法律 通信・放送の総合的な法体系に対する通信事業者の考え方

概要

 総務省では「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を組織し、通信法制と放送法制の統合について研究を深めてきました。この新しい法体系によって通信と放送の融合が促進されるかどうかについては、世の中には賛否両方の意見が存在します。
情報通信政策フォーラム(ICPF)では月次セミナーでこの新しい法体系について議論を深めていくことにし、07年10月には「研究会」事務局を担当された総務省の鈴木茂樹課長を、11月にはTBSメディア総合研究所の前川英樹社長をお招きし、それぞれのお考えを伺いました。
今回は連続セミナーの第3回目として、ソフトバンクBBの筒井多圭志取締役にお話をしていただくことになりました。

<スピーカー>
筒井多圭志氏(ソフトバンクBB取締役CTO)

<モデレーター>
山田肇(ICPF事務局長・東洋大学教授)

<日時>
1月31日(木)18:30~20:30

<場所>
東洋大学・白山校舎・5号館5201教室
東京都文京区白山5-28-20

<入場料>
2000円

レポート

総務省では「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を組織し、通信法制と放送法制の統合について研究を深めてきた。情報通信政策フォーラム(ICPF)では月次セミナーでこの新しい法体系について議論を深めてきたが、今回はソフトバンクBBの筒井多圭志取締役にお話いただいた。

講演の要旨:

総合的な法体系を、産業組織論やゲーム理論で考える。産業組織論の立場からすれば、競争こそが重要で、たとえばWiMAXの免許が一社となるのはおかしなものだ。有効競争基準がしっかりし、市場参入が容易な状況を作り出す必要がある。
指定電気通信事業者の規定では「円滑な提供に支障が生ずるおそれ」という部分に問題。円滑とは何かについて、恣意的な判断の危険がある。ゲーム理論を適用しようにも、ゲームをしようにも、そもそもゲームに参加できないというのはおかしい。コンテスタブルなマーケットではないということだ。
FTTHにも問題がある。8分岐に関わる現状の規制は、経営的に対応が難しい。だから参入できない。コンテスタブルなマーケットでなくなっている。産業組織論の見地から見れば総務省は十把一絡げにドミナント規制にしたいとしているようだ。そこには問題があるように思う。8分岐は構造的な参入障壁で、電力会社とNTTだけという状況になっている。
ボトルネック性についてもっと考えるべき。エンドユーザー相手の商売、NGN等でずっと議論されている。NGNでは「ZC接続」の機能が必要。それがないと接続業者はサービスが提供できない。
まとめであるが、エッセンシャルファシリティ法理、産業組織論を理解した上でみていただきたい、ということだ。

討論:

山田(モデレータ):
筒井さんは重要な指摘をしてくれた。総合的な法体系の研究では、レイヤー規制という考えが示されているが、市場競争については、報告書はふれていない。今日の話では通信事業者の競争が主だが、放送事業者と通信事業者の競争というのもあるだろう。

コンテスタビリティについて:
(質問) コンテスタビリティという言葉についてもう少し整理されていないと話題が通じないのでは? 8分岐がなければコンテスタブルになるという風に聞こえるが? → (筒井)シングルならばコンテスタブルと考える。
(質問) コンテスタビリティを振りかざすのは、古いのではないか? 通信の場合、アンバンドルでコンテスタブルにするようにやったわけだが、すべて失敗したわけだが? → (筒井)間のロジックを明確にしないで、最初と最後だけを短絡的につなげて失敗したというのはおかしい。
(コメント) 日本は世界的には珍しい成功例だ。確かに日本はソフトバンクががんばってうまくいったけど日本以外では成功例はほとんどないヨーロッパでも成功例はない。

FTTHの8分岐について:
(質問) 8分岐でOLT直上のスイッチを解放すれば競争がうまれるとみているのか? → (筒井)みている。
(質問)規制と実装をどう切り分けるのか?確かに完全に自由をすれば競争は発生するが、最初に技術投資をしたところが不利になる。そもそも、その技術評価方法自体が間違っているのではないか? ぶっちゃけていえば、行政がそこまでマイクロマネジメントする必要がないのでは? → (筒井)そこはまさに今、答申がかかっているところ。そこで真剣に議論する必要がある。
(質問)NTTの人も、光ファイバーがだめかもと思っている節がある。赤字ビジネスにくっつく意味は? ベライゾンも実質的に赤、AT&Tも最初からやる気なくてラストワンマイルはメタル、一から引くなら光でもいいかもしれないが、ソフトバンクはvDSLでやるほうが格好いいのでは? → (筒井)光への投資は確かに非効率。ただし儲かっていないというのは償却をどう計算するかの問題で、実際には赤にならない試算はある。別紙の資料を参照してほしい。

NGNのZC接続について:
(質問)NGNはIPなんだからZCの概念がないのでは? → (筒井)IPであっても接続できなければ競争できない。
(質問)“ソフト”バンクがここまでハードに肩入れするのは? → (筒井)苦手だががんばるという会社。これは移動体でも同様。

周波数配分について:
(質問)TVにあんなに周波数がいるか? 設計としてはガードインターバルの問題だ。数十メガヘルツは節約できる。ソフトバンクがそのコストを負担するとすれば? → (筒井)とても良いアイディアだと思う。放送局のスペック変更だけでできそうだが、社内でデューデリして回答したい。