常の環境で対価を払うという中でビジネスをしているところとも協業している。独占はメリットにならない。

山田肇氏:
市場の画定はとても重要。日本の独占と世界の独占は違う。独占禁止法を適用するときの前提が市場の画定である。
林紘一郎氏:私は米国にも住んでいたので、米国の方が市場を信じていると思っている。ところがレッシグと話をすると、なぜか技術万能主義になり、あれもこれも出来てしまうと心配する。それがよくわからない。Googleがあれもこれもできることがプライバシー侵害というが、Googleが全てをフォローできるかと言えばそうは思わない。過大評価ではないか。また、技術には反対側のテクノロジーも生まれる。DRMとかプライバシープロテクションの仕組みがある。

池田信夫氏:
一点補足すると、レッシグはプライバシーについては中道に近い。過激派ほどのことは言っていない。Clelandさんの話をきいて、昔のプライバシー原理主義を思い出した。それはきわめて有害な考え方だろう。

Cleland氏:
プライバシーはGoogleがもつ三つの問題の一つ。一つ目は反トラスト。独占の力を他へ行使すること。二つ目がプライバシー。Googleは毎年何かしらの議論を起こしている。プライバシーは自分の運命を維持するために重要。Googleが集めている情報のチャートがある。かれらは位置、意図、関連、個人情報を組み合わせられる。また市場情報も持っている。他の会社で、そこまでの情報を集めている会社はない。

小柳建彦氏:
Googleが訴えられているのは著作権が最も大きいだろう。これが重要かは議論の余地がある。著作権は自然権ではないからだ。Googleは「我々は悪ではない」と純粋に信じている。Googleにもし問題点があるとすればイノセンスというか、そこまで純粋に、利便性であるとか、消費者の立場を優先する事の方が、問題になっていると思う。独占についてだが、これから利用者の半分以上は中国語になるだろう。グローバルに考えると、Googleはモノポリーとはなり得ない。中国では撤退を余儀なくされた。しかも、ソーシャルネットワークの勃興、FaceBookやTwitter。これらに対して、Googleは危機感を持っている。だからこそ、日本国内では営業上最大のライバルである敵に塩を送ることになるが、そのうち自分に有利なことがあるのではないかと、GoogleはYahoo! JAPANにエンジン提供を行った。だから、独占と言うほどではないのではないか。

千田利史氏:
即物的な言い方になるが、補足される仕組みから逃れる自由さえ保証されれば、利用する側は便利な物と感じる可能性は高い。バランスの問題。ものを売ったり買ったりする世界に、これらを使おうとすると良い部分があるが、受け方によっては押しつけがましい。プライバシーを無視して迫ってくるプロモーションの力に、なんとかならないかと感じることもあるかも知れない。そこと、距離をとる方法があるかが問題だ。

Cleland氏:
レッシグは私と正反対の考えを持っている。著作権財産権を軽んじている。Googleは260億ドルの収益で2万2千人を雇用している。かれらが悪ではないと信じるだけで、公正といえるのか。アメリカでは4つ、反トラスト法で制裁措置を受けている。訴訟は8つの業界に起こされている。米国で2つ以上制裁を受けている企業はない。イノセンスというだけでは納得いかない。本当に独占かという問題についてだが、アメリカはGoogleは独占と司法省が認めているし、中国でも3割のシェアを持っていると言われている。FACEBOOKを引き合いに出されるかも知れないが、Googleは規模が違う。広告主の数で考えても圧倒的に大きい。FACEBOOKはGoogleにとっての競争相手となり得ない。

林紘一郎氏:
パーソナルデータとプライバシーは全く別と考えるべきだろう。皆さん60年以上時代を遡っていただいて、シャノンが考えたことを思い返して欲しい。どういう意味か、0と1のビット列から価値をよみとることを一度忘れて、それでどう利用するか・どう活用するかを考えるということだ。先ほどのイノセンスに繋がる。理系の方でそう考えている方もいらっしゃるだろう。0と1の並びをプライバシーに反するといって制限する日本の方がずっと危険ではないか。

会場コメント:
情報を集めて、後、どうするかが大事。個別性を維持することが大事か、統計性をどうみるか。完全に統計処理でもって済ませられるならば、今のやり方でも問題にならないのではないか。

山田肇氏:
Googleの話では、個人のデータをもとに、この人はこういう閲覧をして、こういう購入をして、こういう行動をするのでこれをお勧めする、という話。統計ではなくて、個人の情報をお話しされたりしている。

池田信夫氏:
個人情報保護法が出来たときにこの議論に嫌と言うほど巻き込まれた。7年経ったが、実感としてそれによって変わった感じを受ける消費者はいないだろう。当たり前で、だれも遵守していない。厳密に守ることを前提とすれば、日本中の企業が東京地検に踏み入られることになる。議論の時にそういったが、その段階では理解していただけなかった。Googleがいやなら、Googleを使わなければいい。その人には、検索エンジンをすべからず使わないという選択肢がある。

山田肇氏:
田辺さんの情報大航海プロジェクトの話で、検索エンジンの次の技術について個人情報の議論について決着が付いていないので、まだ進まない、という話だった。著作権法だった、法律改正したが、10年遅れで手遅れだった。

池田信夫氏:
こういう厳しい法理を遵守できるならいいが、できている企業はいない。それと、こうした議論の話の時にプライバシーの話に踏み入ることは良くないと考える。中抜の話があったが、日本の直面している問題は逆。今年からアゴラブックスという零細電子出版社を立ち上げて出版業をわずかにやっているが、一冊作るのに3ヶ月かかる。出版社が意地悪をして出させてくれないからだ。なんとか懇談会や評議会を出して、価格を安く売るところには版権をうらない、とやっている。標準化といって役所とやっている。EPUBがあるのに、日本独自形式を作りましょうと。そして、それを実装した「ガラパゴス」という端末を作っている。中々根性座っていると思う。

