ビジネス 通信と放送の融合:その真の姿を求めて

概要

通信と放送の融合が話題になっている。地上波テレビのデジタル化が進むにつれて、通信網を通じて放送コンテンツを送信することが、計画の補完手段として注目されるようになってきた。一方、通信事業者を中心に、ビデオ映像のオンデマンド配信がビジネスとして動き出している。情報通信系企業と放送系企業の間で買収合戦も起きている。これらさまざまな動きを説明するキーワードが「通信と放送の融合」である。

しかし、この言葉は、語る人によって別の意味で用いられているようだ。それを反映するかのように、「通信と放送の融合」が作り出していくであろう未来の姿も、人によってイメージが異なっている。このシンポジウムは、各界の識者の意見を戦わせることで、「通信と放送の融合」の真の姿を明らかにすることを目的とする。

主催:情報通信政策フォーラム(ICPF)(http://www.icpf.jp)
後援:日本経済新聞社
場所:日経ホール
東京都千代田区大手町1-9-5 日本経済新聞社8F
日時:2006年2月22日(水曜日)
入場料:無料

プログラム:
12時40分:開場
13時05分:総合司会兼趣旨説明 池田信夫(ICPF事務局長)
13時10分:講演1 松原聡(東洋大学教授、通信・放送の在り方に関する懇談会座長)
13時35分:講演2 林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)「通信と放送の融合と法制度」
14時00分:休憩

14時15分:パネル討論
モデレータ:山田肇(東洋大学教授)
パネリスト:
鈴木祐司(NHK解説委員 兼 放送文化研究所主任研究員)
関口和一(日本経済新聞社産業部編集委員)
中村伊知哉(スタンフォード日本センター研究所長)
西和彦(尚美学園大学教授)
藤田潔(情報通信総合研究所代表取締役社長)
宮川潤一(ソフトバンクBB常務取締役)
各パネリストの発表(各8分)
討論(各20分ずつ3テーマ程度)
テーマ1:通信と放送の融合は誰のビジネスチャンスか
テーマ2:通信と放送の融合の隘路は何か、どう解決するか
テーマ3:通信と放送の融合と公共性、言論の自由
16時15分:閉会

レポート1: 松原 聡 講演

「通信放送融合:何が問題か」

松原聡(東洋大学教授、通信・放送懇談会座長)

こんにちは、松原でございます。林紘一郎さんの前座を勤めさせていただきます。前座でほんとよかったなと思いますのは、林さんとは20年来の付き合いでございまして、トップバッターというのは非常に有利だと喜んでおります。

先ほどお話がありましたとおり、竹中大臣が作りました懇談会の座長を勤めさせていただいております。簡単に経緯についてお話いたしますと、竹中大臣が総務省の大臣になりまして、総務省の中で通信に関する懇談会をやりたいそして放送に関する懇談会をやりたいということで、バラバラにすることは無いだろ言うという大臣のイニシアチブで通信と放送を一緒にやっていこうという、こういうことでこの懇談会が作られることになりました。そこで私が座長になったとこういうことです。

冒頭で池田さんがお話になりましたが、そこがちょっと難しいところがあるのが、既に総務省の中でも、実は今日の午前中もヒアリングをやっているわけでありますけれども、ITに関わる競争についての委員会がもう始まっているわけであります。それから著作権に関しましても総務省の知的財産戦略本部の中でも議論が始まっているわけです。

また、文化庁の方も議論をやるということでございますから、いろいろなところで同時並行的に議論が行われているわけで、ほかのところとの整合性も必要でありますし、でも全く同じことを取りまとめることであれば、なんでわざわざ通信と放送をまとめた懇談会をあえて作ったのかという話にもなりますので、その辺りのところが若干難しいところがありますが、現在まで昨日もやりましたので4回ほど議論をしてまいりました。そのあたりの紹介を含めて進めていきたいと思います。

(資料2ページ)実は、昨日議論の中で冒頭にこの議論を致しました。何かといいますと、今年の1月に入って政府のIT戦略本部が出しましたIT新改革戦略で、これについての議論が行われました。何でこれを昨日の段階でもう一度懇談会の中でしっかりと議論しようと私が提起したかと申しますと、通信・放送の融合という非常に大きな問題を議論する時に、どういう目標があるのか、またどのくらいのタイムスパンで考えるのかという所を議論の途中でいったん皆で整理してみようと、こういうことでIT改革の新しい戦略について取り上げたわけです。

とりわけ、政府が示したものでありますけれども、2010年度にはITによる改革を完成するという話になっておりますので、一応、今から5年後くらい。で、同時に2010年というのはおおよそ5年で大雑把につけたのかというと、恐らくそうではなくて、この3番のところにありますように、実は日にちまで決まっていることがありまして、2011年7月24日ですか、アナログ地上波を止めて全部デジタルに移っていくと。

その2011年7月24日ないしは2010年度末日というと3月末日ですから、そのあたりのところをスパンにして、政府はユビキタス化の推進と決めたわけでありまして、まずこのことについて懇談会の構成員でどうだろうと議論を致しました。そうすると、非常に技術変化の激しい時代で、大体このあたりまでを見通すのがこの分野では限界であろうということで、懇談会でもこの時期、2010年度末日ないし211年7月の地デジ化に向けてそのあたりを考えていこうと、こういうことでおおよそ一致したわけであります。

