ビジネス 自動走行バスの現状と今後 大澤定夫氏(SBドライブ株式会社)

日時:10月24日火曜日18時30分から20時30分
場所:エムワイ貸会議室四谷三丁目 会議室B
東京メトロ四谷三丁目駅前、スーパー丸正6階
司会:山田 肇(ICPF理事長)
講師:大澤定夫(SBドライブ株式会社) 

大澤氏の講演資料はこちらにあります

大澤氏は冒頭、次のように講演した。

  • SBドライブは通信・IoTのソフトバンク、ビッグデータのYahoo! Japanと自動運転技術の先進モビリティの3社が出資して2016年に設立された自動運転ベンチャである。バス型の自動運転モビリティを目指す、交通事業者向けにBtoB事業を展開をポイントとして、自動運転の時代の運行管理を支えるICTサービスの用意を目指している。
  • バス型自動運転には、ドライバー不足、バス会社の7割が赤字、廃止路線の増加、買い物弱者が増加といった公共交通の課題解決に貢献できる可能性がある。将来的には先進国で少子高齢化が進行するため、日本の自動運転バスが海外でも活躍するビジネスチャンスがある。
  • 経済産業省の平成28年度スマートモビリティシステム研究開発・実証事業専用道路での走行を試みたが、SBドライブはその先を行く他車も走行する一般道で特定ルートを定時運行するモビリティを2018年度後半に実現することを目指している。
  • 実際の交通状況とニーズを軸に考えるため、現時点で4地域と協定を締結している。地方都市モデルとして福岡県北九州市、中山間地域モデルとして鳥取県八頭町、観光地モデルとして長野県白馬村、地方都市で地域の自動車メーカーも巻き込んだ静岡県浜松市である。また、内閣府を始めとする国家プロジェクトに参画し経験を蓄積中である。
  • 将来的には交通事業者に対するBtoBビジネスとして、サービスと車両をパッケージで提供予定である。バスによる公共交通で課題である運転手の人件費が、より低額の運行管理システム運用費に置き換えられれば、ビジネスとして認知されるだろう。これがSBドライブのビジネスチャンスである。
  • 自動運転技術は認知→判断→制御の三要素が連なって成り立っている。認知に関わるセンサ類や判断に関わるGPUなどは価格の低下が著しい。3Dマップ・GPSなど複数の組み合わせで 自己位置推定を行うことが可能になり、AIを活用した障害物認知等の信頼性が大幅に向上している。
  • 2017年3月の沖縄・南城市での実証実験はレベル2.5ぐらいで実施した。アクセルとステアリングを自動化し、海外沿いの交差点のない一般道を片道1㎞走行した。運行管理システムの動作検証、ロボットによる社内アナウンス、バス停への4cm程度の近接停車(正着制御技術)、障害物回避を実証した。交通事業者を中心にモニター-調査を実施したが、乗車前には不安との回答が大半を占めた。しかし、説明と乗車後は安心が大半を占める結果となった。

ICPF事務局注記:レベル2は部分自動運転、レベル3は条件付自動運転、レベル4は高度自動運転で、レベル3まではシステムが要請すればドライバーが対応しなければならない。

  • 6月から7月にかけて石垣島で実証実験をした。新石垣空港~離島ターミナル(片道16km)で最高速度40㎞、アクセルとステアリングを自動化したレベル2.5ぐらいである。交差点での信号待ちなど、南城市に比べて本格的な実験となった。街路樹がある道路ではGPSが検知しにくく自動走行制御がむずかしいなどの課題も発見された。
  • 7月には芝公園で、フランスNAVYA製のARMAを用いて1周150mをレベル3で走行する一般公開試乗会を実施した。ARMAは世界25カ国で10万人が乗車した世界で最も走行実績のある自動運転バスである。

講演後、次のような質疑があった。

自動走行バスの技術等に関する質疑

質問(Q): GPSが街路樹に邪魔されるという話があったが、準天頂衛星で改善されるのか? 今はトンネル内を走行できないのか?
回答(A):改善されるだろう。トンネルなどGPSを検出できない場所では縁石や白線を検出して走行する方法などがある。
Q:道路に電磁誘導のラインを敷設する方式と比べてSBドライブの自律走行方式は有利なのか?
A:走行距離が長ければ電磁誘導のラインを敷設するインフラ協調型は不利になる。しかし、自律走行といってもトンネルなどでは周囲から誘導する可能性もあり、一部分はインフラ協調方式となるだろう。
Q:NAVYAのARMAがレベル4で走行している国はあるのか?
A:スイスの観光地で走行している。

ICPF事務局脚注:スイス・ヴァレー州シオン市で自動走行バスのサービスが提供されている。

自動走行バスが発揮する価値などに関する質疑

Q:レベル2では効果がないのではないか?
A:レベル1の自動ブレーキなどがすでに自動車に装備されるようになってきた。それだけでも事故低減の効果は出ている。レベル2でも公共交通に貢献する部分はあるが、目標はドライバーが不要になるレベル4である。
Q:南城市での実証実験で乗車後も不安を感じたという回答者が出たのはなぜか?
A:回答者は主にバス事業を営む交通事業者であった。彼らの中には自分の運転と比較して不安を感じた人もいた。石垣島では一般人を乗せたが、拍手が出るくらいに好評だった。
Q:バス運用者の態勢に影響は出るか?
A:始業前点検など運用者がすべき作業は変わらない。ただ、自動走行バスの部品の消耗度などは自動測定できるので予防保全に移っていくだろう。
Q:過疎地のほうが対向車も少なく信号もない。最初のターゲットなのか?
A:その通りだが、都会での運用も目標にしている。

自動走行バスに関わる規制緩和などに関する質疑

Q:講演中の動画では、バスの運行が集中管理センタで管理されているようになっていた。集中管理センタに人が付いているのでは人件費は削減できないのではないか?
A:国は安全最優先で集中管理センタに人が付くのを求めている。道路交通法はジュネーブ条約に沿った法律であり、車の操縦は人が行わなければならない。操縦する人が必ずしも車の中にいる必要はないと警察庁は解釈して、集中管理センタ方式をガイドラインで定めている。
Q:今後、レギュラトリーサンドボックスで実証実験をする予定という話が出たが、サンドボックス内では集中管理センタ方式を外すのか?
A:安全最優先なので集中管理センタ方式である。ただ、今までは集中管理センタの監視者にも2種免許を求めていたが、これがサンドボックス特区内で緩和されるとありがたい。実車を運転するスキルが不要となれば、それだけでも経費削減に役立つだろう。

次いで大澤氏は規制等に関係する事項として次の五点を指摘するスピーチを行った。

  • 地方の自動運転に関するバス購入費の助成金、運用費に対する助成金が必要になる。2012年のEV向け充電スタンドの助成金規模およそ1000億円が求められる。
  • 信号情報を車両が取得できる環境を早急に整えて欲しい。
  • 実証実験としては専用道路、優先道路でない混在交通での推進が求められる。
  • 自動運転車に対するいたずら、迷惑行為に対する罰則強化などの法整備が必要になる。
  • 各省庁に跨る各種申請に関するワンストップ窓口の設置を求める。

助成金については、補助に頼るのではなくビジネスとして自立できる必要があるという意見、ユニバーサルサービス基金を創設して都会の利用者が負担する制度がよいという意見が会場から出た。
信号機との協調については、信号色の検出などは自動車業界全体として取り組むべきという意見と、青赤黄色で情報を伝えるのではなくデジタルで交通を制御する方向に自動車業界全体として取り組むべきという意見が出た。
申請窓口のワンストップ化については、電子申請全般の課題として解決すべきという意見が出た。