知的財産 アメリカにおけるフェアユースの現状と日本への導入

概要

デジタル・コンテンツの流通促進は、ますます重要な政策課題になりつつあります。情報通信政策フォーラム(ICPF)では、前回第4回のセミナーでデジタル・コンテンツ利用促進協議会の中山信弘氏と岩倉正和氏に「デジタル・コンテンツ利用促進のための法制度について」と題してお話いただきました。この中で、中山信弘氏は著作権法へのフェアユース規定の導入について、その必要性を強く主張されました。
そこで第5回セミナーでは、成蹊大学法学部教授で米国弁護士の資格もお持ちの城所岩生氏に、アメリカの事情と対比しながら、フェアユース規定の導入について講演していただきます。

<スピーカー>城所岩生氏(成蹊大学法学部教授・米国弁護士)
<モデレーター>山田 肇(ICPF副理事長・東洋大学教授)

レポート

城所岩生氏をお迎えして行われたセミナーの要旨は次の通りです。

講演:
基本的なこと

米国著作権法第107条はフェアユースについて以下のように規定している。
第106条(著作権のある著作物に対する排他的権利)および第106A条(一定の著作者の氏名表示および同一性保持の権利)の規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、教授、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物の公正使用(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は、著作権の侵害とはならない。
著作物の使用がフェアユースとなるか否かは次の四要件を考慮する。

1. 使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的を含む)
2. 著作権のある著作物の性質
3. 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性
4. 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響

わが国ではフェアユースのような一般的な権利制限規定をおかず、個別の権利制限規定を列挙する方式を採用している。その前に著作者の権利について説明すると、日本ではは第3款の第21条(複製権)から第28条までに規定されているが、アメリカでは第106条(著作権のある著作物に対する排他的権利)と第106A条で規定されている。 次に権利制限については、日本では著作権法第30条(私的使用のための権利制限)~49条まで個別の権利制限規定をされて列挙しているが、アメリカは権利制限規定の冒頭の第107条で、包括的な権利制限規定であるフェアユースについて定め、以下、個別の権利制限規定が第108条(図書館及び文書資料館による複製)から第122条まで続いている。
また、アメリカには著作権侵害の類型として直接侵害と間接侵害がある。利用者の侵害が直接侵害、サービス提供者の場合は間接侵害、間接侵害については条文でなく判例で認められ、さらに寄与侵害と代位侵害に分けられている。
日本では間接侵害は認められていない。その代わり、日本はクラブキャッツアイ事件で最高裁が採用したいわゆる「カラオケ法理」(88年)以来、直接侵害の主体を広く解釈してきた。カラオケ店で著作権を直接侵害しているのは歌っているお客だが、お客に場所と設備を提供し、お金を取って儲けている、店主も歌っているとみなされ、侵害の主体であるとされた。その後の判例では、カラオケ機器のリース業者、これも侵害の主体であるとして責任を問われた。
アメリカで有名なのはソニー・ベータマックス判決、1984年、寄与侵害で訴えたが、最高裁はユーザーの直接侵害について、録画はタイムシフティングでありフェアユースとした。
82年にJack Valenti全米映画協会会長は「映画業界に対するVTRの驚異は女性が一人でボストン絞殺魔と向かい合うようなもの」と議会で証言したが、00年にHank Barry Napster CEOも議会で、「VTRが85%の家庭に普及したにもかかわらず、映画業界は99年に史上最高の興行収入を記録した。同時にVTRでも売り上げの半分以上を稼いだ」と証言した。フェアユース規定によってソニーVTRが認められたことが、映画産業を救ったわけである。
P2PではNapsterは中央管理型…誰がどういう音楽ファイルをやりとりしているかNapsterのサーバーでわかるので監督責任があるとされた。2001年に第9高裁Napster判決では、「サンプリング(試聴)はフェアユースではない。」「多くの人が使用可能なため、スペ-ス・シフティング(パソコンから携帯用録音再生機器への「機器の移動」)にもあたらない。」「利用者による直接著作権侵害を黙認していたため、寄与侵害にあたる。」「利用者による著作権侵害を監督する権限と能力を有しているため、代位責任も免れない。」となった。
P2PのGroksterは分散処理型…誰がどういうファイルを交換しているかわからない。しかし、「著作権侵害使用を促進する目的で製品を配布する者は、その結果、第三者が引き起こした著作権侵害についての責任を負う。」…要するにNapsterの後継であると宣伝したことが、侵害を助長する行為であるとされ、侵害責任を問われた。