Cleland氏:
申し上げたかったのは、前提となるのはユーザーがYES/NOと言えること。前
提はユーザーがプライバシーをコントロールできると言うこと。Googleは許可がなくても、所有して良いと考えている。2億5千万のGmailユーザーは広告を見ていいという同意をしている。しかし、Gmailユーザーに返信する人達がGoogleへ情報を提供することを認めているわけではない。私はGoogleを否定しているわけではない。彼らの、そうした部分が問題といっている。
小柳建彦氏:確かに、返信する側は意思表示していない。それは重要な観点。ただ、先ほどからGoogleが個人情報を知っているとして、「Know」という言葉をよく使われている。Knowは人間が主語でなくてはおかしい。Googleのシステムは0と1のデータとして情報を持ってはいるが、Gmailの内容を人間として把握・コントロールしているわけではないし、その意志もない。

山田肇氏:
アメリカFTCや司法省もこの問題に関心を持って取り上げている。どう考えるか。

林紘一郎氏:
あまり理論的ではないが、先ほど申し上げたとおり、事実の認識が大事。Yahoo! JAPANは公正取引委員会と相談をしたという。実は書面の相談と一般の相談がある。書面の相談は公開、一般の相談は非公開。今回は、一般の相談で、一方の話を聞いて問題がなかったので、という話。それが公開された。そもそも、この手順に問題があれば、問題となる。近代法の社会は個人が主体の法律体系になっていて、個人が合理的な判断が出来ると言うことになっている。例えば刑法では個人がまず責任を問われる。その時に併せて法人も刑事罰を問われるのは例外的。その中で独禁法は明らかに法人が主体。しかし、私的独占すると直ちにアウトではない。反競争的な行為をとった段階で初めて法発動する、ということだろう。

玉井克哉氏(東京大学):
二週間前に法学者でのカンファレンスにおいてそうした議論があった。独禁法の問題を扱う上で市場の画定が大事、だが難しい、というのはおっしゃるとおり。しかも市場の速度は速い。iPodはかつてウォークマンと競争する商品だったが、今はiPhoneでDoCoMoと競争している。この様に、市場の画定はとても難しい。市場が何処にあるのか非常に分り難い。しかし、問題が難しいことと、問題を解かなくてよいというのは別のこと。本件については、表にある検索や検索連動型広告よりさらに上手の、人々のプライバシーを収集するマーケットがあり、そこに独占的な地位を気付こうとしているのがGoogle。これは自然独占型。Googleのイメージが良いのは、あらゆるものが無料でつかえるから。私のプライバシーを買ってくれる人など居ないので、喜んで提供するわけで、私のプライバシーを提供することで、Gmailを無料に使える。Googleは大量に集積することで、結果、identifyのマーケットを独占できる。これを応用していけば、例えば、カーナビのマーケットはなくなっていく。OSの企業がかつてブラウザをバンドルしてネットスケープを排除したのと全く同じ。あのときは、OSにお金を払っていたので皆、腹がたったが、今はプライバシーという一見無価値で見えないものを売っているから反論は少ない。

小柳建彦氏:
Wintelの時にはパソコンメーカーとの商取引の累積でシェア80%超に上がった、今回はYahoo!がエンジンをGoogleから商取引で得たのだが、独占禁止法で規制できる行為なのか?

玉井克哉氏:
問えないかといえば問える。それは私的独占という概念があり、独占を築き上げるときに、他社を排除するか、他社を支配する。どちらかの行為によって私的独占ということになれば問える。今回のケースは単なる取引に見えるが、結果としてBingとBaiduを排除できれば私的独占。合併ではないので合併規制にはあたらないが、それに匹敵する支配関係になれば私的独占といえるだろう。

Cleland氏:
独占に関してだが、他社を競争できなくすることが問題。独占的地位の乱用。世界中で事例がある。市場の画定は一般的には出来ない。しかし、米では二度ほど行っている。ダブルクリックの調査際のFTCと、司法省の事例。世界でこの検討は行われており、市場の画定はあまり難しい議論ではない。

山田肇氏:
個人の様々なデータを集積することの社会への影響について、考えなくてはならないことがたくさんある。ICPFや情報通信学会のメディア集中に関する研究会等でも議論を続けているので、今後も注視していただきたい。

まとめ

中村清氏:
議論を聞いていて、市場におけるプレヤーの数を問題とするハーバード学派と数が少ないのは効率性の結果とするシカゴ学派のかつての対立と似たような議論と感じた。現在コロンビア大のエリ・ノーム教授らとメディアの集中について国際共同研究を続けているが、マーケットの画定と市場シェアをどのように測るのかなどについて検討しているが、本日の議論とも関連している。話を聞いていて、デジタルメディアを使っている側がどの様な反応をしているかを考慮すべきと感じた。私の学生の中にはTwitterを10分おきに発信し、自分が今何をしているのか知っていてもらいたいと考えている人もいる。異なった価値観もあるということも考慮しなくてはならないだろう。

講演映像

[前半] http://www.nicovideo.jp/watch/1303272376
[後半] http://www.nicovideo.jp/watch/1303272523

概要:

月日:9月30日(木曜日)
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)4階 鳳凰の間
東京都千代田区九段北4-2-2-5  Tel. 03-3261-9921

参加費:3000円(情報通信政策フォーラムと情報通信学会の会員は無料で参加できます)