セミナー「行政DXに猶予はない:国民民主党に聞く」 玉木雄一郎国民民主党衆議院議員他

開催日時:3月25日木曜日午後5時30分から1時間程度
開催方法:ZOOMウェビナー
参加定員:100名
セミナーの内容:
玉木雄一郎国民民主党衆議院議員「国民民主党のデジタル政策」(20分)
藤田卓仙世界経済フォーラム第四次産業革命日本センタープロジェクト長「ヘルスケア分野のDXと個人情報保護」(20分)
登壇者による討論・ウェビナー参加者からの質問等(20分)

冒頭、玉木氏が資料を用いて次のように講演した。以下、文責は山田肇にある。

玉木氏の資料はこちらにあります

  • 香川県の農家で育ち、財務省官僚になった。その後、国会議員になったが、いち早くYouTubeでの情報発信「たまきチャンネル」を始めた議員の一人である。国民民主党は政策提案型の「改革中道政党」であり、少し先に必要となる政策を提案している。
  • コロナの蔓延で行政のデジタル化の遅れが露呈した。デジタル改革には賛成である。全銀行口座にマイナンバーを紐付けて申請不要で直接給付する、オンライン教育、オンライン診療、ライドシェアなどを推進する、行政文書の改ざんできない仕組みを作るなど、デジタルでできることはたくさんある。
  • デジタル改革の前提として「データ基本権」の保障が重要である。データの活用を進めるためには権利擁護でバランスを取る必要があり、「データ基本権」は権利擁護の側面での規定である。憲法13・18・19条に関係し憲法改正も視野に入る。
  • データ基本権を提案する背景にケンブリッジ・アナリティカ事件がある。Facebookから8,700万人のプロフィールデータを収集し、AIが人格を類型化して広告を送り付けることによって「内心の操作」を行った。「民主主義がAIがハックされる」という事態が起きたということだ。
  • デジタル時代に対応した基本的人権として、情報の自己決定権を憲法で保障しようというのが「データ基本権」である。プロファイリングやスコアリングを規律し、憲法19条「内心の自由」を守るものだ。同時に、不必要にビジネスを阻害しないといったバランスも求められる。欧州連合は「EU基本権憲章」 第8条で「何人も自らに関する個人データを保護する権利をもつ」と定め、一般データ保護規則(GDPR)で基本権の内容を具体化している。同様に、遺伝的属性による差別をしてはならないということは憲法14条で定める必要がある。
  • コロナ第四波の封じ込めについて、安価な唾液抗原検査を実施すべきと主張するとともに、「デジタル健康証明書」の実施を求めている。ワクチン接種、検査の陰性などの情報をデジタルで持ち運ぶものだ。海外にも同様の試みがあり、相互運用性を確保する必要がある。ただし、ワクチン接種していないといった理由で差別されないような仕組みを同時に作る必要がある。
  • オリンピックパラリンピックに外国人観客が来ないことになった。外国人客の入国から出国までをモニターするアプリを73億円もかけて開発運用しようとしていたが、改修して日本人の「デジタル健康証明書」を載せ、日本人が国内を移動できるようにしたらどうか。