米国のフェアユース産業

米国コンピューター通信産業連盟は07年9月に「米国経済におけるフェアユース ー フェアユース関連産業の経済的貢献」と題する報告書を発表した。 著作権のあるプログラムの私的複製を認める製品のメーカー、教育機関、ソフト開発業者、ネット検索およびウェブ・ホスティング・サービスのプロバイダーなどが、フェアユース産業のプレイヤーである。
報告書によると、フェアユース産業の売上高4.5兆ドル(約450兆円)、付加価値額2.2兆ドル(約220兆円)、これは米国GDPの約6分1(日本のGDPの2分1)を占める。雇用者数1080万人(雇用者の8人に1人)、給与総額1.2兆円(約120兆円)。一人あたり生産性は12万8千ドルと全産業を40%も上回っている。インターネット、オンラインサービス関連サービスの輸出も05年までの3年間に全産業中最高の65%の成長を示している。
わが国と比較すると、07年4月の経済財政諮問会議資料は、「米国ではIT利用サービス業が全体の生産性上昇に大きく貢献している一方、日本では寄与が小さい。」「日本の生産性の米国とのギャップは90年代半ばにかけて縮少するも、90年代後半以降、米国の加速により、米国の7割程度の水準にとどまる。」などと指摘している。フェアユース産業が牽引した米国と、それがなかった日本との差ともいえよう。

裁判事例

報告書はフェアユース産業がインターネット経済に土台になっている例として検索サービスを挙げ、裁判所もこれをフェアユースだと認めてきた点を指摘している。そこで、検索サービスをめぐる裁判事例を紹介する。
まず著作権侵害だと原告が訴えたときに、被告がフェアユースと抗弁し、それが認められると侵害性は無いとなる。フェアユースは抗弁であることを理解して欲しい。
画像検索サービスにはKelly v. Arribaがある。被告Arribaは画像検索エンジンを運営し、サムネイル画像で画面に何枚も表示、クリックすると画像が拡大表示するというもの。
判決:カリフォルニアの高裁判決はサムネイル画像がフェアユースかどうか、4要件を検討した。
①使用の目的および性格…画像使用は営利的だが過度に搾取的ではなく、変容的使用にあたる(Kellyの目的である芸術的表現に取って代わるものではなく、新たな目的-ネット上の情報-を与えるものである) ことも営利目的を軽減するので、Arriba に有利に働く。
②著作物の性格…Kellyの作品に創造性はあるが、ネット上に公開ずみ→ Arribaのフェアユースの抗弁に若干不利に働くにすぎない。
③「使用部分の量および実質性…ArribaはKellyの作品全体を複製しているが、一部複製では検索エンジンの有用性が失われてしまうため、その使用目的からして合理的であるので、どちらに有利ともいえない(中立的である)。
④市場への影響…変容的作品は原作品に取って代わる作品に比べると原作品の市場に悪影響をもたらす可能性は少ないので、Arribaに有利である。
以上を総合するとArribaが有利なので、サムネイル画像使用はフェアユースであるとした。フルサイズ画像については、原告、被告ともサマリー判決(事実審理なしに下す判決)を求めていないのに判決を下したのは誤りであるとして地裁に差戻した。
このほかに画像検索では、Perfect10 v. Googleもあり、カリフォルニアの連邦地裁は似たような判断で、Googleのフェアユースの抗弁を認めた。
