教育 教育の情報化を推進しよう 遠藤利明自由民主党衆議院議員ほか

共催:
超党派「教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟」
特定非営利活動法人 情報通信政策フォーラム(ICPF
一般社団法人 デジタル教科書教材協議会(DiTT
月日:2017523日(火曜日)
場所:参議院議員会館1階 101会議室 

冒頭、超党派議員連盟会長の遠藤利明衆議院議員は次のようにあいさつした。

  • ICTの教育現場への導入について、子ども・教員にとって負担になるという意見もあるが、海外では導入が進んでいて、効果が出ている。また、ICTは障害者教育や遠隔教育の支援にも役に立つ。
  • ICTというと若い人が使いこなしそうな印象があるが、むしろ経験豊かな教員がうまく使えるという意見もある。情報化により「教育がこう変わる」という点を広めていきたい。
  • 教育の情報化推進のためには、その裏付けとしての法律が必要、今超党派の議員連盟で法律案の国会提出に向けての準備を進め、現案について各党に諮っているところだ。現在の骨子案について石橋参議院議員が説明する。

続いて、議連会長代行の中川正春衆議院議員があいさつした。

  • 議員立法によって教育の情報化政策の基本方針をまとめることを目標に、文部科学省、総務省、経済産業省などとも協力している。
  • 中身の議論を深め、議連に参加のない共産党も含め、国会議員の皆が納得する法律にしたい。

次いで、議員連盟に参加している次の国会議員が順に一言ずつ、推進への意気込みを語った。山本博司参議院議員、原口一博衆議院議員、渡海紀三朗衆議院議員、左藤章衆議院議員、盛山正仁衆議院議員、田島要衆議院議員、瀬戸隆一衆議院議員、櫻田義孝衆議院議員。

議連で事務局長を務める石橋通宏参議院議員が学校教育における情報化の推進に関する法律案について講演した。石橋議員の講演資料はこちらにあります。

  • 2013年に遠藤議員等と超党派による勉強会を立ち上げ、教育のICT化促進について検討を始めた。外部から有識者アドバイザーにも参加してもらい議論を深めてきた。2015年に議連化し、予算要望の提出や政策提案を進めてきた。現在衆参75名の議員が参加(無所属も含む)している。2009年フューチャースクール事業が開始された。その後3年単位のプロジェクトが繰り返され現在に至っている。その間に様々な課題を見つけ対応してきた。ICT化のメリットを明らかにし、啓発活動を段階的に進めてきた。
  • 今後はICTを活用し、一斉学習から課題解決型学習に変化し、生徒ひとりひとりの要望に応え伸ばしていく教育を提供していく。過疎地域、離島等、どこにすんでいても豊かな教育を受けられるようにする。世界と繋がるICTの効果をどこからでも享受できるようにしたい。教職員の過重労働問題については、ICT導入によって最初は負担が増えるが、ある時点で負担は軽減していき、子ども達に向き合う教育の時間が増えた実績もある。今後とも進めていきたい。
  • 教育の情報化について法律を制定する動機は、自治体間格差の拡大、学校間格差の拡大を解決したいからだ。「全ての場所での学びを保証する」という議連の意思に沿う対応を求めるためだ。子どもたちのインターネット上での犯罪やモラル低下も懸念されているが、学校の中で正しい活用を教えることで防止したい。
  • 推進法案の目的は、これからを生きる子ども達へ豊かな学びを提供することにある。課題解決型のICT教育とこれまでの教育のよいところをミックスして、新しい教育を実現する。基本理念として、教員の負担を軽減しつつ、全ての子どもに豊かな教育を保証することを掲げている。具体的施策の中では、障害者教育へのICTの活用、病児教育の推進などが各党協議の中で優先事項として浮上してきている。
  • デジタル教科書は難しいところもあるが、長期的には正規化を目指していかないといけない。著作権法上の教科書の特例についてデジタル教材にも適用できるかを考えると教科書化が必要になる。
  • 今国会会期末に向け法制局と議論しながら条文整備を急ピッチで進めている。しかし、日程的には厳しい。各党には方向性は了解してもらったが、条文の了解も得ることを考えると日程的にはギリギリである。まずは、国会提出することが大事。そして成立へ進めたい。今後とも、ご支援ご協力をお願いしたい。