次いで、藤田氏が講演した。講演資料はこちらにあります

  • 世界経済フォーラム第四次産業革命センター(C4IR)は政府、産業界、学界、市民社会、地方自治体、国際機関などマルチ・ステークホルダが参画し、グローバルなルールづくりに共同で取り組む実証型の官民プラットフォームである。
  • 今後の社会を展望するとヘルスケアは重点分野である。個人と社会の価値最大化の観点から、認知症および高齢疾患の予防とQOL向上に向けたデータガバナンスの枠組みを構築する取り組みを、C4IRの日本センターとして実施している。
  • ヘルスケアの情報はデジタル化し活用するべきだが、同時に個人情報は適切に保護する必要がある。個人情報保護法が定めるデータの取扱いの観点からは、基本的には本人の明示的な同意が取れればOKということになっているが、「同意」と一言で言ってもその実態としては多様である。
  • 個人情報の取り扱いについて、個人の意向が強すぎる(GDPRにおけるデータ主体のコントロール権の濫用など)、データホルダーの意向が強すぎる(プラットフォーマーによるデータ覇権主義など)、公共の意向が強すぎる(トップダウンで一元的な社会信用システムによる管理など)は、どれも適切ではない。個人とデータホルダーと公共の間でバランスを取る仕組みを研究しているところである。その中でAuthorized Public Purpose Access(社会的合意に基づいた公益目的でのデータアクセス)といった新しい仕組みを提案している。特にヘルスケア領域では、同意なしであっても個人情報・データを利用することによって、大きな公共的価値を生み出すことができる場合があるので、同意を唯一の適法化根拠とすべきではないという考えから生まれたものである。
  • 国際的に信用できる検査結果・ワクチン接種の証明書をいかに作ることができるか? 世界の公共財としてデータを扱う仕組みづくりも研究している。それが、CommonPassである。
  • 同意の問題にも取り組んでいる。「インフォームドコンセント0(仮称)」は、個人の権利を守るための意思決定の形式として、同意だけではなく、代理や合意も活用していくべきではないかという課題認識の下で研究しているもので、高齢者・認知症患者も包摂する意思決定の形式となる可能性がある。
  • その先に、医療個人情報保護法があると考えている。個人情報保護法だけでなく、感染症法、医療法や薬機法等複数の法律やガイドライン等を、時代の状況に合わせて見直していくことが求められるが、そのためには、基本的な方針を示す「医療情報基本法(仮称)」が必要になる。

二人の講演の後、以下のような課題について議論があった。

データ基本権について
プライバシーは努力しないと守れない時代になったが、データ基本権は秘密を守るというだけではない。データは自分の意思に沿って活用される必要があるからだ。利活用を進めるために保護すべき最低限の権利を定めるというのがデータ基本権である、と玉木氏は説明した。
藤田氏は賛同したうえで、欧州ではデータの自己決定権が説かれているが、デジタル時代には「新しい人権」を定める必要がある、と主張した。エストニアでは、インターネットにアクセスする権利を定めている。デジタルの利益を享受する権利とともに、意思に反する決定をされない権利も定める必要がある。
その上で、デジタルの利益を社会全体として最大化するという、社会のミッションもある。そのために、個人の権利を一定程度制限するという場合もありうる。だから、権利擁護を行うデータ基本権に加えて、適切な法的規定がなければ不十分ではないかと、藤田氏は主張した。
憲法にデータ基本権を定めるのが適切だが、わが国では憲法改正のハードルは高い。今の憲法第25条などを根拠に、医療個人情報保護法といった法律を定めることで代替するのが現実的である、というのが藤田氏の意見であった。

デジタルヘルスについて
デンマークでは大量の個人健康記録を分析して予防施策に力を入れている。社会全体で医療費を抑制する仕組みになっている。個人健康記録という要配慮個人情報も、上手に利用すれば社会全体の利益になる。という点で意見は一致した。
「肥満」「糖尿病」などについて自己申告に基づいて、わが国ではワクチンの優先接種が行われる。それではまずい。優先順位はデータに基づいて決めるように変わっていくべきだ。

政府への信頼について
デジタルの、個人へのメリットと社会へのメリットを説明していくことが、国民の信頼を高めるために必要だと、玉木氏は発言した。マイマンバーを銀行口座と紐付けて、口座の中身を政府が見えるようになれば、困っている人にプッシュ型で手を差し出せる。
マイナポータルには行政がその人の個人情報にどのようにアクセスしたかの記録が残っている。政府が個人情報を目的外に利用できる仕組みではないことを担保し、そのことへの理解が必要であると、藤田氏は発言した。

玉木氏は、最後に二点を訴えた。

  • 利活用と、それを支える権利の保護の二つを同時に進める必要があるという点について、国民の理解を得ていきたい。
  • 教育と医療の二分野に力を入れ、デジタル化のメリットを国民に示すべきだ。このための政策提案を進めていく。