文書検索サービスではField v. Google。検索エンジンの仕組みは、クローラーがストレージサーバーに保存し、インデックスを作成、利用者が検索の要求を行うと結果を表示するものであり、ストレージサーバーにコピーする行為、これが侵害にあたるのではないか、というもの。ネバタ州の連邦地裁は以下のように4要件をテストした。
①使用の目的および性格…キャッシュページはユーザーが原作にアクセスできない場合でも、ウェブサイトのコンテンツにアクセスできるようにしてくれること、索引されたくなければ、コンテンツを除去できる方法を用意していること、などから原作に取って代わるものでなく、新たな目的を加えるものであるので、Googleに有利に働く。
②著作物の性格…Fieldは作品をネットに公開し、検索エンジンに索引されるように設計したので、仮に作品に創造性があったとしても彼の著作権侵害の主張に若干有利に働くにすぎない。
③使用部分の量および質…検索エンジンにように社会的に価値ある目的のための使用は全作品のコピーによってのみ達成されるので、原告、被告のどちらに有利に働くともいえない(中立的である)。
④市場への影響…キャッシュへのリンクの潜在市場があるという証拠はなく、そうした市場が開発される見込みもないので、Googleに有利。
以上を総合してGoogleのフェアユースの抗弁を認めた。
このようにいつも4要件に照らし合わせてフェアユースを判定しているところにアメリカのフェアユース判例の特徴がある。
Googleのブック検索サービスは、米英の5大図書館が参加。ハーバード、スタンフォード、ミシガン、オクスフォード、NYパブリックライブラリー。Googleはこれを「われわれの人を月に送る計画」とし、1ページ1ページをスキャニングする膨大な作業を開始した。日本では慶応が世界で26番目の図書館として参加。「全文表示」、「部分プレビュー」、「スニペット」、「レビューを利用できません」の4タイプで結果が表示される。本屋へのリンク、在庫があるかも分かるように整備している。
書籍の70~75%は孤児作品といわれている、誰が著作権者なのか分からない作品。それらも含めて全部をスキャンするというのがGoogleの思想だった。作家協会と出版社協会による提訴をうける。両協会は著作権法が利用者に使用許可を求めることを要求しているにもかかわらず、Googleはオプトアウトしない限り複製しようとしていると主張した。Googleは個々の書籍の著作権者の許可をいちいち取るオプトインは現実的ではないし、禁止的でさえあるとした。経済学的に言えば、市場の失敗を主張。その後、和解成立することに。Googleは1億2500万ドルを支払う。
YouTubeで有名な動画共有サービスでは、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)が関係している。大きいのはサービス・プロバイダーの著作権侵害免責。検索エンジンも含めたプロバイダーは、Notice & Take Downの手続きを踏めば免責され、著作権侵害を問われないので、セーフハーバー(安全な港)ともよばれる。わが国のプロバイダ責任制限法も類似のNotice and Notice Take Downとよばれる手続きを定めている。しかし、DMCAでは侵害の通知を受けたら情報を削除し、その旨契約者に通知すればよいのに対して、プロバイダ責任制限法では権利侵害があると信じるに足る相当の理由がないと削除できない。DMCAは通知を受けて機械的に対処していれば免責されるが、プロバイダ責任制限法では権利侵害があるか否かの判断を迫られるのである。

