健康・医療・介護へのICT活用と国際標準化活動 山田 肇高齢社会対応標準化国内委員会委員長

日時:222日金曜日1830分から2030
場所:ワイム貸会議室四谷三丁目 会議室B
講師:山田 肇(ICPF理事長、高齢社会対応標準化国内委員会委員長) 

資料に基づいて講演が行われ、その後、質疑があった。
講演資料はこちらからダウンロードできます。

健康・医療・介護について
Q(質問):平均寿命と健康寿命のギャップが10年くらいあるが、有病でもかなり元気で終末期はかなり短い。となると、健康寿命の定義自体が違うのではないか。
A(回答):これはWHOで議論されている(注:WHOでは平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間と定義している)。死の判断は簡単にできるが、健康か不健康かの判断はルールを決めることになる。有病でも元気であれば医療期にあり健康寿命が尽きている人ではない。
Q:社会活動ができる高齢者は、有病でも健康寿命としたほうがよいとのではないか。
A:それはその通り。
Q:健康期・医療期などのグラフの横軸のスケールは、実際にはどれくらいになるのか。
A:私の記載したグラフには年齢は入っていないが、秋山先生のグラフはエビデンスから作図されている。男性だと73-75歳くらいから介助が必要になり、87歳から90歳ぐらいで死亡というのが平均的である。縦軸は健康寿命ではなくADLIADLではあるが、年齢がある程度読める。しかし、この調査は、少し前のデータなので、社会の在り方との間にタイムラグがある。夫に追従的な女性は、夫の死後、急に衰えるというのが秋山先生の調査結果だが、今は、そのような傾向は薄れているかもしれない。
Q:メーカー勤務で高齢者見守りSLも開発しているが、特許などの問題もあり、なかなか国際標準化活動に入るのはハードルが高い。IECでは特許の話などもでるのか。
AISOIECITUも同じルールで、特許を持っている企業は、国際標準化されそうなときは2つの方針の中から選ぶ。ひとつは、無料で使ってください、もうひとつは、お金は徴収するが、誰でも使えるという方法がある。ほとんどの企業は、後者を選ぶ。標準を作成しているときは、特許がある人は手を挙げてくださいと言うことがルールとなっている。
Q:骨折したときに、どのようにすれば治りがいいかといったこともBD分析で導きだせないのか。
A:大学院にきていた聖マリアンナの方が、50名の大腿骨骨折患者で半年間のQALYを調査して、リハビリの効果を出した。医療経済の分野ではよく行われている。

ICTの活用について
Q:親が介護施設に入居待ちである。在宅にしたくても、事業者もヘルパーが雇用できない。ICTが利用できれば健康な人の生活モデルを見える化でき、コミュニティの活動に役立つのではないのか。
AAALは、人手を減らしケアすることを可能にする。介護者との社会的交流でも、テキストベースの対話等が検討されている。インテリジェントアパートのようなものは、日本では、セコムが既にサービス化している。ただ、サービス価格により富裕層向けである。公共サービスとして、提供価格を下げて提供するには、国際標準化活動が必要である。
Q88歳の父をショートサービスに預け、大腿骨骨折で入院している母に会ってきた。父はスマホが使えない。介護する側を楽にするようなサービスについての動きはどうか。
A:音声認識・音声合成を利用してメッセージをメディア変換する技術がドコモで商品(みえる電話)になっている。これについても、国際標準をめざそうという動きが起きつつある。 

ICT活用政策の推進について
C(コメント):ファーウェイの時のように危機感をあおると、政府、官僚は動く。マイナンバーの利用を厳しく制限していても、GAFAが行っていることを見れば、個人情報はどんどん収集されている。それを訴えて、マイナンバーの利用に向かわせるのがよい。
QSDG’sの中にQOLといった概念をリンクさせて進めていった方がいいのではないか。費用対効果があるという方向は難しい。
A:まさにSDG’sに含まれるものである。健康はSDG項目のひとつになっている(注:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する)。途上国では死亡率が高いので、より健康的に長く生活してもらうようにと考えられている。ISOの活動では、SDG’sについてはあまり触れていないので、戦略的に触れていくことが必要というのはご指摘の通りだと思う。
Q:企業経営者は、SDG’sなどには敏感なので、話が進みやすい。
AGoogleSDG’sに貢献するためにフィンランドにデータセンタを作った。欧米の大企業は企業戦略としてこのあたりを非常に理解している。
Q:ECISOの国内委員会は経済産業省だが、厚生労働省は入っているのか。
A:経済産業省がやっているが、確かに、厚生労働省が関係するテーマである。経済産業省から厚生労働省に話をして、会議に出てもらったり、情報提供したり、指導をもらったりして、厚生労働省と協力して対応している。
Q:メーカーは入っているのか。
A:残念ながら、メーカーはあまり関心を示していない。唯一、関心があるのがPT63168で、自社のサービス・製品に直結するので、住宅メーカーが業界として委員を出している。
QQOLのグラフのどれに自分が当てはまるかを知ることはできるのか。
A:秋山先生の調査では、大企業の管理職は早く死ぬなど、具体的な人物像が明らかになっている。世田谷区の調査でも、はとバスに乗って苺狩りに行くことは健康に影響はないが、自分で苺園を探して、友人と計画を練るというような人は健康だというようなことが明らかになっている。東京都の稲城市は介護ボランティア制度があり、高齢者が高齢者に支援を行う。介護施設では朝が忙しいので、高齢者の介護ボランティアが配膳を手伝うとスタンプをもらえて、介護保険料が減額される制度を行った。これにより、介護ボランティアに参加した人の方が、その後の要介護度に大きな影響があった。お茶を飲みながら折り紙を折る、入居者とマージャンするなども対象となる。