アクセス ウェブアクセシビリティの推進

情報通信政策フォーラム(ICPF)とウェブアクセシビリティ推進協会(JWAC)は、第30回情報通信学会大会の特別セミナー「ウェブアクセシビリティの推進」を協賛した。約20名が参加して実施された特別セミナーの概要は次のとおりである(文責:山田肇)。

月日:6月23日(日曜日)
時刻:10時00分~12時00分
場所:東洋大学白山キャンパス6号館3階6204教室

後藤芳一氏(日本福祉大学)が「障害者基本計画における情報アクセシビリティ」と題して講演した。

  • わが国は障害者権利条約を批准していない。条約の要求と国内法・制度が整合していないためである。改善のため障害者基本法が改正され、障害者政策委員会が設置された。
  • 権利条約は社会生活を営む上での差別を禁止するため、アクセシビリティは重要な国内政策要素となる。政策委員会での議論をリードするため、有志が集まり、公共交通・建築と情報通信のアクセシビリティについてあるべき姿を検討し政策委員会に提案してきた。
  • 6月19日に障害者差別解消法が参議院で可決され、2016年4月に施行される。過度の負担にならない限り、公共団体はアクセシビリティに対応する義務を負う。具体的に何を義務とするかはこれから検討されることになっているが、ウェブが含まれるように関係各方面に働きかけるべきである。

植木真氏(インフォアクシア)が「ウェブアクセシビリティ標準とガイドラインの整備」と題して講演した。

  • ウェブアクセシビリティ標準JIS X8341-3は、第二版でWCAG2.0に完全整合した。WCAG2.0は2012年にISO/IEC40500として国際標準となっている。
  • JIS X8341-3では技術の詳細が分からないため、WAICでは、解説書や試験方法等、各種のガイドラインの整備に努めてきた。
  • しかし、公共団体でも民間企業でもウェブアクセシビリティに配慮することを方針として宣言し、実際にJIS X8341-3に準拠しているサイトは少ない。

遊間和子氏(国際社会経済研究所)は「公共団体での義務化に関する世界の動向」について講演した。

  • 米国ではリハビリテーション法508条に基づき連邦政府調達でのアクセシビリティ配慮が義務となっている。それが提供企業にとっては、配慮製品開発のインセンティブになっており、世界市場でアメリカ製品が優位な理由にもなっている。
  • 欧州では、公共団体による調達での義務化を図る法制度の整備が進んでいる。それに加えて、民間企業に対してもウェブアクセシビリティを求めたり、電子行政でのアクセシビリティ確保を求めるといった制度設計などが進んでいる。
  • わが国も、欧米に見習って、公共調達での義務化を進めるべきである。

三つの講演の後、山田肇氏(東洋大学経済学部)を交え、概略、次の項目について意見が交換された。

アクセシビリティの対象について

  • 障害者政策委員会では障害者を対象としているが、人々は加齢とともにさまざまに障害を抱える。したがって、高齢者・障害者・一時的に障害を持つ人なども対象とすべきである。
  • スマートフォンなど、アクセシビリティやユーザビリティに配慮した機器・サービスが市場で優位な地位を占めている。ウェブも含め、情報通信機器・サービスはアクセシビリティなどに配慮することで、より多様な人々に利用されるようになる。

過度の負担について

  • まったくアクセシビリティに配慮していなかったサイトを改善するには費用がかかるため、重要なページや、ある時点以降に作成するページ等に限定して、まずはアクセシビリティを確保するという方法も許される。
  • 同様に、A、AAとして規定されるすべての項目を満たさなくても、少しずつ前に進んでいくのであれば、認めてよい。
  • 提供者が過度の負担であると主張すれば許すのではなく、利用者が納得した場合に限って過度の負担と認めるようにするのが適切である。

電子行政等について

  • オープンデータでは、データを編集して国民に提供するのは民間企業であり、差別解消法をそのまま読めばアクセシビリティが義務とは解釈できない。
  • オープンデータの源は公共団体であり、それを国民に提供しているので、民間企業が編集データを提供するといっても、公共団体はアクセシビリティの確保を民間企業に求めるべきである。
  • 電子行政サービスのアクセシビリティにはひどい例が多い。これから力を入れて改善していくべきである。

特別セミナーの模様(正式版)は情報通信学会誌で公開されます。