それからもう一つ、(資料3ページ)ここに赤く塗りました。これは何かというと、IT新改革戦略のなかで2010年度までに光ファイバー等の整備を完了し、ブロードバンド・ゼロ地域を解消すると、こういう目標が入っているわけです。これに関しましても昨日議論しまして、まず政府がブロードバンドってそもそもどのくらいのことを想定しているのだろうと。

で、ここは10MとかADSL(非対称デジタル加入者線)のレベルではなくて、多重化でトリプルプレイ(電話・データ・テレビを同一のインフラで提供するサービス)が出来る100Mbpsクラスのことをブロードバンドと言っているのであろうと、それを政府はブロードバンドゼロ地域を解消すると、そういう目標を掲げていると基本的に考えていいだろうと。そのことを我々は前提に考えていこうと、こいういうことでございます。

次でありますが、その時に具体的にどうやって政府がブロードバンド・ゼロ地域を解消していくかという議論でありますが(資料4ページ)民主導、それから公正な競争を確保しつつ、そしてもう一つ無線アクセス、UWB(超広帯域無線)・PLC(電力線通信)これは電線を使った非常に幅の広い大域を使うような技術でありますけれども、そういうことを含めて、先ほど申し上げたブロードバンド、100Mbpsクラスのブロードバンドを国民共通のインフラにしていこうと、こういうことでありまして、ここが実は非常に大きなポイントになるわけです。

要するに、民間主導でいくと、それから競争的な環境の中でそれを作っていく。その際の技術に関して、光ファイバーに限定するのではなく、WiMAXのような無線や、さきほどの非常に広い帯域を使うUWBとか、電力線を使うような技術を含めて実現を図っていくと、こういうことです。(資料5ページ)

「100Mbpsクラス」、「競争的な環境で」、さらに「技術中立」と、こういう政府の基本的な方針というのが昨日の懇談会では事実上合意いたしました。このことは、裏返して言えばこれからの国民共通のインフラ、ブロードバンドを作り上げていく時にですね、光ファイバー建設の独占の特殊会社、こう言うものを作らないという認識で、ほぼ一致したわけです。

このことは今申しましたように、光ファイバーがこれから先、2010年代を見通したときに本当にそれが一つの技術であるのか不明でありますから、そのあたりの中立性は確保したい。それからやはり、ここまでの政府の基本的な方針でありまして、インフラ作りをなるべく競争的な環境で進めていくということでやってきたわけでありますから、この点についても競争的な環境でやっていこうと、こういうことでほぼ一致したわけです(資料6ページ)。

ただ、この点についてこれから先しっかり議論していかなければならない点があります。その一つは、今はメタルが法律上メタルの回線がユニバーサルサービスになっているわけですけれども、政府として100Mbpsクラスのブロードバンドを2010年国民の誰もが使えるようにしようという方向性、意志は間違いない、それは合意いたしましたが、そのことを法律上のユニバーサルサービスと規定できるのかどうか、このところはもう少し議論しなければならないということになりました。国民にとってものすごく大切なインフラであることは間違いないんですけれども、供給義務をある供給主体に負わせるようなですね、そういうユニバーサルサービスという規定を法律上設けるかどうかということについてはですね、もう少し議論しようということになりました。

それからもう一つ、これはNTTの中期経営計画で、今のところいちばんブロードバンドを作りやすいのはNTTでありますけれども、光ファイバーは2010年に3000万といっているわけでありますから、のこり2000万あるわけでありまして、それを普及させるには恐らく何らかの公的な支援が必要になるのだろうけれども、そのあり方についてもこれから議論していかなければならないということです(資料7ページ)。

さらに問題は、そのような形で光ファイバーを中心としたブロードバンドのユニバーサルサービス的なものが出来上がった時に、メタルの、今のユニバーサルサービス、これは実定法上明確に規定されているそのユニバーサルサービスが、どうなるのかということも当然議論していかなければならない。

それからもうひとつ、今の場合には現在は実定法で事実上メタルのユニバーサルサービスの義務はNTTの東西が負っているわけであります。その義務を負っているがゆえに、NTTの東日本会社と西日本会社は法律上政府が設立した特殊会社となっているわけですが、今申し上げたような光ファイバーを中心としたブロードバンドを民主導で作り上げていった時に、大体2010年にメタルのユニバーサル義務を負っているNTT東西のあり方は当然問われることになるだろうということであります。

それから、今の点は通信について昨日の議論を中心にお話いたしました。マスコミでもだいぶ注目度が高くて、例えば今日のある新聞は一面のトップに「懇談会がNTT解体」という方向性を打ち出したというのが出ていたり、分離分割推進かと、こういうことであります。

しかし、ここでそういう意味での誤解を生じているかと思いますので申し上げたいのは、今のNTTのスキームは、法律自体は1997年ですけれども、1996年に郵政省とNTTが合意して、96年の秋に決まったスキームであります。今から10年前ですね。こういうITの分野ではいわゆるドッグ・イヤーと申しまして、ドッグイヤーは7年から8年とするとですね、70~80年前のスキームでありますから、その意味で、少なくとも私は、いまのNTTをこのままにして資本分離するという、要するに持ち株会社をなくしちゃってそれぞれをバラバラにすればいいじゃないかという、そういう意味での解体とかというニュースが流れたのかもしれないですけど、そういうことではないと思います。

