セミナー「行政DXに猶予はない:日本維新の会に聞く」 音喜多駿日本維新の会参議院議員ほか

開催日時:3月16日火曜日午後5時30分から1時間
開催方法:Zoomウェビナー
参加定員:100名
セミナーの内容:
音喜多駿日本維新の会参議院議員「日本維新の会のデジタル政策」(20分)
山田肇ICPF理事長(東洋大学名誉教授)「今こそ行政業務の改革を」(20分)
登壇者による討論・ウェビナー参加者からの質問等(20分)

冒頭、音喜多氏は資料を用いて次のように講演した。音喜多氏の資料はこちらにあります。

  • 2013年に都議会議員に選出されて以来、ブログを365日更新し、「ブロガー議員」と呼ばれるようになった。2019年に参議院議員に選出され、現在、一期目である。参議院議員になってからはYouTubeの毎日更新も始め、ブログとあわせて現在も継続中である。理系の出身ではないが、ICTを使い慣れているので、日本維新の会ではデジタル政策を担当している。
  • 日本維新の会では、新型コロナウイルス感染症の蔓延以来、会議はGoogleMeetを活用した完全オンラインで開催し、ペーパーレス化も政党一進んでいる。国会質問に先立つ行政からのレクもオンラインで受けている。国政報告会もオンラインで開催するなど、日本維新の会はデジタル活用に積極的な政党である。
  • マイナンバー法を改正して使途を拡大し、マイナンバーの「フル活用」を推進するべきと考えている。銀行口座と紐付けすることで、収入と資産を捕捉するとともに、税の徴収、給付等の迅速な行政施策の実施が可能になる。ワクチン接種と紐付けすることで、接種状況の迅速な把握や副反応時の迅速な対応が可能になる。
  • ブロックチェーンを用いた公文書管理を推進すべきと考えている。これによって改ざんが防止できる。わが国では公文書の保存期間が有限で、かつ作成元が保存か破棄かを判断しているが、デジタルにすれば永久に保存できる。国立国会図書館や国立大学に所蔵されている貴重図書・資料等のデジタル化を推進し、アーカイブの積極的な活用を図るとともに、デジタルアーカイブを担う人材の育成を実施する。
  • 中央銀行デジタル通貨や仮想通貨の導入を支援する必要がある。特区を用いた実証実験を行うなど中央銀行デジタル通貨の研究開発を進め、諸外国に遅れないようにする必要がある。仮想通貨にかかる税制を改正し、また、暗号資産を利用した資金決済分野の革新を後押しする。
  • 「デジタル庁」などといった外形的な組織・役所の看板にとらわれるのではなく、デジタル時代に相応しい調達制度や人事制度を構築する必要がある。特にキャリアパスは重要であり、デジタル専門職として「情報(デジタル)司」制度の創設を検討し、政府と社会のデジタル化を短期間に達成するべきだ。

