ビジネス ネット投票ビジネスの可能性:アイドル総選挙から学ぶ

日時:11月11日(水曜日) 午後6時30分~8時30分
場所:東洋大学白山キャンパス5号館1階 5101教室
司会:山田肇(東洋大学経済学部教授、ICPF理事長)
講師:市ノ澤充(株式会社パイプドビッツ 政治山力ンパニーシニアマネジャー)

講演資料はこちらにあります。

市ノ澤氏は講演資料を用いて概略次のように講演した。

  • アイドル総選挙のシリアルコードを用いたオンライン投票は8割ほど。パソコン、スマートフォン、ガラケーすべてから受け付けている。データ容量が非常に多い(候補者の写真250人分くらいをアップしている)ため、極力シンプルなシステム構成にしている。
  • 秒間1万アクセスに耐える、秒間1000投票に耐えるシステムである。夜間に投票が集中するリスクも考慮して、24時間体制でのバックアップを取り続けることで、ダウンタイムゼロで運用している。
  • 複数の担当者がそれぞれ集計を行い、弁護士がチェックすることで開票の管理を行っている。
  • シリアルコードを付与して投票者を認証し、重複投票を排除している。特定の端末から集中したアクセスがあった場合には、一時的にその端末を排除する機能を用いて、攻撃を防止している。
  • ネット選挙解禁は、選挙をする側の目線に立った解禁であった。有権者の多くはネット投票解禁と勘違いし、わかりにくい部分があった。参院選の選挙公示前の期待としては、ニュースサイトや政治選挙情報サイト、政党のホームページ、候補者のホームページを閲覧するとした人が多かった。しかし、投票直後の調査では、候補者のサイトなどは少なかった。有権者が求めていた情報が得られなかったためと解釈している。
  • ネット選挙のセキュリティについては運用面の課題が多い。候補者による不適切な投稿による炎上等がある。技術面での課題は、それに比べれば少ない。プロバイダ責任制限法で、選挙期間中に不利な情報がアップされたときは、2日で削除できることになったが、大きなプロバイダにはそのような依頼はほとんどなかった。町村の選挙など投票期間が短いものに対しては、2日でも時間が足りないので、無視または泣き寝入りするしかない。
  • 2014年12月衆院選の投票率は過去最低を更新した。今の選挙制度では、投票の現場で、不正は日々行われていても検証が困難である。なりすまし投票や、集計作業を急ぐあまり票の操作をするところがある。ネット投票にすれば、改善できる可能性がある。
  • 2002年に電子投票が可能になったがいくつかの自治体で機器停止のトラブルが発生したため、今は休眠状態になっている。設置した端末のファンがうるさいからと、職員が停止し、そのため、機器が停止してしまったというような人的な運用トラブルもあった。
  • エストニアやノルウェーなど20か国以上の国で、すでに公職選挙でネット投票が実施されている。エストニアでは、公開鍵と秘密鍵を用いた受付サーバを選挙管理委員会で保持する。カード読み込みリーダーを国民に配布し、端末とカードで本人認証を行う。投票データベースの保存は、暗号化する。日本と大きく異なる点は、暗号化署名付き投票データである。エストニアでは、誰が誰に投票したのかが結び付いている。自由意思での投票を担保するため、選挙期間中に再投票が可能としたためである。再投票でデータは上書きされる。
  • 日本では、ネット投票について、本格的な議論はされていないのが現状である。一方、一人一票の代表選が、維新の党で考えられていた。シリアルコードで有権者を確認する方法が採用される予定だった。ネットと郵送、演説会場で投票できるようにと考えていた。「日本を元気にする会」では、ネットを活用した直接型民主主義を実践している。
  • 2014年4月にインターネット投票研究会を社内に設置した。国内外の事例を検証し、自治体での検証を行うことを目的としている。2015年7月に情報ネットワーク法学会に研究会を設置・運営している。
  • インターネット選挙といえば、6割の人がネット投票と回答する。年代が若ければ若いほど、その傾向がある。期待できる成果としては、ネット投票できるようになったら5割がネットで投票すると回答している。
  • 在外邦人の投票の手段としてネット投票が考えられる。ざっくり紹介すると在外邦人125万人に対して、名簿登録しているのが10万人、投票数は約2万である。海外で投票する場合、投票所まで遠いとか、10名程度の票を日本まで複数の外務省職員が運搬するとか、コストやリスクがある。

講演後、以下のような質疑があった。

選挙システム運営者の役割
Q(質問):開票する直前までデータはブラックボックスの中にあるというが、開票作業はどうするのか?
A(回答):開票作業は一人では行わない。選挙管理者が暗号鍵を持ち、選挙システム運営者と一緒に開票することで、システム運営者が投票結果を操作する恐れはなくなる。
Q:情報システムに疎い選挙管理者には理解できないことが多いようだが?
A:システム運用者ではなく、選挙管理者が管理者権限を持ち、場合によっては選挙管理者の端末一つからしか開票できないというような設定もできる。それに加え、専門家を第三者として立ち会わせるとかいった、選挙管理者の目に見える形でのセキュリティが必要になる。

国政選挙でのネット選挙
Q:ネット投票を導入しようというドライブ要因は何か?
A.:投票率の向上である。エストニアの研究であるのは、若者の投票率の向上につながるといわれているが効果はそれだけではない。在外投票もそうだが、物理的に投票が困難な人たちの投票率向上にもつながる。島嶼部・過疎地とか、障害を持った方の投票は、ネット投票で容易になる。
C(コメント):2016年4月に障害者差別解消法が施行される。第7条より、公共機関には障害者に投票機会を保証する義務が発生する。それを切り口にするのは、良い突破口になるだろう。
C:多様性という言葉が重要だ。
C:障害者以外にも利益が出る。スマホで選挙公報を見る場合も、画像が小さすぎたり、スクロールで見にくかったりするが、視覚障害者を考えてテキストを提供していれば、スマホ利用者も情報取得が容易になる。
Q:今後の課題は技術面なのか、運用面なのか?
A.:今の技術の組み合わせでできないことは少ない。旧態依然とした公職選挙法が課題であり、意識改革をしてブレイクスルーしなければ進まない。人々の認識の差をどう埋めていくのかが課題である。

ネット選挙のビジネス化
Q:アイドル総選挙以外に、民間で実施できるようなものはあるのか?
A:「.からあげ総選挙」などはやっているが、公的な本人認証を伴うものは実施していない。また、ネット投票の関連技術は、オンラインでの本人確認や署名を必要とする多様なサービスに適用可能である。