やはり1996年のスキームというのは、Voice over IPで電話がかけられるとか、IT自体がここまで普及するとまったくは想定していなかったわけですから、県内の通信、ようするに世界中フリーな通信の時代が来るのに、通信をするのに県内と県外に分けているわけですからね、県内をやる東西と、県外と国際をやるコミュニケーションに分けたわけですから、そのようなスキームをそのまま延長して、持ち株会社を無くしてバラバラにするのはいいのかという、そういう意味での解体論にこの懇談会がなることはないと思います。スキーム自体は見直さなければならないわけですけれども、今のままバラバラにして東西、コミュニケーション、ドコモ、データ、さぁ自由にどうぞということにはならないと思います。

その背景には今申し上げたように、県外と県内に分けるような意味は今ほとんどなくなっているだろうと。それからされにいえば、FMC、つまり固定と携帯が融合するようなサービスが世界中で始まっている時に、それぞれをバラバラにしておく意味があるのかということであります。それからさらにユニバーサルサービスを見直すということになったら、東西のあり方も見直さざるを得ない。そういう意味で根本的に見直さなければならないわけですけれども、今のまま資本分離してバラバラにしておしまいということには絶対にならないと思います。

その一方で、ここが悩ましいところでありまして、悩みを率直に申し上げると、光ファイバーを中心にこれから先のブロードバンドは進んでいくと思うんですね。無線といってもやはりいちばんメインのところは光ファイバーになっていきます。それから光ファイバーのことを考えると、競争的に敷設すればいいといってもですね、光ファイバーの実際のファイバーのラインは、一本一本の電柱に引かれていくわけですから、今メタルの電柱を含めたユニバーサルサービスを維持しているNTTの東西会社の優位性も非常に高いわけですね。だからそのあたりで、有効で競争な条件を作り上げながらということになりますと、やはりNTT東西のあり方を見直していかなくてはならない。

そういう意味で、単なるNTTの見直しというのは組織分離の、資本分離したらいいという話ではない。恐らくそのことは垂直統合のような形にもつながっていくだろうと。しかしその一方でユニバーサルサービスを今義務付けられている東西のあり方も変えていかなければならない。さらに、有効で公正な競争が出来るようなスキームを考えていかなければならない。

その意味で、懇談会は昨日の段階では恐らくそういう問題意識は共通して持っているわけですけれども、一部の報道にありましたように、NTT解体を目指すような話ではないと。しかし今申し上げたような、大胆な、相当大きな改革はせざるをえないだろうということで意見が一致したわけでありまして、まさに私は今日話を終わった後も、会場でこれから先の議論を聞いて、そういうことも含めて、懇談会の最終報告は5月か6月になるわけですが、それまでに今申し上げたような問題点を解決していかなければと思っているわけであります。

通信の話をしてまいりましたが、次は放送であります(資料8ページ)。放送については、この赤字のところにありますように、先ほどと同じIT戦略本部の今年1月にまとめたものになります。放送に付いてはこちらです、2011年7月、先ほどの2011年7月24日にアナログ放送を停波するというところですね、それまでに通信と放送のハーモナイゼーション等を進め、地上デジタルテレビ放送への全面移行を実現すると、こういうことになっております。

昨日実は、通信・放送の融合という言葉はよく聞きますけれど、ハーモナイゼーションというのはちょっと違和感があるんだけどと聞きましたら、融合というとみんな違和感があるんだけれど調和というと抵抗がないんだよ見たいなですね、そんな話を聞きましたけれど、日本語と英語で若干ズレがありますけれど、通信と放送のハーモナイゼーションを進めるということでございます。何でわざわざここに書いたかと申しますと、本来は放送の話ですから放送と通信のハーモナイゼーションが何でここに入ってくるのかというのが実は大ことなんでありまして、その意味で、この戦略の赤いところを抜いてから次の放送のところに入っていきたいと思っております。

地上放送に関しては、要するに今まではテレビはアナログであって、基本的にはそれをVHFのアンテナで観ると、一部ケーブルで流れておりますけれども、それは再送信というかたちでありまして、基本はアナログのVHFアンテナで見るということであります。しかし、2011年にはアナログが停波されて、デジタルになったテレビをUHFアンテナ(地上波)やCSで流そうとしている、さらにケーブルテレビでも流す、さらに通信ケーブルでも、というように伝送路が多様化するここが決定的な違いなんですね。

要するにVHF1本で見ていた番組が、UHFで地上波としてみてもいい、それから地上波によるデジタル化が追いつかない可能性が高いということもあって、CSを通して流さざるをえないだろうと。さらには、ケーブルテレビ、これは今までどおりケーブルテレビで、通信ケーブルはIP(インターネット・プロトコル)を使って流すということになります。