続いて山田氏が講演した。山田氏の講演資料はこちらにあります。

  • 菅内閣が押印廃止の方針を打ち出したら、委員就任承諾書に署名したのちPDF化して送付するよう求めてきた行政機関があった。「押印廃止」には対応しているが業務改革が伴っていないので、これは「偽のデジタル化」である。
  • 政府が進めるGIGAスクール構想でも、自治体独自の情報セキュリティ規則により検索サイト・動画サイトにアクセスできない、市の備品としての取扱いを重視するあまり自宅持ち帰りをさせないなどの問題が生じている。これも一人一台端末を「机の上の文鎮」にする「偽のデジタル化」である。一方で、業務改善を伴わないRPA(Robotics Process Automation)の導入には、行政機関は積極的である。
  • 農林水産省の「農業競争力強化基盤整備事業」が行政事業レビューにかかった。耕作を放棄した小規模な農地を集約し若い農業経営者に大規模な耕作を委ねる制度であるが、相続登記がなされず所有者不明となった農地の扱いの問題があり、事業の進行は遅い。これは、不動産登記簿と住民基本台帳の「データ連携」で解決できるが、2021年2月法制審議会答申(所有者不明土地問題)には言及がない。
  • 厚生労働省の「低所得者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額の軽減措置事業」では、共にマイナンバーに紐付けされている介護サービス利用者と住民税非課税世帯を「データ連携」して対象となる可能性のある人を洗い出せば、申請を待つ必要はないのだが、これが実現していない。
  • 利用可能な事務が限定されているのが、マイナンバー最大の課題である。第1次安倍内閣当時(2007年)、社会保険庁のオンライン化した年金記録にミスや不備が多いこと等が明らかになり、国民から批判された。そこで、2011年に民主党が「社会保障・税番号大綱」を決定。2012年に関連法案を提出し、2013年に自由民主党政権が民主党案ベースで再度関連法案を提出し、番号法が成立した。
  • しかし、日本弁護士連合会などは「コンピュータで簡単にデータ検索ができる時代に、個人情報を集めやすくするキー番号を作ることが問題だ」「政府が個人情報を管理しやすくなり監視社会につながるおそれがある」といった批判を行った。そこで、「番号法別表」で利用可能な事務(法定事務)を限定したことが「真のデジタル化」を阻む理由になっている。
  • ワンストップサービス・ワンスオンリーは「データ連携」で初めて実現する。大分県別府市「おくやみコーナー」は死亡に関する市役所への申請書を一括して作成してくれると、前回のセミナーで関根千佳氏が講演した。どんな申請書があるかチェックしたところ、世帯主変更届、マイナンバーカードの返還、国民健康保険、後期高齢者医療、年金受給、軽自動車、市県民税、固定資産税、市営住宅、介護保険、高齢者福祉サービス、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、ひとり親家庭医療受給者証…と膨大だった。これらの中から必要な書類だけを作成するには「データ連携」が不可欠である。
  • 「データ連携」は行政を変える可能性がある。不動産登記と住民基本台帳の「データ連携」は、洪水の原因となっている放置林対策にも、空き家対策にも共通の解決策であり、行政の有効性・効率性を高める。介護サービス利用者データと住民税非課税世帯データの「データ連携」は申請主義からの脱却の第一歩であり、マイナンバー導入の目的として謳われた「本当に困っている方へのきめ細かな支援」を実現する。
  • 日本弁護士連合会などの「過剰な懸念」は社会の発展を止めるもので、それが特別定額給付金の支給などにも悪影響を及ぼしている。古い逸話になるが、1865年に成立した法律に基づき、英国では蒸気自動を人が先導する時代が続いた。これが社会の発展を阻害し、同国では自動車産業が発展しなかった。
  • 「真のデジタル化」へのきっかけとなるのが、「デジタル社会形成基本法案」「デジタル庁設置法案」及び「関連法の一括整備法案」であり、成立に期待する。「真のデジタル化」には「データ連携」による業務改革が求められる。そのほかデータの二次利用なども進める「真のデジタル化」の実現に政治の主導を期待する。

二つの講演の後、質疑が行われた。その概要は以下の通りである。

三法案について
三法案は「一歩前進」であり賛成するが「真のデジタル化」には遠く不十分であると、音喜多氏は発言した。批判や懸念に配慮してマイナンバーの使用範囲を絞っているが、全面展開するのがよい。そこで、賛成はするが今後の改善を求めるというスタンスで審議に臨むつもりである。

遡及的なデジタル化について
既存の銀行口座へのマイナンバーの紐付けや、過去の公文書のデジタル化には費用がかかるがどう考えるかと山田氏が質問し、音喜多氏は次のように回答した。国会図書館の蔵書をすべてデジタル化するには200億円かかるそうだ。公文書も数百億円でできるはずである。これが無駄遣いではないという理解を国民から得る必要がある。
さらに、山田氏は国民に費用対効果を示すのが大切だと指摘した。音喜多氏は、費用対効果を示すには特区で実証実験するという案を示した。

デジタル化が国民にもたらす利益について
マイナンバーの銀行口座の紐付けなどには中身を知られるのではないかとの抵抗が大きいことについて、困っている人に迅速に手を差し出すためにはデジタル化によって申請主義から脱却する必要があるとしたうえで、音喜多氏は政治への信頼が大切であると強調した。

デジタル時代にふさわしい調達について
音喜多氏は、縦割りを排除して一元調達に進むルールを作るべきという考えであると説明した。国と地方の間の行政システムの標準化は地方分権に影響するし、システムベンダーにも影響は大きいが、メリハリをつけて進めるべきというのが音喜多氏の考えであった。

高齢者や障害者への対応について
デジタルデバイドやアクセシビリティには対応しなければいけない。一方で、今のアナログでは情報が届かない人たちにデジタルが救いになる場合もある。そのためには、デジタルシステム開発工程に障害者等を入れることが重要であるということで、議論は一致した。
デジタル化が進行する中でアナログをいつまで残すのかも議論になった。過渡期にはアナログ行政とデジタル行政が併存するのでコストがかかるという点について、音喜多氏はアナログ中止のタイミングを見定めるのは政治家の責任であると強調した。

個人情報保護法について
デジタル化の足かせになっているという側面がある。一方で「デジタル時代の人権法」をきちんと作って国民の納得が得られるようにすべきと、音喜多氏は主張した。