セミナー「行政DXに猶予はない」 小林史明自由民主党衆議院議員ほか

開催日時:1月18日午後5時から6時まで
開催方法:ZOOMウェビナー
参加定員:100名
セミナーの内容:
小林史明自由民主党衆議院議員「政治の立場から」(20分)
小木曽稔新経済連盟事務局政策部長「民間の立場から」(20分)
登壇者による討論・ウェビナー参加者からの質問等(20分)

冒頭、小林氏は次のように講演した。

  • NTTドコモで働く中で古い規制にぶつかることが重なり、ルールを変えることの重要性を痛感して、政治家に転身した。徹底的にテクノロジーを活用する、そのために規制を見直すという信念で活動している。
  • 改革は早く実現するに越したことはないが、改革される側と目的が共有できないければブレーキを踏まれてしまう。また、改革に取り残される人を出さない、抱きしめて一緒に前に進むことが重要である。
  • 日本のデジタル化はe-Japanから始まり高速ネットワークは普及したが、行政のデジタル化やオープンデータは進んでいない。これは目的と手段が逆転し、ともかくデジタル手続きができればいいではないか、可読性のないデータでもネットに上げればよいではないか、に変わってしまったからである。目的の合意が、成否を分けるポイントなのである。
  • 省庁の縦割りの打破、自治体ごとに個別最適化されたシステムの標準化、それと人材不足の解決がデジタル庁の活動であり、そのベースになるのがデジタルガバメント実行計画である。
  • 省庁の縦割り、個別のシステムを止める、というのも目的になってはならない。目的は国民の利便の向上であり、民間システムとの連携なども含めて、この目的を達成していく。もっとこうすればよくなるという提案を民間からも出していただきたい。
  • 最終的にはデジタル庁も手段である。デジタル庁ができてよかったではだめだ。組織をフラット化し皆で目的を共有しシームレスに活動する、そのように行政を変えていくための手段である。それができれば、日本全体に活力が生まれると期待している。

次いで、小木曽氏が講演した。小木曽氏の講演資料はこちらにあります

  • デジタル庁を司令塔として進める日本の「デジタル革命」は、150年前の明治維新、75年前の戦後改革に匹敵する規模と意義を持つものである。行政DXがきっかけとなって、産業全体が、日本全体が変革していくと期待している。
  • 新経済連盟では、発足以来、デジタル革命を求めて多くの提言をしてきたが、デジタル庁に関わる議論の中で、実現が見込めるものも出てきている。しかし、教育制度改革、公務員制度改革、地方分権の見直しなどはこれからの課題である。情報技術分野でも、ベースレジストリ、行政サービスID、トラスト基盤とトラストサービスなど、検討課題として残されているものがある。
  • 改革を支えるデジタル人材が少ない。IT分野専攻の大学卒業生数(年間)は、全世界では2万人だが、日本は3.4万人に過ぎない。STEM関連分野専攻では、全世界で237.8万人で、わが国は3万人である。アジア周辺の国も下回り、しかも人数自体が減少している。教育制度改革が求められる。
  • デジタル規制改革の積み残しはないかという視点で三つを指摘したい。第一は、民間側の行政対応コストを削減することである。行政手続きのために民間は少なくとも2万人分のコストを年間に負担しており、農林漁業、電気ガス水道、複合サービス事業などの従事者数を上回る。行政DXは、民間側の行政対応コストをどの程度削減できたかで評価されるのがよい。イギリス、ドイツ、米国等で行われている行政対応コストベースでの総量管理規制の法律を制定すべき。
  • 第二は、アナログ規制(対面原則、書面交付原則、押印原則等)は行政手続き関連だけを廃止するのではなく、民民関係でも廃止が求められるという点である。民民関係を律する法律の中に「書面」などという言葉があると、アナログ手続きを続けなくてはならない。今回一括整備法が政府側から出るようであるが、対面規制は手が付けられていない。第三は、「反DX」の法令の立案を阻止するための『DX法制局』の整備である。
  • そのほか、・ユーザファーストのためのUI/UX改善、官民人事交流法の地方自治体版の制定による、地方公務員の制度改革なども必要である。

講演後、次のような質疑があった。

地方分権について
小林氏は、自治体情報システムについては、「一本化」よりも前に、「標準化」すべき分野である、との考えを示した。自治体ごとに異なる書式を一気に統一しようとすれば、泥沼にはまってしまう。まずはこの書類が欲しいという注文を受け付けるポータルを一つ作り、それを通じて各自治体から必要書類が入手できるような、国民が利便を感じられる仕組みを作るのもよいとした。
小木曽氏も、中央集権か地方分権かという二項対立で議論するよりも、現実的に利便を高めていく(国民が実感できるよいサービスを提供する)必要性について、同意した。

セキュリティについて
小林氏はセキュリティに対する考え方を完全に改めるという考えを表明した。ネットにつながないセキュリティ、ファイヤーウォールに頼るセキュリティを改めて、エンドポイントの状態をチェックすることでセキュリティを確保していく「ゼロトラスト」を導入したい。また、政府が個人情報をどのように扱っているかについてマイナポータルで公開しているが、これも政府が国民から不信を抱かれないために重要である、とした。
小木曽氏は、セキュリティに関する失敗事例を官民の枠を超えて共有し、対策していく必要性を強調した。そのためにも、デジタル庁ができ、話がしやすくなる点は評価できる。

UI/UXについて
障害をもっている人を取り残さないために、デジタル庁に当事者を入れるであるとか、調達先にも当事者の参加を求める必要があるのではないかという、参加者からの指摘に対して、小林氏は具体的で適切であると同意した。
小木曽氏は、交通バリアフリー行政を推進した経験も踏まえて、ユーザファーストの行政を目指すのであれば、形式要件とするだけではなく、当事者参画によって具体的に進める必要があると同意した。

省庁による総論賛成・各論反対への懸念について
小林氏は、今までやってきたことを切り替えるために、先に説明した目的の共有に加えて、小さな成功体験の積み上げが重要であると指摘した。地方側の改革については、首長だけではなく、現場の人とのコミュニケーションによって寄り添っていく必要があるとした。
小木曽氏は、少子高齢化の進行から、今までの行政を続けることはできない。それが切実な問題であるが、行政が自分からはなかなか言い出せない。司令塔からの指示は重要である。また、ほかの省庁での成功事例もプレッシャーになるとした。

DX法制局について
小林氏は、一気にDX法制局というのはハードルが高い。中曽根内閣の土光臨調のような、デジタル臨調を組織し、法令を洗い直していくことが、当面、必要ではないかという考えを示した。

また、ウェビナー中に寄せられたが、時間が不足し取り上げられなかった質問に対して、講演者より次のように回答いただきました。

デジタルを魅力的な仕事にすることについて
(小木曽氏)ご指摘の通り、デジタル人材のキャリアパスやロールモデルを作っていくことは必要不可欠である。今回のデジタル庁を中心に官民での人事交流が進みその一つが形成されていくことが期待される。また、魅力度向上のためには、①デジタル庁の業務はいわば今までの業務プロセスを改革する実験場であるようにすること、②データを活用して行政を行うというEBPMという『出口の体制』を構築しないと、せっかくのデジタル人材の意味が減殺されるのでその枠組みの構築も重要と考える。

マイナンバーの保護について
(小木曽氏)諸外国の制度や技術動向、ゼロトラスト等の最新の考え方などを十分に見極め、引き続きマイナンバー制度を含む官と民の情報システムのセキュリティやプライバシー等に対する国民の疑念を払拭する継続的な対応が必要であると考える。