そうすると、2011年からのアナログからデジタルへの転換後は、テレビというのを地上波だけで見るという時代から、非常に多様な伝送路、どれでも見られるようになると、だからここで通信と放送のハーモナイゼーションが必要だというのは、上の3つですね、アンテナ(VHF、UHF、CS)、ケーブルテレビは放送ですけれど、通信ケーブルで見るということになると、まさに通信の枠組みになるわけですから、その意味で、地上波がデジタル化するということがまさに通信・放送の融合時代になると、こういうことでございます。

(資料10ページ)もう一度しつこいようですがIT新改革戦略の話を出しました。今度はいちばん真ん中の赤く書きました「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」使えると、これがまさにブロードバンドを2010年までに普及させるための目的というか、この環境整備が必要なんだということです。いつでも、どこでも、何でも、誰でも使えるようにする。

だから例えば、これから恐らく林さんのお話の中にあるような著作権の問題、デジタルコンテンツの流通のいうのがまさにここでして、色々な本から映像からデジタル化したときにですね、まさに何でもですね、それがブロードバンドを使ってどこでも誰でも使えるようにするというのが決定的重要なわけであります。これが、我々も考えなければならないということであります。

その何でもということで私が問題にしたいのが、ここが今度は地上波の、今までのテレビ放送の問題であります。実は今、地上波全国ネット+UHFを入れたときに、地上波テレビを6局見られる区域というのは、じつはこのブルーの部分だけしかないわけです(資料11ページ)。それが5局となりますとこういうブルーの部分になります(資料11ページ)。逆にですね、3局以下しか地上のテレビを見られないところがグリーンのところでありまして(資料13ページ目)、さらに2局以下となりますと、これだけの県が2局以下しか見られないと、こういう状況に今あるわけです(資料14ページ)。

ということは、例えばこの緑に塗ってある地域は何でも見られるという風にしたい時にはですね、テレビは映る、地上波は映るけれど、しかしテレビ局はNHKを除いては2局しか観られないわけですね。良く例に出されるのは、例えばテレビ東京系列でいうと「ポケモン」は見られないところがいっぱいあるよということであります。

また、今年の6月十何日ですか、ワールドカップの日本対クロアチア戦をテレビ朝日系列がとりました。しかし、テレビ朝日系列は日本で7県がネットの対象外になっています。ということは、日本対クロアチア戦を7県の方はテレビ朝日がとっちゃったおかげでといったら失礼ですけど、見られないわけでありまして、これはやはりどこでも、いつでも、誰でも、何でも見られるというユビキタス社会に向けては大変おかしい自体だと、そういうことであります。

「いつでも」「どこでも」「なんでも」「誰でも」ということが、今のテレビ局の免許の状態では実現できないと、こういうことです(資料15ページ)。先ほどの伝送路の多様化の問題ですが、アナログの時には、VHFアンテナでして、地上波で流す時にはこれはもう権益であるのはしようがないわけであります。それぞれの地方局が基本的に一県内のエリアに数百本のアンテナを立てて、そこから電波を流すことで見られているわけですから、今のVHFが権益になってしまうのは仕方がない。

で、逆にいえば今の状態でしたら、テレビ朝日の日本対クロアチア戦はどうやったって見られないわけです。あとはもう、ケーブルテレビで見るしかないという状況なわけです。しかし、デジタル時代になると、UHFアンテナは今までと同じように県域ですが、パラボラアンテナは衛星で流すわけですから全国で見られる。ケーブルテレビも事業者はわかれていますけれど、CSを通したりないしは光ファイバーでやれば当然全国で見られるわけであります(資料16ページ)。

さらに通信ケーブル、IPで見ればそれこそ全国で見られるようになるわけで、今申し上げたような「いつでも」「何でも」というその「何でも」については、UHFで見てる限りでは県域の聖域があったわけですけれども、まさに伝送路が多様化することによって、どこでも見られるようになるわけです。

しかし県域免許のおかげで、たとえば今、通信ケーブルで見ようという時に、わざわざ地域限定をかけようとしているわけです。全国で見られるようになるのに、わざわざその県でしか見られないような限定をかけようとしているわけですから、これは発想は逆だろうと。せっかく誰でも見られるようになるときに、わざわざ限定をかけることの意味はどこにあるのか。やはりこれは根本的に見直していかざるをえなくて、そうするとその延長として、ハード、ソフトの一致、ないしは分離という問題も議論していかなければならないだろうと、こういうことです(資料17ページ)。

これは懇談会用に事務局が作ってくれた資料ですけれども、ハード・ソフトが分離しているところがブルーです。白く見えるところがいくつかありますけれども、BSのアナログはもう、WOWWOWのアナログがなくなると終わります。そうすると、もうほとんどの部分がソフト、ハードは分離しているわけです。で、地上だけがですね、今は一致しているわけです。

なぜ一致しているかというと、県域に電波を飛ばすということと放送が一体であったからでして、そのことが先ほど申しましたように伝送路の多様化してフリーになれば、当然地上放送についてもハード・ソフトを今までどおり一致する必要があるのか、こういう議論が出てくるし、県域免許を守るために、全国で見られるように、衛星で日本中飛ぶようになるのに、わざわざB-CASかなんかで制約をかけたりですね、インターネットで流れるのにわざわざ地域限定をかけたりするのは、やはりそれは本来のユビキタス社会の実現に向けては大きな制約だろうと、そういうことであります。