フェアユースが可能にするサービス

日本の失われた10年…日米ともに検索サービスが94年に誕生しているのにも関わらず日本のサービスは伸びなかった。フェアユース規定のないわが国では著作権侵害の恐れを回避するため、事前に検索するウェブサイトの了解をいちいち取るオプトイン方式で対応した。これに対して、米国は検索されたくなければその旨申し出るオプトアウト方式で対応、情報の網羅性がものを言う検索サービスでは最初から勝負がついていたといえる。案の定、日本の検索サービス市場では現在、米国内にサーバーを置いているため、日本の著作権法が適用されないヤフー、グーグルなどの米国勢が圧倒的なシェアを占めている。中国・韓国を見ても国産検索サービストップのシェアが60~70%を占めているのに対し、日本勢トップのシェアはわずか3%にすぎない。
音楽配信:レコード会社はNapster訴訟では勝ったが、ビジネスで勝ったのはiPodを発表したアップル、技術的にはアップルに先行したソニーは厳格な著作権管理システムを採用したため、緩やかなシステムを採用した後発のアップルに抜き去られた。
放送関連ベンチャー:録画ネット事件、選撮見録事件、ロクラク2事件等いずれも放送会社から著作権侵害で訴えられて敗訴した。唯一生き残っているのはこの種のサービスでは一番使い勝手が悪いまねきTV事件。アメリカにも似た様なサービスはある。タイムシフティングではTiVo、キーワードを打ち込んでおくとそれに類似する番組を録画しておき、いつでも見ることが出来る。プレースシフティング(場所の移動)・サービスでは Sling Media。こうした放送関連ベンチャーに対して、米国では訴訟すら提起されていない。日本の方が訴訟社会化している理由の一つは実演家、レコード事業者、放送事業者などに創作者に準じた保護を与える著作隣接権の存在。米国には著作隣接権はない。
もう一つの理由はフェアユース。フェアユースの第4要件は既存の市場を奪わないかだが、これらのサービスは奪うどころか新たな市場を開拓する(海外に居住する日本人が日本のテレビ番組を視聴できるようになる)サービスだからである。
ストレージサービスとしてはMYUTA事件。原告はユーザーのパソコンにある音楽をサーバーに保存し、ユーザーが自分の携帯電話にダウンロードして聴けるサービスを提供。JASRACは著作権侵害を主張。東京地裁、侵害を認める判決。米国では利用者が自宅の録画機器ではなく、ケーブルテレビ会社のサーバーに録画し、再生できるリモートストレージ・サービスを大手のケーブルテレビ会社が開発した。映画会社やテレビ局が訴えたが、ニューヨークの連邦高裁は侵害を否認する判決を下した。
最近の動きとしては、知財本部が10月に「デジタル時代における知財制度の在り方について」の報告案を作成して、パブコメを募集し、今日締め切った。3章から成る報告案はIIで「権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入」を提案している。
日本ではフェアユースの抗弁が認められていないため現作品の市場を奪うことなく新たな市場を開拓するサービスも提供できない。新技術登場の都度、法改正が必要であり、サービス提供者を直接侵害者とするカラオケ法理の拡大解釈に歯止めがかからない現状。
クラウドコンピューティングの衝撃もある。Salesforce.com:顧客管理、営業支援システムで急成長した。導入した日本の大手事務機器メーカーは情報システムのコスト・開発機関とも6分の1に低下するとともに情報の共有が可能、同じく導入した中小企業は自前では開発できない最新のシステムを利用し、顧客管理・営業支援や人事評価にも活用出来る、そういう時代になっている。
今までは検索エンジンにしても、音楽配信にしても、技術は同時に開発していたが制度が足を引っ張っている状況だった。だがクラウドコンピューティングに関してはアメリカが先行しきっている。制度に足を引っ張られているうちに技術も疲弊してしまったのかもしれない。
Web2.0、角川GH 角川会長兼CEO:「iPod, YouTube の成功は技術イノベーションによるものではなく、ビジネスモデルとDMCAの制度イノベーションがもたらした」「新しい時代の著作権制度は、産業著作権と「国益」の視点でいかにして制度イノベーションを実現するかが問われている 」。
さらに、フェアユースを超えた米国の動き。「Tolerated Use」といった、フェアユースにも該当しない違法使用だが、ビジネス上の判断から、侵害使用を黙認する対応という概念。YouTubeは要請を受けて違法コンテンツを除去していれば免責される。同時に、著作権者も削除要請するか、黙認してパブリシティ効果をねらうか、選択することが出来る訳である。
制度イノベーション実現のためにも、米国にこれ以上引き離されないためにもフェアユースの導入は必須といってよい。

質疑応答

質問:企業コンソーシアムをつくっていて、社内ブログSNSを運営している事例をよく聞く。大企業の中で、社内ブログ、SNSにおける侵害があるのではないかというのを担当者がチェックに時間を割いている。仮にフェアユースが規定されたとして、企業の活動は営利であるが、これらは問題なくなるか?
回答:営利であっても、アメリカではGoogleの活動を認めている、検索連動広告等がそう。従来の市場を奪っているわけでもない。日本ではどうかというと、カラオケ法理があるため、営利性がちょっとでもあると違法となる。フェアユース規定で緩和されるだろうが、法廷で抗弁することになるだろう。

質問:公共・文化の振興という観点から見ても、企業が閉じた環境でSNSを運営している場合は、フェアユースの対象外と扱われる危険はないか?
回答:閉じた環境であっても家庭内なら、第30条(私的使用の権利制限)が適用されて侵害にならないが、企業内の場合までは及ばない。フェアユースが導入されれば、家庭内でなくてもフェアユースになるケースも出てくると思われるが、それはフェアユースの規定の仕方次第ということになるだろう。

質問:Googleがブック検索で和解した、これはなぜ?
回答:私の観測だが、ブック検索の場合、検索対象から除外してもらうオプトアウトはGoogleしかやっておらず、Yahoo!マイクロソフトはオプトインでやっている、画像・文書検索に関しては業界共通のオプトアウト技術が確立されているが、ブックに関しては確立されていなかった。負ける可能性もあるし、時間がかかる事も考えると、それよりは、和解で早く決着つけたい、というところではないか。
Googleのミッションは地球上にあるあらゆる情報をデジタル化し検索可能にすることであり、本というのは元々良質な情報な訳だから、万が一負けるという時代を避けたい、ということもあるだろう。逆に、作家などでもなぜ同意したのか、という人々もいる。金に目がくらんでGoogleの言いなりか、と。

