設立趣旨書
日本のブロードバンドが急速に成長した原因は、規制改革をきっかけにして民間企業の競争が起こり、消費者の需要が喚起されたことにある。しかし今や、残存する規制が成長のボトルネックになっている。電波の割り当てや通信設備の開放といったインフラのレベルでも、デジタル著作物における著作権の扱いといったコンテンツのレベルでも、情報通信の制度・規制をめぐる課題は多い。
いっそうの規制・制度改革について、オープンに議論し、民間の立場から意見を提起する必要がある。しかし、パブリックコメントは「聞きおく」だけになっている。政府系の研究機関では批判的な提言は封じられ、民間シンクタンクも政府の委託研究で経営を維持しているため、欧米のように民間を代表して政府に論争を挑む役割を果たしていない。特に電波については、テレビ・新聞などのメディア自身が利害関係者であるため、客観的な報道は期待しにくいのが現状である。
情報通信の制度改革がなかなか進まない大きな原因は、このように自由な政策論争が行われないため、官僚機構が政策形成を独占していることにある。
情報通信政策フォーラムは、平成17年度より法人格のない社団として任意の活動を進めてきた。この間、20回を越えるセミナー・シンポジウムを公開で連続開催し、情報通信政策について研究を進めてきた。特に平成18年2月のシンポジウムには462名という多数の聴衆が官民各界から広く集まり、通信と放送の融合に関わる制度のあり方について議論を深め、民間の立場から政府に対して提言することができた。さらに2006年7月には洋泉社より「ネットがテレビを飲み込む日」を出版するなど、社会の啓発にも努めてきた。これらの活動によって一定の社会的役割を果たしてきたと自己評価する。
情報通信政策について民間企業と専門家・研究者が徹底的に議論し、政府に対してよりいっそう提言を行っていけば、政策論争が喚起され、情報通信政策に競争が導入される。これによって情報通信制度の改革が進めば、国民は情報通信の利便を今まで以上にいつでも、どこでも、安く、潤沢に享受できるようになり、真の情報社会が実現するだろう。これは公益の増進に寄与するものである。
以上のことから、広く一般市民を対象とし、情報通信に関わる制度改革に資するセミナー・シンポジウムなどの研究活動、情報通信制度に関わるコンサルティングなどの提言活動、及び、それらに関連する書籍の出版などの啓発活動を行い、人々が情報通信の利便を享受する真の情報社会の実現に寄与することを目的として、特定非営利法人を設立するものである。
今までの任意の活動を、より幅広く、より発展させていくため、社会的責任を明示し継続的に事業を展開する法人として、特定非営利法人情報通信政策フォーラムを設立することを、私たちは決意した。