まさにここは、次の林先生へのバトンタッチのところであります(資料18ページ)。やはり、「いつでも」「なんでも」というときに、もちろん今申しあげたように、全国ネットの放送はどの県でも観られるようにならなきゃいけないし、その裏返しとしてですね、地域の放送局が出している、例えば九州の放送局が出している放送を日本全国で見られても当然なわけです。そういう意味でコンテンツの流通を加速すると、上手に制約を外すというのも、私はこの懇談会の大事なところだと思っております。

それでまさにつなぎとしてお話しするわけでありますけれども、今の、これは何でこんな法律になっちゃったのか私は分からないのですが(資料19ページ)、法制局がしっかりしていればこいう言うことにはならなかったと思うんですが、政府自体が、この2行目を見ていただきたいんですが、定義を異にしていると政府も認めているわけですから、法律が矛盾しています、みたいな話であります。

その矛盾したところを今、政府の解釈、答弁で調整しているということになっています。こういうところをまずすぐに、2011年を待たずに政府解釈を変えればすむところは変えていくべきだと。その上で、デジタルコンテンツの流通、それからやはり色々な意味での安全とか国家安全とか、わいせつ情報のチェックのようなコンテンツ規制も必要になるかと思いますが、やはりデジタル時代にふさわしいコンテンツ規制のあり方といのは、著作権法の全面的な改正を含めて、視野に入れなければいけないという問題意識を持っていると、こういうことでございます。ほぼ与えられた時間は終わりましたので、私のお話は終わりにさせて頂きます。

レポート2: 林 紘一郎 講演

「通信と放送の融合と法制度」

林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)

ご紹介いただきました林でございます。考えてみると松原先生と知り合いになったのは20年前というのは意識しませんでしたけれど、どうもそうのようであります。さっそく中身に入らせていただきます。

(資料2ページ)実はその20年前に、私が「インフォミュニケーションの時代」という本を書きまして、ブロードキャスティングとコモンキャリア的な仕事とさらに、今日のインターネット的なものはいずれ融合するであろうということを言ったわけであります。これは多分この時代に言ったのは恐ろしく早すぎたんだとおもいますけれど、本日ここまで来たというのは感慨深いものでございます。

この10年後にこちらの会場にもいらっしゃる田川さんとわたしで「ユニバーサルサービス」という本を書いたんですが、今日はこちらの方はちょっと省略して、主として産業論を展開いたします(資料3ページ)。

メディアに関係する産業というのは、実はひとくくりになかなか出来ない。と申しますのは、この縦軸はコンデュイット(管路)に関する参入とか退出の規制で、横軸はコンテンツ(内容)に関する規制ということで分けてみますと、こんなマトリックスになりまして、昔型のP型、つまりプレスかパブリッシングですが、全く規制がない、明日から新聞を発行するのも自由とか、その内容は言論の自由で保護されているという産業が伝統的にありました。

それに対して対極にあるのがブロードキャスティングでありまして、これは参入退室が非常に厳しく規制されていると同時に、番組編集準則のようなコンテンツ規制もあるという産業です。その間、コモンキャリア的な仕事というのは、参入退出は伝統的に規制がありましたが、コンテンツには触れてはいけないというような産業でありまして、昔これをPCB分類と言ってたんですが、なんだかPCBというとイメージが悪い物体というか化学的な反応があるらしくて、その後PBCと言っていますが、こういう風に分かれているのでそう簡単に融合しないというのが実は大事なところかなと。

その間にインターネットが登場いたしまして、どうやらこれについては皆様方は参入退出を規制するようなことはしないけれど、それよりも中身は何とかならないのか、ということをおっしゃっているのではないかと思います(資料3ページ)。

現在の動きはどういう風になっているかというと、私は憲法なんかを勉強すればするほど、P型がメディアの原点であらねばならないなぁという思いを強く致しまして、それに対してB型的な規制というのは特異なメディアではないのかと(資料4ページ)。C型もある意味で特異なものなんですが、実は今、これが左下の方に移動いたしまして、I型はほとんどC’型的となっている。

つまり例えばプロバイダー責任制限法のようなものでコンテンツにある種の責任を負わなければならないとか、通信傍受法のようなもので、通信の秘密についても一部例外的にせよ規制がかかるというようなことになっている。その間に著作権法上の違いというのが松原先生のご指摘のように明らかになってきた、というところかなと思います。

私は数年前からいわゆる水平分離論というのを言ってまいりましたが、どうも水平分離論というのはお嫌いな方が多いようなので、その後レイヤー別分離とか層別分離という風に言い直しておりますけれど、それをいろんな方と議論する過程でしてきてだんだん分かってきたのが、今まで我々は2階建ての建物の1階のアナログ世界に居ましたねと。コンピュータは最初からほとんどデジタルの2階建ての方に移って、通信がラスト・ワンマイルを除くと2階へ上がっていっちゃったと(資料5ページ)。

最後に残った垂直統合型のテレビという業界が2階に上がっていくと。2階の秩序は1階の秩序と違って、どのように通行権、送信権、コンテンツ、これはなるべく規制がないほうが望ましいわけですけど、2階の規律をどうやって決めるのか、という時代になっているのかなというような気がします。従ってそこにハーモナイゼーションとかいろいろなものが必要だと、こういう議論になっているんじゃないかと思います。