質問:フェアユースの話で、ずいぶん昔の記事で読んだのだが、プールの底にミッキーマウスを書いて訴えられた、最近では文化祭の映像をアップロードしたりする。これがフェアユースになるとどうか。
回答:ディズニーは厳しいことで有名。フェアユースが規定される際には、営利目的かどうか、という点も条文に加わることで対処する形になるだろう。

質問:結婚式で有名アーティストの音楽をかけた映像をYouTubeにアップロードした場合。作詞・作曲はOKだとしても日本には、アメリカにはない隣接権がある。フェアユースだとどうなるか?個別に判断だろうか?前もって規定が無くてはならない?
回答:アメリカになくて日本にあるものとして、隣接権のほかに送信可能化権というのがあり、違法コンテンツをアップロードした時点で著作権侵害になる。これもフェアユースが送信可能化権にも及ぶのかという規定の仕方にかかってくる。

質問:検索エンジンで他国との比較、どの国も地元の検索企業が強い。中国・韓国にはフェアユースがある?
回答:無いけれども、韓国は検索エンジンを「引用」に当たるとの最高裁判断がある。日本でも引用は個別制限規定で認められているが(第32条)、裁判所は個別の制限規定を狭く解するので、フェアユースのような一般的権利制限規定が必要になる。中国はフェアユース規定がなくてもコピー天国の国なので、まぁ…。でも中国の百度がすごいのは、中国市場でグーグルやヤフーより後発であるにもかかわらず、60%以上のシェアを獲得、余勢をかって日本にも進出してきている。

質問:素人から見ると、何が正義なのかにわかには分からない。健全なのは、制度を変えていくのは有用なサービスが出てきて、それに合わせて変わってく、ということだろうが、今行われている議論は利害調整の段階での議論なのか、これが行われることで、本当に新たなビジネスの芽が出てくる事が期待されるという話なのか?
回答:少なくとも現状では日本の弁護士が、ベンチャー企業から相談を受け、日本の著作権法では難しいと回答すると、それではアメリカに行って起業しましょう、という話になる。それが少しは緩和されるだろう。

質問:アメリカが圧力をかけてくることは多々あるが、これを日本に関してもやりたいから日本も変えろ、とは言ってこない。
回答:それは既に米国勢が日本でシェアを確立していると言うこともあるだろう。われわれの個人情報はYahoo!本社に行く可能性も十分にある。米国がテロ対策で個人情報をよこせ、といえば、どうなるか。例えば4大電話会社が政府から通話記録提出要請を受け、3社は提出した。グーグルも検索ログの提出要請を受けたが、顧客のプライバシー保護の観点から抵抗して、必要最小限の提出にとどめた。

質問:フェアユースが何かをひっくり返すか?経済的にインパクトを与える分野があるか?
回答:そこまではいかない場合も多いが。例えばMYUTA事件以外はずべて敗訴した放送関連ネットサービスなどは認められる可能性はある。それがビジネスに成長するかも。

質問:フェアユースが始まっても訴訟にさらされる可能性はあるのか。
回答:侵害された側の企業の法務部がそう判断すればありえるが、しかし実際にあるかといえばどうだろうかとも思う。逆にフェアユースで抗弁できると判断する企業は、法改正を待たずにサービスに踏み切ることができる。第47条の3は携帯電話、PCなどの記録媒体を内蔵した機器の「保守、修理」時のバックアップのための一時的複製を認めた。「着うた」など著作権のあるデータの場合、著作権者の許諾が必要だったので、利用者からの苦情が多かった。このため、携帯電話会社は04年8月に改正要望を提出、06年12月の著作権法改正に盛り込まれ、07年7月から施行された。これなどはフェアユースがあれば、3年も待たずに実施する事業者もいたはずである。

質問:前回も話題になったが、中山先生は次の国会にフェアユースは入らないと仰っていたが。何が抵抗している?
回答:今日締め切りのパブコメでどういう意見がでて、知財本部がどう考え、知財計画2009にどう反映させるか、その後、ということになるので、早くて来年以降だろう。

レポート監修:山田 肇
レポート編集:山口 翔

スケジュール

<日時>
11月17日(月)18:30~20:30

<場所>
東洋大学白山校舎 6号館2階6212教室
東京都文京区白山5-28-20

<参加費>
2000円  ※ICPF会員は無料(会場で入会できます)