ZOOMセミナー「DXとオールドメディア」 新田哲史株式会社ソーシャルラボ代表取締役

開催日時:4月24日月曜日午後7時から1時間強
開催方法:ZOOMセミナー
参加定員:100名
講演者:新田哲史(株式会社ソーシャルラボ代表取締役)
司会:山田 肇(ICPF理事長)

冒頭、新田氏は資料を用いて次のように講演した。

新田氏の講演資料はこちらにあります。
新田氏の講演ビデオ(一部)はこちらで視聴できます。

  • 大学卒業後、読売新聞に入社し、記者として和歌山支局、社会部、運動部などで取材活動に従事した。社会部時代には、村上ファンド事件で村上氏の人となりを明らかにするために、財界に夜討ち朝駆けで取材した経験がある。
  • 2000年代から新聞発行部数と新聞広告費が下がり始めたのに衝撃。ビジネスに興味を持ち始めたこともあって退職し、PR会社勤務、フリーランスの広報コンサルを経て、2015年から20年まで言論サイト「アゴラ」編集長を務めた。その後、2021年にSAKISIRUをローンチした。SAKISIRUは、ネット上の話題、マスコミが報じない経済や政治、社会の問題を積極的に取り上げることを方針として活動している。
  • ネット選挙運動解禁の2013年ごろからネットメディアが続々と台頭した。それまでのYahoo!ニュースに加え、ハフィントンポスト(現ハフポスト)日本版、東洋経済オンラインなどがそれで、既存メディアからの⼈材移転も起きた。スマートフォンとニュースアプリの普及で、情報の「質」に加え「量」も増えた。最近は人材流動化が加速し、既存メディアとネットメディアの間を行き来する人も出ている。
  • 週刊文春から電子版が派生した。最初は週刊誌発行直前の予告に用いられていたが、今ではネット媒体として半独立のマスメディア化している。これによって「文春砲のDX」が起きた。YouTubeなどの動画・音声メディアが台頭し、一方でYahoo!ニュースにはライバルも増えて陰りがみられる。
  • これら新しいメディアは、既存メディアよりもタブーが少ない。週刊誌や女性誌によるタブーのない報道が、Yahoo!ニュースから広く拡散されるようになった。このような「⾔論のDX」はもう止められない。Colabo問題や蓮舫氏の国籍問題など、SNSが「興論」となる時代が来た。
  • 2020年代、ポストコロナのメディアを展望する。言論のDXによって「報道しない⾃由」が通⽤しないという点が最も重要である。
  • 新聞販売はますます厳しくなるが、団塊世代全員が後期⾼齢者となる2025年までは既存メディアと新興メディアが併存すると想定できる。ただし、その間にオールドメディがネットメディアに置換されていくとみるのは単純すぎる。新興メディアの経営も苦境が鮮明になりつつある。広告を見せて無料で記事を提供するか、有料記事を提供するかという、今までのビジネスモデルに一工夫加えることが、ネットメディアに求められる。
  • 単に記事を作るというだけなら、AIで処理できる。そのような時代に、誰がジャーナリズムを担うかが、今、問われている。

講演後、多様な側面から質疑があった。

Q(質問):最近、オールドメディアに取材不足が目立つ。「報道しない自由」ではなく、調査をしないので知らないから報道しないのではないか。
A(回答):取材に投じられる経費が減ってきて、効率を重視する結果、きちんとした調査が省かれることがある。しかし、単に記事を作るというだけならAIで処理できるので、人にしかできない取材を行うべきだ。多くの取材は聞き書きベースで、資料を深く分析するという姿勢は確かに不足している。
Q:深い分析がない新聞記事は読みごたえがない。深い分析をするというのが、新聞の役割ではないか。浅い記事だけでは新聞も先が危ういのではないか。
A:深い分析をするには経費が掛かる。それをして閲覧数・購読数が増えるかが問題で、期待できないからと深い分析が省かれているのが現実である。閲覧数・購読数とは異なるビジネスモデルが求められるが、まだ見えていない。
C(コメント):オールドメディアもニューメディアも利用者が深い情報を求めていないから記者も調べることをしないのではないか。より情報量のある記事よりも、センセーショナルなタイトル付けをしてアクセスを稼ぐ方が利益になるからだ。
Q:全国に広げた取材体制も縮小しつつあるのではないか。NHK以外は取材できないが来るのではないかと危惧している。
A:支局の閉鎖は進んでいる。県庁所在地と第二の都市に支局を置くのが精いっぱいという社もある。大手新聞の中には支局を廃止して通信社に依存するという動きも出ている。米国ではローカルニュースが報じられない「ニュース砂漠」が問題になっている。同じことが日本でも起きている。その結果、小さな町の小さな腐敗は誰も報じないようになりつつある。しかし、小さな腐敗が積み重なって大きな腐敗が起きる。小さな腐敗の取材はコストパフォーマンスが悪い、と切り捨てていくのは問題で、SAKISIRUはできる限り頑張っているが、限界がある。NHK以外では報道されないようにならないように、だれがジャーナリズムを担うべきかを問い直す必要がある。
Q:取材を受ける側が自ら発信する例が増えている。また、画像や映像を添えるとバズり、それを利用した表面的な記事が増えている。社員があえて非公式情報をブログに書くというような動きも起きている。きちんと丁寧に文字で説明しないで、記事になればよいという風潮に危惧を感じているが、どう考えるか。
A:わが国では、メディアリテラシーの教育が不足している。バズることに振り回される原因の一つである。読者に媚びるのではなく、読者を意識してきちんとした記事を書くべきだ。繰り返しになるが、ジャーナリズムの担い手について問い直し、また、メディアのビジネスモデルを再考する必要がある。そうしないとメディア全体がオワコンになってしまう。