その過程で、だんだんと著作権がキーかなという風に理解されてきたかと申しますと、先ほどのPBCの分類とほとんど同じように、著作権についてもメディアとの関わりについては差があるということが分かってきたからであります。細かいことは除きまして、通信と放送のところだけ言えば、元々コンテンツについて責任を負わないC型にですね、著作権法上の特別な権利は発生するはずもありませんから、こちらは著作権処理をしようと思えば、みんな契約の世界になると、いうことであります。

それに対してB型は、ご自分の作った番組を放送すれば職務著作として著作者になりますが、プロダクションに作っていただいた番組を放送した場合にも、放送事業者に固有の隣接権が発生する、こういうところが大きな違いだということです(資料6ページ)。その隣接権の内容は何かといいますと、普通の複製を禁止する権利とか、再放送及び有線放送に出すのをコントロールする権利。この再放送は、皆様が言っておられる一般用語とは違いまして、いったんA放送局で放送したものをA以外の放送局で放送するというのが、著作権法上の再放送、再送信になります。

それから、その後認められたもので最初からあったわけでは無いんですが、放送番組をインターネットに送信する為の送信可能化状態にする権利。それからテレビジョンの放送をこうした公の場所で映す権利。商業用レコードの利用は原則自由で許諾は要らない、2次使用料を払えばよいという権利。放送のために一時的に固定しても複製権の侵害になりませんよという権利。このようなものがあるということになります。

これだけ見れば、「そんなものは著作権の勉強でやって頂戴よ」と、「これがどうしてそんなに大きな権利なの?」というご理解かもしれませんが、実はこの中の音源については、自由に使っておいて後で2次使用料を払えばいい当たりから始まって、JASRACとの間のブランケット契約とか色んな工夫がなされてきて、放送事業者になるかならないかというのは大変大きな著作権法上の差が出ると、いうことが大きな問題でございます(資料7ページ)。

このあたりを書いてくれというので、お目に止まったかもしれませんが、2月10日の日経の経済教室に解説記事を書きましたけれども、編集者がですね、わたしが展開した産業論としてというか、あるいは今後の放送秩序をどう作るかという面と、著作権法上の扱いをどうすべきかというのを、なるべく一つの図にまとめてくれというので、新聞にはこれが出ているかと思います(資料8ページ)。

初めて見た方には、何のことか分からないという恐れもあります。ごくごく簡単に申しますと、伝送形式がIP(インターネット・プロトコル)という、まぁこれも一つの技術に過ぎないわけですが、しばらくの間はどうもこの方式で統合されていくでしょうと。そうすると、いままでは音声は音声の送り方、映像は映像の送り方というのがあったけれども、ここのところが統合されればなんでも同じような仕組みで送れるようになる。その時にはコンテンツの方の差はあまり問題にはならなくて、コンデュイットがなんであるか、つまりそれが光なのかDSLなのかケーブルになのか地上波なのかセルラーなのか、いうようなところが問題になるというようになります。

多分、後で申します、歴史上初めて有線系と無線系がほとんど対等な競争が出来るようになったと、いうのが今日の時代ではないかと思っております。その際、著作権法上の概念でいきますと、ここのあたりが放送というとらえ方をしていまして、ケーブルは実は放送事業者からすればこれ全体を著作権法上の有線放送としてもらいたいんですが、そうじゃなくて、IPでやってると黄色い方のくくりになるというので、このくくりは光なんかで送るのと同じように、自動公衆送信になると、こういう理解になっているとおもいます。

その間にどのような違いが生ずるかといいますと、地上波の放送事業者は電波の免許を貰って番組編集準則を守って放送をしており、著作権法上も放送。衛星放送の委託放送事業者は、電波の免許は不要だが番組放送準則を守るということになっていて、これも一応放送だということになっている(資料9ページ)。電気通信役務利用放送事業者は電波の免許は要りませんが、番組放送準則を守るということになているけれども、現在の著作権法の理解では放送ではない自動公衆送信ということになっている。

有線テレビジョン放送事業者は電波の免許は不要で遵守義務になっていて、欄を一つ作らなきゃいけないんですが、一般的には有線放送ということで放送並みの権利を持っている。インターネットの一般的な情報発信者は電波の免許も不要だし、番組編集準則を守らなくていいけれども、放送ではない自動公衆送信となっている。ということで、どうやらここのあたりを少し、解釈で変えれば情報の流通は上手くいくんじゃなかろうかと、私は思ったというのがあの記事の大本でございます。

どうやらこの解釈でいけるのか法改正を要するのか、なお詰めなければいけないらしいんですが、受信者から見ればどのようなパイプで流れてこようと、同じ番組を見ていれば同じ法的扱いになるというのがまあ普通かなというのがわたしの感じであります。

松原先生に、私は法律学をやっておりますという意味で、若干こじつけ的反論をすれば、法律の概念というのは法によって違うというのがこの件以外でもいっぱいあります。例えば、民事法と刑事法とでいつから人が生まれたと見るかということに始まって、いっぱいあるんですけど、こういう商売をやるときのルールがこんなに不便というのはあまり望ましくないのはいうまでも無いということであります。