次いで、菊池尚人DiTT理事が講演した。菊池氏の講演資料はこちらにあります。

  • これまで、議連では国会議員にアドバイザーが加わり侃侃諤諤の議論を進められてきた。法案は衆参法制局、文科省、総務省の協力もあり通常の内閣提出法案と何ら遜色ない仕上がりになると思う。DiTT2012年、独自に法案を公表した。今回の法案はセキュリティ、病児等対応など具体的な施策が広く盛り込まれており、さらに進んだものになっている。法案の提出、成立を大変期待している。
  • 2011年には佐賀県武雄市の実証実験に協力したが、当時の小学5年生は今年高校を卒業する。この間に教育情報化は格差が広がっているのではないか。武雄市は日経BP社の情報化ランキング1位であるが、上位20位は佐賀、徳島、岡山などに偏っている。これを大きく変えうるのが今回の法案だ。
  • 2020年にプログラミング教育が小学校で必修化される。それまでに端末の低廉化はさらに進む。アメリカでは2万円程度のChromebookが学校急速に普及している。Windows10sを搭載した端末も同程度の価格になる。クラウド化とシンクライアントによるシステムの構築でセキュリティとコストの問題に目途がつく。
  • 教育情報化で日本は決して進んでいるわけではない。PISA2015では読解力において日本の順位が大きく低下した。「回答の仕方が、紙からコンピュータへ変わったことが一因」に挙げられた。また、15歳児が平日学校外でインターネットを利用する時間もOECD平均以下。インターネットには負の側面はあっても、対策を講じながら利用していかなければいけない。
  • 教育には長期的な効果が経済にも社会にもある。今考えるべきは数十年後の社会を展望しての教育の在り方。2030年代には世界で20歳代の識字率が100%になり、同時に世界全体でネットへのアクセスが100%になる。その時代には現在の先進国と後進国の教育環境は同一になる。長期的な国家戦略が求められる。
  • 人工知能が急速に進展している。しかし、当面、人工知能はマネジメントや創造性、ホスピタリティが不得手だと言われている。それらを伸ばす教育が必要だ。2040年代は人工知能を補助的に使ったり、代替手段として使ったりする社会になる。歴史的には識字率の上昇が宗教改革など近代化を誕生させた。その識字率が100%になるタイミングで人工知能が普及する社会になる。近代化の開始以来、500年ぶりに大きな歴史的転換が訪れる。
  • 教育はこれまでもこれからも最重要社会資本。未来に向かって、DiTTは新たなビジョンを作成する。直近では、関係者とともにデジタル教材の権利処理スキームを構築する。あわせて、プログラミング教育の推進に寄与する。

次いで、山田肇ICPF理事長が司会して総合討論が行われた。主な議論は次のとおりである。

著作権について
原英史規制改革会議委員:「遠隔教育を本格推進すべき」という答申をまとめ、今日、総理に提出した。途端に関係省庁、現場から「教育は対面ですべし」「教員の数を減らすような軽々しい意見はどうか」といった厳しい指摘は出ている。そのようなことは一言も言っていない。教育の質を高める、教員負担軽減のために遠隔教育の使えるところを使えばいい。ところが、遠隔教育での利用は、著作権についても文科省と並行議論になっている。授業における著作物利用は対面であれば問題ないが、遠隔授業ではいちいち許諾を得る必要がある。文化庁の検討する類型提示のようなやり方では現場は判断できないし、「紙はOKだが遠隔教育なら補償金を出せ」ではICTの活用は進まない。
原口衆議院議員:クラウド化しないとセキュリティが弱い。スタンドアロンで入口がたくさんあると弱くなる。入口をひとつにすることでシステムを守る。しかし、そうすれば必ずネット配信が必要になる。紙に関する著作権規定をデジタルに移すのがほんとに正しいのだろうか。極端に言うと著作権フリーの教材であれば全てが解決する。紙は紙で守ってICTICTとしてコンテンツを整えた方が早いのではないか。
会場:法案に著作権に関する記述が足りない気がするが?
石橋参議院議員:これは推進法案で各論ではない。この法案はプログラム法案である。学校現場で教材として使うものを広く対象にする(どこかで線は引く必要はあるが)。具体的な個別法を作っていければと思う。 

教育の方法と教員の負担について
会場:きめ細かい教育をICTで実現するのを期待するのは確かにそうだが、きめ細かい教育の導入により、現在よりも教員に負担がかかることを懸念している。そういう点の手当てに関する議論が上がっていないのではないか?
石橋参議院議員:実証実験でそういう懸念もあった。法案に記載はないが、その先で実施プログラムを作る段階で、総合的な施策として講じていく。
原口衆議院議員:自治体によって環境は様々なので、それぞれの工夫は入れればよい。一方で共通に必要なものは統一して作る。ベースは統一して作らないと、教員の負担軽減はできないと考えている。
会場:たくさん学びたい学生と、追いつけない学生が出ると思うが、どのレベルの学生に合わせればいいのか?
石橋参議院議員:これからの教育は一斉学習ではない。それを前提としたうえで、正規化されたデジタル教科書を用いる個別学習をどうビルトインしていくか、議論していきたい。
上松恵理子武蔵野大学教授:先進国になればなるほど教育目的を立て、教育の目的に合わせて子どもを伸ばしている。クラウドの中にいろいろ入れてどんな端末からでも資料を取得できる環境を構築して個別学習に役立てている。著作権の処理も済んでおり、さらに学習を自動評価できるシステムもある。当初は支援員が必要だが、教員が習熟すれば負担は軽減される。
山田ICPF理事長:全員に同じ端末を配る必要があるか。ほとんどの家には余っている端末がある。中学校ぐらいであれば家から持っていた方が早い思うが?
石橋参議院議員:法案には「皆に同じものを配る」とは敢えて書かなかった。端末に依存しないクラウドを整備できれば解決できる問題である。最適な環境への対応を国に義務化することだけで済ませている。
会場:デジタル教育というがアナログ教育も重要ではないか?
石橋参議院議員:その通り、組み合わせて新しい学びを実現したい。

最後に山田ICPF理事長が法案成立に向けて議連の活躍を期待すると語り、セミナーは終了した。