さてここで、本来著作権の解説はもっと細かくしなければいけないんですが、今日のテーマは通信と放送の融合問題の法的側面ということなので、もうちょっと産業政策としての含意を探ってみたいと思います(資料10ページ)。この図はわたしが98年以降書いているもので、お馴染みの方も多いと思いますが、一つだけ書き足したところをご説明いたします。それはこのRight of Wayという所でございます。

元々何のために書いたかといいますと、NTTが民営化のときに、電電公社というのはもともと交換機、伝送路、局舎などの設備を持って、設備を使ったサービスをあわせて提供していた事業体でございます。それが情報というよそ様のものを運んでいるので、ここは明白に切り離されていますが、この2つ下は一緒にやってきたわけであります。

鉄道も実は国鉄の民営化が同時にありまして、この軌道とか駅舎とかそういうものとサービスを一緒にやっていて、人や物を運んでいると、こういう形態でやってきたわけです。これをどういう風に新しい事業法で規律したらいいかという知恵として、84年に私が考えたのがこの後第一種、第二種となって、私は零次、一次、二次というように言っていたんですが、こういうものでありまして、それは片一方は設備まで持ってサービスを提供する、もう一方は設備を持たないでサービスだけ提供する。JR民営化のときも同じような概念が出来まして、こちらは鉄建公団があるもんですから第三種という概念も出来ましたけれど、このようになっている。

これからは多分、放送について有線テレビジョン放送も今までは「施設者=事業者」というのがほとんど行政指導でその通りやってきたんですが、ここに線が入ってもいいし、テレビ、ラジオの方も設備を持たないでサービスを提供する人が出てきてもいいんじゃないかと、それを仮に二種的放送事業者とよんでおくと、そういうものがたくさん出てくると、産業は活性化するんじゃないかと私には見えるということであります。

そのとき、やはりこのライト・オブ・ウェーは施設を作る人が持たなきゃいけないと、こういうふうになっていて、これ、大体括弧でくくってきたわけですけれども、これが本当にいいのかどうかという問題もあわせて検討する必要があるんじゃないかと、いう風に私は思うわけであります。

私の理解では、有線と無線というのは、実は歴史上は競争関係にありました。代替関係というよりは、激しい競争をしてきた。NTTの中でも無線屋と線路屋というのは2つの技術グループでありまして、両方噛んでる人はいなかったわけでありますし、仲もそんなに良かったわけではないかもしれない。むしろ、間における競争意識というのが、技術の進展をもたらしたということもいえるかと思います。

その時に、それはそれでよかったと思いますが、今日起きていることは何かというと、FMC(固定電話と携帯電話の融合)とかいろんなことが言われているように、通信と放送が融合すると同程度か、あるいは更にそれ以上に有線と無線が融合しているんだと理解をすると、問題はよく分かるんではないかと私は思うわけです(資料11ページ)。

つまり、そこで言うのは何かというと、それぞれのライト・オブ・ウェーが果たして本当に同じくらいのレベルで自由に利用できるようになっているかどうかが問題でありまして、これがレベル・プレイング・フィールドになっておりませんと、例えば有線の方に大変優秀な技術が出来てきても、ライト・オブ・ウェーがとれないということによって、その技術が実用化されないということが起きるということがあります。

同じように、無線の方に激しい技術革新が起きたとしても、無線の周波数の割り当てがもらえないということによってその技術が生きるか死ぬかということになる。これは政策をやる者からすれば出来るだけ避けたい事態であるというのが私の基本的な視点であります。つまり、電子通行権法というのを定めて、有線無線というものではない両方をにらむ人がこれを見ていくというのがこれから必要なのではないかということであります。

今までの概念では、放送というのは特殊な通信の形態というふうに法を作ってまいりましたが、これからは受信の方はまず括弧でくくってしまって、送信だけを規律するという概念に立って、放送が主たる規律の対象で、通信は放送の一部というふうに逆転させてはどうかと考えております(資料12ページ)。

左の方は忘れていただいて右だけ見ていただくと、電波法及び放送法における放送の定義は、公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信でありまして、これは著作権法上の定義とは似ているようでちょっと違うところがあるんですが、ここでは産業政策について論ずるんであって、この定義で行きたいと思います。そうすると、例えば有線で送信することは放送には当たらないということは明白でありますから、結局Cというコンキャリアコミュニケーションの中にブロードキャスティングが入っているという建前になっていて、インターネットはそれらを包摂するような大きな概念であると、こういう概念になるんではないかと思います(資料13ページ)。

ここで再び著作権法のなかなか面白い概念を援用することが可能になるわけですが、先ほど松原先生がおっしゃったように、公衆送信という大概念を作りまして、その中に自動公衆送信と放送と有線放送と、人手によるその他の公衆送信と、全部含むんだという概念が99年の著作権法の改正に出てまいります。これはその、同一の内容を同時に受信させる目的で行う無線による送信なんで、先ほどの放送法の概念とちょっとだけ違うんですが、実態的にはほぼオーバーラップしていると見ますと、結局ですね、送信の方だけ規定していて有線無線を問わぬ送信という概念があるということをこの法律は明確にしてくれたんじゃないかと思います。

あわせて、ここで言う公衆とは不特定かつ多数だけではなくて、特定かつ多数のものも含むという概念を導入いたしました。そうしますと、この公衆概念を使うと、全体が公衆送信だという範囲が非常に広くとれて、その中のほとんど相手が一人に特定されているようなものを特定公衆送信と定めれば、これが今までの電気通信だということで、新しい電子公衆送信法案がこの面積をカバーするものとして出来るなというのが私のアイデアでございます。

これはですから、通信放送融合法の新しい法律がこの概念で出来るのではないかと思います。ちなみに、余計混乱するかもしれませんが、そういえばなんだかプロバイダー責任制限法に特定電気通信という概念があったなということまでご存知の方がおられたとすれば、それはここでは点線のことを言っております。
以上がちょっと学者っぽい議論なので、今日の話題にはあまりふさわしくないかもしれませんので、最後に、生々しい話をちょっと申しあげまして、松原先生と対談できるような条件を作り出したいと思います。

私の概念は、層別に縦と横かと言われれば、横に色々切ったらどうかという考え方でありますので、もし私にNHKをどうするのかと聞かれますと、案は2つあるかと思っております。一つは、コンデュイットに関する部分を売却し、残りをまるごと民営化するという案でありまして、これはNHKを番組制作会社にするというのとほとんど等しいということになると思います。この考え方が、学者としての私としてはどうやら自然の成り行きになりそうな感じが致します(資料14ページ)。

もう一つ別に、公共放送分野を特定してそれをある程度制限し、他を売却または民営化するという案がありうるかと思います。これは縦割りになりますので、私の案とは別の案ですけれども、無いとは言えないと思います。ちなみにここで民営化以外の案が全く書いていないというのにご注目いただきたいと思います。私は学者ですので言論の自由を最大限享受したいと思っておりますから、総理大臣がNOといったからそんな案は無いとかそんな発想には全く捕らわれておりません。これを論じないマスメディアはどうかしていると思っているくらいでありまして、それ以外の案は私には無いということでございます。

その際、NTTの方もNN問題として色んな議論があります。私の案は一つは案Aといたしまして、コンテンツ分野への参入規制をする。これはマスメディアの集中排除原則等に準じて、コンテンツを扱う会社に出資しようとし、あるいは人的に関係を持ちたいとすれば、20%未満にしたらどうかというような制限をつけるということはありえるかなと思っております。それで無いとすれば、もう一つの案は、私にとっては有線無線共にライト・オブ・ウェーというのは同じ扱いをするべきだと理解をしておりますので、ライト・オブ・ウェーに上限値を設けるというのも一つの安価なと思っております。

再びここでも書いていないことにご注目いただきたいと思いますが、光ファイバー会社を作ってその部分をNTTから切り出すというような案は、私の頭の中には全くございません。電電公社という非効率をある種体現していたような組織に長くいたものからすれば、光ファイバー建設公団は、道路公団をもう1個つくるとほとんど同じことになって、経済学で言うX非効率の代表になるであろうと、そういうふうに思っております。

今の点をもう少し補填するために電気通信の層別分離について考えて見ますと、OSIの7レイヤー的に考えましてどこで切れるのか話も明確ではありませんが、案の1は光ファイバー公団のようなものを作るということなのですが、ここで論じられているのがライト・オブ・ウェーをこの公団なり何なりに独占的にあげるのかどうなのかということであります(資料15ページ)。有線だけあげて無線は別の扱いにするのがどうも暗黙の前提のようでありますが、私は有無あわせて管理したほうが良いと説であるので、これはちょっと私からすると取り上げにくいということであります。

案の2は電気通信事業者とコンテンツを切り出すのみならず、ライト・オブ・ウェーも切り出すという案でありますが、これはあまりにも切り方が細かすぎるかなと思いつつ、案としてはある。

3つ目の案が支配的電気通信事業者にライト・オブ・ウェーもあげますけれど、その事業者についてはコンテンツ産業に進出する時に集中排除原則のようなものをかけると、それ以外の事業者については垂直統合を認めるという案であります。先ほど私が申しましたA案はこれに近いかなと、いう感じであります。

日経の記事をお読みになった方はお気づきの方もおられたかと思いますが、冒頭に私が学生と共に作り上げたということにしてある、実はほとんど私が作ったんですけれども、質問が8つ載ってありました。そのうちの7番と8番は、編集の方が「これはどういう意味ですか?今回のテーマに直結しますか?」とお聞きになられました(資料16ページ)。私はこれはプロの為に書いた質問だから、削らないと量が多すぎるなら削っていただいて結構だけれど、私も一応研究者の端くれで、馬鹿にされない為には残しておいて頂きたいということで、残っております。

ここの席においでの方は当然ご存じのことかと思いますが、視聴率というようなそんなに信頼度の高くないものに頼って産業秩序を作っているという産業は非常にもろいのではないかというのが7番目。8番目は、民法でいうと双方代理というようなほとんど禁止的行為をやっている広告代理店というのが、果たしてどのくらい持つのでありましょうかということでありまして、放送の論議をするとどうやら最後はこうところに行くのかなぁと、いうようなことをチラッと申しました。以上で発表を終わらせていただきます。